請求書の基礎知識

請求書に源泉徴収税額の記載は必要?計算方法や書き方・対象について解説

監修 好川寛 プロゴ税理士事務所


源泉徴収とは、特定の所得について、支払者が所得税を徴収して納付する制度のことです。源泉徴収の対象となる報酬を受け取る場合、支払いを受ける者は請求書に源泉徴収の金額を記載することがあります。

本記事では、源泉徴収についての基本的な知識・源泉徴収税額の計算方法・請求書における源泉徴収税額の書き方などに加え、インボイス制度と源泉徴収の関係についても解説します。

目次

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請求書に源泉徴収税額を書くのは義務?

所得税法上、請求書に源泉徴収税額を記載することは義務ではありません。ただし、源泉徴収をミスなくスムーズに進めるために、支払者が支払いを受ける者に対して「請求書作成時に源泉徴収税額を明記すること」を求めるのが一般的です。

源泉徴収とは

そもそも源泉徴収とは、特定の所得について、その所得の支払いの際に支払者が所得税を徴収して納付する制度です。所得税法6条では、源泉徴収を行う義務は報酬を支払う側が負うものと定められています。

支払者は報酬の支払いを行う際、決められた方法で計算した所得税額を報酬額から差し引き、国に納付します。「報酬を支払う側が、受け取る側の代わりに納税してくれる」と考えるとわかりやすいでしょう。

「特定の所得」には、給与・退職手当のほかに、原稿料や講演料、弁護士や司法書士などに支払う報酬・料金などが含まれます。源泉徴収の対象となる仕事は記事内「源泉徴収の対象となる仕事」で詳しく解説します。

源泉徴収とは

出典:国税庁「令和7年版 源泉徴収のしかた」

所得税の源泉徴収を義務付けられた報酬が含まれている場合、報酬額(支払金額)から源泉徴収税額を差し引いた金額が、実際に支払われる金額となります。

報酬額(支払金額) − 源泉徴収額 = 実際に支払われる金額(請求額)

出典:e-Gov法令検索「所得税法 第六条」 出典:国税庁「令和7年版 源泉徴収のしかた」 出典:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」

源泉徴収の計算方法

源泉徴収の計算方法は請求額が100万円以下の場合と、100万円を超える場合で異なります。ここでは実例をあげて計算方法を解説します。

報酬額(支払金額)が100万円以下の場合

報酬額が100万円以下の場合、報酬額の10.21%が源泉徴収の税額となります。

【例】80万円(税別)の報酬を受け取る場合

・源泉徴収額:800、000 × 0.1021 = 81、680(円)
・実際に支払われる金額:880、000 − 81、680 = 798、320(円)
※880、000 = 報酬80万円の税込金額

出典:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」

報酬額(支払金額)が100万円を超える場合

報酬額が100万円を超える場合は、報酬額から100万円を引いた金額の20.42%に10万2、100円を加えた金額が源泉徴収の金額となります。

【例】120万円(税別)の報酬を受け取る場合

・源泉徴収額:(1、200、000 − 1、000、000)× 0.2042 + 102、100 = 142、940(円)
※1円未満の端数は切り捨て
・実際に支払われる金額:1、320、000 − 142、940 = 1、177、060(円)
※1320、000 = 報酬120万円の税込金額

出典:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」

請求書に源泉徴収額を記載するときのポイント

請求書に源泉徴収を記載した場合の書き方

請求書に源泉徴収額を記載する際に注意すべきポイントとして、以下の3点を解説します。

  • 源泉徴収額の記載方法と小数点以下の数字の処理
  • 消費税の記載方法
  • 報酬とともに経費も請求する場合の記載方法

源泉徴収額の記載方法と小数点以下の数字の処理

請求書に源泉徴収額を記載する場合、報酬額から源泉徴収額が差し引かれて請求額が計算されていることがわかるよう、報酬額・請求額とは別に「源泉徴収額」の項目を設けて各金額を書くのが一般的です。

計算した源泉徴収税額に小数点以下の数字が発生した場合は、切り捨てて記載してください。

消費税の記載方法

原則として消費税等(消費税・地方消費税)の額を含めた金額が源泉徴収の対象ですが、請求書において報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分して記載されている場合は、その報酬・料金の額のみを源泉徴収の対象としても問題ありません。

