与信管理とは、取引先の信用力を調査・評価し、取引条件や与信限度額を管理する業務です。
掛け取引を行う企業にとって、取引先が代金を支払えなくなるリスクは常に存在します。売上が立っていても売掛金が回収できなければ、資金繰りの悪化や連鎖倒産につながります。与信管理はこうしたリスクを取引開始前の審査と取引開始後の継続的な監視によって、未然に抑える仕組みです。
本記事では、与信調査の方法から取引開始前後の管理フロー、与信限度額の設定基準・評価基準の作り方・運用上のポイントまでを解説します。
目次
- 与信管理とは
- 与信管理と債権管理の違い
- 与信業務・与信情報・与信確認とは
- 与信管理の目的・必要性
- 連鎖倒産・黒字倒産を防止するため
- 貸倒損失を回避するため
- 対外的な信用・評価を下げないため
- 与信調査の方法
- 内部調査
- 外部調査
- 直接調査
- 依頼調査
- 取引開始前の与信管理の流れ(与信承認)
- 1. 取引先の情報収集
- 2. 取引先の信用力を分析・評価
- 3. 与信限度額を設定
- 4. 契約条件の交渉・取引開始
- 取引開始後の与信管理(与信事後管理)
- 債権管理・限度管理を行う
- 定期的に信用力を見直す
- 与信リスクをコントロールする
- 取引先倒産時は回収対応を行う
- 与信限度額の設定基準
- 自社の売掛債権
- 取引先の純資産
- 取引先の仕入債務
- 取引先の評価基準の作り方
- 与信管理を進めるうえでのポイント
- 営業現場と管理部門の情報連携を密にする
- 与信調査のコストと取引規模を照合する
- 多角的・客観的な情報収集を行う
- 与信管理規定を整備する
- まとめ
- よくある質問
与信管理とは
与信管理とは、取引先の信用力を調査・評価し、取引条件や与信限度額を管理する一連の業務です。「与信」とは取引相手に対する信頼性の高さをもとに算出した、取引上限金額(与信限度額)や支払い間隔などの数値を指します。
商品やサービスを提供した後に代金を回収する掛け取引は、取引先が代金を支払ってくれると信用することで成立するものです。これは、取引時に現金を受け取るケースと異なり、代金が支払われないリスクが常に存在します。
また、取引先の信用力はすべての企業で異なり、常に変化します。たとえば、年商5,000万円の企業と年商100億円の企業では、支払い能力や経営の安定性に大きな差があるため、信用力も異なるのです。
与信管理では、この信用力をもとに、以下のような形で取引に制約を設けます。
- 掛け取引自体を認めない
- 掛け取引の上限額を設定・調整する
- 支払期日までの期間を短縮する
たとえば、営業担当者から「取引先A社へ翌々月末払いで1,000万円の掛け取引としたい」と要望があっても、与信管理上500万円までしか認めなかったり、翌月末払いに短縮させたりします。このように与信管理は、売掛金を回収できないリスクを取引条件の設定によって抑制する機能を担います。
与信管理と債権管理の違い
与信管理と債権管理は、管理の対象とタイミングが異なります。違いは下表のとおりです。
| 与信管理 | 債権管理 | |
|---|---|---|
| 対象 | 取引先の信用力・リスク | 発生済みの売掛金・債権 |
| タイミング | 取引開始前〜取引中の継続管理 | 債権発生後〜回収まで |
| 目的 | 貸倒リスクの未然防止 | 債権の確実な回収 |
与信管理は「リスクを取引前に防ぐ」、債権管理は「発生した債権を確実に回収する」という役割分担です。両者は連動しており、与信管理が機能していれば債権管理の負担を減らせます。
与信業務・与信情報・与信確認とは
与信管理と関連する用語として、与信業務・与信情報・与信確認の3つが挙げられます。
与信業務は与信管理とほぼ同義で使われますが、より実務的な文脈で使われることが多い表現です。与信調査・審査・限度額の設定・事後管理といった具体的な作業を指す際に用いられます。
与信情報とは、与信管理の判断材料となる情報全般のことです。与信管理が「管理する行為」を指すのに対し、与信情報は「判断に使うデータそのもの」を指します。財務諸表・登記情報・支払い実績・信用調査会社のレポートなどが該当します。
与信情報をもとに取引先の信用力を確認する行為が、与信確認です。与信管理が継続的な業務全体を指すのに対し、与信確認は取引開始前や定期的な見直し時に行う個別の確認行為を指します。
与信管理の目的・必要性
掛け取引を継続する限り、取引先の経営状況が変化するリスクは常に存在します。与信管理を行わずに取引を拡大すると、売上が立っているにもかかわらず代金を回収できない事態が発生し、自社の資金繰りや経営に深刻な影響を与えます。
