人事労務の基礎知識

労務管理とは?仕事内容・目的から人事管理との違いまでわかりやすく解説

労務管理とは?仕事内容・目的から人事管理との違いまでわかりやすく解説

労務管理とは、従業員が安心して能力を発揮できる職場環境を整え、企業の健全な成長を支えるための根幹となる業務です。

適切な労務管理の運用は、法律遵守はもちろん、従業員のモチベーションや生産性の向上にも直結します。

本記事では、労務管理の基本的な定義や混同されがちな人事管理との違い、具体的な業務内容、そして現代企業が抱える労務管理の課題と効率化のポイントまで、わかりやすく解説します。

目次

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労務管理とは

労務管理とは、従業員が安心して意欲的に働ける環境を整え、企業の健全な発展を支えるための管理業務全般を指します。

具体的には、労働時間や賃金、休日、安全衛生、福利厚生といった、従業員の労働に関するあらゆる要素が管理の対象です。

企業は労働基準法をはじめとする各種法令を遵守する義務があります。労務管理は、このコンプライアンスを徹底するための基盤です。

また、働きやすい職場を作ることは従業員の満足度や定着率を高め、企業の生産性向上にもつながるため、企業経営において極めて重要な役割を担っています。

労務管理と人事管理・勤怠管理の違い

労務管理と混同しやすい用語には、「人事管理」や「勤怠管理」があります。これらはそれぞれ役割が異なります。


管理業務主な役割
労務管理従業員の働く環境やルールを整備・管理する(労働契約や就業規則の管理、福利厚生、安全衛生など)
人材管理従業員の採用・育成・評価・配置といった人的資源の活用を担う
勤怠管理労務管理の一部であり、労働時間の正確な記録・管理に特化する

人事管理が従業員個々のパフォーマンス最大化に焦点を当てるのに対し、労務管理は全従業員が働くうえでの基盤となる環境とルールを整える役割です。勤怠管理は、その労務管理を正確に行うための重要な一部分となります。

労務管理の主要な目的

労務管理は、単に法律を守るためだけに行われるわけではありません。企業と従業員の双方にとって多くのメリットをもたらす、3つの主要な目的があります。

それぞれの目的について、詳しく解説します。

コンプライアンス(法令遵守)を徹底する

労務管理のもっとも基本的な目的は、労働基準法や労働契約法といった労働関連法規を遵守することです。

法律で定められた労働時間の上限管理、適切な賃金の支払い、社会保険への加入などを怠ると、行政からの指導や罰則を受ける可能性があります。

コンプライアンスの徹底は、企業の法的リスクを回避し、社会的な信用を維持するために欠かせません。

労働環境を整備し従業員満足度を向上させる

従業員が心身ともに健康で、安心して働ける職場環境を整えるのも労務管理の重要な目的です。

たとえば、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 適切な労働時間の管理による長時間労働の是正
  • ハラスメントのない職場づくり
  • 公平な評価制度の運用
  • 充実した福利厚生の提供

働きやすい環境の整備は、従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)や定着率を高め、優秀な人材の確保にもつながります。

生産性を向上させる

適切な労務管理は、従業員のパフォーマンスを最大化し、企業の生産性向上に直結します。

生産性を向上する取り組みの例は、以下のとおりです。

  • 従業員一人ひとりの能力や適性に応じた人員配置
  • スキルアップを支援する研修制度の整備
  • 成果が正当に評価され報酬に反映される制度づくり

従業員が意欲的に働ける環境は個々の能力が最大限に発揮され、組織全体の成長促進に寄与します。

労務管理の具体的な仕事内容一覧

労務管理の業務は多岐にわたります。ここでは、主な仕事内容を9つの項目に分けて具体的に解説します。

法定三帳簿作成

企業には、労働基準法によって「法定三帳簿」と呼ばれる3つの帳簿を作成し、保管する義務があります。法定三帳簿は、それぞれ以下のとおりです。


帳簿名内容
労働者名簿従業員の氏名、生年月日、住所、履歴などの情報を記録する名簿
賃金台帳従業員ごとの給与額、労働日数、手当などの賃金に関する情報を記録する台帳
出勤簿従業員の出勤日、労働日数、始業・終業時刻などを記録する帳簿

これらの帳簿は、労働基準監督署の調査などで提出を求められる場合があるため、正確に作成・管理しなければなりません。

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労働者名簿とは?書式や保存期間、社員名簿や従業員名簿との違いまで解説

勤怠管理

勤怠管理は、従業員の労働時間を正確に把握・管理する業務です。

日々の出退勤時刻や休憩時間、休日、休暇の取得状況などを記録し、時間外労働(残業)や休日出勤が法律の範囲内に収まっているかを確認します。

勤怠情報は給与計算の基礎となるため、極めて正確性が求められる業務です。

入退職・休職・異動などの手続き

従業員の入退職、休職、部署異動などが発生した際に、それに伴うさまざまな手続きを行います。

具体的には、雇用契約の締結や社会保険の加入・喪失手続き、社内システムへの情報登録・変更、退職時の源泉徴収票の発行などです。

これらの手続きは、法律で定められた期限内に正確に行う必要があります。

給与計算

勤怠情報や各種手当、控除額などをもとに、毎月の給与や賞与の計算を行います。

健康保険料や厚生年金保険料、所得税、住民税などの控除額を正しく計算し、給与から天引きしたうえで、従業員一人ひとりの給与明細を作成します。

年に一度、1年間の所得税を精算する年末調整も、給与計算に含まれる重要な業務です。

社会保険・雇用保険などの手続き

従業員を雇用する企業は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)への加入が義務付けられています。

