
年間休日とは、企業が定める1年間の休日数のことです。年間休日を決める際の基準となるのは労働基準法で、同法では「法定休日は毎週少なくとも1日、または4週を通じて4日以上与えること」と、休日の最低ラインが定められています。
本記事では、労働基準法を踏まえながら、年間休日の定義や完全週休2日制・週休2日制の違い、年間休日の平均や目安などをわかりやすく解説します。
目次
年間休日とは?
年間休日とは、企業が定める1年間の休日数です。休日数は労働基準法で義務づけられた「法定休日」と、企業が独自に設ける「法定外休日」を合わせた日数で決まります。
法定休日は「1週間に1回以上」または「4週間で4回以上」の休日が必要とされ、労働基準法で最低限のルールが定められています。一方、法定外休日は法律上の義務ではなく、夏季休暇や年末年始休暇、創立記念日など、企業ごとに自由に設定できる休日です。
なお、労働を免除される日には「休日」「休暇」「休業」の3種類があります。そのうち年間休日に含まれるのは「休日」であり、残りの休暇や休業とは区別されます。
休日と休暇の違い
休日とは、法定休日と法定外休日のことで、労働契約上において労働の義務がない日を指します。また、企業は法定休日と法定外休日の付与を義務化されているため、必ず従業員に与えなければなりません。
一方、休暇は労働義務がある日に、企業が従業員を労働から免除する制度です。休暇の種類には「法定休暇」と「法定外休暇(特別休暇)」があり、休日とは性質が異なります。
企業が設ける休暇制度はさまざまです。代表的な例に以下のようなものが挙げられます。
法定休暇 | 法定外休暇 |
---|---|
・年次有給休暇 ・子の看護等休暇 ・介護休暇 ・生理休暇 など |
・夏季休暇 ・年末年始休暇 ・バースデー休暇 ・慶弔休暇 ・私傷病休暇 など |
年間休日は「企業があらかじめ決めた休み」で、休暇は「労働義務のある日に取得できる休み」と覚えておくと分かりやすいでしょう。
年間休日と年次有給休暇の違い
年次有給休暇とは、前述のとおり「法定休暇」の一種で、労働基準法に基づいて従業員に与えられる権利です。勤続6ヶ月以上かつ出勤率80%以上という条件を満たした従業員に付与されます。
いつ休みにするかは従業員に委ねられており、企業は正当な理由なく有給休暇の取得を拒否することはできません。
なお、年次有給休暇は従業員の権利であるため、年間の総休日数である年間休日には含まれない点にも注意しましょう。
休日と休業の違い
休業とは、本来は労働義務がある日に、企業の都合や従業員の事情により長期的に労働を免除する期間です。
休日が「義務として企業が与える公休日」であるのに対し、休業は「労働義務がある日を例外的に免除する」という違いがあります。
なお、会社都合による休業の場合は、従業員に対して平均賃金の6割以上を休業手当として支払う義務が生じます。
代表的な休業の例は以下のとおりです。
休業の例
- 産前産後休業
- 育児休業
- 介護休業
- 労働災害を原因とする休業
- 臨時休業(災害発生時、感染症流行、そのほか事業が行えない事態に陥った場合など)
完全週休2日制と週休2日制の違い
「完全週休2日制」と「週休2日制」は、言葉が似ているため混同されることがありますが、与えられる休日数に大きな違いがあります。
それぞれの概要は下表のとおりです。
項目 | 完全週休2日制 | 週休2日制 |
---|---|---|
休日の回数 | 毎週必ず2日休みがある | 月に1回以上、週2日休みの週がある (それ以外の週は週1日休みでも可) |
休日の曜日 | 特定の曜日とは限らない | 特定の曜日とは限らない |
労働日数の安定性 | 毎週2日の休日があり、 年間を通して安定 | 休日1日の週もあるため、 週ごとに労働日数が変動 |
完全週休2日制は、毎週必ず2日の休日が与えられる制度です。休みの曜日が固定されているとは限らず、シフト制などで土日以外の曜日に休みが割り当てられても、毎週2日休みがあるなら完全週休2日制に該当します。このため、休日の曜日は変動する可能性があるものの、年間を通じて「週2日の休みが必ず確保される」点が特徴です。
一方、週休2日制は「月に1回以上、週2日の休日がある」制度を指します。たとえば、ある週は1日しか休みがなくても、月に1度以上は週2日休みがあれば、週休2日制の要件を満たします。
完全週休2日制は安定して休める制度であるのに対し、週休2日制は最低限の週2日の休みが月単位で確保されていればよい制度です。似ているようで実態は大きく異なるため、求人票や就業規則を作成するうえでは注意しましょう。
年間休日の平均
2023年の年間休日総数の1企業平均は112.1日、労働者1人平均の年間休日総数は116.4日となり、どちらも昭和60年以降最も多い水準となっています。

1企業平均年間休日総数を企業規模別にみると、「1,000人以上」が 117.1日、「300~999人」が 115.9日、「100~299人」が 113.6日、「30~99人」が110.0日となっており、企業規模が大きいほど年間休日も多い傾向にあります。
