人事労務の基礎知識

賞与(ボーナス)の仕組みとは?決め方や計算方法を解説

賞与(ボーナス)とは?保険料と所得税の計算方法についても解説

賞与(ボーナス)とは、会社の規定や業績に応じて支給される、毎月の給与のように金額が固定でない賃金のことです。

賞与の有無や支給要件に関する法律上の規定はなく、会社独自で支給時期や金額、支払い回数などを決定できます。

本記事では、賞与の仕組みや種類、会社が行う手続きと、賞与に関する保険料や所得税などの計算方法について解説します。

目次

賞与の保険料の計算がラクに

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賞与(ボーナス)とは?

賞与(ボーナス)とは、毎月定期的に支給される給与とは別に年3回まで支給される金額が固定でない賃金のことです。賞与の支給要件や時期、金額など、原則として会社が自由に定めてよいとされています。

法律上、会社が従業員に賞与を支払う義務はありません。ただし、会社の就業条件や従業員との労働契約で賞与の有無や条件を明記している場合は、必ず規定に沿って賞与を支払わなければなりません。

「ボーナス」「夏期手当」「期末手当」と呼び方はさまざまですが、健康保険法・厚生年金保険法上は「年3回まで支給されるもの」が賞与に該当します。

健康保険法上の賞与の定義は以下のように記されています。

「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。


出典:e-Gov法令検索「健康保険法第三条第6項」

賞与(ボーナス)にかかる控除の計算方法

賞与(ボーナス)から控除されるのは、雇用保険や社会保険などの保険料と所得税です。それぞれの計算方法についてモデルケースを用いて解説します。

【事業所所在地が東京都にあるA社で働くBさん(45歳、扶養親族1人)の場合】


  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)加入
  • Bさんの賞与は50万円
  • 前月の給与は30万円

社会保険料の詳しい計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】
社会保険料の計算方法を徹底解説! 給与計算時の基礎知識・注意点

社会保険料の計算

社会保険料とは健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の総称です。

賞与においても給与と同様、金額に応じた保険料がかかります。労災保険については従業員負担がないため、労災保険以外の以下の4つの保険料について紹介します。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
出典:国税庁「No.1130 社会保険料控除」

健康保険料

健康保険料は、賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額(標準賞与額)に健康保険料率を掛けて算出します。

健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2(*)

(*)健康保険料は、事業主と被保険者が半額ずつ負担(労使折半)

健康保険料率および保険料額は、都道府県ごとに異なります。健康保険料率は会社や事業所が加入している協会けんぽや各健康保険組合のホームページ上の保険料額表などで確認ができます。

Bさんの場合、賞与額は50万円であり1,000円未満の端数が無いため、標準賞与額はそのまま50万円になります。そこに会社で加入している協会けんぽ(東京都)の健康保険料率(10.00%)を乗じ、2で割った金額がBさんの負担する健康保険料となります。

【Bさんの健康保険料】

500,000円 × 10.00% ÷ 2 = 25,000円

出典:全国健康保険協会「令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)」

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、健康保険料と同様、賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額(標準賞与額)に厚生年金保険料率を掛けます。2017年9月(10月納付分)以降、厚生年金保険料率は18.300%で固定となりました。

なお、勤務先が厚生年金基金に加入している場合には、基金ごとに定められている免除保険料率(2.4%〜5.0%)が控除されます。

厚生年金保険料の計算式

厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2(*)

(*)厚生年金保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担(労使折半)

【Bさんの厚生年金保険料】

500,000円 × 18.3% ÷ 2 = 45,750円

出典:日本年金機構「一般・坑内員・船員の被保険者の方(令和5年度版)」

介護保険料

介護保険料は、40〜64歳までの従業員を対象に給与や賞与から控除されます。賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額(標準賞与額)に介護保険料率を掛けます。

介護保険料の計算式

介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2(*)

(*)介護保険料は、原則として、事業主と被保険者が半分ずつ負担(労使折半)

介護保険料率は全国一律ですが、定期的に保険料率が変更されるため、定期的に健康保険協会のホームページから保険料率を確認しましょう。2024年1月時点の介護保険料率は1.82%です。

【Bさんの介護保険料】

500,000円 × 1.64% ÷ 2 = 4,550円

出典:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」

雇用保険料の計算

雇用保険料は、賞与額の1,000円未満の端数は切り捨てず全額に保険料率を掛けて計算します。1円未満の端数が発生する場合、50銭以下は切り捨て、50銭1厘以上は切り上げます。雇用保険料率は毎年見直しが入るため、賞与支給時に雇用保険料率を確認しましょう。

