請求書の基礎知識

請求書に印鑑は必要?法律・ビジネスマナー・電子印鑑まで解説

請求書に印鑑は必要?法律・ビジネスマナー・電子印鑑まで解説

請求書への押印は法律上の義務ではなく、インボイス制度や電子帳簿保存法でも要件に含まれません。一方で、脱ハンコやテレワークの広がりで印鑑の使用は減りつつも、社内規定や商習慣として押印を求める取引先は残っており、印鑑なしで運用してよいか迷う場面も少なくないでしょう。

本記事では、請求書に印鑑が必要とされる場面、印鑑の種類、電子印鑑の扱いを解説します。

目次

請求書に印鑑を押すのは義務?

請求書には厳密な形式の法的定義がなく、押印も法律上の義務ではありません。口頭での請求依頼も有効ですが、実務では取引の証明とトラブル回避のため書面での発行が望ましく、取引先の社内規定で押印が必要なら従います。

民法522条2項は「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定めており、請求や契約の成立に押印は必須ではありません。

2023年10月開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)でも、適格請求書の記載要件に押印は含まれません。登録番号や税率ごとの対価の額・消費税額などを満たせば、印鑑なしでも有効です。

出典:e-Gov法令検索「民法」 出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」

請求書に印鑑は必要?

法的には不要でも、押印はその会社から発行されたことを示す実務上の証明手段になります。近年はテレワークや脱ハンコの流れで印鑑使用は減少傾向ですが、社内規定や商習慣として押印を求める企業も残っています。

なお2020年9月に内閣府が行政手続の押印廃止方針を打ち出して以降、民間取引でも脱ハンコが広がり、印鑑なしの請求書を受け取る企業も増えています。

出典:内閣府「行政手続における押印廃止について」

インボイス制度・電子帳簿保存法と請求書の印鑑

2023年10月開始のインボイス制度と、2024年1月から電子取引データの電子保存が原則義務化された電子帳簿保存法は、請求書の作成・保存実務に大きく影響します。ただし、いずれも押印を要件とはしていません。制度の要件と印鑑の関係を整理します。

インボイス制度では押印は要件外

適格請求書(インボイス)の記載要件は、次の6項目です。

適格請求書の記載要件(6項目)

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率対象品目はその旨)
  • 税率ごとに区分した対価の額および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

押印は記載要件に含まれないため、印鑑なしでも適格請求書として消費税の仕入税額控除に使えます。

ただし社内規定で押印を求められるケースは制度施行後も残り、対応の可否は当事者間の合意で決まります。法的に不要でも、一律にやめると受領を断られるおそれがある点には注意してください。

出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」

電子帳簿保存法での電子取引データ保存と電子印鑑

電子帳簿保存法は2024年1月1日から、メールやクラウドサービスで授受した請求書などの電子取引データを電子のまま保存することを原則義務化しました。保存にあたっては「真実性の要件」と「可視性の要件」を満たす必要があります。真実性の要件は、次のいずれかを満たせば足ります。

真実性の要件(いずれか1つを満たす)

  • タイムスタンプが付与された後に取引情報を授受する
  • 取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付与する
  • 訂正・削除の履歴が残るシステムで授受および保存を行う
  • 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する

電子印鑑そのものは法的な保存要件ではなく、上記4要件のいずれかを満たせば押印の有無は問われません。電子請求書を運用するうえで重要なのは、電子印鑑を貼ることよりも、真実性の要件を満たす保存方法を選ぶことです。印鑑とデータ保存の要件は別物として切り分けて考える必要があります。

出典:国税庁「電子帳簿保存法の概要」

請求書に使用する印鑑の種類

請求書に押す印鑑には法律上の指定がなく、実務では用途に応じて複数の印鑑を使い分けます。代表的なものが実印・銀行印・角印の3種類で、それぞれ役割と管理方法が異なります。

実印

会社の登記に使用する印鑑で、法人は本店所在地の法務局に届け出て印鑑登録するもの。代表印とも呼ばれ、契約書など重要文書に押されます。印影が広く流通すると悪用リスクが高まるため、日常的な請求書への使用は一般的ではありません。

銀行印

銀行口座開設時に使用する印鑑で、実印と分けて管理するのが一般的です。実印と兼用すると紛失や悪用時のリスクが大きくなるため、用途ごとに分けて保管します。

角印

角印とは、印影が四角い印鑑です。届け出は不要ですが、企業書類用として一般的に使用され、請求書や見積書によく使われます。実印のような厳格な管理は求められないものの、社判として自社を表す印鑑のため、扱いには相応の注意が必要です。

個人事業主やフリーランスは認印でも大丈夫?

