人事労務の基礎知識

給与計算代行・アウトソーシングサービスとは?業務範囲や委託先、相場などを解説

給与計算代行・アウトソーシングサービスとは?業務範囲や委託先、相場などを解説

給与計算業務の代行・アウトソーシングとは、企業が自社の従業員の給与計算などを外部に委託できるサービスのことです。

給与計算は専門性が必要である一方で、定型的で細かい作業が多いため、代行・アウトソーシングサービスを検討するケースがあるでしょう。ただし、委託できる業務範囲はサービスによって異なるうえに、委託先にも複数の選択肢があります。

本記事では、給与計算業務の代行・アウトソーシングを検討する際に知っておきたい委託可能な業務や、メリット・デメリット、料金の相場について解説します。

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目次

給与計算代行・アウトソーシングが普及している背景

給与計算業務の代行・アウトソーシングは、もともと専門性の高い業務を外部の弁護士や会計士にアウトソーシングする考え方が普及していたアメリカで発展したサービスです。

日本でも、1990年代のバブル崩壊後、このようなサービスが急速に注目されるようになりました。その主な背景には、グローバル化が急速に進んで企業が激しい競争にさらされるようになり、業務のコストダウンを検討せざるを得なくなったことなどが挙げられます。

2000年代になると、企業は本業に専念し、人事や経理などのバックオフィス業務を外注するというビジネスモデルが一般化し、給与計算代行・アウトソーシングサービスの利用を成長のための重要な戦略を位置づける企業が増えてきました。

矢野研究所の報告書によると、2014年日本の企業の20%程度が給与計算代行・アウトソーシングを利用しているといわれています。一方、海外では、北米だと約20%、中南米では約60%の企業が給与計算代行のアウトソーシングを利用しているといわれています。

給与計算代行・アウトソーシングで委託できる業務

給与計算には、毎月の給与計算と支払いから年末調整や住民税の計算まで、年間を通してさまざまな業務があります。

代行・アウトソーシングサービスで委託できる範囲について、業務別に解説します。

1. 給与計算代行

給与計算代行は、給与計算を外部に委託することです。毎月の給与計算に必要なタイムカードの集計から入退社や人事異動などの情報変更を行い、給与計算を代行してもらえます。

毎月金額が変動的となり計算が必要な、残業代や社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税の計算が含まれます。明細の作成や印刷、封入、郵送など、明細発行関連業務も含まれるケースもあります。

2. 振込・納税代行

給与計算の結果の給与振込データの作成や振込、税金の納付を代行するパターンです。1の給与計算・賞与計算代行に追加する形で依頼することが多くみられます。

3. 年末調整代行

給与計算のなかでも、とくに業務が煩雑で、繁忙期が毎年の年末から年初に限られる年末調整を外部に委託するサービスです。通常期に給与計算・賞与計算業務を依頼していない場合でも、期間限定で年末調整のみ依頼するケースもあります。

控除申告書類の封入・送付や申告書の内容チェック、従業員からの問い合わせの対応、源泉徴収票や支払報告書、法定調書合計表などの各種必要書類の作成と提出代行などが含まれることが多いといえます。

4. 住民税更新代行

住民税の更新は毎月5月から6月に発生し、年末調整と同様に対応しなければならない期間が決まっています。さらに地方税である住民税は、市区町村とのやり取りのなかで特別徴収額通知書などの紙媒体を大量に扱う必要があります。デジタル化が遅れている市区町村もあり、さらに時間的なコストがかかってしまいがちです。

そのため、給与・賞与の計算は自社で行っていても、時期が限られた住民税更新だけはアウトソーシングする企業も少なくありません。

給与計算代行・アウトソーシングで、どのレベルまで外部に委託するかはその企業の考え方や、コスト意識によってさまざまです。場合によっては、給与計算代行だけでなく、タイムカードのデータ化や残業時間・有給休暇の計算などの「勤怠管理」、社会保険・労働保険の加入・脱退の手続きまでトータルで外注するケースもあります。

給与計算代行・アウトソーシングの料金相場

企業にとっては事務的な負担が多くなりがちな給与計算ですが、給与計算代行・アウトソーシングを受託している事業者であれば、専門のシステムなどを用いて効率的かつ正確に作業できます。