出典:厚生労働省「令和6年就労条件総合調査の概況」
年間休日の最低ライン
労働基準法では、休日と労働時間の最低基準が定められています。具体的には、「法定休日は毎週少なくとも1日、または4週を通じて4日以上の休日を与えなければならない」「労働時間の上限は週40時間以内、かつ1日8時間まで」という内容です。
この規定をもとに計算すると、年間休日の最低ラインは以下のとおりになります。
年間休日の最低ラインの計算
- 1年間の労働時間:365日 ÷ 7日(52週間) × 40時間 = 2085.7時間
- 年間で働ける日数:2085.7時間 ÷ 8時間(1日の上限時間) = 260日
- 年間休日の最低ライン:365日 - 260日 = 105日
このように、労働基準法で定められた労働時間を上限まで使用した働き方にすると、年間休日は最低でも105日なければなりません。これはあくまで法的に認められる下限であり、実際には多くの企業がそれ以上の休日を設定しています。
出典:厚生労働省「労働時間・休日」
年間休日の目安
年間休日は、労働基準法で定められた最低限の休日日数があります。そのうえで企業ごとに独自の休暇制度が加えられるため、年間休日の日数によって働き方や休暇の取りやすさは大きく異なります。
下表では、代表的な年間休日の日数と、その休日の内訳イメージをまとめています。
年間休日の日数 | 年間休日に含まれる休暇 |
---|---|
120日 | 週2回の休み + 祝日(ほぼ暦どおりの休暇) |
125日 | 週2回の休み + 祝日 + 夏季休暇、年末年始休暇など 例)土曜日と日曜日休暇 + 祝日 + 7日ほどの休暇 |
110日 |
・週2回の休み + 夏季休暇、年末年始休暇(完全週休2日制) ・日曜日、土曜隔週休み、祝日、夏季休暇、年末年始休暇など(週休2日制) 例)土曜日と日曜日休暇 + 5日ほどの休暇 |
105日 | 月8~9日ほどの休日 例)土曜日と日曜日のみ休暇 ※労働基準法で定められた最低限の休日 |
年間休日に含まれる休暇については「法定休日」「法定外休日」以外にも、夏季休暇や年末年始休暇など労働義務がある日に企業から労働を免除された日も加わります。
ただし、休暇と名が付いていたとしても、年間休日に含めない休みもあります。年間休日は全ての社員に適用する休みを指すため、個人ごとに与えられる日数や時期が異なる「有給休暇」は、年間休日には含まれません。バースデイ休暇・生理休暇・リフレッシュ休暇などの「特別休暇」についても、年間休日に含まない理由は同じです。
年間休日120日
求人票においてもよく表記される「年間休日120日」は、完全週休2日制(毎週2日の休日)に加え、祝日を休日とした場合が該当します。祝日は法律で定められた国民の休日であり、休日と定めている企業も多く見られます。
なお、年間休日120日表記の場合、実際に労働者が得られる休日数は以下のように考えられます。
年間休日120日の計算
- 年間の週数:365日 ÷ 7日 = 52週
- 完全週休2日制の休日数:2日(1週の休日総数)× 52週 =104日
- 年間休日数:104日 + 16日(2025年の国民の祝日)= 120日
年間休日125日
年間休日125日は、年間休日120日の休日(完全週休2日制+祝日)に加えて、夏季休暇や年末年始休暇を設けているケースが該当します。
夏季休暇や年末年始休暇は、勤務先の就業規則に含まれている休日を差し引いて決まることが一般的です。就業規則に振替休日を含めている場合、実際には5〜7日前後の長期休暇が追加され、多くの企業ではこの範囲で夏季休暇と年末年始休暇が設定されています。
年間休日110日
年間休日110日は、完全週休2日制(年間104日)に夏季休暇や年末年始休暇を加える場合、もしくは日曜を休日とし土曜を隔週または月1回出勤とする場合などが該当します。
祝日を休日とせず、その分を夏季休暇や年末年始休暇、GWなどの長期休暇に振り替えるケースが一般的です。年間休日120日との違いは、祝日の扱いや休暇の有無にあります。
年間休日105日(労働基準法の最低日数)
年間休日105日は、労働基準法で定められた最低ラインです。年間休日105日を設定している企業の多くは、週休2日制を採用している傾向があります。
週休2日制の企業では、月に1~2回の土曜出勤が必要なケースもあり、年間を通じて休みが少なく、長期休暇を取りにくいという特徴もあります。
年間休日が多い場合のメリット
年間休日が多いと、従業員が十分な休息時間を確保でき、心身の健康を保ちやすくなります。家庭や趣味に時間を充てられるため、ワークライフバランスが整い、仕事への満足度も高まります。
その結果、離職率の低下や定着率の向上につながり、企業にとっても大きなメリットとなるでしょう。さらに、年間休日の多さは求人の訴求ポイントとしても効果的で、採用活動において求職者にプラスの印象を与えやすくなります。
年間休日が少ない場合のデメリット
年間休日が少ないと、従業員一人あたりの労働時間が長くなるため、一時的には業務の遂行能力や処理能力の向上が期待できます。