個人事業主やフリーランスは、通常の認印で問題ありません。屋号があれば信頼感向上のため専用印鑑を作る余地もあります。

用意したい印鑑の構成は屋号の有無で変わります。屋号がある場合は、契約書用の丸印、請求書・見積書用の角印、屋号名義の口座があれば銀行印の3つが一般的です。

屋号がない場合は、実印として登録した個人印と銀行印の2つで足ります。いずれもプライベート用と事業用を分けて管理しましょう。

請求書の押印方法

請求書に押印する場合は、押す位置と押し方にいくつかの慣例があります。書類としての見栄えと、偽造防止の両面から押さえておくべきポイントを確認します。

印鑑を押す位置

捺印欄がある場合はその中央に、ない場合は社名や住所の右側に押印するのが一般的です。印鑑は印字された文字を部分的に覆うように押すと、印影だけを切り取って流用されるリスクを抑えられます。

押印時の注意点

印影が不鮮明だったり部分的に欠けたりするのは避けるべきです。印鑑を紙に対して垂直に立て、位置をずらさないよう注意しながら、印鑑の角全体が紙に押し当たるように力を加えます。力が弱すぎると薄くなり、強すぎるとシワが残るため注意が必要です。

請求書に訂正印は使ってもいい?

請求書の修正に訂正印は使いません。請求書は会社の顔と捉える人が多く、訂正印で直した書類は正式なものとして敬遠されやすいためです。訂正が必要な場合は、その請求書を破棄して新たに発行し直します。

脱ハンコの流れと請求書実務への影響

請求書から印鑑をなくす動きは、ここ数年で大きく加速しました。背景にある制度変更と、実務への影響を確認します。

行政手続の押印廃止から民間取引への波及

2020年9月、内閣府は行政手続における押印原則の見直しを打ち出し、約1万5千の行政手続のうち99%以上で押印が廃止または不要となりました。

この流れを受けて、民間企業でも社内決裁や取引文書から押印を外す動きが広がり、請求書もその対象に含まれています。あわせて2001年施行の電子署名法、2005年施行のe-文書法という法的基盤がすでに整備されており、電子文書を紙と同等に扱える環境は以前から用意されていました。

脱ハンコのメリットとデメリット

脱ハンコを進めることで得られる効果と、考慮すべき課題は次のとおりです。業務効率やコストの面では効果が大きい一方、社内調整や取引先の対応状況に左右される点には留意が必要です。

<脱ハンコのメリットとデメリット>

観点メリットデメリット
業務効率印刷・押印・郵送の工程削減フロー変更の社内調整に労力
コスト用紙・インク・郵送費の削減電子化システムの導入費用
働き方テレワークでも請求書発行が完結押印承認に慣れた組織の意識転換
リスク印鑑紛失・悪用リスクの排除取引先の対応状況に左右される

特に取引先の対応が追いついていない場合、自社だけ脱ハンコを進めても紙の請求書を別途送ることになり、二重作業になる可能性があります。次章で、押印を求められた場合の実務対応を整理します。

取引先から押印を求められたときの実務対応

印鑑なしの請求書を発行できるとわかっていても、取引先から押印を求められる場面は残ります。押印要請への対応を、取引先の状況別に3つのパターンへ整理します。

社内規定で押印必須の取引先への対応

取引先のコンプライアンス規定で「押印された請求書のみ受領」と定められている場合は、規定に従うのが原則です。電子取引が認められている取引先であれば、タイムスタンプ付きの電子印鑑で対応できますが、紙のみ受け付ける取引先には角印を押した紙の請求書を郵送するのが確実です。

再発行では訂正印が使えず、印刷・押印・郵送の工程を最初からやり直すことになるため、押印の要否は取引開始時に確認しておくと無駄が減ります。

電子請求書を希望される取引先への対応

電子請求書の受領に対応している取引先には、PDFに電子印鑑を貼付するか、タイムスタンプを付与した電子請求書を送付します。

電子帳簿保存法上、受領側にも「真実性の要件」を満たす保存義務があるため、自社が送るデータがその要件を満たしているか送信前に確認しておくとよいでしょう。送信形式を事前にすり合わせておけば、受領後の差し戻しも防げます。

押印不要の取引先には印鑑なしで運用

押印を不要とする取引先が増えている現状では、最初から印鑑なしの請求書を標準として運用するのが効率的です。

一律で押印しないと決めるのではなく、取引先ごとに「押印あり/電子印鑑/押印なし」のどれで運用するかを管理表で整理しておくと、誤送付や問い合わせ対応のコストを下げられます。取引開始時にどのパターンに当てはまるかを確認しておけば、再発行や二重作業を防げます。