ここでは、給与計算代行・アウトソーシングの一般的な相場を見てみましょう。

給与計算代行のみの場合

給与計算のみをアウトソーシングする場合、一般的な料金の相場は、従業員50人程度の会社で1ヶ月4万円~6万円程度です。給与計算に対応する代行・アウトソーシング会社は、給与計算に特化した業務体制をもっているため数万円程度で委託できるのです。

年末調整代行、住民税更新代行も外注する場合

給与計算のみをアウトソーシングにするだけでも、企業にとっては人的コストの削減につながります。しかし、負担が大きい年末調整や住民税更新もアウトソーシングに切り替えたいと考える企業も少なくありません。

その場合の一般的な料金の相場は、従業員50人程度の会社で10万円~20万円程度になります。また、勤怠管理や社会保険関係の管理まで依頼した場合には、さらに1ヶ月あたりの料金は高くなります。

給与計算代行・アウトソーシングの種類

給与計算代行・アウトソーシングにはいくつかの種類があります。従業員規模や依頼したい業務範囲などに応じて適切なサービスを選択しましょう。

給与計算代行・アウトソーシングの主な種類について、それぞれ解説します。

社労士・税理士事務所のサービス

給与計算業務の代行・アウトソーシングサービスには、社会保険労務士(社労士)や税理士の事務所が提供しているものがあります。こういった事業者であれば、労働法規や税法に精通しているため、法改正にも迅速かつ正確に対応できます。

社労士・税理士事務所に依頼する場合、毎月の給与計算をはじめ、社会保険や労働保険の手続き、年末調整といった関連業務まで一括して依頼できるケースが多いといえます。人事労務に関する相談や助言も受けられるため、法的なリスクを軽減し、安心して業務を任せられる点が大きなメリットです。

一方で、専門家によるサービスであるため、他の形態のサービスと比較して費用が比較的高くなる傾向があります。

スポット依頼のサービス

給与計算業務の代行・アウトソーシングには、繁忙期のみ、年末調整のみ、あるいは特定の業務のみなど、単発やスポットで依頼できるサービスもあります。

必要な時に必要な分だけ利用できるため、コストを抑えたい企業や、一時的に人手が不足する企業にとって便利な選択肢になります。社内に給与計算の担当者はいるが、業務負荷を一時的に軽減したい場合などに有効な手段です。

ただし、利用する期間・回数によっては、長期的に見ると都度スポットで依頼するよりも包括的なサービスを利用したほうがトータルコストを抑えられるケースもあります。自社の状況や課題に合わせて、他のサービス形態との比較検討を行うことが重要です。

システム一体型のサービス

給与計算業務の代行・アウトソーシングには、給与計算システムを提供する企業がそのシステムを利用して給与計算業務を担うサービスもあります。

この場合、クラウド型の給与計算システムと連携しており、データの入力や確認がオンラインで完結するため、効率的かつスピーディーな処理が期待できます。また、従業員1人あたりに課金される料金体系のサービスも多く、比較的費用を抑えられる特徴があります。

加えて、勤怠管理システムや人事評価システムなど、他のツールとの連携がスムーズに行える場合もあり、人事労務業務全体のDX推進につながります。ただし、提供されるシステムやサービス内容は事業者によって異なるため、自社に合うかどうか、よく検討したうえで導入しましょう。

給与計算代行・アウトソーシングのメリット

給与計算を外部に委託するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なメリットをご紹介します。

トータルコストを削減できる

給与計算にかかるコストは、給与計算担当者にかかるコストとシステムにかかるコストの2つに大きく分けられます。

担当者にかかるコストには、専門知識をもつ人材の人件費や正しく給与計算を行うための教育コストが含まれます。システム・ソフトウェアにかかるコストには、通常の利用費や開発費のほかに、毎年のように起こる法令改正・税制改正に対応する費用も含まれます。

たとえばパッケージ型のソフトウェアで給与計算をおこなっている場合、法令改正のたびにソフトウェアの更新料やライセンスの再購入費がかかるケースがあります。金銭的な対応コスト以外にも、法令改正へ対応するよう業務フローを変更するコストも考慮したいところです。

アウトソーシングによって、これらの人材面とシステム面の両方のコストをおさえることができます。

法令改正に素早く対応できる

前述のように、税制や社会保障関係の法令は毎年のように改正されます。ソフトウェアの更新だけでなく、担当者も常に法改正の情報をキャッチして、社内で正しく対応する必要があります。専門家でない社内の人材だけで、これらの改正の情報をタイムリーに収集し、理解して対応することは容易ではありません。