そのため報酬などの額は「税抜」の金額とし、消費税を分けて記載するほうがよいでしょう。

たとえば報酬が税込880、000円の場合、【A例】「税込表記」と【B例】「税抜表記」では、8、168円の差額が発生します。税抜表記のほうが、実質的に源泉徴収額を抑えられます。

【A例】「税込表記」消費税を含めて報酬が提示されている場合

・源泉徴収額:880、000 × 0.1021 = 89、848(円)
実際に支払われる金額:880、000 − 89、848 = 790、152(円)

【B例】「税抜表記」消費税を含めずに報酬が提示されている場合

・源泉徴収額:800、000 × 0.1021 = 81、680(円)
実際に支払われる金額:880、000 − 81、680 = 798、320(円)

出典:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」

報酬とともに経費も請求する場合の記載方法

報酬に加えて旅費・宿泊費などの経費も請求する場合、基本的には経費も源泉徴収の対象として源泉徴収税額を計算・記載します。

ただしその費用が、報酬の支払いを受ける人を介さず、支払者から交通機関や宿泊施設などに直接支払われる場合、かつ経費の額として妥当と認められる範囲内であるときは、源泉徴収の対象外として問題ありません。

出典:国税庁「令和7年版 源泉徴収のしかた p.23」

請求書に源泉徴収額を書くメリット

請求書に源泉徴収額を記載すると、企業など報酬を支払う側と個人事業主・フリーランスなど報酬の支払いを受ける側、双方にとってメリットがあります。

企業などの支払者側は、請求書上で「実際に支払う報酬額(源泉徴収額を天引きした金額)」を確認できるため、会計業務がスムーズになるでしょう。

支払いを受ける側も、事前に源泉徴収額を計算・記載しておけば、入金された金額に間違いがないかを確認することができます。また請求書への記載を通じて自身の源泉徴収額を把握することができるため、確定申告をするときにも役立ちます。

インボイス制度導入で源泉徴収額の書き方は変わる?

2023年10月1日からインボイス制度が導入されましたが、これは納税される消費税額を正しく計算するために設けられた制度のため、所得税に関係する源泉徴収制度の内容や請求書への源泉徴収税額の記載方法に変更はありません。

インボイス制度は、「適格請求書(インボイス)」と呼ばれる請求書や納品書、領収書などを適切に保管することを条件に、仕入税額控除が適用される制度です。インボイスの要件を満たしていない請求書や領収書では、原則として消費税の仕入税額控除を受けることができません。

インボイス制度について詳しく知りたい方は、別記事「インボイス制度とは?概要や変更点を図解でわかりやすく解説!」をあわせてご確認ください。

源泉徴収の対象となる仕事

源泉徴収の対象となる仕事は限られており、報酬や料金などの支払いを受ける者が個人であるか法人であるかによって異なります。

個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

  1. 原稿料・講演料など
    (懸賞応募作品などの入選者に支払う賞金などについては、一人に対して1回に支払う金額が50、000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
  2. 弁護士・公認会計士・司法書士など特定の資格を持つ人に支払う報酬・料金
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロ野球選手・プロサッカーの選手・プロテニスの選手・モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  5. 映画・演劇・その他芸能(音楽・舞踊・漫才など)・テレビジョン放送の出演などにかかる報酬・料金や、芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  6. バンケットホステス・コンパニオンや、バー・キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  7. プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  8. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

出典:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
出典:国税庁「源泉徴収のしかた 令和7年版 p.23」

法人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

  • 馬主である法人に支払う競馬の賞金

出典:国税庁「源泉徴収のしかた 令和7年版 p.24」

源泉徴収を行う際の注意点

同じ会社へ請求する場合でも、業務内容によって源泉徴収の対象となるもの・ならないものがあります。また、士業の源泉徴収にはほかと異なる点が複数あり、注意が必要です。

具体例として、Webデザイン事務所へ発注する場合の注意点と、士業の源泉徴収の注意点について解説します。

Webデザイン事務所へ発注する場合

Webデザイン事務所への発注においては、デザイン業務は源泉徴収の対象になり、コーディング(プログラムの記載や画像や音声データのコード化)業務は、源泉徴収の対象外になる点に注意が必要です。

