
「ふるさと納税をしたけれど、年末調整で税金が還付されなかった」という経験はないでしょうか。年末調整の手続きだけでは、ふるさと納税の控除を受けることができません。
この記事では、ふるさと納税と年末調整の関係や、控除を正しく受けるための方法を解説します。返礼品を楽しみながら、確実に税金控除を受ける方法を知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
ふるさと納税の基本的な仕組み
ふるさと納税は、任意の自治体に寄附を行った際に、その寄附金額のうち2,000円を超える部分について所得税と住民税の控除を受けられる制度です。生まれ故郷はもちろん、応援したい街やお世話になった地域など、どの自治体に寄附しても対象となります。
たとえば、年収500万円の給与所得者で扶養家族が配偶者と子ども1人(高校生)の場合、5万円のふるさと納税を行うと、2,000円を超える部分である4万8,000円が所得税と住民税から控除されます。
多くの自治体では、寄附のお礼として地域の特産品などの返礼品を提供しています。税金を納めながら返礼品をもらえるという点が、「実質2,000円の自己負担で特産品がもらえる」という魅力につながっているわけです。ただし控除額には上限があるため、自分の収入や家族構成に応じた控除上限額を確認しておくことが欠かせません。
なお、ふるさと納税による寄附金控除を受けるには、原則として確定申告の手続きが不可欠です。ただし、一定の条件を満たす場合は確定申告を行わなくても寄附金の控除が受けられる「ワンストップ特例制度」を利用できます。
ふるさと納税が年末調整で控除されない理由
ふるさと納税による控除を受けたい場合は、原則として確定申告を行う必要があります。そのため給与所得者の場合、年末調整の手続きで控除を受けることはできません。
ふるさと納税では、その年の寄附金額を確定した後に控除を行います。年末調整で控除されない大きな理由としては、通常11月から12月にかけて行う年末調整の時期に寄附金額が確定していないことが挙げられます。たとえ10月までにふるさと納税を行っており、11月以降に新たな寄附を行う予定がない場合でも、年末調整でふるさと納税関連の処理や書類提出を行う必要はありません。
ふるさと納税の控除を受ける方法
ふるさと納税の控除を受ける方法には、「ワンストップ特例制度」を利用する、「確定申告の際に申告する」という2パターンがあります。確定申告に慣れていない、もしくは手続きを負担に感じるという給与所得者は、ワンストップ特例制度の活用を検討しましょう。
方法1:ワンストップ特例制度を利用する
ワンストップ特例制度(ふるさと納税ワンストップ特例制度)とは、確定申告をせずにふるさと納税の寄附金控除が受けられる仕組みです。ただしこの制度を利用するには、以下の条件を満たさなければなりません。
ワンストップ特例制度の利用条件
- 確定申告が不要な給与所得者であること(主に会社員・公務員)
- 年間の寄附先が5自治体以内であること
また、以下のいずれかに該当する場合は、ワンストップ特例制度を利用できません。確定申告が必要になると覚えておきましょう。
ワンストップ特例制度を利用できないケース
- 年間の寄附先が6自治体以上になった場合
- 年間収入2,000万円を超えている場合
- 給与所得や退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えている場合
- 医療費控除や住宅ローン控除など、ほかの控除を確定申告で受ける場合
ワンストップ特例制度で控除されるのは所得税ではなく、翌年度に請求される住民税である点にも注意が必要です。申請時には寄附先の自治体へ書類送付が必要となるため、こちらも忘れずに行いましょう。
ワンストップ特例制度の利用手順
ワンストップ特例制度を利用する手順は、以下のとおりです。
- 申請用紙を入手:「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄附先の自治体から受け取るか総務省のサイトからダウンロードし、必要事項を記載する
- 必要書類の準備:マイナンバーカードや運転免許証など身分証明書の写し
- 申請用紙と必要書類を提出:準備した書類一式を寄附先の自治体で提出