アウトソーシングによって、法令改正の情報収集などを専門家に任せられるようになると従業員の負担が軽減されます。

コア業務に集中できる

給与計算には専門知識が必要である一方で、その業務は毎月行なわれる定型的な業務がほとんどです。たとえばタイムカードの集計やソフトへの入力、給与計算、明細の発行などは、ルーティーンの作業となります。

ルーティンを回して正しく給与計算が行われることは大切ですが、会社の利益を生み出す業務ではないため、コストダウンを図りたいと考える企業は少なくありません。

定型的な業務をアウトソースすることで、利益を生み出す創造的業務に人的・金銭的資源を集中させられる点は大きなメリットといえるでしょう。

季節的業務の人員確保がスムーズになる

給与計算業務は、季節的な業務が発生し必要人員が大きく増減する業務です。

たとえば年末調整の時期や賞与を出す時期は、業務をスムーズに行うために通常期よりも人員が必要となります。個人情報を扱い、専門的な知識を要する業務であることから、臨時でスタッフの雇用を雇うとしても慎重になる必要があります。

一方で、繁忙期に必要となる最大人員を通常期も確保しておくと、人件費がかさんでしまいます。アウトソーシングをすると、季節的な人員の増減にもスムーズに対応することができます。

勤務時間の管理が徹底される

給与計算業務をアウトソーシングする場合でも、給与計算の元になる最低限の勤怠管理を社内で行う必要があるケースは多くあります。もともと勤怠管理が厳格に行われていない会社の場合、タイムカードの導入や勤怠入力の徹底がなされることになります。

アウトソーシングのための勤怠情報の収集によって、勤務時間や残業時間が見える化され、結果的に社内でも生産性について見直す機会になるでしょう。

給与計算代行・アウトソーシングのデメリット

メリットが大きいように思われる給与計算代行・アウトソーシングのデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

ある程度の業務負担は残る

給与計算だけでなく年末調整や住民税の更新まで外注した場合でも、削減できるのは給与計算に関する業務全体の一部です。

勤怠管理や従業員情報の更新などはアウトソーシングがしづらく、社内に残ってしまうことの多い業務です。また、アウトソーシングする場合、社内業務の期日が早めに設定されるケースが多いため、結果的にアウトソーシングする前より短期間で業務を処理しなければならなくなる可能性もあります。

自社にノウハウが蓄積されない

給与計算を全体的にアウトソーシングする場合、それまで社内で給与計算業務を行っていた人材を別の業務にあてるなど、リソースを再分配することになります。

人員配置転換によって、従来社内で培ったノウハウがうまく残せない可能性があるほか、それ以後のノウハウは社内に蓄積されません。もし、アウトソーシング会社に何かあったような場合でも社内では対応が不可能になり、他のアウトソーシング会社を探す必要があります。

また制度や法令改正などについて気軽に聞く機会がなくなると、社内のコミュニケーションスピードが低下する懸念もあります。

データ漏えいのリスクがある

アウトソーシングの委託先によっては情報の取り扱いへの注意が不十分なケースや、セキュリティ対策が整っていないケースも考えられます。

従業員の大切な個人情報や給料などの情報を社外に渡した際に、アウトソース先で安全に扱われるかどうか確認を行い、リスクを認識しておきましょう。

給与計算代行・アウトソーシングを検討する目安

メリット・デメリットがある給与計算のアウトソーシングですが、どのような会社・状況の場合に行うのがよいのか、ここでは2つの目安をご紹介します。

会社の従業員数が10名以上〜数百名である場合

従業員数10名以下の小規模な会社なら、社内のみで給与計算業務を行ってもある程度対応できる業務量であることが多い状態です。しかし従業員数10名を超えてくると、その業務量は従業員数に比例もしくはそれ以上に増えていきます。

季節的業務に対応することも考え、従業員数を目安にアウトソーシングを検討し始めるケースがみられます。

正確に給与計算を行いたい場合

従業員数が10名以下の場合、経理をはじめ他の役職の人材が兼任で給与計算を行っているケースがよくみられます。

社内の給与計算担当者が社労士資格を持っているケースは少なく、勉強しながら業務を行っているケースがほとんどでしょう。誰が担当する場合でも給与計算が正しく行われないと、労務リスクや税務リスクといったリスクが発生します。

