給与計算の基礎知識

給与計算とは?概要や準備・計算方法

事業を始めて、従業員を雇ったら行わなければならないのが、給与計算です。
今回は、給与計算とは何かから始まり、業務のリスク、給与計算のための準備、計算方法についてお伝えします。(法人の給与計算を前提にお話していきます。)

給与計算とは

文字通り、社員や契約社員などの毎月の給料を計算する業務です。毎月同じ額の支給にみえるかもしれませんが、給与を構成する項目ごとに毎月変動があったり、項目ごとの計算方法が複雑であったりするため、その計算は意外と大変です。

まずは、給与を構成する項目について概要を把握しましょう。給与は、下記のように「支給額」から「控除項目」を差し引くことで計算できます。

差し引き後支給額 = [支給額: 基本給と残業代] - [控除項目: 社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税]

支給額は、基本給や残業代、通勤手当などの各種手当てが含まれ、従業員へ払う給与のおおもとです。控除項目には、社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税といった、保険料や税金が含まれ、この金額を税務署や年金事務所などに納めます。

つまり給与計算では、社員への正しい給与額を計算すると同時に、国に納める正しい税額・保険料額を計算することになるのです。

給与計算にまつわるリスク

給与計算は、その性質から、正確に行われない場合いくつかのリスクをはらんでいます。給与計算担当者なら必ずおさえておきたい代表的なリスクを3つご紹介します。

労務リスク

たとえば、残業代の計算のとき。勤怠に記録漏れがあったり、残業代に計算ミスがあると、残業代の未払いにつながります。これは、労務リスクとなる可能性があります。

情報漏えいリスク

給与計算の際に必要となる従業員や扶養家族の個人情報は、適正な管理を行い、社内外ともに情報漏えいを防止する必要があります。情報漏えいをした場合、個人情報保護法違反から刑事罰や従業員からの訴訟リスクが発生します。

税務リスク

所得税に計算ミスがあった場合や払い漏れがあった場合は、税務リスクを引き起こしているといえます。

給与計算の準備

給与計算する前に、前提として準備しておくものを4つご紹介します。

就業規則・給与規定の作成

就業規則とは、従業員が働く上でのルールや労働条件を定めたものです。就業規則は、従業員 10 人以上の企業は必ず労基署まで届け出ることが法律で義務づけられています。従業員 10 人未満の場合は、作成や届け出の義務はありませんが、前もって作成することで従業員と会社でスムーズにやりとりができるでしょう。

給与は、就業規則の中で定められるのですが、給与に関する部分のみ、「給与規定」として別途定められているケースが多く見られます。この給与規定にもとづいて、毎月給与計算を行なうことになります。

就業規則・給与規定に含めるべき事項には、必ず記載しなければいけない項目(絶対的必要記載事項)と、定められていれば記載する必要がある項目(相対的必要記載事項)、その他の項目(任意的事項)の 3 種類があります。
必ず記載しなければならない項目は、次の通りです。(参考:厚生労働省

  • 始業・終業時刻や休憩時間、休日など労働時間に関する情報
  • 給与の決定、計算・支払方法、締め日や支払日、昇給などに関する情報
  • 退職に関する情報
このうち、昇給に関する情報以外は、すべて書面で明示することが必要です。さらに詳しい就業規定についての情報は、厚生労働省のサイトでダウンロード可能な「モデル就業規則」 をご参照ください。

従業員情報の収集・更新

給与計算には、従業員の情報が必要となります。勤続年数や職種、役職などによって基本給や手当が変わるためです。また家族の増減があれば家族手当や所得の控除額が変わり、勤務地の変更・転居があれば通勤手当が変わります。給与に関わる従業員情報については、毎月の給与計算前に収集・更新しておきましょう。

保険の加入

保険料は給与計算にかかせない項目で、各保険は法律で定められた条件に当てはまる場合、加入する義務があります。これらの正社員・パートタイムなどの雇用形態にかかわらず、条件に当てはまれば加入することになりますので注意が必要です。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

法人では、下記のいずれかに当てはまる従業員は健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。

  • 1週間の労働時間が30時間以上
  • 従業員501人以上の企業において、1週間の労働時間が20時間以上(2016年10月から適用。参考:厚生労働省

社会保険(介護保険)

原則として、40歳から64歳までのすべての従業員が加入対象となります。健康保険料に上乗せする形で介護保険料を納付します。

労働保険(雇用保険)

下記2つの項目を満たし、かつ65歳未満の従業員は雇用保険の加入対象となります。

  • 31日以上続けて雇用される予定
  • 1週間の労働時間が20時間以上の予定
なお、2017年1月1日から、65歳以上も雇用保険の適用対象となります。(参考:厚生労働省

労働保険(労災保険)

すべての従業員が加入対象となりますが、保険料はすべて会社負担となります。また年1回の納付となりますので、毎月の給与計算ではそこまで意識しなくていいでしょう。

勤怠管理

給与計算には、各従業員の労働時間の計算が必要となります。時間外労働に対する割増賃金の計算や、パートタイムやアルバイトで働く従業員の給与を計算するためです。この計算のためのデータ集めとして、出勤簿をつけたりタイムカードで出退勤を記録することが必要です。

給与計算の方法

給与計算の準備が済んだら、いよいよ計算をしていきます。 まずは冒頭でお話した給与を構成する項目について、より詳しくお話していきます。

差し引き後支給額 = [支給額: 基本給と残業代] - [控除項目: 社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税]