与信管理が必要とされる主な理由は以下の3つです。
与信管理が必要とされる主な理由
連鎖倒産・黒字倒産を防止するため
連鎖倒産とは、取引先の倒産により保有する債権が不良債権化し、自社の手元資金が不足し連鎖的に倒産してしまうことです。もし取引先が倒産し売掛金が回収できなくなれば、損失が大きくなり、自社も経営難に陥る可能性があります。
また、売上は順調でも売掛金の回収が遅れ、手元資金が枯渇することで支払いができなくなる「黒字倒産」も、与信管理が機能していない企業で起きやすい事態です。
与信管理によって取引先ごとの上限額を設定し、特定の取引先への依存度を抑えることで、万が一の倒産時に自社への影響を限定できます。
【関連記事】
黒字倒産とは?起こる理由や回避するためのポイントを解説
貸倒損失を回避するため
貸倒損失とは、取引先が倒産するなどといった理由で売掛金が回収できなくなった際の損失のことです。帳簿上では「貸倒損失」という勘定科目を用い、回収できなかった売掛金を損失として計上します。
貸倒損失が発生すると、その期の利益が減少し、法人税の負担が軽減されます。一方で、財務状況の悪化として金融機関や取引先からの信用評価に影響します。
あらかじめ適切に与信管理を行うことで、貸倒損失の発生そのものを抑えられるのです。
対外的な信用・評価を下げないため
売掛金の回収トラブルが続くと、自社の財務状況が悪化し、金融機関からの融資審査や取引先からの信用評価に影響します。また、回収トラブルへの対応に社内リソースが割かれることで、本来の事業活動に支障が出ることも懸念点です。
与信管理を組織的に運用することは、自社の信用力を維持し、安定した事業継続の基盤をつくることにつながります。
与信調査の方法
与信調査とは、「初めて取引する相手と掛け取引をしても問題がないか」「取引先と掛け取引を継続しても問題がないか」を調査することです。どの程度信用できる相手なのかを調査することから、「信用調査」と呼ばれる場合もあります。
与信審査の精度は、事前にどれだけ多角的な情報を収集できるかに左右されます。与信調査の主な方法は以下の4つです。
情報の性質と取得コストが異なるため、取引規模や重要度に応じて組み合わせて実行します。
内部調査
内部調査とは、すでに取引実績のある取引先に関して、自社の営業部門や現場社員、経理部門の担当者から情報を得て行う調査方法です。経理部門では以下のような情報を確認します。
内部調査の確認項目例
- 過去の取引で実際に入金が確認された回数
- 支払期日までに入金されているか
- 支払期日を超えて入金されたことはあるか など
加えて、取引先と直接やり取りを行った営業担当者や現場社員へのヒアリングも、内部調査の手段のひとつです。
コストをかけずに実施できる一方、取引開始後でないと情報が得られず、担当者の個人的な感覚に左右される面もあります。そのため、他の調査方法と組み合わせることが基本です。
外部調査
外部調査とは、社内および取引先以外の情報源から情報を収集する調査方法です。主な手段は以下のとおりです。
外部調査の手段
- 法務局や公的サービスから商業登記簿・不動産登記簿などを取得する
- 取引先のホームページから決算情報やIR情報を確認する
- 関係取引先へ確認する など
取引先に知られることなく情報を収集できますが、調査に時間と手間がかかります。
直接調査
直接調査とは、取引先への訪問や電話・メール・FAXなどを通じて情報を得る調査方法です。
企業の内部的な事情を直接確認できる一方、取引先からの心証が悪くなる懸念もあるため、実施のタイミングと方法には配慮が必要です。
依頼調査
依頼調査とは、信用調査を専門とする会社へ依頼することで取引先の情報を得る調査方法です。
帝国データバンクなどの信用調査会社では、取引先の財務情報・信用情報・企業の歴史や背景などを調査します。自社では得にくい詳細な情報を入手できる一方、調査費用が発生するため、取引規模や与信リスクの大きさに応じて利用を判断します。
取引開始前の与信管理の流れ(与信承認)
与信承認とは、新規取引を開始する前に与信審査を行い、取引の可否と条件を決定するプロセスのことです。このプロセスを省略したり形骸化させたりすると、あとから回収困難な売掛金が積み上がるリスクが高まります。
一般的な与信承認の流れは以下の4つのステップで進みます。
調査開始から与信管理の承認までの流れ
1. 取引先の情報収集
初めて取引を行う相手であれば、まず確認すべきは以下の3点です。
新規取引先の確認すべき点
