人事労務の基礎知識

福利厚生とは?種類や法定福利と法定外福利の違いを徹底解説

生産性人口の減少により、多くの企業では慢性的な人材不足に悩まされています。

そんなときに効果的なのが、福利厚生を充実させることです。福利厚生を上手に活用することで、優秀な人材の確保や企業のイメージアップにつながります。

本記事では、福利厚生の種類やメリット、導入時の注意点について解説します。

目次

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福利厚生とは

福利厚生とは、企業(雇用主)が給与や賞与以外に従業員やその家族に提供するサービス・制度の総称です。

福利厚生には、企業が必ず導入しなければならない「法定福利厚生」と、企業が独自に設ける「法定外福利厚生」の2種類があります。

法定福利厚生

法定福利厚生とは、法律で企業に導入・実施することが義務付けられている制度です。法定福利厚生がない場合は法律違反となるため、企業は必ず導入しなければなりません。主な法定福利厚生は、以下の6つです。

法定福利厚生

  1. 厚生年金保険
  2. 健康保険
  3. 介護保険
  4. 子ども・子育て拠出金
  5. 労災保険
  6. 雇用保険

上記のうち、1~4が社会保険、5と6が労働保険に該当します。

厚生年金保険

厚生年金保険とは、従業員やその家族の老後の生活を支えるための公的年金の一種です。老齢や障害、死亡などを対象として、国民保険に上乗せされて65歳以降に支給されます。

厚生年金保険料は企業と従業員で折半して負担します。

健康保険

健康保険とは、病気やケガなどでかかった医療費の一部が、必要に応じて支払われるものです。厚生年金保険と同様に、保険料は企業と従業員で折半して負担します。

子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金とは、児童手当など子育て支援のために充てられる税金です。企業には納付する義務があり、費用も全額企業側が負担します。これは厚生年金保険と一緒に徴収されます。

厚生年金保険、健康保険、子ども・子育て拠出金の加入条件は以下のとおりです。

厚生年金保険/健康保険/子ども・子育て拠出金の加入条件

  • 企業または従業員5名以上の個人事業所、もしくは上記以外で従業員の過半数の同意がある事業所で常時雇用されている
  • 短時間労働者で、正社員の4分の3以上の労働時間・日数がある
  • 短時間労働者で、正社員の4分の3未満の労働時間・日数勤務しており、以下の条件をすべて満たしている
    1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
    2. 雇用期間が1年以上見込まれること
    3. 賃金の月額が8.8万円以上であること
    4. 学生でないこと
    5. 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属するすべての適用事業所を含む)

なお、2022年10月から、特定適用事業所とそこで働く短時間労働者の加入条件が段階的に変更となります。

介護保険

介護サービスが必要となったときに、その費用の一部が支払われます。40歳以上の従業員は加入が義務付けられています。

65歳以上であれば、すべての疾病で介護状態になった場合に保険金が支給されますが、40~64歳の場合は、特定の疾病で介護状態になった場合でなければ支給されません。

また、支給を受けるには、各市区町村に申請して要介護認定を受ける必要があります。

介護保険の加入条件

  • 40~65歳未満の健保加入者

雇用保険

雇用保険は、失業した場合に失業保険の給付や、子育てのために休業した際の育児休業の給付を受けることができる制度です。給付の条件を満たしていれば、教育訓練の受講費用を補助してくれたり、高年齢者の給与が一定額以下になったりした場合にも支払われます。

雇用保険の加入条件

  • 31日以上の雇用見込みがある
  • 所定労働時間が1週間あたり20時間以上

労災保険

労災保険は、業務上もしくは通勤中の怪我や病気、死亡に対して支払われます。また、怪我や病気の治療で働けない場合の生活費も補償します。1人でも従業員がいる事業所は、正社員、パート・アルバイトにかかわらず、必ず加入しなければなりません。

労災保険の加入条件

  • すべての従業員

法定外福利厚生

法定外福利厚生は、企業が独自に設ける福利厚生制度です。義務ではないため、適用される範囲に法的な基準はありません。パートやアルバイトでも、仕事内容や異動の可能性が正社員と同じであれば、法定外福利厚生を利用できます。

導入は企業の任意ですが、充実した福利厚生は企業のイメージアップにつながり、従業員の働く環境をより良くできるなどの効果があります。

なお、法定外福利厚生を設ける場合には、公平性を保つことが大切です。限られた社員しか利用できない福利厚生は、自社への不満を抱かせる原因になります。

一般的には住宅補助や食事、健康診断の補助のほか、社員旅行などのレクリエーションを実施している企業が多いです。ほかにもオリジナリティのあるユニークな福利厚生を導入している企業も増えてきています。