具体的には、以下のような業務があります。

  • 従業員の入退社に伴う資格取得・喪失手続き
  • 社会保険料の標準報酬月額を見直す手続き(算定基礎届)
  • 前年度の保険料を精算し、新年度の概算保険料を申告・納付する手続き(労働保険の年度更新)

福利厚生の整備・運用

福利厚生には、法律で義務付けられている「法定福利」と、企業が独自に設ける「法定外福利」があります。

法定福利である健康保険や厚生年金保険などの手続きはもちろん、住宅手当、慶弔見舞金、社員食堂といった法定外福利の制度設計や運用管理も労務管理の仕事です。

就業規則や雇用契約書・労働条件通知書などの作成・管理

企業のルールブックである就業規則や、従業員との労働条件を定める雇用契約書、労働条件通知書などの書類を作成・管理します。

法改正があった際には、内容を適切に見直し、改定する作業も必要です。常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。


出典:厚生労働省「**就業規則作成・届出に関する FAQ**」

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安全衛生管理

従業員が安全で健康に働けるよう、職場環境を管理する業務です。具体的には、定期健康診断やストレスチェックの実施、職場の安全確保、長時間労働者への医師による指導などが含まれます。

労働安全衛生法に基づき、従業員の心身の健康を守るための取り組みが求められます。

労使関係の管理

従業員と企業との間で発生する可能性のある、さまざまなトラブルを未然に防ぎ、万が一発生した際には適切に対応する業務です。

解雇や残業代の未払いといった個別の労働問題への対応や、ハラスメントに関する相談窓口の設置・運用などが挙げられます。

良好な労使関係を築き、維持することは、安定した企業経営の基盤となります。

労務管理に役立つ資格

労務管理の業務は、特別な資格がなくても行えます。

しかし、労務に関する専門性を高め、キャリアアップを目指すのに役立つ資格がいくつか存在します。

ここでは、それぞれの資格について詳しく解説します。

社会保険労務士

社会保険労務士(社労士)は、労務管理や社会保険に関する専門家であることを証明する国家資格です。

労務管理のプロフェッショナルとして、手続きの代行やコンサルティングを行い、企業内で非常に重宝される資格といえます。

【関連記事】
社労士の独占業務とは?一号・二号・三号業務をわかりやすく解説

衛生管理者

衛生管理者は、職場の安全衛生を管理するための国家資格です。

常時50人以上の従業員を使用する事業場では、業種に応じて一定数以上の衛生管理者を選任することが法律で義務付けられています。


出典:厚生労働省「常時50人以上」

従業員の健康障害や労働災害を防止するうえで中心的な役割を担います。

労務管理士

労務管理士は、一般社団法人日本人材育成協会などが認定する民間資格です。

労働基準法や労務管理全般に関する知識を体系的に学べるため、実務上の理解を深めるのに役立ちます。

資格取得を通じて、労務管理の専門知識を客観的に証明できます。

そのほかの資格

上記以外にも、従業員のメンタルヘルスケアに役立つ「産業カウンセラー」や、キャリア形成を支援する「キャリアコンサルタント」といった資格も労務管理の業務と高い関連性を持ちます。

産業カウンセラーは、従業員の悩みを聞き、メンタルヘルスの維持・向上をサポートします。キャリアコンサルタントは、従業員のキャリアプランに関する相談に応じ、能力開発を支援する専門家です。

これらの資格は、より広い視野で従業員をサポートするうえで強みになります。

現代の労務管理が抱える課題

社会情勢の変化に伴い、現代の労務管理はさまざまな課題に直面しています。以下はその一例です。

現代の労務管理が抱える課題(一例)