申請期限は寄附した翌年の1月10日(必着)まで。万が一、期限を過ぎてしまった場合は確定申告が必要です。そのため、年末年始にまとめて申請を行うのではなく、寄附したタイミングで都度申請するほうが安心でしょう。
方法2:確定申告の際に合わせて申告する
ワンストップ特例制度が利用できない場合や所得税からも還付を受けたい場合は、確定申告を行います。なお、ふるさと納税とは関連のない事情であっても確定申告が必要となる場合は、ふるさと納税も確定申告によって控除の申請を行います。
また、ワンストップ特例制度の申請期限を過ぎてしまった場合も確定申告によって控除を受けましょう。ワンストップ特例制度の申請期限は翌年の1月10日ですが、確定申告は約2ヶ月先の3月15日に期限が設けられています。さまざまな事情により申請が間に合わない場合は、忘れずに確定申告をしてください。
会社員が確定申告をする際の手順
会社員など給与所得者が確定申告でふるさと納税の控除を受ける場合の手順は、以下のとおりです。
- 必要書類の準備:「寄附金受領証明書」「源泉徴収票」「身分証明書」「還付金を受け取る口座情報」などを準備・保管
- 確定申告書の作成:国税庁の「確定申告作成コーナー」などから作成
- 確定申告書と必要書類を税務署へ提出:電子申告・郵送・持参などの方法で提出
確定申告の受付期間は、毎年2月16日から3月15日までです。確定申告を行うと、所得税からの還付と住民税の控除が行われます。所得税の還付は確定申告後、3週間~1ヶ月半程度で指定した口座に振り込まれ、住民税の控除は翌年度の住民税に適用されます。
【関連記事】
確定申告でふるさと納税の控除を受けるには?やり方や必要書類についても解説
ふるさと納税の控除額を確認する方法
ふるさと納税の控除額は、住民税決定通知書で確認できます。住民税決定通知書とは毎年5月〜6月に勤務先や自治体から受け取る書類のことで、その年度の住民税額が記載されています。特にワンストップ特例制度を利用している場合は、所得税の還付が行われずに住民税の減額のみとなるため、必ずこの通知書を確認しましょう。
控除額は、住民税決定通知書に記載されている「税額控除額」や「摘要欄」で確認できます。「寄附金税額控除額」として記載されている金額が、ふるさと納税を行った寄附金額のうち2,000円を超える部分と同額になっていれば、問題なく控除が行われたことになります。
なお、住民税決定通知書は再発行できません。そのため書類が届いたらすぐに内容を確認し、控除額が正しいか確認することをおすすめします。もし控除額に疑問がある場合は、住まいのある市区町村の税務担当課に確認してください。
令和6年度分以降の個人住民税特別徴収税額通知(納税義務者用)は、電子データによる送付も可能です。電子化に対応している企業では、通知書も電子化される可能性があると覚えておきましょう。
まとめ
年末調整の手続きではふるさと納税の控除を受けられないため、ワンストップ特例制度の利用か確定申告が必要となります。ワンストップ特例制度では住民税の控除が受けられ、確定申告ならそれに加えて所得税の還付も受けられます。ただし、ワンストップ特例制度を利用したい場合は、いくつかの条件を満たしている必要がある点に注意しましょう。
ふるさと納税により控除を受けられているかどうかは、翌年に受け取る「住民税決定通知書」で確認できます。適切な手続きで、ふるさと納税のメリットを最大限に活用してください。
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よくある質問
ふるさと納税が年末調整で控除されない理由は?
通常、11月から12月にかけて行われる年末調整の時期に寄附金額が確定しないことから、年末調整ではふるさと納税の控除を受けられません。
詳しくは記事内の「ふるさと納税が年末調整で控除されない理由」で解説しています。
ふるさと納税の控除を受ける方法は?
「ワンストップ特例制度」もしくは「確定申告」の2種類があります。ワンストップ特例制度では住民税の減額を、確定申告では加えて所得税の還付が受けられます。
詳しくは記事内の「ふるさと納税の控除を受ける方法」をご覧ください。
ふるさと納税の控除額を確認する方法は?
ふるさと納税の控除額は「住民税決定通知書」で確認できます。住民税決定通知書とは毎年5月から6月に勤務先から配布されたり、自治体から郵送されたりする書類のことです。
詳しくは記事内の「ふるさと納税の控除額を確認する方法」をご覧ください。