人事労務の基礎知識

有給休暇まとめ!何日分がいつ付与される?条件は?わかりやすく解説

有給休暇まとめ!何日分がいつ付与される?条件は?わかりやすく解説

有給休暇は入社6ヶ月後に10日付与されます。その後1年おきに11日、12日…と付与日数が増えていき、20日が上限です。

会社規模・業種に関係なく、条件を満たす労働者は全員に付与されます。

本記事では、有給休暇が付与される条件や日数、タイミングについて分かりやすく解説します。

目次

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有給休暇の付与日数

有給休暇の正式名称は「年次有給休暇」といい、心身のリフレッシュなどを目的として、賃金が保障された休暇です。

有給休暇は、就業条件が所定労働時間が週30時間以上・週5日以上であれば、以下の基本日数が付与されます


有給休暇の付与日数(基本)
勤務年数
(入社日換算)
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年〜
付与日数10日11日12日14日16日18日20日
出典:厚生労働省「【リーフレットシリーズ労基法39条】」

入社6ヶ月後に初回の有給休暇が付与されることが基本ですが、会社によっては、労働者の不利益にならない範囲で付与日が前倒しされる場合もあります。

有給休暇の付与対象となる労働者は雇用形態に制限はなく、要件を満たすアルバイト・パート・契約社員にも適用されます。

派遣社員の場合、雇用元である派遣会社から有給休暇が付与されます。

労働者が有給休暇を取得した日には賃金が発生します。基本的には1日単位の取得となりますが、会社の就業規則によっては、1時間単位や半日での取得も可能です。

パターン①所定労働時間及び所定労働日数が基準を満たす労働者の場合

フルタイムの労働者や、所定労働時間が30時間以上かつ週5日以上の勤務の場合は、上記の表に従って付与する日数を決定します。

「出勤日数÷所定労働日数」が8割以上(0.8以上)を満たしていれば、有給の付与対象です。

初回付与日に10日付与される有給を、半年ごとに分割して1年かけて付与することなどは、通常は認められていません。
なお、就業規則に明記している場合でも、労働基準法と比較して労働者の不利益になるような変更は労働基準法違反となるため注意しましょう。

また、入社日にかかわらず有給休暇を労働者に一斉付与する場合、短縮された算定期間はすべて出勤しているとみなして有給休暇付与日数の算出を行います。

パターン②所定労働時間及び所定労働日数が基準以下の場合

アルバイトやパートなど、所定労働時間が30時間未満かつ週の所定労働日数が4日以下の短時間勤務の労働者の有給は、所定労働日数と勤務年数に応じた日数を付与します。

<短時間従業員の有給休暇の付与日数>

所定労働日数勤務年数と付与日数
1週間1年間0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年
以上
4日169〜216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121〜168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73〜120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48〜72日1日2日2日2日3日3日3日
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」

※所定労働日数が週によって決まっている場合は「週所定労働日数」、それ以外の場合は「1年間の所定労働日数」で判断します。
※所定労働日数は付与時点の週所定労働日数で計算します。


フルタイムの労働者と同様に 出勤日数÷所定労働日数で計算し、8割以上(0.8以上)であれば有給を付与します。

週の所定労働日数が決まっていない場合は、直近の6ヶ月の労働日数の2倍、または前年の労働日数を基準に所定労働日数を計算します。

アルバイト・パートの有給休暇については、別記事「アルバイト・パートの有給休暇の付与日数や賃金の計算方法を解説」で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

有給休暇が付与される条件

労働基準法で定められている有給休暇付与の要件は以下の2点です。この要件を満たしている全ての労働者は有給休暇が付与されます。

有給休暇が付与される条件

  • 半年以上継続して雇われている
  • 全労働日の8割以上出勤している

出典:厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト(事業主の方へ)」

短期間の契約で働いている人でも、契約が更新された結果、半年以上継続して勤務している場合は対象となります。また、定年退職し嘱託として再雇用された場合も継続して勤務しているとみなして有給休暇が付与されます。