実際に企業で導入されている独自性の高い、ユニークな福利厚生を紹介します。

親孝行支援制度

この制度は遠方に介護を必要とする親が住んでいる場合、年4回まで帰省の費用を援助するというものです。補助金額は距離で決まり、最大で55,000円/回の支援を受けられます。

ゴーホーム制度

ゴーホーム制度は帰省時の費用を援助されます。費用は14,000円/回で、配偶者が同行する場合は倍の金額が支給されます。

推しメン休暇制度

推しメン休暇制度は、アニメやゲームのキャラクター、タレント、声優など、自身の「推し」の記念日に休暇がとれる制度です。取得できるのは年1回で、お祝いをするための補助として上限5,000円が支給されます。

温泉オフィス

温泉街にオフィスを設置し、温泉に浸かってリフレッシュしてから仕事に没頭することができます。さらにスキー場に設置された「リゾートオフィス」もあり、スキーやスノーボードなどを楽しむことも可能です。

バンジージャンプ支援制度

「刺激的な体験をすることで革新的なアイディアが生まれる」という考えから、普段はできないような体験をしているそうです。同様の理由でパラグライダー体験も支援しています。

福利厚生の対象者

福利厚生の対象となるのは、正社員だけでなくパートやアルバイト・契約社員も含まれます。このように非正規雇用社員も対象となった背景には、2020年4月1日に施行された「改正パートタイム・有期雇用労働法」があります。

この法律は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との不条理な待遇差を禁止し、パートやアルバイト・契約社員などの働く環境の向上を目指すものです。同じ会社で同じ仕事をしているのであれば、正社員と同様に福利厚生を利用することができます

福利厚生導入のメリット

メリット1:従業員のモチベーションが上がる

従業員が働きやすい環境や仕事を続けやすい環境を作ることは、企業にとって重要な役割の1つです。

たとえば、育児や介護をしながら働ける環境や休暇制度を整えると、これまで退職せざるを得なかった従業員が働き続けることができます。ライフスタイルが変化しても安心して働けることは、従業員にとって非常に大きなメリットです。

また、資格取得手当のような自己研鑽に関する福利厚生を導入すると、仕事に活かせるスキルを身に付けやすくなり、従業員のモチベーションがアップします。

メリット2:優秀な人材が集まりやすくなる

働きやすい企業であることのアピールは、採用活動の強化に直結します。

株式会社ビズリーチが2021年1月に行った調査では「仕事を選ぶ際に重視すること」として、25.3%の人が「福利厚生が充実していること」と答えています。

転職の場合は「仕事のやりがい」や「収入」が特に重視されますが、20代・30代の若い人材は、半数程度が福利厚生を意識しています。

就職活動をしている人にとって、必ずしも企業規模や知名度が重要であるとは限りません。優秀な人材を獲得するためにも、福利厚生を充実させて働きやすい環境を整えることは重要です。

メリット3:企業のイメージアップにつながる

従業員を大切にしているかは、そのまま企業イメージに直結します。離職率が高ければ、業務に支障が出るだけでなく、社会的信用を損なうおそれがあります。

従業員やその家族に対する福利厚生が充実していると、良い印象を与え、会社の業績アップにつながるでしょう。

福利厚生導入の注意点

導入コストを考える

福利厚生を導入する際に重要なのは、コストパフォーマンスが良く、従業員のニーズが高いものから導入することです。初期費用が高いものは負担が大きいため、はじめは導入コストを抑えてスタートし、必要であれば制度を拡張するなどの工夫が必要です。

同時に、管理コストも考えなければなりません。主な管理コストは、福利厚生を管理する人員的コストや時間的コスト、施設の整備コストです。効率的に福利厚生を運用するには、自社で管理するよりも外注サービスを利用するのがおすすめです。

特に中小企業の場合は、費用対効果を計算し、維持や管理にかかるコストや利用する従業員数を把握する必要があります。福利厚生を導入すれば従業員が喜ぶかもしれませんが、全社員を満足させようとすると、膨大なコストがかかるので注意しなければなりません。

【関連記事】
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従業員からの需要があるか

福利厚生を導入しても、利用されない状態が続いていたら無駄になってしまいます。定期的な従業員アンケートや利用者の声を聞き、満足度や利用率を調査するようにしましょう。場合によっては、制度廃止やルール変更などを行い、効率の良い運営を目指すことが大切です。

また、制度の導入前に決めたルールや適用範囲も、社会情勢や企業規模の変動に合わせて更新していく必要があります。福利厚生に関する管理体制を社内で構築しておくと、従業員にとって福利厚生がより良いものになるでしょう。

まとめ

福利厚生を導入することで、人材確保や企業イメージといった企業が抱えるさまざまな課題の解決につながります。導入の際にはコストやニーズを考えて、自社に最適なものを選びましょう。福利厚生をうまく活用して、今後の企業運営に役立ててください。

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