請求書には消費税法上の必須5項目に加え、2023年10月以降は適格請求書(インボイス)として認められるための4項目の記載が求められます。
本記事では請求書に書くべき必要事項を、消費税法上の必須項目・インボイス対応の追加項目・実務上の推奨項目の3層に分けて、実務上の注意点とあわせて解説します。記載漏れがあると買い手側で仕入税額控除が受けられなくなる可能性があるため、何を書くべきかを正確に把握しておきましょう。
目次
- 請求書に関する基礎知識
- 請求書に必須の5項目(消費税法上の記載要件)
- 適格請求書(インボイス)として認められるための4項目
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 軽減税率対象品目である旨の表記
- 税率ごとに区分した対価の額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 実務上記載が推奨される項目
- 宛名と発行者情報の書き方
- 請求書発行日と請求書番号
- 振込先と支払期限
- 請求書の作成前に確認すべきこと
- 振込手数料の負担者
- 消費税の取り扱い
- 送付方法
- 請求書の保存期間と電子帳簿保存法への対応
- 法人と個人事業主の保存期間
- 電子帳簿保存法による電子保存の要件
- 請求書の書き方でよくあるミスと対策
- 登録番号の記載漏れ・誤記
- 税率区分と端数処理のミス
- 宛名・敬称の誤りと発行漏れ
- まとめ
- 請求書や見積書・発注書の発行と管理を効率的に進める方法
- よくある質問
請求書に関する基礎知識
請求書は、取引先から確実に代金を回収するための書類であると同時に、税務上の証憑として重要な役割を担います。法律上の発行義務はありませんが、消費税法上の記載要件を満たさない請求書では、買い手が仕入税額控除を適用できない場合があります。
請求書の役割は、商習慣上の代金請求にとどまりません。法人税法・所得税法では証憑書類としての保存義務(法人7年・個人事業主5年)が定められ、消費税法では一定の記載事項を満たす請求書を保存することが仕入税額控除の要件となっています。さらに2023年10月のインボイス制度開始以降、適格請求書発行事業者は取引先(課税事業者)から求められた場合に適格請求書を交付する義務を負います。
請求書に必須の5項目(消費税法上の記載要件)
請求書の必要事項は、消費税法に基づく区分記載請求書等の記載要件として5項目が定められています。インボイス制度開始後も、適格請求書発行事業者ではない場合はこの5項目を満たす必要があります。
消費税法上の必須5項目
- 書類作成者(請求者)の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率対象品目である場合はその旨)
- 税率ごとに区分して合計した取引金額(税込)
- 書類の交付を受ける事業者(請求先)の氏名または名称
法人名は正式名称で記載し、「(株)」のような略称は避けます。取引年月日は請求書の発行日ではなく、実際に商品を引き渡した日やサービスを提供した日を記載します。
取引内容は商品名・サービス名を具体的に書き、軽減税率(8%)の対象品目を含む場合は「※」などの記号で明示します。取引金額は税率ごとに合計した税込金額を記載し、複数税率が混在する場合は8%分と10%分を分けて表示します。
住所や電話番号は法定の必須項目ではありませんが、取引先の経理処理を考慮すると記載しておくのが一般的です。
適格請求書(インボイス)として認められるための4項目
適格請求書とは、消費税の仕入税額控除を受けるために必要な記載要件を満たす請求書です。前章の必須5項目に加えて、以下の4項目を記載する必要があります。
インボイスに追加で必要な4項目
- 適格請求書発行事業者の登録番号(書類作成者氏名と併せて記載)
- 軽減税率対象品目である旨の表記
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
適格請求書発行事業者の登録番号
登録番号は「T」で始まる13桁の番号で、法人の場合は法人番号と同じ13桁が、個人事業主の場合は税務署から新規に発行された番号が割り当てられます。請求書の発行者氏名・名称の周辺に記載するのが一般的です。
登録番号の記載漏れがあると、その請求書は適格請求書として認められず、買い手側で仕入税額控除を受けられなくなるため、番号の桁数や「T」の有無を発行前に確認することが重要です。なお、適格請求書発行事業者の登録は税務署への申請が必要で、登録を受けていない事業者は登録番号自体が存在しないため適格請求書を発行できません。
