請求書の基礎知識

適格請求書とは?書き方や保存方式、発行事業者への登録方法について解説

最終更新日:2022/08/01

監修 アトラス総合事務所

適格請求書とは?書き方や保存方式、発行事業者への登録方法について解説

2023年10月1日よりスタートするインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、ビジネス上の取引において売り手側も買い手側も適格請求書(インボイス)を扱うこととなります。

この記事では、売り手側と買い手側の双方の視点で適格請求書の扱い方や保存方式、適格請求書発行事業者の登録申請方法について解説します。

目次

インボイス制度(適格請求書等保存方式)のおさらい

適格請求書を紹介する前に、そもそもインボイス制度とは何なのかをおさらいしましょう。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは

インボイス制度は、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式で、正式名称は「適格請求書等保存方式」です。インボイス制度は、商品やサービスの売り手と買い手の双方に適用され、売り手側は適格請求書を発行し、写しを保存、買い手側は適格請求書を保存する必要があります。

インボイス制度は2023年(令和5年)10月1日から開始され、適格請求書発行事業者に限り適格請求書を発行でき、消費税の仕入税額控除が適用されます。自社が適格請求書発行事業者になるべきかどうかは、自社および取引先が免税事業者か課税事業者かなどによって異なります。

以下の表は、売り手と買い手それぞれのパターンに応じて、適格請求書発行事業者になるべきかどうかを示した早見表です。ぜひ参考にしてください。


インボイス制度のパターン別早見表

売り手は、買い手に対して消費税額を正しく伝える必要があります。適用税率や税率ごとの消費税額を明記した適格請求書を発行することで、取引の透明性を高めることができます。

また、インボイス制度導入は、免税事業者の消費税に関する益税を是正する目的もあります。

【関連記事】
インボイス制度とは?2023年10月導入までに必要な対応をわかりやすく解説

仕入税額控除とは

事業者が納める消費税は、売上にかかる消費税(売上税額)と、仕入れにかかる消費税(仕入税額)の差額分であり、この仕組みを「仕入税額控除」といいます。

納税すべき消費税の計算式は「売上時に顧客から受け取った消費税額 - 仕入れや経費にかかった消費税額」です。仕入税額控除によって、同一商品からの消費税の重複支払いを防ぐことができます。

【関連記事】
消費税の仕入税額控除とは?基礎知識とインボイス制度での変更点をわかりやすく解説

適格請求書(インボイス)とは

適格請求書は「インボイス」とも呼ばれ、売り手が買い手に対して適用税率や消費税額などを正確に伝えるため一定の事項を記載し作成される請求書や納品書などの書類を指します。

現在は仕入先が発行した請求書があれば仕入税額控除を受けられますが、インボイス制度開始後は適格請求書を用いて仕入税額控除の申請を行うことになります。

請求書以外の仕入明細書や納品書、領収書でも下記6項目がすべて記載されていれば、手書き・電子問わず適格請求書として交付できます。

適格請求書に必要な記載事項

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
③ 取引年月日
④ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
⑤ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑥ 税率ごとに区分した消費税額等
⑦書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要

現行の区分記載請求書の記載項目に、「①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」「④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率」「⑤税率ごとに区分した消費税額等」が追加されています。

登録番号は適格請求書発行事業者に発行されるため、適格請求書を交付するには事前に適格請求書発行事業者の登録申請が必要です。

<適格請求書の例>

適格請求書のサンプル画像

適格簡易請求書とは

小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業などの不特定かつ多数の人々に対して販売やサービス提供を行っている場合は、適格請求書に代えて「適格簡易請求書」を発行することが認められています。

以下5項目が記載されていれば、レシートや領収書も適格簡易請求書として発行できます。

適格簡易請求書に必要な記載事項

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要

<適格簡易請求書の例>

適格簡易請求書のサンプル画像

売り手側の適格請求書(インボイス)発行における注意点

適格請求書を扱う際に、売り手側が注意すべきポイントを解説します。

適格請求書発行事業者へ登録が必要

前述のとおり、適格請求書は「適格請求書発行事業者」でなければ発行できません。適格請求書発行事業者になるためには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出し、審査を受ける必要があります。税務署での審査後、「登録通知書」が発行されます。

登録が完了した事業者は、国税庁ホームページの「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録番号や事業者名、登録年月日などを確認できます。

ただし、適格請求書発行事業者として登録できるのは、消費税の課税事業者に限られます。法人や個人事業主、フリーランスなどの事業形態は問いませんが、免税事業者は登録できません。

免税事業者とは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者を指します。免税事業者は売上規模が比較的小さいため、消費税の計算の負担を考慮し、納税義務が免除されています。