給与の支給額の計算

給与の支給額には、基本給や職務手当のような固定的なものと、時間外・休日・深夜労働の割増賃金などの変動的なものがあります。

給与支給額のうち固定的なものについては、雇用契約書もしくは就業規則の中で定められているため、計算は必要ありません。会社や法律で定められた金額を元に計算を進めましょう。

一方で変動的な支給額については、毎月の勤務状況や残業時間にもとづいて計算する必要があります。

変動的な給与支給額(残業代・深夜手当・休日手当)の計算

残業代(残業手当)や深夜手当、休日手当といった給与については、下記のように計算します。

時間外労働の時間数 × 1時間あたりの賃金 × 割増率

1時間あたりの賃金は次のように計算します。

月給 ÷ 1ヶ月あたりの平均所定労働時間

月給は、基本給のほか役職手当や資格手当なども含める必要があります。(ただし家族手当や通勤手当、住宅手当などの手当は、ここでの月給として含めなくてもよいとされています)

1ヶ月あたりの平均所定労働時間は、次のように計算します。

{ (365日 - 年間所定休日数) × 1日の所定労働時間数 } ÷ 12(ヶ月)

割増率については下記にもとづいて計算します。

種類割増対象となる時間割増率
時間外法定労働である1日8時間、週40時間を超えた労働時間25%以上
深夜22時から5時までの間の労働時間25%以上
休日(法定)法定休日(週1日)における労働時間35%以上
休日(法定外)会社で定めた休日(所定)における労働時間0%以上

なお、割増率は足し合わせになることに注意が必要です。

たとえば時間外労働かつ深夜労働の場合、割増率は 50%以上となります。また、時間外・深夜・休日の労働時間については、日々の計算では1分単位から計算に含める必要があり、15分未満は切り捨て等とするのは違法になります。(例外的に、1ヶ月の労働時間合計において30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げとすることは認められています)

計算できた変動的な給与支給額(残業代・深夜手当・休日手当)を、固定的な支給額に足して、給与支給額のベースを計算しましょう。

給与の控除額の計算

支給額の計算の他に、控除の計算も必要です。会社と従業員双方が負担する保険料の従業員負担分と従業員のみが負担する税金を計算していきます。

雇用保険料の計算

雇用保険は、会社と従業員双方で負担します。給与に反映させる従業員負担分の雇用保険料は下記のように計算します。

賃金 × 4 / 1000(一般の事業の場合。2016年11月時点)

賃金額には、基本給のほか、残業手当(非課税分含む)や家族手当、住宅手当なども含みます。また保険料率は事業の種類によって異なりますので、詳細は厚生労働省のWebサイトにてご確認ください。

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の計算

健康保険料・厚生年金保険料は、会社と従業員で折半します。従業員負担分の保険料の計算は、下記のように行います。

標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

標準報酬月額とは、おおよその賃金額のことで、健康保険なら賃金額を50の等級にわけたもの、厚生年金保険なら31の等級に賃金をわけたものになります。なお等級に分ける前の賃金額には、基本給のほかに残業手当、家族手当、住宅手当、役職手当、通勤手当などが含まれます。

介護保険料の計算

介護保険料は、会社と従業員で折半します。40歳以上65歳未満の従業員負担分の保険料の計算は、下記のように行います。

標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

介護保険料の計算は、加入している医療保険によって料率が異なります。詳細は各健康保険組合もしくは国民健康保険のWebサイトでご確認ください。

所得税の計算

従業員の所得にかかる税金が所得税となります。所得税は、従業員が税務署に納付するのではなく、会社が給与から差し引いて徴収(源泉徴収)し、従業員の代わりに税務署に納付します。1年間の正確な所得税額は年末調整で計算し調整することになるので、毎月の給与計算と納付では、おおよその額を計算・納付することとなります。

所得税の計算は下記のように行います。

課税所得 × 税率

課税給与所得は、次のような式で計算します。

課税給与所得 = 支給額(基本給・残業代・課税対象の手当)- (社会保険料や労働保険料)

支給額を計算する際には、手当から非課税の手当額を抜く必要があります。非課税の手当額としては、通勤手当(一定額以下)や転勤・出張のための必要と認められたもの、宿直や日直手当(一定額以下)があります。

税率については、上記で算出した社会保険料控除後の金額に応じて、税額を求めます。税額は、国税庁が一覧表を出していますのでご参照ください。

住民税の計算

従業員が市区町村に納付する税金が住民税となります。住民税は、所得税と同様、会社が会社が給与から差し引いて徴収し、従業員の代わりに市区町村に納付します。

住民税は、該当する従業員の前年の給与をベースに計算され、1年間の住民税額を12回分に分けた額を毎月徴収して支払うことになります。住民税額は、基本的に毎月の給与計算で計算をする必要がありません。毎年5月に市区町村からまとめて届く6月〜5月の12ヶ月分の納付書に、毎月納付すべき住民税額が記載されているからです。 よって、納付書に記載された額を、毎月従業員の給与から差し引くことになります。

まとめ

上記の流れから計算した保険料や税金を支給額から差し引けば、毎月の給与計算が完了します。計算ができたら、給与明細の作成と給与振込、保険料や税金の納付を行っていきます。

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