軽減税率対象品目である旨の表記
軽減税率(8%)の対象となるのは、酒類・外食を除く飲食料品と、定期購読契約に基づく週2回以上発行される新聞です。これらを取り扱う場合、対象品目に「※」「☆」などの記号を付けて軽減税率対象であることを明示します。
実務上は、明細欄に記号を付け、欄外に「※は軽減税率対象品目」のように凡例を記載する方法が一般的です。標準税率(10%)のみで構成される取引の場合、この項目は不要です。
税率ごとに区分した対価の額と適用税率
8%対象と10%対象の取引が混在する場合、それぞれを合計した金額と適用税率を別々に記載します。記載方法は税抜価格・税込価格のいずれでも構いませんが、社内で統一しておくのが望ましいです。
たとえば、8%対象が20,000円(税抜)、10%対象が30,000円(税抜)の取引であれば、「8%対象 20,000円」「10%対象 30,000円」のように税率ごとの合計を表示します。
税率ごとに区分した消費税額等
税率ごとの合計対価に基づいて消費税額を計算し、それぞれを請求書上に明記します。「消費税額(8%):1,600円」「消費税額(10%):3,000円」のような形式が一般的です。
消費税額の端数処理は、1つの適格請求書につき税率ごとに1回のみ行うのがルールです。切り捨て・切り上げ・四捨五入のいずれかから選択できますが、複数の品目ごとに端数処理を繰り返す方式はインボイス制度では認められていない点に注意が必要です。
実務上記載が推奨される項目
法定の必須項目を満たしていても、入金トラブルや経理処理の遅延を避けるためには、以下の項目を記載しておくのが一般的です。
実務上記載が推奨される項目
- 請求書のタイトル(「請求書」と用紙上部に明記)
- 請求先の宛名(敬称付き)
- 発行者情報(住所・電話番号など)
- 請求書発行日
- 請求書番号
- 商品・サービスの明細(数量・単価・小計)
- 合計請求額
- 振込先口座情報
- 支払期限
- 振込手数料の負担者など備考事項
宛名と発行者情報の書き方
宛名は、法人の場合は「○○株式会社 御中」、個人や担当者宛の場合は「○○様」と記載します。「御中」と「様」を併用した「○○株式会社 御中 △△様」のような書き方は誤りです。法人名は正式名称を使い、前株(株式会社○○)と後株(○○株式会社)を取り違えると失礼にあたるため、契約書や名刺で確認しておく必要があります。
発行者情報は、自社名・住所・電話番号・担当者名(個人事業主の場合は氏名または屋号、住所、電話番号)を記載します。押印は法的義務ではありませんが、商習慣として求められることがあり、押す場合は社名や氏名に少しかかるように押印します。
請求書発行日と請求書番号
請求書発行日は、取引先の経理締め日に合わせて設定します。たとえば取引先が月末締めの場合、請求書発行日も月末日付とするのが一般的です。発行日のずれが原因で支払いが翌月以降にずれ込むケースもあるため、初回取引時に締め日と支払日を確認しておくべきです。
請求書番号は、自社で請求書を管理するための通し番号です。法定必須ではありませんが、取引先からの問い合わせ対応や控えの参照を容易にするため、社内で採番ルールを統一して付番することが推奨されます。日付と連番を組み合わせる方法(例:20260505-001)が一般的です。
振込先と支払期限
振込先は、金融機関名・支店名・口座種別(普通/当座)・口座番号・口座名義(カナ)を記載します。銀行コードと支店コードを併記すると、取引先の入力ミスを防げます。
支払期限は、契約や見積書で合意した日付を記載します。「請求書発行日から30日以内」または「翌月末日払い」が一般的な設定です。なお製造委託や役務提供の委託など、中小受託取引適正化法(取適法。2026年1月に下請法から改称)の対象となる取引では、成果物の受領日から起算して60日以内に支払期日を定める必要があります。
請求書の作成前に確認すべきこと
請求書を発行する前に、取引先と認識を合わせておくべき事項がいくつかあります。
締め日と支払日の組み合わせは「月末締め翌月末払い」「20日締め翌月10日払い」など取引先によって異なり、締め日に合わない発行日にすると入金が1か月以上ずれ込むこともあるため、新規取引時に必ず確認します。
以下の点も事前に整理しておくと、再発行や差し替えの手間を減らせます。