雇用保険料の計算式

雇用保険料 = 賞与額 × 雇用保険料率

【2023年4月1日~2024年3月31日の雇用保険料率】


令和5年度雇用保険料率
出典:厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」

Bさんの賞与額は50万円、2024年1月時点の雇用保険料の労働者負担は0.6%のため、50万円に0.6%を乗じた金額がBさんの負担する雇用保険料となります。

【Bさんの雇用保険料】

500,000円 × 0.6% = 3,000円

源泉徴収税(所得税)の計算

賞与から源泉徴収される所得税は、賞与の金額から社会保険料を差し引いた金額に、所得税率を掛けて計算します。所得税率の確認方法や計算方法は、以下のとおりです。

所得税率の確認方法および計算方法

・n前月の給与から社会保険料を差し引いた金額 と②扶養親族等の人数を確認

・①と②をもとに「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」から、所得税率を求める

・賞与の源泉徴収税(所得税)額 = 賞与から社会保険料を差し引いた金額 × 所得税率

また、賞与額が前月の給料の金額の10倍を超える場合や、前月に給与を支払っていない場合には、算出方法が異なります。国税庁のホームページを参考にして所得税を算出しましょう。

Bさんの賞与にかかる源泉徴収税(所得税)額の計算方法は以下のとおりです。

【Bさんの源泉徴収税(所得税)額】

・①Bさんの前月の給与から社会保険料を差し引いた額は、300,000円 - 44,625円 = 255,375円、②扶養親族は1人

・①②より、Bさんの所得税率は4.084%

・Bさんの賞与から社会保険料を差し引いた金額は、500,000円 - 76,875円 = 423,125円

・423,125円 × 4.084% =17,280円

以上の保険料、所得税額を踏まえると、Bさんの賞与の手取り額は以下のとおりです。

【Bさんの賞与の手取り額】

500,000円(賞与額)-(25,000円 + 45,750円 + 4,550円 + 3,000円
(健康保険料 + 厚生年金保険料 + 介護保険料 + 雇用保険料))
- 17,280円(所得税) = 404,420円

賞与(ボーナス)から社会保険料が控除されないケース

社会保険には、産前産後休業や育児休業中の保険料免除制度があるため、産前産後休業や育児休業中に支給される賞与(ボーナス)は社会保険料の支払いが免除されます。


出典:日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」

また、社会保険は「資格を喪失する月の前月分までの保険料」が徴収され、資格の喪失は退職日の「翌日」に適用されるため、賞与支給月の末日より前に退職する場合、退職する月の健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料はかかりません。

たとえば、8月30日に退職した従業員の社会保険資格喪失日は退職日の翌日である8月31日です。そのため、資格を喪失する月である8月の前月、つまり7月支給分までの保険料しか徴収されず、8月に支給される賞与には社会保険料がかかりません。


出典:日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」

賞与(ボーナス)の種類

賞与(ボーナス)は大きく分けて「基本給連動型賞与」「業績賞与」「決算賞与」の3種類に分類されます。それぞれの賞与について特徴を解説します。

基本給連動型賞与

基本給連動型賞与とは、基本給をベースとして○ヶ月分や○%分など、業績に関わらず一律で支給される賞与制度です。

基本給がベースであるため、定期的に安定してまとまった収入が入ります。ただし、成果を出している従業員であっても評価前などで昇給されていなかった場合、賞与に反映されにくく、不公平感が出てしまう可能性があることがデメリットといえます。

基本給連動型賞与を採用している場合は、求人情報や就業規則などに「賞与:基本給○ヶ月分」と記載されることが一般的です。

業績賞与

業績賞与とは、組織または個人の業績に応じて支給額が変動する賞与制度で、「業績連動方式」と呼ばれます。従業員自身や会社の業績に対する意識やモチベーションが高まる反面、賞与額は支給時の個人や会社の業績に応じて大きく変動するという特徴があげられます。

近年では業績賞与を採用する会社が増えており、2021年に日本経済団体連合会が経団連企業会員および東京経営者協会会員企業 2,064 社を対象に行った調査によると、55.2%の企業が業績賞与を採用しています。


出典:日本経済団体連合会「2021年「夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」の概要」

決算賞与

決算賞与とは、決算月の前後に支給され、業績が好調な場合に従業員へ分配を行う賞与制度です。

決算前に賞与を支給することで法人税を節税することができるほか、会社の業績が賞与に反映される場合が多く、従業員のモチベーション向上にも寄与します。

しかし、業績が好調でない場合は賞与が出ないため、不透明な経営状況や曖昧な規定では従業員が不信感を抱いてしまう可能性があります。経営状況やどの程度の利益があれば賞与が出るかなどを給与規定などに明記し、従業員と共通認識を持つことが重要です。