- 反社会的勢力に属していないか、関わりがないか
- 実在している会社か
- 実態のある(きちんと事業を行っている)会社か
反社会的勢力との関連については、最寄りの警察署や暴力団対策課、公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターで確認できます。
実在する会社かどうかは、商業登記簿・不動産登記簿・国税庁法人番号公表サイトで確認可能です。
上記の確認が取れたうえで、内部調査・外部調査・直接調査・依頼調査を組み合わせ、取引先の財務状況・支払い実績・経営実態に関する情報を収集します。取引規模や与信リスクの大きさに応じて調査方法を選択し、単一の情報源に依存せず多角的な視点で情報を集めることで、与信判断の精度が高まります。
出典:警視庁「東京都暴力団排除条例 Q&A」
2. 取引先の信用力を分析・評価
取引が可能な相手と確認できたら、信用力を詳細に分析・評価します。分析は定量・定性・商流の3つの観点から行います。
| 項目 | 内容 | 分析方法 |
|---|---|---|
| 定量分析 | 財務諸表などで確認できる数値による分析 | ・貸借対照表(B/S) ・損益計算書(P/L) |
| 定性分析 | 数値化されない情報に基づく分析 | ・社内の雰囲気 ・業界での優位性 ・経営者の影響力やビジネス能力 ・同業者からの評判 ・信用調査会社等の調査結果 |
| 商流分析 | 商売全体の状況(商流)に関する分析 | ・仕入れ先 ・売買取引 ・需要者 ・納品場所や方法 ・決済条件 |
定量分析は財務諸表から数値を点数化して評価する方法で、基準が明確な判断材料です。定性分析とは、数値では表すことができない情報を使用する分析方法です。定性分析と定量分析と組み合わせることで、企業の総合的な信用度を評価できます。
商流分析は取引全体の流れからリスクを見る方法です。取引条件が業界の慣行に合致しているか、供給元や最終的な需要者はどこかといった観点から信用力を評価します。
3. 与信限度額を設定
分析・評価を経て、取引先ごとの与信限度額を設定します。与信限度額とは、企業が過度な与信リスクを負担するのを防ぐもので、取引先ごとに設定する売掛金の上限額です。
与信限度額の計算式には、「一定割合」と「格付けウェイト」の2つの要素が含まれます。「一定割合」は万が一債権が回収できなくても企業が耐えられる範囲を表し、「格付けウェイト」は取引先に設定した格付けの重要度を示すものです。
一般的な算出方法は以下の3つです。
与信限度額の算出方法
- 自社の売掛債権をもとにする方法:自社売掛債権の総額 × 一定割合 × 格付けウェイト
- 取引先の純資産をもとにする方法:取引先純資産 × 一定割合 × 格付けウェイト
- 取引先の仕入債務をもとにする方法:取引先仕入債務 × 一定割合 × 格付けウェイト
設定した与信限度額は固定ではなく、取引先の経営状況の変化に応じて見直します。詳しい設定基準については後述の「与信限度額の設定基準」をご覧ください。
4. 契約条件の交渉・取引開始
与信限度額と取引条件(支払期日・支払い方法など)を社内で承認し、取引先との契約に反映します。
取引開始後も新たな取引が発生した際は、与信限度額を超えていないか都度確認が必要です。与信審査の結果として取引を制限する場合は、支払期日の短縮・前払い条件への変更・一部現金取引などの条件を提示します。
取引開始後の与信管理(与信事後管理)
取引先の経営状況は常に変化するため、取引開始後も継続的に状況を把握し、必要に応じて与信条件を見直す事後管理が求められます。与信事後管理が機能していないと、取引開始時には問題がなかった取引先の経営悪化を見逃し、回収不能な売掛金が積み上がります。
事後管理の主な業務は、以下の4つです。
与信事後管理の主な業務
債権管理・限度管理を行う
取引開始後は、取引先ごとの売掛金残高が与信限度額を超えていないかを常に確認します。
債権管理とは、取引先に対する債権や、期限内に支払いが遂行されているかを確認することです。支払遅延が見受けられた場合、取引に注意を払う必要があります。
限度管理では、与信限度が設定されていない取引先や、与信限度期限が切れている取引先が存在しないかを調査します。これらを適切に行うことで、リスクを最小化し、安定した経済活動の維持が可能です。
定期的に信用力を見直す
取引開始時に設定した与信限度額や取引条件は、定期的に見直します。決算情報の公開時・業界環境の大きな変化時・取引先の支払い状況に変化があった時などがタイミングの目安です。