振込手数料の負担者
民法第485条では、債務者(支払う側)が弁済の費用を負担することが原則と定められています。これに従えば振込手数料は買い手の負担となりますが、契約や慣習で売り手負担とするケースも少なくありません。事前に取引先と取り決めておき、請求書の備考欄に「振込手数料は貴社にてご負担ください」などと明記することでトラブルを防げます。
消費税の取り扱い
免税事業者であっても、消費税相当額を上乗せして請求すること自体は認められています。ただし免税事業者は適格請求書を発行できないため、買い手は仕入税額控除(経過措置を除く)を受けられない点に注意が必要です。
課税事業者で適格請求書発行事業者として登録している場合は、税率ごとの対価と消費税額を区分して記載する必要があります。
詳しくは「適格請求書(インボイス)として認められるための4項目」で解説しています。
送付方法
請求書の送付方法は、郵送・メール添付・クラウドサービス経由の3パターンが一般的です。電子データで送付する場合は、電子帳簿保存法に基づく電子取引の要件を満たして保存する必要があります。
郵送の場合は添え状を同封し、メール添付の場合はPDF形式に変換して改ざんリスクを減らすのが望ましい運用です。
請求書の保存期間と電子帳簿保存法への対応
発行した請求書の控え、および受領した請求書は、税法上の保存義務があります。インボイス制度・電子帳簿保存法の改正により、保存方法のルールが厳格化されています。
法人と個人事業主の保存期間
請求書の保存期間は、事業者区分によって異なります。
<事業者区分別の請求書保存期間>
| 事業者区分 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 法人 | 7年間 | 事業年度確定申告書提出期限の翌日 |
| 個人事業主(消費税課税事業者) | 7年間 | 確定申告書提出期限の翌日 |
| 個人事業主(免税事業者) | 5年間 | 確定申告書提出期限の翌日 |
適格請求書発行事業者は、課税事業者として7年間の保存義務を負います。法人で青色欠損金が生じた事業年度については10年間の保存が求められるなど、条件によって期間が延びるケースもあります。
電子帳簿保存法による電子保存の要件
電子帳簿保存法の改正により、2024年1月1日以降は電子取引で授受した請求書を電子データのまま保存することが義務化されています。電子取引とは、メール添付・クラウドサービス・EDIなどで電子的にやり取りされた請求書を指し、これらを紙に印刷して保存することは原則として認められません。電子データのまま保存する場合は、以下の要件を満たす必要があります。
電子取引データの保存要件
- 改ざん防止措置(タイムスタンプの付与・訂正削除履歴の保持・改ざん防止の事務処理規程の整備のいずれか)
- 検索機能の確保(取引年月日・取引金額・取引先名で検索できる状態)
- ディスプレイやプリンタなど、税務調査時に閲覧・出力できる環境の備付け
紙で発行・受領した請求書は引き続き紙のまま保存できますが、ペーパーレス化を進めるためにスキャナ保存制度を利用して電子化することも可能です。
請求書の書き方でよくあるミスと対策
請求書のミスは、取引先の経理処理を遅らせたり、自社の信用低下につながったりします。実務でよく発生するミスとその対策を整理します。
登録番号の記載漏れ・誤記
適格請求書発行事業者の登録番号は「T」で始まる13桁ですが、Tの記載忘れや桁数不足、他社の登録番号との混同が起こりがちです。登録番号に誤りがあると、その請求書は適格請求書として認められず、買い手の仕入税額控除に支障が出ます。発行前にダブルチェックする運用を社内で定めることが重要です。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」では、登録番号から事業者情報を検索できます。取引先からの請求書を受け取った際にも、登録番号の有効性を確認することが推奨されます。
税率区分と端数処理のミス
軽減税率対象品目を含む取引で、税率を区分せずに合計してしまったり、端数処理を品目ごとに繰り返したりするミスが多く見られます。インボイス制度では端数処理は税率ごとに1回のみであるため、品目単位で円未満を切り捨てた合計を税率ごとの消費税額として記載することは認められません。
税率区分のミスを防ぐには、明細行ごとに税率を明示し、最終的に税率別の合計欄を別途設ける書式を採用するのが有効です。
宛名・敬称の誤りと発行漏れ