  • 頻繁な法改正の対応に手間がかかる
  • 多様な働き方に対応する必要がある
  • 業務の煩雑化と属人化のリスクがある

企業が持続的に成長するためには、上記の課題に適切に対応しなければなりません。それぞれの課題について、詳しく解説します。

頻繁な法改正の対応に手間がかかる

働き方改革関連法の施行など、労働関連法規は頻繁に改正されます。

法改正の情報を迅速にキャッチアップし、就業規則の変更や給与計算方法の見直しなど、実務へ正確に反映させる作業は大きな負担です。

対応が遅れると法令違反のリスクがあるため、常に最新の情報を収集し続ける必要があります。

多様な働き方に対応する必要がある

テレワークやフレックスタイム制度、副業・兼業など、従業員の働き方は多様化しています。

従来の画一的な管理方法では対応が難しく、それぞれの働き方に合わせた勤怠管理の仕組みや、人事評価制度の構築が求められます。

多様な働き方を認めつつ、公平性を保ちながら管理するのは容易ではありません。

業務の煩雑化と属人化のリスクがある

労務管理の業務は、社会保険の手続きや年末調整など、多岐にわたり複雑です。

たとえば紙の書類やExcelで管理を続けていると、手続きが煩雑になり担当者の業務負担が増大します。

また、専門的な知識が特定の担当者に集中しやすく、その担当者が休職や退職した場合に業務が滞る属人化リスクも大きな課題といえます。

労務管理業務を効率化するポイント

労務管理における課題を解決し、業務効率化するために押さえておきたいポイントを紹介します。

労務管理システムを活用する

労務管理システムを導入すると、入退社手続きや給与計算、年末調整といった定型業務の多くを自動化できます。Web上で申請や書類のやりとりが完結するため、ペーパーレス化が進み、業務効率が飛躍的に向上します。

法改正にも自動で対応してくれるクラウド型のシステムを選べば、担当者の負担を大幅に軽減可能です。

アウトソーシングを検討する

給与計算や社会保険の手続きなど、専門性が高く定型的な業務を外部の専門業者に委託(アウトソーシング)するのも有効な手段です。社内の担当者は、より戦略的な業務や、従業員一人ひとりに向き合うコア業務に集中しやすくなります。

専門家が対応するため、法改正への対応漏れなどのリスクを低減できるメリットもあります。

専門家(社会保険労務士など)に相談する

自社だけで対応が難しい複雑な労務問題や法改正への具体的な対応方法については、社会保険労務士などの専門家に相談するのがおすすめです。

専門的な知見から的確なアドバイスを受けられるため、適切な判断が可能になります。顧問契約を結び、日頃から気軽に相談できる体制を整えておくと安心です。

労務管理システムの失敗しない選び方

労務管理システムの導入は、業務効率化において非常に有効です。

しかし、自社に合わないシステムを選んでしまうと、かえって業務が煩雑になる可能性があります。労務管理システムを選ぶ際には、以下のポイントを確認しながら選んでください。

自社の規模や業種に合っているか

まずは、検討している労務管理システムが自社の従業員数や業種に対応しているかを確認します。将来的な従業員の増加も見越して、拡張性のある労務管理システムを選ぶのが重要です。

また、業界特有の勤務形態や給与体系がある場合は、柔軟に対応できる機能が備わっているかどうかもチェックポイントになります。

法改正への対応力があるか

労働関連法規は頻繁に改正されるため、システムが迅速に法改正に対応してくれるかは非常に重要なポイントです。

とくにインターネット経由でサービスを利用するクラウド型のシステムは、ベンダー側で自動的にアップデートされるため、常に最新の法規制に準拠して利用できます。

操作性が高くサポート体制が整っているか

従業員のなかには、ITツールの利用を苦手としている方もいる可能性があります。

そのため、労務管理システムを選ぶ際には、ITに詳しくない人でも直感的に操作できるようなわかりやすいインターフェースとなっていることが重要です。

また、導入時や運用中に不明な点が出てきた際に、電話やチャットで気軽に相談できるサポート体制が整っているかも確認しておきましょう。

外部システムと連携できるか

すでに利用している勤怠管理システムや会計ソフトがある場合、それらと連携ができる労務管理システムを選ぶと、さらなる業務効率化が図れます。

たとえば、勤怠データを労務管理システムに自動で取り込み、給与計算に反映させるといった連携が可能です。

自社の課題を解決し、将来の成長にも対応できるシステム選びは重要です。労務管理システムなら、シェアNo.1のfreee人事労務がおすすめです。

まとめ

労務管理の業務内容は、勤怠管理や給与計算、社会保険手続きから、働きやすい職場環境づくりまで多岐にわたります。

さらに現代の労務管理では、法改正や働き方の多様化など、多くの課題を抱えます。

労務管理を効率良く運用していくには、労務管理システムの活用や専門家への相談が効果的です。自社の労務管理体制を見直し、従業員と企業がともに成長できる環境づくりを進めていきましょう。

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よくある質問

労務管理とはどのような仕事内容?

労務管理とは、勤怠管理や給与計算、社会保険手続き、福利厚生の整備、就業規則の作成、安全衛生管理など、従業員の労働に関する幅広い業務のことです。

従業員が安心して働ける環境を整えるための管理業務全般を指します。

詳しくは、記事内「労務管理の具体的な仕事内容一覧」をご覧ください。

労務管理が抱える課題とは?

現代の労務管理は、頻繁な法改正への対応、テレワークなどの多様な働き方への適合、そして業務の煩雑化と属人化といった課題を抱えています。

これらの課題に対応するため、労務管理システムの導入による業務効率化が求められます。

詳しくは、記事内「現代の労務管理が抱える課題」で解説しています。

労務管理と人事管理の違いは?

労務管理が労働時間や福利厚生といった「働く環境やルール」を整えるのに対し、人事管理は採用や育成、評価、配置といった「人材の活用」に焦点を当てます。労務管理が企業の土台を支える役割であるのに対し、人事管理は人材という資源を活かして企業を成長させる役割を担います。

詳しくは、記事内「労務管理と人事管理・勤怠管理の違い」をご覧ください。

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