信用力の見直しでは、取引開始時と同様に定量・定性・商流の3つの観点から再評価を行います。良好な支払い実績が続いている取引先には与信限度額の引き上げを、経営状況の悪化が見られる取引先には限度額の引き下げや取引条件の厳格化を検討します。
与信リスクをコントロールする
取引先の経営悪化の兆候は、財務諸表が公開される前に現れることがあります。支払いの遅延が増えてきた・担当者が突然変更になった・電話やメールへの返答が遅くなったといった変化は、経営悪化のサインとして捉え、早めに対応を検討します。
特定の取引先への与信集中を避け、複数の取引先に分散させることも与信リスクをコントロールする上での基本的な考え方です。
取引先倒産時は回収対応を行う
取引先が倒産し、売掛金が滞留債権または不良債権になると、債権の全額回収が困難になります。保有する債権を速やかに把握し、回収・保全・届け出などの手続きを迅速に進めることで、被害を最小限に抑えられます。
滞留債権化した場合は、支払期日からの経過日数と未回収額に応じて、以下の手順で段階的に対応を変えていきます。
債権回収対応の流れ
- 催促状を送付する
- 内容証明郵便で督促状を送付する
- 裁判所で民事調停を申し立てる
- 裁判所で支払督促手続を申し立てる
- 簡易裁判所で少額訴訟を提起する
- 裁判所で訴訟を提起する
- 強制執行手続きを申し立てる
取引先が倒産したり夜逃げしたりすることで不良債権化した場合は、債権を回収できる見込みがないため、未回収の売掛金を貸倒損失として計上します。
与信限度額の設定基準
与信限度額を適切に設定しないと、過大な与信を取引先に供与するリスクが生じます。与信限度額の設定基準は以下の3つです。
実務上はこれらを組み合わせて最終的な限度額を決定します。
自社の売掛債権
自社が保有している売掛金の総額を基準に、各取引先への与信限度額を設定する方法です。売掛債権の総額に対して一定割合を上限として設定することで、万が一特定の取引先から回収できなくなった場合でも、自社が耐えられる損失の範囲内に抑えられます。
自社の財務状況を基準にするため、与信管理の観点からもっとも安全な算出方法です。
取引先の純資産
取引先の純資産をもとに与信上限額を設定する方法です。取引先が倒産した際に純資産の範囲内で売掛金の一部を回収できる可能性があります。
ただし、取引先が複数の会社と取引している場合、実際にどの程度回収できるかは不透明です。また、取引先の純資産が大きければ与信限度額も高く設定されるため、自社の許容リスクを超えて取引してしまう恐れがあります。
取引先の仕入債務
取引先の仕入債務をもとに与信上限額を設定する方法です。仕入債務とは、貸借対照表に記載される買掛金や支払手形の合計額です。
取引先が現時点で抱えている支払い義務の総額を把握することで、実際の支払い能力を超えた与信を避けられます。ただし、仕入債務の規模が大きい取引先に対しては与信限度額も高く設定されるため、こちらも自社の許容リスクとのバランスを確認した上で適用します。
取引先の評価基準の作り方
与信限度額の算出には「格付けウェイト」が必要ですが、そのためには取引先を客観的に評価するための基準を社内で統一しておかなければなりません。評価基準表と各社評価表の2段階で管理することで、与信管理の一貫性を保てます。
まず、社内で評価基準表を作成し、点数に応じた格付けと与信限度額を設定します。
| 評価 | 点数 | 取引 | 与信限度額 |
|---|---|---|---|
| S | 71点以上 | 増加を積極的に検討 | 1億円 |
| A | 61~70点 | 増加を検討 | 5,000万円 |
| B | 41~60点 | 継続 | 3,000万円 |
| C | 31~40点 | 取引を削減 | 1,000万円 |
| D | 21~30点 | 取引停止 | 0円 |
| E | 20点以下 | 即時回収 | 0円 |
評価基準表をもとに、取引先ごとのスコアを記録するのが各社評価表です。
| 取引先 | 自社の売掛債権 | 取引先の純資産 | 取引先の仕入債務 | 点数 |
|---|---|---|---|---|
| A社 | ◎ | ◎ | ◎ | 90点 |
| B社 | ◎ | ◎ | 〇 | 80点 |
| C社 | ◎ | 〇 | 〇 | 70点 |
| D社 | 〇 | 〇 | ✕ | 45点 |
| E社 | △ | ✕ | ✕ | 20点 |
評価 ◎:30点 〇:20点 △:10点 ✕:5点
