人事労務の基礎知識

扶養家族とは?妻や子供を扶養に入れる条件やメリット・デメリットについて詳しく解説

扶養家族とは?妻や子供を扶養に入れる条件やメリット・デメリットについて詳しく解説

扶養家族(ふようかぞく)とは、主に生計を支えている人によって養われている家族や親族を指します。家族を扶養に入れることで、所得税や住民税、社会保険料の負担が軽減されます。

ただし、扶養家族にするためには一定の条件を満たさなければなりません。また、「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」は定義や条件が異なるため、違いを正しく理解することが必要です。

本記事では、扶養家族が適用される条件や手続き、メリット・デメリットについて解説します。

目次

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扶養家族とは

扶養家族(ふようかぞく)とは、主に生計を支えている人によって養われている家族や親族を指します。たとえば、会社員の父親が自身の収入で小学生の子どもを養育している場合、その子どもは父親の扶養家族となります。

なお、扶養には税制上と社会保険上、2種類の定義があり、それぞれ扶養家族にできる範囲や条件が異なるため注意が必要です。

税制上と社会保険上の扶養家族の定義には、下表のような違いがあります。

税制(所得税)の場合社会保険(健康保険)の場合
配偶者・納税者と生計を一にしている
・内縁関係は✕
・被保険者により生計を維持
・内縁関係は◯
親族・納税者と生計を一にしている
・6親等内の血族および3親等内の姻族
・被保険者により生計を維持
・被保険者の子、孫および兄弟姉妹
・上記以外の3親等内の親族(同居の場合に限る)
年齢16歳以上75歳未満
年間給与収入・配偶者:150万円以下(同居の場合に限る)
・親族:103万円以下
・通勤手当(非課税)を含めない
・130万円未満
・60歳以上または障がい者は180万円未満
かつ
・同居の場合は収入が被保険者の収入の半分未満、別居の場合は収入が被保険者からの仕送り額未満
・通勤手当(非課税)を含む

扶養について詳しく知りたい方は、別記事「扶養とは? 所得税の扶養と社会保険(健康保険と厚生年金保険)の扶養の違い」をご確認ください。

出典:国税庁「No.1180 扶養控除」
出典:全国健康保険協会「被扶養者とは?」

税制上での扶養家族

税制上、扶養に入っている家族を「扶養親族」と呼びます。扶養親族がいる場合、税制上では扶養者が納税する所得税や住民税が軽減される仕組みとなっています。これは、扶養者(納税者)にかかる所得税や住民税を軽減できる扶養控除が適用されるためです。

ただし、配偶者(妻もしくは夫)は扶養控除の対象となりません。配偶者の場合は、扶養控除ではなく配偶者控除や配偶者特別控除が適用されます。

以下で、扶養控除や配偶者控除が適用されるための条件について解説します。所得税の計算については、次の記事を参考にしてください。

【関連記事】
所得税の計算方法は?税率・控除についてわかりやすく解説【令和6年最新】

扶養控除が適用されるための条件

扶養控除の対象となる扶養親族は、以下の条件すべてを満たす必要があります。

扶養控除が適用されるための条件

  • その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人
  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族と3親等内の婚姻)または里子、養護を委託された老人
  • 納税者と生計を一にしている
  • 1年間の所得額が48万円以下(給与のみの場合は年収103万円以下)である
  • 青色申告者の事業専従者として年間に一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告の専業専従者ではない

「6親等内の血族と3親等内の婚姻」によってできた親族には、自分の兄弟や叔父・叔母、4親等となる祖父母の兄弟や6親等に該当する従兄弟の孫、3親等の姻族である義理の甥と姪(配偶者の兄弟の子ども)まで含まれます。

親族の範囲については、以下の図も参考にしてください。

6親等内の血族と3親等内の婚姻


控除額は扶養親族の年齢や同居の有無などによって異なります。

なお、16歳未満の子どもを扶養していても扶養控除の対象にはなりません。しかし、2024年6月から実施された定額減税や健康保険においては、16歳未満の子どもも扶養の対象となっているので注意が必要です。

