
年末調整の電子申告とは、扶養控除等申告書や保険料控除申告書などの年末調整書類を、電子的に処理・提出することです。
従業員を雇用する企業では年末調整業務が必要不可欠です。従業員が増えるほど、労務担当者の書類の申告(提出)作業は骨が折れるでしょう。
さらにこれらの作業を紙中心で行っている場合、担当者の負担は大きくなりますが、給与支払報告書・法定調書などの書類は、電子申告というオンラインでの一括提出が可能です。
本記事では、意外と知られていない年末調整の電子申告のメリットや方法をわかりやすく解説します。
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目次
年末調整の電子申告とは?
年末調整の電子申告とは、年末調整に必要な各種申告書類(扶養控除等申告書、保険料控除申告書など)を、国税庁が提供する専用のソフトウェアやクラウドサービスなどを利用して電子的に作成・提出することです。
従来の年末調整は、従業員が手書きで書類を作成し、会社がその内容を確認・集計して税務署に提出する方法が一般的でした。この方法だと書類のやり取りや保管に多くの手間と時間がかかるため、近年はプロセスを効率化する電子化が進められています。
電子申告の具体的な流れは、従業員がパソコンやスマートフォンを使って年末調整に必要な情報を入力し、これにより作成された電子データが「e-Tax(税の電子申告・納税システム)」や「eLTAX(地方税ポータルシステム)」というインターネット上のシステムを通して税務署に提出されるというものです。
年末調整の電子申告によって紙の書類は不要になり、年末調整に関わる人々の負担が大幅に軽減されます。
【関連記事】
年末調整とは?概要・目的・手順から必要書類までわかりやすく解説
年末調整で電子化できる書類
年末調整で電子化できる書類は以下のとおりです。
書類の種類 | 書類名 |
---|---|
年末調整の申告書類 |
|
控除証明書等 |
|
年末調整の電子申告のメリット
年末調整を電子申告するメリットについて詳しく解説します。
作業の効率化とコスト削減
電子化により、紙の書類の配布、回収、内容確認、データ入力、保管といった一連の作業が不要になります。
これにより、年末調整にかかる時間や労力が大幅に削減され、人件費の削減にもつながります。また、ペーパーレス化により、印刷費や郵送費なども削減できます。
入力ミスの減少
電子申告においては、従業員が直接データを入力するため、年末調整の担当者がデータを入力する手間が生じません。入力ミスや転記ミスのリスクが大幅に減少し、正確な年末調整が可能になります。
法令改正への対応がスムーズ
年末調整に関する法令は頻繁に改正されるため、申告書の様式も年度ごとに変更されることが多くあります。
電子申告であれば、ソフトウェアやサービスが自動的に最新の法令に対応するため、会社側で常に最新の情報を把握・変更に対応する手間が省けます。
情報セキュリティの強化
紙の書類は、紛失や盗難による情報漏えいのリスクがあります。電子申告であれば、データが暗号化されるなど、セキュリティ対策が施されたシステムで管理されるため、より安全に個人情報を扱うことができます。
年末調整の電子申告の方法
年末調整の電子申告の方法を説明します。大まかな流れは以下のようになります。
- 代表者のマイナンバーカードの取得やe-Tax/eLTAX利用手続きなどの事前準備
- 書類の電子データの準備
- 書類の電子データをオンラインのシステムで提出
それぞれについて詳しく解説します。
1.電子申告に必要なものと手続き
年末調整の電子申告のために必要なもの・事前手続きは以下の4つです。
- マイナンバーカードの取得
- カードリーダーの購入
- e-Tax(イータックス)の利用者識別番号手続き(国税)
- eLTAX(エルタックス)の利用者ID手続き(地方税)
(1)マイナンバーカードの取得
電子申告に必要なのが代表者のマイナンバーカード(署名用電子証明書付き)です。事業所の代表(社長など)の代わりに、労務担当者などのマイナンバーカード利用も可能ですが、その場合委任状が必要になります。また、個人のマイナンバーカードの取得・利用が難しい場合は法人の電子証明書も使用可能です。
マイナンバーカードに関しては、何点か注意事項があります。
- マイナンバーカードはマイナンバーの告知カードとは異なります。告知カードでは電子申告ができないのでマイナンバーカードを取得しましょう
- 電子申告のためには、マイナンバーカードに署名用電子証明書をつける必要があります。 マイナンバーカード取得手続きの際に署名用電子証明書が必要かを尋ねられたら、必要である旨を伝えましょう
