人事労務の基礎知識

年末調整の計算の流れ【計算例つき】

最終更新日:2021/11/11

年末調整の計算の流れ

サラリーマン(給与所得者)は、毎月の給与から源泉徴収という形で所得税が差し引かれていますが、源泉徴収は概算で給与から差し引かれているため、正確な所得税の計算は年末にやり直す必要があります。

サラリーマンは、結婚しているか独身か、生命保険に加入しているか、住宅ローンを組んでいるかなど、その人の状況に応じてさまざまな控除があります。年末には、各人ごとに異なる控除額を正確に把握した上で、納税するための再計算が会社側で必要となります。

本記事では、年末調整の計算の流れについて、計算例を含めて解説します。

目次

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年末調整とは

年末調整とは、毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税の過不足を精算する手続きです。

毎月の給与から差し引かれる所得税の額は、国税庁の「源泉徴収税額表」によって決められており、支払者は、その年の最後の給与支払時に、その年の各給与支払時に源泉徴収された所得税の合計額と、その年に支払われた給与の総額に対して納めるべき税額(年税額)とを比較し、過不足額を精算します。これを年末調整といいます。

年末調整の概要・目的について詳しく知りたい方は、『年末調整とは?概要・目的・手順から必要書類までを解説』をご覧ください。

年末調整の計算の流れ

年末調整で会社が最初に確認するのは、1年間の給与の合計額です。毎月の給与だけでなく、ボーナス(賞与)も加えた合計額を把握することが不可欠です。この合計金額から、まず給与所得控除を差し引きます。

自営業者と違い、サラリーマンは自分で経費を計算することができないので、サラリーマンにとっての必要経費としての考え方です。

さらに、ここから健康保険や年金などの社会保険料が差し引かれます。所得税や社会保険料の概算は、すでに源泉徴収により給与から差し引かれていますが、正確な計算をするために再度計算します。

また、従業員が提出する「給与所得者のための扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」とその添付書類を確認します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入

令和3年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

画像引用元:国税庁「令和3年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、扶養している親族について申告をし、その扶養状況に応じて税金を軽減するための書類です。配偶者控除や扶養控除などを記載します。配偶者の給与が103万円以下の方が対象となります。

また、項目にある「控除対象扶養親族」は、70歳以上の扶養親族、高校生や大学生など特別扶養親族を記載します。さらに、16歳未満の扶養親族、障害者、寡婦も控除の対象となります。

配偶者特別控除は、配偶者の給与が103万円を超え141万円未満の場合に適用され、控除額は段階的に減少していきます。

給与所得者の保険料控除申告書の記入

令和3年分 給与所得者の保険料控除申告書

画像引用元:国税庁「令和3年分 給与所得者の保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書には年末調整で控除する保険料を記入します。控除対象の保険料には、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などがあります。

また、令和3年度税制改正に伴い、給与所得者の保険料控除申告書への押印が不要になりました。

※令和2年の改正により、「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」の兼用様式になりました。

参考:
国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告
国税庁「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告

申告書の内容を控除した後の計算

すべての控除を差し引いた残りの所得に税率をかけて所得税額を算出します。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けて2年目以降の方は、ここで差し引きます。最後に、残った金額に102.1%をかけて、最終的な所得税及び復興特別所得税を算出します。

年末調整の計算例

年末調整による過不足精算の計算例について解説していきます。

計算例1:既婚男性で妻(収入なし)、16歳の子供がいる場合

区分 金額 税額
給料・手当等 4,380,000円 62,390円
賞与等 1,490,000円 78,205円
合計 5,870,000円 140,595円

給与と賞与に分かれていますが、年末調整では合計欄で確認していきます。年間給与の金額5,870,000円から140,595円の税額が源泉徴収されています。ここに扶養控除や生命保険控除などを差し引いて再計算していきます。

まず、給与と賞与の合計5,870,000円を、国税庁「給与所得控除後の給与等の金額の表」にて求めると4,254,400円となります。 この金額からさまざまな控除額を差し引いていきます。

年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表

画像引用元:国税庁「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表

給与所得控除後の給与等の金額 4,254,400円
社会保険料控除額 829,975円
生命保険料控除額 71,550円
地震保険料控除額 45,000円
配偶者・扶養・基礎控除額 1,240,000円
課税所得金額 2,067,000円
(1,000円未満切り捨て)

社会保険料は全額控除対象されますが、生命保険料や地震保険料の支払った金額に応じて控除額が決まります。

また、配偶者控除が38万円、16歳以上19歳未満の扶養控除38万円、基礎控除が48万円の合計で124万円となります。全ての控除を差し引いた2,067,000円を元に税額を計算します。