出典:国税庁「No.1180 扶養控除」

配偶者控除・配偶者特別控除が適用されるための条件

配偶者控除は、以下の要件すべてを満たしている場合に適用されます。

配偶者控除・配偶者特別控除が適用されるための条件

  • 民法の規定による配偶者(内縁関係の人は対象外)
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)である
  • 青色申告者の事業専従者として年間に一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告の専業専従者ではない

控除額は、控除を受ける扶養者(納税者本人)の合計所得金額、および扶養に入っている配偶者の年齢によって異なります。

なお、平成30年分以降は控除を受ける納税者本人(扶養者)の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除は適用されません。

出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」

社会保険上での扶養家族

社会保険上の扶養家族とは、保険料を支払っている扶養者の社会保険に加入している家族のことを指します。社会保険上では、扶養に入っている家族を「被扶養者」と呼びます。

扶養者の社会保険に加入するため、扶養家族となった人(被扶養者)は、自身で社会保険に入らなくても保険が受けられる仕組みとなっています。

社会保険とは、以下の5つの保険の総称です。

  • 健康保険
  • 年金保険(国民年金、厚生年金など)
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

この中で扶養家族(被扶養者)となれるのは、健康保険と国民年金のみです。また、健康保険と国民年金で被扶養者になるには、それぞれ一定の条件を満たさなければなりません。

健康保険の扶養家族の条件

健康保険の扶養家族(被扶養者)として認められる家族や親族は、扶養する人(被保険者)とその配偶者の第3親等まで、もしくは事実婚など「同一生計」の事実がある人に限られます。

健康保険の扶養家族の条件


また、健康保険の扶養家族(被扶養者)になるためには、以下の収入条件を満たす必要があります。

健康保険の扶養家族になるための条件

  • 年間収入が130万円未満であること
  • 60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
  • 扶養家族が主として被保険者の収入で生計を維持していること
  • 同居の場合は、収入が被保険者の収入の半分未満であること
  • 別居の場合は、収入が被保険者からの援助による収入額未満であること

出典:全国健康保険協会「被扶養者とは?」

上記の収入条件を月間収入に換算すると、ひと月あたりの上限は108,333円(60歳以上または障害者であれば150,000円)です。それ以下であれば、被扶養者として認められます。

ただし、75歳以上の高齢者は「後期高齢者医療制度」の被保険者となるため、健康保険の扶養対象とはなりません。

国民年金の扶養家族になるための条件

国民年金の扶養家族(被扶養者)として認められるのは、配偶者(妻もしくは夫)のみです。

配偶者の扶養家族(被扶養者)になると、国民年金の「第3号被保険者」に該当します。そのため、国民年金保険料を自身で納付しなくても将来的に国民年金を受け取ることができます。

国民年金の被扶養者になる人は、以下の条件を満たす必要があるので注意しましょう。

国民年金の扶養家族になるための条件

  • 配偶者が厚生年金に加入している会社員、公務員であること
  • 20歳以上60歳未満であること
  • 年収が130万円未満(60歳以上の場合は180万円未満)であること

出典:日本年金機構「国民年金の第3号被保険者制度のご説明」

知っておきたい「年収の壁」とは

「年収の壁」とは、税金や社会保険料の負担が発生する年収の境界線を指す言葉です。扶養家族の年収が一定のラインを超えた場合に、扶養家族の扱いでなくなる可能性があります。

年収の壁と呼ばれるラインは税金の種類によっていくつかあるため、それぞれ理解しておくことが重要です。

税金や社会保険料に関わる「6つの壁」

6つの税金の種類ごとに関係する「年収の壁」について解説します。「具体的に年収がいくらまでだったら扶養家族でいられるのか」など、条件や制限を知りたい人は参考にしてください。

100万円の壁:住民税が発生するライン

年収が100万円(住民税の課税基準は年収93〜100万円)を超えると、住民税が課税されるようになります。このため、家族の扶養に入っており、アルバイトやパートで働いている人は、年収を100万円以下に抑えることで、住民税の負担を避けることができます。