出勤率の計算方法

有給休暇の付与要件のひとつである「出勤率」は出勤日を全労働日で割って算出します。計算の結果、0.8(8割)以上の場合は有給休暇の付与対象です。

全労働日・出勤日としてカウントする項目は以下のとおりです。

  1. 有給休暇
  2. 産前産後休業・育児休業
  3. 業務起因による負傷や疾病で療養する際の休業
  4. 介護休業
  5. 遅刻・早退した日

一方で、全労働日・出勤日としてカウントしない項目は以下のとおりです。

  1. 会社(使用者)都合による休業
  2. 就業規則で休日となっている日に労働した日
  3. ストライキやその他の正当な争議行為により労働していない日
  4. 休職制度を利用した休職期間

また、以下の項目は労使間の合意により、全労働日・出勤日としてカウントするかが決定されます。

  1. 生理休暇
  2. 慶弔休暇
  3. 通勤災害による負傷などで療養する際の休業

有給休暇は賃金の発生する休暇のため、出勤日数に含まれます。そのほか、産前産後休暇・育児休暇・介護休暇・労災による休暇も出勤日数としてカウントした上で有給休暇付与日数を計算します。

欠勤と出勤日数に含まれる休暇を混同し、誤った計算をすることがないよう注意が必要です。


出典:厚生労働省 愛媛労働局「年次有給休暇(第39条)」

有給休暇が付与されるタイミング

有給休暇が付与される日のことを「基準日」といいます。労働基準法第39条で入社日から継続して勤務し6ヶ月を経過した日、およびその6ヶ月を経過した日を基準とした日から1年ごとと定められています。

この法律はあくまでも最低限順守しなければならない日程を示しており、この法律よりも労働者に有利な条件であれば、有給休暇が付与される日を会社ごとに定めることができます。


出典:e-GOV法令検索「労働基準法」

有給休暇の初回付与は雇入れ日の6ヶ月後

上述したように、有給休暇が最初に付与されるのは入社日から6ヵ月が経過した日です。その初回付与が行われた日を基準日とし、その日から1年経過するごとに有給休暇が付与されます。

なお、労働者に不利にならなければ法律上問題ないため、基準日を法律で定められた日より早い日に定めている会社もあり、その場合前倒しで付与した日が基準日となります。

有給休暇を前倒しで付与される場合

年次有給休暇の初回付与日は、労働基準法により入社日から半年後と決められていますが、それより早く有給休暇を付与することも可能です。

勤務先によっては、入社日に初回の有給休暇を付与している場合もあり、この場合は有給休暇を前倒しで取得できていることになります。

有給休暇の基準日を全員統一することも可能

従業員によって入社日は異なるため、有給休暇の基準日(有給の付与日)もそれぞれ異なります。しかし、これでは管理コストがかかるため、基準日を揃えることができます。これを「有給休暇の斉一的取扱い」と呼びます。

たとえば、初回の有給休暇は入社日に付与し、2回目以降は基準日をほかの従業員と同じく4月1日にするという運用も可能です。ただし、従業員の不利益にならないという条件をクリアしなければならないので、注意が必要です。


出典:東京労働局「労働基準法 有給休暇編」

有給休暇の使用期限と繰り越し

年内に使わなかった有給休暇は翌年に繰り越すことができます。しかし、ずっと繰り越せるわけではないため注意が必要です。

有給休暇の使用期限は2年

まず、有給休暇には2年の使用期限があります。

たとえば、半年の継続勤務で初回付与された有給休暇は1年後の次回付与の際は繰り越しが可能ですが、その次の継続勤務2年半時点で未消化分の初回付与された有給休暇が消滅します。

有給休暇の繰越上限と最大で保有可能な日数

年次有給休暇の付与日数の上限は6年6ヵ月以降は、最大20日間のため、繰り越せる日数の上限も20日間ですが、会社はこの日数のうち5日間は労働者に有給休暇を取得させる義務があるため、翌年に繰り越すことができるのは実質最大で15日です。

年次有給休暇の消滅時効は2年なので、新たに発生する20日と合算して最大で保有できる日数は35日となります。

有給休暇取得の義務化

労働基準法の改正により、2019年4月から有給休暇が10日以上付与された労働者に対して、付与日から1年以内に5日の有給休暇を取得させることが企業側に義務化されました(年次有給休暇の時季指定義務)