Webデザインは、源泉徴収の対象である「デザイン料」に含まれます。一方、Webページの作成に欠かせないHTML・CSS・JavaScriptなどのプログラム言語によるコーディング業務は、国税庁の定める源泉徴収の対象報酬に含まれていません。

そのため、請求書には源泉徴収の対象となるデザイン料と、源泉徴収の対象外であるコーディング料を明確に分けて記載する必要があります。

士業の源泉徴収の注意点

司法書士・土地家屋調査士・海事代理士の源泉徴収税額の計算方法は、ほかの士業と異なるだけでなく、士業であっても行政書士報酬には源泉徴収の義務がありません。

士業ごとに異なる点も多いため、自身が士業に該当する場合は、確認のうえ請求書を作成しましょう。

出典:国税庁「源泉徴収のしかた 令和7年版 p.23」

源泉徴収税を納税する方法

報酬の支払いを受ける側で、すでに源泉徴収額を差し引かれた状態で報酬を受け取った場合、源泉徴収に関する作業は特に不要です。

一方、報酬を支払う側は源泉徴収税額を預かっている状態のため、報酬から差し引いた源泉徴収の納税をおこなう必要があります。

納税方法は、コンビニや窓口を経由した現金納付に加え、キャッシュレス納付も選択可能です。キャッシュレス納付には、e-taxを経由して行うダイレクト納付・インターネットバンキングの利用のほか、クレジットカード納付・スマホアプリ納付などがあります。

源泉徴収をした所得税や復興特別所得税は、給与や報酬を支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。

ただし、給与を支給する人員が常時10人より少ない場合は、所得税・復興特別所得税を半年ごとの年2回にまとめて納める特例措置が設けられています。特例対象になるには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出が必要です。

出典:国税庁「源泉所得税の納税手続」 出典:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」

まとめ

源泉徴収額を請求書に記載することは、個人事業主・フリーランスなど報酬の支払いを受ける者の義務ではありません。しかし、支払者の会計業務の負担を軽減できるほか、入金時や確定申告時に正確な金額が把握できるメリットもあります。

請求書に源泉徴収税額を記載する場合、小数点以下は切り捨てて書くこと、報酬の額を税別表記にすることで税負担を軽減できる可能性があることなどのポイントを押さえておきましょう。

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よくある質問

請求書への源泉所得税とは?

源泉所得税とは、特定の所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する制度(源泉徴収)によって納める税金です。

請求書に源泉徴収額を記載することは任意ですが、源泉徴収額を記載することで、本来の報酬額と実際に支払われる報酬額を認識しやすくなります。

詳しくは、記事内の「請求書に源泉徴収税額を書くのは義務?」をご覧ください。

源泉徴収額は支払金額の何%ですか?

源泉所得税額は、支払金額(報酬)の10.21%が原則です。

ただし、支払金額(報酬)が100万円より多い場合は、支払金額(報酬)から100万円を差し引いた金額の20.42%に10万2、100円を加算した金額が源泉徴収の金額となります。

詳しくは、記事内の「源泉徴収の計算方法」をご覧ください。

請求書に記載された源泉徴収額は誰が払う?

請求書に記載された源泉徴収額は、報酬の支払者が納税します。納税先は、企業の所在地における所轄税務署です。

企業が個人事業主・フリーランスに仕事を依頼(契約)した場合であれば、個人事業主・フリーランス側が請求書を作成し、請求書に記載されている源泉徴収額を企業が所轄税務署に納付します。

詳しくは、記事内の「源泉徴収とは」をご覧ください。

源泉徴収の対象とならない仕事とは?

国税庁に指定されていない仕事は、源泉徴収の対象になりません。たとえば、Webデザインは「デザイン業務」として源泉徴収の対象になりえますが、CSSやJavaといったプログラムを書くコーディングは、源泉徴収の対象外となるのが一般的です。

詳しくは、記事内の「源泉徴収の対象となる仕事」をご覧ください。

参考文献

監修 好川寛(よしかわひろし)

元国税調査官。国税局では税務相談室・不服審判所等で審理事務を中心に担当。その後、大手YouTuber事務所のトップクリエイターの税務支援、IT企業で税務ソフトウェアの開発に携わる異色の税理士です。

監修者 好川寛

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