免税事業者が適格請求書発行事業者になるためには、課税事業者選択届出書を別途提出し、課税事業者に変更する必要があります。

なお、インボイス制度導入後6年間(2029年9月30日まで)は経過措置が設けられています。この経過措置期間中に免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請を行う場合、課税事業者選択届出書の提出は不要です。この場合、適格請求書発行事業者の登録を受けた日から課税事業者となります。

適格請求書発行事業者に登録する申請書の書き方

適格請求書発行事業者に登録するには、登録申請書を「インボイス登録センター」へ郵送で提出するか、e-Taxで申請書を提出する2つの方法があります。

郵送で提出する場合

郵送で提出する場合は、まず、国税庁のホームページから登録申請書をダウンロードして、必要事項を記載します。

登録申請書は2枚に分かれており、1枚目に記入する項目は、申請者の住所や納税地、事業者名、代表者氏名、法人番号、事業者区分など、主に事業情報です。

事業情報は、適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号とともに公表される事項も含まれているので、登記情報を確認し正確に記入する必要があります。

2枚目は確認事項にチェックをつける書類です。上部は免税事業者の確認箇所のため課税事業者は記載不要ですが、下部の登録要件の確認は免税事業者、課税事業者にかかわらずすべての事業者の記載が必要です。

登録申請書への記入がすべて完了したら、管轄地域のインボイス登録センターへ送付します。都道府県によって管轄地域が異なるため、提出前に確認しましょう。

e-Taxで申請する場合

e-Taxの場合は、フォームへの回答で申請ができます。

用紙への記入漏れを防げるほか、郵送で提出するよりもスピーディーに審査が完了します。なお、e-Taxで申請する場合は、電子証明書(マイナンバーカードなど)と利用者識別番号が必要ですので事前に準備しておきましょう。

・e-Taxソフト(WEB版)はこちら
・e-Taxソフト(SP版)はこちら

登録申請書の提出期限

登録申請書の受付はすでに開始しており、インボイス制度の開始日である2023年10月1日から適格請求書発行事業者になるには、2023年3月31日までに登録申請書を提出しなければなりません。

提出後は税務署の審査があり、登録には時間がかかります。提出期限直前は混雑が予想されるので余裕をもって申請しましょう。

提出期限の2023年3月31日以降でも申請・登録は可能ですが、その場合、インボイス制度の開始日である2023年10月1日時点では適格請求書発行事業者になることはできないため注意が必要です。

買い手の適格請求書(インボイス)の扱い方

売り手から発行された適格請求書を処理する際に、買い手側が注意すべきポイントを解説します。

請求書や納品書などを保存する

インボイス制度導入後、買い手が仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として「一定の事項を記載した帳簿及び適格請求書などの請求書等の保存」が必要となります。

したがって、適格請求書や適格簡易請求書と認められる請求書、納品書、領収書、レシート、仕入明細書などを保存する必要があります。

保存期間は課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間で、保存形式や保存方法は、電子メールやインターネット上での電子データによるものも認められています。

保存が必要となる帳簿の記載事項と、請求書の範囲は以下のとおりです。

帳簿の記載事項

  1. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 対価の額

請求書等の範囲

  1. 売り手が交付する適格請求書又は適格簡易請求書
  2. 買い手が作成する仕入明細書等(適格請求書の記載事項が記載されており、相手方の確認を受けたもの)
  3. 卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡及び農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産物の譲渡について、受託者から交付を受ける一定の書類
  4. 1〜3の書類に係る電磁的記録

出典:国税庁「インボイス制度の概要

仕入税額控除を帳簿のみの保存で受けられる場合がある

買い手が請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、以下の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

仕入税額控除が認められる取引
適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
適格簡易請求書の記載事項が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
・記載事項から取引年月日を除く
・①に該当するものを除く
古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
※古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る
質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
※質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る
宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
※宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る
適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品の購入
※購入者の棚卸資産に該当するものに限る
適格請求書の交付義務が免除される
3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス
※郵便ポストに差し出されたものに限る
従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等
(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

出典:

国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」

免税事業者からの仕入れに係る経過措置

前述のとおり、免税事業者は適格請求書発行事業者になることができません。そのため、免税事業者からの仕入れについては、買い手は仕入れ税額控除を受けられません。

ただし、インボイス方式開始後6年間は、適格請求書発行事業者以外からの仕入れであっても、一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。

経過措置の期間と仕入税額控除割合は以下のとおりです。

期間 割合
2023年10月1日から2026年9月30日まで 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日から2029年9月30日まで 仕入税額相当額の50%

出典:

国税庁「5 経過措置 (免税事業者からの仕入れに係る経過措置)」

まとめ

インボイス制度開始後は、売り手も買い手も適格請求書を取り扱う機会が増えることが予想されます。

インボイス制度導入までに適格請求書の扱い方を把握したうえで、帳簿への記載方法や適格請求書の保存方式について準備を進めていきましょう。

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