106万円の壁:条件によって社会保険の加入義務が発生するライン

年収が106万円を超えると、勤務先の規模や労働時間によっては社会保険への加入義務が発生します。/それまで扶養者の社会保険に加入していた扶養家族が個人で社会保険に加入することになるため、保険料の負担が増加します。

ただし、2026年10月にはこの壁は撤廃される予定です。

123万円の壁:所得税が発生するライン

年収が123万円を超えると、所得税の課税対象となります。123万円を超えた分に対して所得税が発生するため、年収の額によっては、所得税が課されない「123万円以下」の場合よりも手取り収入が減少する可能性があります。

2024年まではこの基準が103万円でしたが、2025年から123万円に引き上げられています。

また、この基準を超えると配偶者控除は配偶者特別控除に切り替わります。これにより、扶養者側の税負担も増加する可能性があります。

130万円の壁:社会保険の扶養から外れるライン

「106万円の壁」とは異なり、年収が130万円を超えた場合は条件なしで社会保険の扶養から外れます。保険料を自身で支払わなければならなくなるため、手取り収入が減少する可能性があります。

160万円の壁:配偶者特別控除を満額受けられる上限

配偶者の年収が160万円を超えると、配偶者特別控除が段階的に減少します。年収150万円以下であれば、最大38万円の控除が受けられます。

201.6万円の壁:配偶者特別控除が受けられなくなる上限

年収が201.6万円を超えると、配偶者特別控除が完全に適用されなくなります。

【関連記事】
年収の壁とは? 金額の一覧や支援強化パッケージ・令和7年度税制改正大綱の内容を紹介

年収の壁を超えたら手取り額はどうなる?

実際に年収の壁を超えた場合、手取り額はどの程度変化するのでしょうか。パート勤務の扶養家族をモデルに、年収100万円、104万円、131万円の3パターンで、税金・社会保険料の負担額や手取り額がいくらになるかをシミュレーションしました。

年収100万円の場合

年収100万円の場合、住民税や所得税は発生しません。また社会保険料もかからないため、手取り額はほぼそのままの100万円となります。年収100万円は、税金や保険料の負担が発生しない上限額になります。

年収104万円の場合

年収が104万円になると住民税が発生しますが、所得税はかかりません。住民税がかかることで、手取りが100万円を下回る可能性はあります。

住民税は、地方税法における「標準税率」の規定があるために地域によって異なりますが、仮に4万円を超える納税額である場合、年収が100万円の場合より手取りは少なくなります。

年収131万円の場合

年収が131万円を超えると社会保険への加入が義務付けられるため、健康保険料や厚生年金保険料が発生し、所得税や住民税も課されるようになります。住まいの地域や年度によって計算方法は変わるため、以下は試算として参考にしてください。

年収・税額・保険料が以下の場合

  • 年収:131万円
  • 住民税:約6万円
  • 所得税:約2万円
  • 社会保険料:約20万円
  • 手取り額:約103万円

このケースだと手取りが100万円台前半(約103万円)まで減少してしまい、年収が増えても手取りが減るという「働き損」になってしまいます。「年収の壁」を理解しつつ、納得できる働き方を考えることが重要です。

家族を扶養に入れるために必要な手続き・書類

家族を扶養に入れるための手続きも、税制上と社会保険上では異なります。

税制の扶養手続きと必要書類

扶養する人が会社勤めの場合は、年末調整のタイミングで以下の書類を勤め先に提出します。

税制の扶養手続きに必要な書類

  • 【扶養控除を受けるために必要な書類】
    扶養控除等(異動)申告書
  • 【配偶者控除を受けるために必要な書類】
    給与所得者の配偶者控除等申告書