しかし、休息が不十分になることで健康リスクや疲労の蓄積が生じやすく、生産性の低下を招く恐れがあります。さらに、長時間労働が続けば離職率の上昇や採用力の低下を引き起こし、企業競争力を損なう可能性があるため注意が必要です。
年間休日総数が労働基準法違反の場合の罰則
年間休日は、労働基準法により少なくとも「週に1日(または4週間で4日)」と定められています。
この規定に違反すると、労働基準法違反として6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。
適切な休日が確保されないと従業員の心身の健康リスクが高まるため、法律で罰則をもって厳しく規制しているのです。企業は、従業員の健康維持と法令遵守の観点から、年間休日の確保に注意する必要があります。
年間休日が105日以下でも労働基準法違反にならないケース
105日の年間休日はあくまでも基準であるため、105日を下回っても違法とならないケースがあります。結論からいうと、労働時間が短く設定されている場合や、特定の制度を利用している場合においては、年間休日が105日以下でも罰則対象ではありません。
週の出勤日数が多く、年間休日数が105日より少ない場合でも、「1週間に1回以上の法定休日」と「週40時間を上限とした労働時間」が遵守されていればよいとされています。
以下では、年間休日の最低ラインを下回っても違反とならない働き方についてくわしく解説します。
1日あたりの労働時間が短い
たとえば、1日の労働時間が6時間に設定されている職場では、週6日勤務としても実際の労働時間は法定労働時間の週40時間を下回る「週36時間」です。この条件で1年間勤務した場合、年間休日は52日程度になります。
年間休日は法定の最低ラインである105日を大きく下回りますが、1日8時間・週40時間の範囲内での労働であるため、労働基準法違反とはみなされません。
36協定を締結している
36協定とは、労働基準法36条に基づく労使協定で、法定労働時間を超えた時間外労働や休日労働をさせるうえでの取り決めです。社員の過半数で組織された労働組合、または社員の過半数を代表する者との合意が必要で、所轄の労働基準監督署への届け出も義務付けられています。
36協定が締結されている場合、時間外労働の上限(月45時間・年360時間)の範囲内であれば、年間休日が少なくても違法とはなりません。
ただし、特別な事情により臨時的に合意したとしても、月45時間を超えられるのは年間6ヶ月までです。また、休日労働を含む「年720時間・複数月平均80時間・月99時間」は超えられないため、合意があったとしても注意しましょう。
変則労働制を採用している
変則労働制を採用している場合、1日単位ではなく月単位や年単位で労働時間を換算するため、法定の年間休日規定は直接適用されません。変則労働制は、繁忙期や閑散期がはっきりしている業種で多く採用されます。
また、フレックスタイム制や裁量労働制も同様に、労働基準法の年間休日の適用外となる可能性があります。
年間休日に有給休暇が含まれている
フルタイム勤務では、入社半年で10日の有給休暇が付与され、法定により最低でも1年で5日は必ず取得する必要があります。そのため、仮に年間休日を100日と設定しても、有給休暇を加えれば年間休日105日を確保することが可能です。
ただし、この場合も1日8時間・週40時間や36協定の範囲を超えないよう注意する必要があります。
freee人事労務で休日や勤怠の管理を一元化
年間休日の設定や年次有給休暇の管理は、労働基準法や企業独自のルールなど、さまざまな取り決めが関わるため、勤怠・休日の管理が複雑になりがちです。
freee人事労務を活用すれば、所定休日の一括登録やカレンダー表示、従業員ごとの勤務体系に応じた自動反映による休日管理が一元化できます。年末年始・夏季休暇といった特別休暇の設定も柔軟に対応でき、管理ミスや属人化のリスクを軽減できます。
まとめ
年間休日は、労働基準法で定められた最低ライン105日を基準に、勤務形態や企業の就業規則に応じて設定されます。完全週休2日制や週休2日制、変則労働制など、働き方によって年間休日の取り扱いは異なるため注意が必要です。
年間休日を適切に設定することで、従業員の健康維持やワークライフバランスの確保につながり、離職率の低下や採用力向上といった企業メリットも期待できます。労働基準法や36協定の規定を理解したうえで、法令遵守と従業員満足の両立を意識して年間休日を決めましょう。
よくある質問
年間休日の目安は?
年間休日は、企業や業種によって差がありますが、目安としては105日〜125日程度です。
105日は労働基準法で定められた最低ラインで、110日〜120日は週休2日制や祝日を含めた一般的な設定、125日はさらに夏季休暇や年末年始休暇を加えた長期休暇を含むケースとなります。
詳しくは記事内「年間休日の目安」をご覧ください。
年間休日105日以下は違法?
年間休日の設定は、あくまで基準のため、年間休日が105日を下回っても違法にならないケースがあります。
詳しくは記事内「年間休日が105日以下でも労働基準法違反にならないケース」をご覧ください。