オンラインのやりとりでは電子印鑑も有効

電子印鑑とは、PDFなどに電子的に捺印できる印鑑データです。画像データのみを貼り付けるタイプと、タイムスタンプや本人認証情報を付けられるタイプがあります。重要な取引で使う場合は、改ざん防止や本人確認の仕組みがあるかを確認しましょう。

電子印鑑の作り方

電子印鑑は、実際の印影を取り込む方法や、Excelなどで図形から作る方法、専用ツールを使う方法で作成できます。手軽さと改ざん耐性のどちらを重視するかで、選ぶ方法が変わります。

実際の印影から作成する

実際の印鑑を取り込んで電子印鑑にする手順は次のとおりです。手元の印鑑の印影をそのまま使えるため、見た目の統一感を保てます。

実際の印影から作成する手順

  1. 真っ白な紙にはっきりと印鑑を押す
  2. スマホやデジカメで撮影し、高解像度で取り込む
  3. Excelの「挿入」タブから「画像」を選択して挿入
  4. 余白や影を削除し、背景を透過させ、画像サイズを編集

Excelで作成する

実物の印鑑がなくても、Excelの図形機能で電子印鑑を作成できます。枠と文字を組み合わせるだけで簡易的な社印を再現可能です。

Excelで作成する手順

  1. 「挿入」から「図」を選択し、「円形」や「角丸四角形」などを枠線ありで挿入
  2. 図の中心に会社名や名字を入力
  3. 図の枠の太さ、文字サイズ、文字の太さを実際の印鑑を参考に調整

無料ソフトやオンラインツールを使って作成する

電子印鑑作成用の無料ソフトやオンラインツールも利用できます。有料ツールにはタイムスタンプや本人認証情報を付与できるものもあるため、重要書類に使う場合は機能を確認しましょう。

まとめ

請求書への押印は法律上の義務ではなく、インボイス制度や電子帳簿保存法でも要件には含まれません。ただし商習慣として「正式な書類」と扱われやすく、社内規定で求められる場面は残ります。実務では印鑑なしでも有効という前提のもと、取引先ごとに押印あり・電子印鑑・押印なしのどれで運用するかを整理しておくと無駄が減ります。

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freee請求書を利用することで、入力漏れや計算ミスなどを未然に防ぎ、正確な書類をスピーディに作成できるようになります。


freee請求書利用画面のイメージ1

2023年10月から開始されたインボイス制度にも対応

2023年10月からインボイス制度が施行されました。インボイス制度の制度施行に伴い、インボイス制度の要件を満たした適格請求書の交付、計算方法の変更、インボイスの写しの保存義務化など請求書業務の負担が増えることが予想されています。

freee請求書では、金額を入力するだけでインボイスの計算方法で自動計算し、適格請求書の項目も満たした請求書を作成・発行することが可能です。

また、作成した請求書は電子保存されるため、インボイスの写しの保存義務化にも対応できます。

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freee請求書利用画面のイメージ2

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具体的に、freeeの無料テンプレート集でダウンロードできる書類には以下のようなものがあります。

<会計>
・請求書(インボイス制度対応)
・発注書
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<人事労務>
・内定通知書
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freeeの無料テンプレート集では、上記のほかにも無料でダウンロードできる書類を準備中です。ぜひこちらもご活用ください。

よくある質問

請求書に印鑑がなくても有効ですか?

請求書への押印は法律で義務付けられていません。インボイス制度の適格請求書でも、登録番号・税率ごとの対価の額・消費税額などの記載要件を満たしていれば、押印がなくても法的に有効な書類として扱われます。

詳しくは「インボイス制度では押印は要件外」で解説しています。

請求書に押す印鑑はなんでもよいですか?

法律上はどの印鑑でも有効ですが、実務では「角印(社印・社判)」を使うのが一般的です。実印は契約書などの重要書類、銀行印は金融機関との取引、角印は請求書・見積書・領収書という使い分けが標準です。

詳しくは「請求書に使用する印鑑の種類」で解説しています。

請求書に押すのは実印ですか?

実印は会社の登記に使う重要書類向けの印鑑のため、請求書に実印を押すことは一般的ではありません。日常業務の請求書には角印が使われます。誤って実印を使い続けると、印影が広く流通して悪用リスクが高まる点にも注意が必要です。

詳しくは「実印」で解説しています。

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