扶養する人が年末調整の対象外もしくは個人事業主の場合は、確定申告書の「扶養控除」「配偶者控除」それぞれの欄を記入して提出します。

扶養控除等異動申告書の書き方について詳しく知りたい方は、別記事「【令和6年分】給与所得者の扶養控除申告書(マル扶)とは?書き方や注意点を解説」をご確認ください。

社会保険の扶養手続きと必要書類

社会保険の扶養手続きに必要なものは以下のとおりです。

社会保険の扶養手続きに必要な書類

  • 被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届
  • 続柄を確認するための書類(住民票の写しなど)
  • 収入要件確認のための書類(所得証明書など)
  • その他確認書類
  • 別居している家族を扶養に入れる場合:仕送り額が確認できる書類
  • 内縁関係の配偶者を扶養に入れる場合:内縁関係を確認できる書類

家族の扶養に入る(被扶養者になる)事実が発生した日から5日以内に、扶養する人の勤め先に提出しなければなりません。結婚した場合、子どもが生まれた場合は、速やかに手続きを行う必要があります。

扶養家族のメリット

前述のように家族を扶養に入れると、所得税や住民税、社会保険料が軽減されます。また、扶養になる人にとってもメリットがあります。扶養に入れる側となる側、それぞれのメリットについて確認しておきましょう。

家族を扶養に入れる人のメリット

家族を扶養に入れると扶養控除や配偶者控除が適用されるため、支払い負担が軽減されます。/また、社会保険は扶養する人がいても自身(被保険者)の払う保険料の金額は変わりません。そのため、家族単位で社会保険料負担を抑えられるというメリットがあります。

家族の扶養になる人のメリット

家族の扶養になると、社会保険料の支払いが免除されます。さらに、扶養者の健康保険に加入することで健康診断や予防接種を含む医療費の負担が軽くなります。また配偶者であれば、国民年金保険料の納付義務もありません。納付義務はなくても、基礎年金は将来受け取ることが可能です。

扶養家族のデメリット

家族を扶養に入れる人は、扶養となる家族との関係性によってはデメリットが発生する恐れがあります。家族の扶養に入る人は、扶養家族になるための条件を満たすため、働き方を考慮しなければなりません。

家族を扶養に入れる人のデメリット

配偶者や子どもを扶養に入れた場合のデメリットは特にありません。しかし、親を扶養にいれた場合は介護保険料や医療費の負担が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。

家族の扶養に入る人のデメリット

家族の扶養になる人のデメリットとして、収入に制限が生じることが挙げられます。収入が一定額を超えると扶養家族から外れることになり、自己負担で社会保険料を支払わなければなりません。

また、配偶者の扶養に入ると厚生年金に加入していないことになるため、将来受け取る年金が少なくなるデメリットもあります。

まとめ

扶養家族とは、主に生計を支えている人によって養われている家族や親族を指します。扶養家族の対象範囲や条件は、社会保険上と税制上でそれぞれ異なる点に注意が必要です。

「扶養」に入ると社会保険料や税金の負担を軽減できますが、扶養に入る条件の一つに収入制限があるため、パートやアルバイトの雇用形態で働いている場合は勤務時間を考慮しなければなりません。

扶養家族の条件だけでなく、メリット・デメリットを正しく理解した上で扶養に入るか否かを判断しましょう。

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よくある質問

扶養家族とは?

扶養家族とは、主に生計を支えている人によって養われている家族や親族を指す言葉です。たとえば、会社員の父親が自身の収入で小学生の子どもを養育している場合、その子どもは父親の扶養家族となります。

詳しくは、記事内の「扶養家族とは」をご確認ください。

子どもは扶養家族に含まれる?

子どもは扶養家族に含まれます。ただし、被扶養者として認められるには、子どもの年間収入が130万円未満(障がい者の場合は180万円未満)でなければなりません。高校生以上でアルバイトをしている場合は、収入が条件の額を超えないように注意する必要があります。

扶養控除の対象となる子どもの年齢は16歳以上と定められています。詳しくは記事内の「扶養家族とは」をご覧ください。

扶養家族に入れるメリットは?

家族を扶養に入れると所得税や住民税、社会保険料が軽減されます。また、扶養になる人にとってもメリットがあります。

詳しくは記事内の「扶養家族のメリット」をご覧ください。

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