たとえば、就業規則により入社日に有給を10日付与した場合、入社日から1年以内に5日の有給休暇を取得させる必要があります。この5日には時間単位の有給休暇は含まれません。

フルタイムの労働者などの場合は勤続半年の初回付与の時点で10日の有給休暇を付与する必要があるため、初回付与時から取得義務の対象となります。一方、パートタイム労働者など短時間従業員の場合は、勤務年数によって途中から取得義務の対象となる場合があるので管理には注意が必要です。

取得義務のある年間5日間の有給休暇取得にあたる時季指定は、「(使用者による)できる限り労働者の希望に沿った時季指定」、「従業員自らの請求・取得」、「計画年休」の方法があります。労働者が取得した有給休暇の合計が5日に達した時点で、会社側(使用者)からの時季指定は不要です。

従業員が自ら請求・取得した有給休暇の日数のほか、労使間の取り決めのもとで計画的に取得日を定めた有給休暇の日数(計画年休)については、その日数分を時季指定義務が課される年5日から控除します。


出典:厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」

労働者が有給休暇を取得できなかった場合の罰則

労働者が年間5日の有給休暇取得ができない場合には会社側は労働基準法の違反となり、有給休暇取得ができなかった労働者1人につき、30万円以下の罰金が科せられます。

労働者が有給休暇の取得申請を希望していない場合でも使用者が時季を指定し、労働者と相談の上、必ず5日取得させるよう徹底した管理を行わなければなりません。

有給休暇管理簿の作成・保存の義務

有給休暇の取得義務化にあたり、使用者は「年次有給休暇管理簿」の作成と期間の満了後から3年の保存が義務付けられました。

これにより、会社側は労働者ごとに、基準日や時季、取得日数などを記録し、義務化となった5日の有給休暇の取得漏れが出ないよう、労働者一人ひとりの有給休暇の取得状況を把握し、管理しなければなりません。

有給休暇管理簿の作成・保存は会社の義務であり、年次有給休暇管理簿の保存義務期間は有給休暇を与えた期間の満了から3年です。保存に関する罰則はありませんが、正しい有給休暇管理のためにも、年次有給休暇管理簿の運用を徹底しましょう。

有給休暇の買い上げは原則不可

有給休暇の買い上げは原則認められていません。冒頭で解説したとおり、有給休暇は労働者の心身のリフレッシュおよびゆとりのある生活を確保することを目的としているためです。

ただし、以下のケースに該当する場合は有給休暇の買い上げが認められることがあります。

  • 法律で定められた有給休暇の日数以上に付与された有給休暇
  • 退職時に残っている有給休暇
  • 時効になっている有給休暇

出典:東京労働局「年次有給休暇関係」
出典:鹿児島県労働局「年次有給休暇の買上げをしても法律違反にはなりませんか。」

まとめ

有給休暇は労働者がゆとりをもって働くことができる制度です。この日数は入社から6ヶ月を過ぎた日に10日、その後20日を上限に毎年付与される日数が増えていきます。

毎年最低5日の有給休暇の取得義務はありますが、使いきれなかった有給休暇は付与された日から2年間の事項があるため、翌年に繰り越すことも可能です。

有給休暇は労働者の権利であるため、自身に付与されている日数が正しいかを確認しながら有効活用しましょう。

よくある質問

有給休暇とは?

有給休暇は、賃金が支払われる休暇のことをいいます。労働者の心身のリフレッシュやゆとりのある生活を確保することを目的とした制度で、要件に当たるすべての労働者への付与が法律で定められています。

有給休暇が付与される条件は?

有給休暇が付与される条件は「6ヶ月以上継続的に勤務している」「全労働日の8割以上出勤した全ての労働者」です。

詳しくは記事内「有給休暇が付与される条件」で解説しています。

アルバイトやパートタイムも有給休暇は付与される?

有給休暇に雇用形態の制限はないため、アルバイトやパートタイムであっても有給休暇は付与されます。ただし付与される有給休暇の日数やその計算方法は就業規則などによって異なります。

詳しくは「所定労働時間及び所定労働日数が基準以下の場合」および「アルバイト・パートの有給休暇の付与日数や賃金の計算方法を解説」の記事で解説しています。

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