決算賞与は会社の決算月に応じて、3月、9月、12月に支払われることが一般的です。

賞与(ボーナス)の時期・支給日

賞与(ボーナス)を支払う時期や金額についての法的な決まりはないため、夏と冬に1回ずつや、年度末に1回など、会社独自のルールを定められます。

一般的には夏と冬の2回、夏は6〜7月、冬は12月〜1月頃に支給される傾向があります。年3回賞与がある会社は春、夏、冬に支給されることが多いようです。いずれの場合も、就業規則内の規程に基づき査定・支給を行います。

賞与(ボーナス)の支給要件

会社側は、賞与(ボーナス)を支給する場合、必ず就業規則や労働契約、労働協約に内容を明示しなければなりません。従業員との認識相違によるトラブルが起きないよう、金額や支給日だけでなく、支給要件や対象の範囲など、詳しく記載しましょう。

賞与の支払い対象範囲の認識の違いによる従業員とのトラブルを防止するために、「賞与の査定期間に勤務している実績があること」や「支給日に在籍していること」と明記することが一般的です。この要件が入っていれば、賞与の査定期間に勤務していない従業員や、支給日までに退職した従業員へは賞与の支給は必要ありません。

賞与(ボーナス)の支給にあたり、会社が行う手続き

賞与(ボーナス)を支給する際、会社は従業員へ発行する書類の作成や、年金事務所へ提出が必要な書類の準備などを行わなければなりません。

ここでは、賞与の支給の際に必要な手続きの方法や必要書類について解説します。

賞与明細書の発行

賞与の支給時には、賞与明細書を発行する必要があります。賞与の支給額、控除する項目、項目ごとの金額を記した賞与明細書を賞与支給時までに従業員へ発行しなければいけません。

賞与の支払いにかかる控除項目や控除額の計算方法は前述の賞与(ボーナス)にかかる控除の計算方法をご確認ください。

賞与支払届の提出

被保険者賞与支払届

賞与支払届とは、社会保険の被保険者に賞与を支払う際の手続きで必要となる書類です。会社が作成し、事業所所在地を管轄している日本年金機構の事務センターへ提出します。賞与支払届は、賞与を支払った日から5日以内に提出する必要があります。


出典:日本年金機構「被保険者賞与支払届」

記入項目は、「提出者記入欄」「賞与支払年月日」「支払い対象者の情報」の3点です。提出者記入欄は事業所の所在地や名称など、会社の情報を記載します。賞与支払年月日は、会社が従業員へ賞与を支払う日を記載します。

支払い対象者の情報には対象者の生年月日や個人番号(または年金番号)、支払った賞与の額などを記載します。賞与支払届は1枚で10人分まで記載できます。賞与支払い対象者が10人以上いる場合は人数に応じて書類の枚数を追加します。

また、会社が初めて賞与を支払う場合は、賞与支払い予定月の登録のため、「新規適用届」または「事業所関係変更(訂正)届」を事前に年金事務所に提出し、賞与を支払う予定月を登録します。

決算賞与が支払われる予定の会社が業績不振で賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」を作成し、提出します。 賞与支払届、賞与不支給報告書ともに日本年金機構のホームページから書式のダウンロードができます。

まとめ

賞与(ボーナス)の支給は法律では定められていませんが、会社で賞与の支給を定めた場合、決定した規定に従って賞与を算出し従業員に支給する必要があります。曖昧な規定や賞与額の算定基準が不透明な場合、従業員の不信感につながりトラブルを招く恐れがあります。

会社は賞与の支給を行う場合、就業規則や雇用契約に記載する賞与の支給要件や金額の算出方法を明確に提示しましょう。

賞与にかかる社会保険料や所得税などの計算は、従業員個人の状況によって違うため混乱しがちですが、ひとつずつの計算は難しくありません。扶養親族の人数や年齢、給与額などをもとに順番に計算しましょう。

よくある質問

賞与(ボーナス)とは?

毎月定期的に支給される給与とは別に、年3回まで支給される金額が固定でない賃金です。法律上、会社が従業員に賞与を支払う義務はありません。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

賞与の手取りの計算方法は?

賞与(ボーナス)から控除されるのは、雇用保険や社会保険などの保険料と所得税です。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

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