「御中」と「様」の併用や前株・後株の取り違えは、形式上のミスでありながら取引先の心証を害します。請求書を発行する前に、契約書または取引先の正式な名称を再確認し、宛名・敬称を社内ルールで統一しておくべきです。
請求書の発行漏れや送付遅延は、入金の遅れに直結します。月次の発行作業をスケジュール化し、取引先ごとの締め日カレンダーを社内で共有しておくことで防げます。クラウド型の請求書作成ソフトを利用すれば、発行漏れアラートや自動送付機能で属人化を回避でき、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応もテンプレートの更新なしで進められます。
まとめ
請求書の必要事項は、消費税法上の必須5項目(書類作成者氏名・取引年月日・取引内容・取引金額・交付先事業者名)に加え、適格請求書として認められるためには登録番号・軽減税率対象明示・税率ごとの対価・税率ごとの消費税額の4項目を満たす必要があります。
インボイス制度は2023年10月に始まり、2024年1月以降は電子帳簿保存法による電子保存も本格化しているため、記載要件と保存ルールの両面で対応が求められます。
請求書を発行する側の事業者は、自社が適格請求書発行事業者かどうかを確認した上で、必須項目に加えて宛名・発行日・請求書番号・振込先・支払期限といった実務上の推奨項目を整え、形式上のミスをなくす運用を社内で整備することが重要です。
法定の記載要件を毎回手作業で確認するのは負担が大きいため、インボイス制度・電子帳簿保存法に対応したクラウド型の請求書作成サービスを利用する方法もあります。
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2023年10月から開始されたインボイス制度にも対応
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・請求書(インボイス制度対応)
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freeeの無料テンプレート集では、上記のほかにも無料でダウンロードできる書類を準備中です。ぜひこちらもご活用ください。
よくある質問
請求書に必ず記載すべき項目は何ですか?
消費税法上、書類作成者の氏名または名称・取引年月日・取引内容・税率ごとに区分して合計した取引金額(税込)・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称の5項目が必須です。適格請求書発行事業者の場合は、これに加えて登録番号・軽減税率対象品目である旨・税率ごとに区分した対価の額と適用税率・税率ごとに区分した消費税額の4項目が必要です。
詳しくは「請求書に必須の5項目」と「適格請求書として認められるための4項目」で解説しています。
個人事業主・フリーランスの請求書で必要な事項は法人と違いますか?
法定の必須項目は法人と同じで、書類作成者氏名(屋号でも可)・取引年月日・取引内容・取引金額・交付先事業者名の5項目を満たす必要があります。個人事業主特有の論点としては、自宅住所の代わりに事務所住所や私書箱を記載できる点、原稿料・デザイン料など特定業務では源泉徴収税額(10.21%)を併記する点が挙げられます。
詳しくは「実務上記載が推奨される項目」で解説しています。
請求書に法律で定められた書式はありますか?
請求書の書式そのものに法定のフォーマットはなく、紙でもデータでも、Word・Excel・専用ソフトのいずれで作成しても構いません。ただし消費税法上の必須5項目および適格請求書の追加4項目の記載要件を満たす必要があり、電子取引で授受したものは電子帳簿保存法に基づく電子保存が義務化されています。
詳しくは「請求書の保存期間と電子帳簿保存法への対応」で解説しています。
適格請求書発行事業者の登録番号がない場合はどうすればよいですか?
登録番号がない事業者は、適格請求書を発行できません。この場合、消費税法上の区分記載請求書として必須5項目を記載すれば請求書としては有効ですが、買い手側は原則として仕入税額控除を受けられません。ただし経過措置として、2026年9月までは仕入税額相当額の80%、2026年10月から2028年9月までは70%を控除できる期間が設けられています。取引継続のために登録を検討する場合は、所轄税務署への登録申請が必要です。
詳しくは「適格請求書発行事業者の登録番号」で解説しています。