  1. 2,067,000円×10%(税率)-97,500円(控除額)=109,200円(算出所得税額)
  2. 109,200円×102.1%=111,400円 ※100円未満切り捨て

所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から
1,949,000円まで
5% 0円
1,950,000円から
3,299,000円まで
10% 97,500円
3,300,000円から
6,949,000円まで
20% 427,500円
6,950,000円から
8,999,000円まで
23% 636,000円
9,000,000円から
17,999,000円まで
33% 1,536,000円
18,000,000円から
39,999,000円まで
40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

参考・引用元:国税庁「所得税の税率

111,400円が最終的な納付すべき所得税と復興特別所得税となり、すでに源泉徴収にて支払い済みの140,595円と比べると29,195円の超過となります。この超過額29,195円は本人に還付されることになり、12月または翌年1月の給与と一緒に会社から振り込まれます。

計算例2:39歳の独身男性でひとり親の場合

例えば、18歳の子供が1人いる39歳の独身男性で、子供はアルバイトなどの収入がなく、一年間の給与総額が4,200,000円の場合、給与所得控除後の給与等の金額は2,920,000円、源泉徴収が年間112,200円されていたとします。

ここに、扶養控除やひとり親控除、生命保険料控除などを差し引いて再計算していきます。

給与所得控除後の給与等の金額 2,920,000円
社会保険料控除額 469,956円
生命保険料控除額 120,000円(最高12万円)
扶養控除 380,000円(一般の控除対象扶養親族)
ひとり親控除 350,000円
基礎控除 480,000円
課税所得金額 1,120,000円
(1,000円未満切り捨て)

課税所得金額が1,950,000円以下であるため所得税の税率は5%となります。課税所得金額の1,799,000円に、所得税の税率5%を掛けて算出所得税額を計算します。

  1. 1,120,000円×5%(税率)=56,000円(算出所得税額)
  2. 56,000円×102.1%(復興特別所得税)=57,100円 ※100円未満切り捨て

57,100円が最終的な納付すべき所得税と復興特別所得税となります。源泉徴収で既に支払い済みの112,200円と比べると55,100円の超過となり、この超過額55,100円が還付されることになります。

計算例3:既婚男性で妻(収入なし)が交通事故の後遺症により障害がある場合

例えば、既婚男性で妻が交通事故の後遺症により障害がある場合、一年間の給与総額が5,400,000円の場合、給与所得控除後の給与等の金額は3,880,000円、源泉徴収が年間258,720円されていたとします。

ここに、配偶者控除、障害者控除、生命保険料控除などを差し引いて再計算していきます。

給与所得控除後の給与等の金額 3,880,000円
社会保険料控除額 588,036円
生命保険料控除額 120,000円(最高12万円)
配偶者控除 380,000円
障害者控除 270,000円(障害者)
基礎控除 480,000円
課税所得金額 2,041,000円
(1,000円未満切り捨て)

課税所得金額が1,950,000円 から 3,299,000円まであるため所得税の税率は10%となります。課税所得金額の2,041,000円に、所得税の税率10%を掛け、控除額を引いて算出所得税額を計算します。

  1. 2,041,000円×10%(税率)-97,500円(控除額)=106,600円(算出所得税額)
  2. 106,600円×102.1%(復興特別所得税)=108,800円 ※100円未満切り捨て

108,800円が最終的な納付すべき所得税と復興特別所得税となります。源泉徴収で既に支払い済みの258,720円と比べると149,920円の超過となり、この超過額149,920円が還付されることになります。

年末調整の計算で注意すべきポイント

ほとんどの場合、年末調整はさまざまな控除申請するため、還付されます。しかし、稀に源泉徴収された所得税が不足する場合があります。

理由はいくつかありますが、多いのは扶養控除対象者の減少による不足額が出るケースです。その年度末においての扶養控除が適用されるため、結婚、離婚、子供の独立などで扶養親族の数に変更があった場合は、年末調整の際に忘れずに記載しましょう。

また、毎年10月頃に送られてくる生命保険や損害保険などの控除書類は、年末調整の際に必要となるため、保管しておく必要があります。

住宅を購入するために住宅ローンを組んだ場合、初年度のみ確定申告が必要となりますが、2年目以降は年末調整で「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告」を記入して提出すれば問題ありません。

まとめ

年末調整では、毎月の源泉徴収されている所得税から、扶養控除や住宅ローン控除など各従業員の事情を反映させて、正確な納税額を算出します。

自営業者は確定申告をして納税することになりますが、サラリーマンなど給与所得者も同様に、会社側が年末調整で正確な納税金額を計算します。必要な書類に間違いがないか、必ず確認して手続きしましょう。

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