正確性を重要視してリスクを回避する場合に、アウトソーシングする選択が考えられます。

給与計算代行・アウトソーシングを選ぶポイント

実際に代行・アウトソーシングサービスを検討し始めたときは、いくつかの委託先候補を比較することになります。その際にチェックしておきたいポイントをご紹介します。

専門性

給与計算業務には、法律や税制に関する専門知識が必要です。サービスを検討する際には、十分な専門性が担保されているかを確認しましょう。

たとえば、労働基準法や社会保険法、税法などは頻繁に改正されます。サービス提供側が常に最新の法改正に対応し、正確な給与計算を行える体制を整えているかは非常に重要です。過去の法改正への対応実績を確認することをおすすめします。

また、同業種や同規模の企業での実績があるかどうかも、信頼性を判断するうえで参考になります。実績が豊富な事業者は、さまざまなケースに対応できるノウハウを持っている可能性が高いといえるでしょう。

対応スピードと柔軟性

給与計算は毎月発生する定型業務ですが、急な従業員の入社・退社、給与体系の変更など、突発的な事態にも迅速かつ柔軟に対応できるかが重要です。

どの程度のスピードで対応してもらえるか、どのような連携方法になるかなどを、あらかじめ確認することをおすすめします。あわせて、各業務を依頼するにあたって、自社内での作業をどこまで・いつまでに行わなければいけないかというスケジュール感も確認しておくと安心です。

また、担当者とのコミュニケーションが円滑に行えるかどうかも、業務をスムーズに進めるうえで重要です。問い合わせへのレスポンスの速さや、不明点に対する説明のわかりやすさなどを参考に判断するとよいでしょう。これらの要素は、長期的にサービスを利用するためには重要なポイントといえます。

情報管理の安全性

給与情報は個人情報の中でも機密性が比較的高く、情報漏えいは企業にとって大きなリスクとなります。そのため、情報管理の安全性はサービス選定において最重要視すべき項目の一つです。

まずは、どのようなセキュリティ対策を講じているかを確認しましょう。個人情報保護のためのプライバシーマークやISO27001などの認証を取得しているかどうかも判断材料になります。データの暗号化、アクセス制限、定期的なセキュリティ監査など、具体的な対策について確認が必要です。

また、委託された個人情報をどのように管理し、利用するのかを明確にしているか確認しましょう。契約書に情報管理に関する詳細な条項が含まれているか、また、不要になった情報の破棄方法なども確認しておくと安心です。

料金

前述のとおり、料金体系はサービスによって異なります。自社の従業員数や委託したい業務範囲に応じて、費用対効果の高いサービスを選ぶことが大切です。

基本料金に含まれるサービス内容、追加料金が発生するケース、オプションサービスなどは必ず確認しましょう。あとから予期せぬ費用が発生しないように事前の確認が重要です。

単に料金が安いだけでなく、提供されるサービスの質や専門性、対応スピードなどを総合的に判断し、費用に見合った効果が得られるかを検討しましょう。

コスト削減だけでなく、業務効率化や法務リスクの低減といったメリットも考慮に入れるべきです。前述のとおり専門性、対応スピード、情報管理の安全性も考慮して、総合的に判断することをおすすめします。

まとめ

給与計算代行・アウトソーシング・サービスのメリットに注目する利用する企業は多く、導入は増加傾向にあります。しかし、外注するということはそれだけコストが掛かるということなので、削減できるコストと増加してしまうコストを比較して利用するべきです。

場合によっては、給与計算ソフトウェアなどを上手に利用することで、アウトソーシング・サービスを利用するよりもコストの削減ができることもあります。

費用対効果に見合うかを念頭に、アウトソーシング会社の比較はもちろん、ソフトウェアの利用・変更や社内の業務フローの変更といった別の手段とも比較することで、本当に自社に必要な対応は何かを見極めましょう。

よくある質問

給与計算でアウトソーシング・代行できる業務は?

給与計算業務には、給与計算、振込・納税、年末調整、住民税更新などさまざまな業務があり、幅広く代行・アウトソーシングすることが可能です。ただし、一部業務は特定を持つ事業者にしか依頼できません。

詳しくは記事内「給与計算代行・アウトソーシングで委託できる業務」をご覧ください。

給与計算のアウトソーシング・代行にかかる費用は?

給与計算のみをアウトソーシングする場合、従業員50人程度の会社で1ヶ月4万円〜6万円程度、年末調整代行や住民税更新代行も依頼する場合は10万円〜20万円程度とされています。

詳しくは記事内「給与計算代行・アウトソーシングの料金の相場」をご覧ください。

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