- マイナンバーの取得には最長1ヶ月程度かかることがあります。まだ取得していない場合は早めに取得することをおすすめします
(2)カードリーダーの購入
カードリーダーもあらかじめ購入しておきましょう。約2,000~3,000円で、家電量販店やECサイトなどで手に入ります。カードリーダーはこの後e-TaxやeLTAXで手続きを行う際に必要になります。
(3)e-Tax(イータックス)の利用者識別番号手続き(国税)
マイナンバーカード(もしくは電子証明書)とカードリーダーが手に入ったら、e-Tax(イータックス)の利用者識別番号手続きを行いましょう。
国税庁のe-Taxページから手続きができます。「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」より開始届出書をオンラインで提出します。このとき利用者識別番号と暗証番号が入手できるので保存しておきましょう。入手しておいたマイナンバーカード(もしくは電子証明書)と上記で取得した利用者識別番号をカードリーダーを利用してWeb上で紐づけます。
利用推奨環境はwindows7以後、ブラウザはInternet Explorer 11です。
なお、eTAXを利用するための事前準備に関しては、国税庁が提供している以下の動画やfreeeのヘルプページ「年末調整をfreeeで電子申告する(準備編)」が参考になります。
(4)eLTAX(エルタックス)の利用者ID手続き(地方税)
eLTAXへアクセスし、利用届出の開始を行いましょう。利用者IDと仮暗証番号が入手できるため、保存しておきます。
次に専用のソフトウェア(PCdesk)をインストールし、仮暗証番号を本暗証番号に変更します。
最後に、マイナンバーカード(もしくは電子証明書)と上記で取得した利用者IDをカードリーダーを利用して紐づけます。
eTaxが国税の申告であるのに対し、このeLTAXは地方税の申告に対応しています。年末調整では税務署(国税)と市町村どちらにも申告が必要なため、eTaxとeLTAX両方での手続きが必要になります。
eTaxと同様、利用推奨環境はwindows7以後、ブラウザはInternet Explorer 11です。
2.年末調整書類の電子データの準備
年末調整で最終的に提出が必要なのは以下の書類です。
- 給与所得の源泉徴収票
- 給与支払報告書
- 所得税徴収高計算書
- 法定調書合計表
- 支払調書(必要な場合)
これらが申告できる電子データを作成するため、上記書類に必要な情報を適切な方法で収集・計算します。従業員の情報が収集できたら、上記の書類データ作成を行います。
3.ソフトで電子申告用データを作成しe-Tax・eLTAXで提出
最後に、書類データを電子申告用データに加工しオンラインで提出します。申告ソフトをインストールし、ソフト指定の手順に沿って、進めましょう。
手元に準備しておくものは以下です。これらは、申告ソフトを通してe-Tax、eLTAXにデータを送信する際に必要となります。
- eTaxの利用者識別番号とeLTAXの利用者ID
- マイナンバーカード
- カードリーダー
申告ソフトで、書類データを税務署(eTax)・市区町村(eLTAX)に送付すれば申告作業は完了です。
年末調整を電子申告で行いたいとお考えの方は、クラウド年末調整ソフト「freee人事労務」をご検討ください。最新の法令にも対応しているため、年末調整を正確・簡単に完了できます。
4.データを保管
年末調整関係書類のデータは、書面と同様、税務署長から提出を求められた場合を除いて、その提出期限の属する年の翌年1月10日から7年間保存する必要があります。
まとめ
年末調整の電子申告とは、税務署と市区町村に申請が必要な書類を、郵送ではなくWebシステムを通して提出することです。メリットは紙を大量に印刷し、市区町村別に分けて郵送する必要がないことでした。電子申告を行う場合は、代表者のマイナンバーカードなどを事前に用意する必要がありますので早めに準備を始めましょう。
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よくある質問
年末調整はネットで申告できる?
年末調整は、専用のソフトウェアやクラウドサービスなどを介して、電子的に作成・申告することができます。
詳しくは、記事内「年末調整の電子申告とは?」をご覧ください。
年末調整を電子化する場合の手続きは?
年末調整を電子化する場合、次のような準備・手続きが必要です。
- 代表者のマイナンバーカードの取得やe-Tax/eLTAX利用手続きなどの事前準備
- 書類の電子データの準備
- 書類の電子データをオンラインのシステムで提出
詳しくは、記事内「年末調整の電子申告の方法」で解説しています。