上記のような評価基準表と各社評価表を作成しておくことで、与信管理を行う担当者が判断に迷ったり、担当者ごとに取引先の評価が変わったりする状況を防げます。評価が著しく低いにもかかわらず取引が継続されたり、特定の取引先に対して恣意的な対応がなされてしまったりすることもありません。
与信管理を進めるうえでのポイント
与信管理の仕組みを整えても、運用が形骸化していては機能しません。担当部門だけが与信情報を抱え込んでいたり、調査コストが取引規模に見合っていなかったりするケースは多く、これらが与信管理の実効性を下げる原因になります。
以下の4つのポイントを押さえることで、与信管理を組織として機能させられます。
与信管理を適切に機能させるポイント
営業現場と管理部門の情報連携を密にする
取引先の経営悪化は、財務諸表が公開される前に現場レベルで兆候が現れることがあります。実際に取引先と接触する機会の多い営業担当者や現場社員は、担当者の交代・発注量の急減・打ち合わせのキャンセルといった変化をいち早く察知できる立場にいます。
こうした現場情報が与信管理の担当部門に届かない体制では、与信リスクの変化を見逃します。管理部門は現場社員が報告しやすい環境を整え、日常の取引の中で得られる情報を積極的に収集する仕組みをつくることで、与信管理の精度が高まります。
与信調査のコストと取引規模を照合する
取引金額の少ない取引先に対して高コストな信用調査会社への依頼調査を行うことは、コストと効果のバランスが取れません。反対に、取引規模の大きい取引先に対して内部調査のみで与信判断を行うと、情報の精度が不十分になります。
取引金額・与信限度額・リスクの大きさに応じて、調査方法とコストを使い分けることで、与信管理の実効性と効率を両立できます。
多角的・客観的な情報収集を行う
与信調査を特定の情報源のみに依存すると、取引先の実態を見誤るリスクがあります。内部調査・外部調査・直接調査・依頼調査を組み合わせ、定量・定性・商流の複数の観点から情報を収集することで、偏りのない与信判断が可能です。
また、取引先から直接得た情報は有利な内容に偏りやすい傾向にあります。第三者が作成した信用調査レポートや公開情報と照合し、客観的な視点で評価することが精度の向上につながります。
与信管理規定を整備する
与信管理の判断基準や手続きが担当者の経験や感覚に依存している状態では、担当者の異動や退職によって管理水準が一気に下がるリスクがあります。与信限度額の設定基準・審査フロー・承認権限・情報共有のルールを与信管理規定として文書化することで、組織として一貫した与信管理を運用できます。
規定は作成して終わりではなく、取引環境の変化や社内体制の変更に応じて定期的に見直すことで、実態に即した管理基準を維持できます。
まとめ
与信管理は、取引先の信用力を取引開始前に調査・評価し、与信限度額を設定した上で取引開始後も継続的に監視する一連の業務です。掛け取引を行う限り、与信管理を怠ると売掛金の未回収リスクは常に存在します。
与信調査では内部・外部・直接・依頼の4つの方法を組み合わせ、定量・定性・商流の3つの観点から取引先を評価します。評価基準表と各社評価表を整備することで、担当者による判断のばらつきを防ぎ、組織として一貫した与信管理を運用できます。
よくある質問
与信管理とは何ですか?
与信管理とは、取引先の信用力を調査・評価し、取引条件や与信限度額を管理する一連の業務です。掛け取引に伴う売掛金の未回収リスクを、取引開始前の審査と取引開始後の継続的な監視によってコントロールします。
詳しくは記事内「与信管理とは」をご覧ください。
与信管理と債権管理の違いは何ですか?
与信管理は取引開始前〜取引中に行う「貸倒リスクの未然防止」を目的とした業務で、債権管理は債権発生後の「確実な回収」を目的とした業務です。両者は連動しており、与信管理が機能していれば債権管理の負担を減らせます。
詳しくは記事内「与信管理と債権管理の違い」をご覧ください。
与信管理の流れを教えてください
取引開始前は、情報収集→信用力の分析・評価→与信限度額の設定→契約条件の交渉・取引開始の4ステップで進みます。取引開始後は債権管理・限度管理・定期的な信用力の見直し・与信リスクのコントロール・倒産時の回収対応を継続的に行います。
詳しくは記事内「取引開始前の与信管理の流れ」「取引開始後の与信管理」をご覧ください。
与信管理はどの部署が担当しますか?
業種や企業規模によって異なりますが、審査部・経理部・法務部・総務部が担当するケースが多く、営業部門が兼務する場合もあります。営業現場と管理部門が連携して情報を共有することが、与信管理の実効性を高めるうえでのポイントです。
詳しくは記事内「与信管理を進めるうえでのポイント」をご覧ください。
