人事労務の基礎知識

配偶者特別控除の計算シミュレーション|年収別の減税額と計算方法を解説

監修 涌井 好文 社会保険労務士

配偶者特別控除の計算シミュレーション|年収別の減税額と計算方法を解説

配偶者特別控除は、配偶者の年収と納税者本人の所得に応じて控除額が変わるため、「いくら減税されるのか分かりにくい」と感じる人も多い制度です。とくに年収の目安だけで判断すると、本来の控除額とズレが生じる可能性があります。

本記事では、配偶者特別控除の仕組みや計算方法を整理したうえで、年収別の減税額をシミュレーションします。実務での判断や従業員への説明にも活用できるように、ポイントを押さえてまとめているので、参考にしてください。

目次

企業向け|配偶者特別控除の計算シミュレーション早見表

配偶者特別控除による減税額は、配偶者の年収(給与収入)と納税者本人の所得に応じて変わります。実務では控除額そのものではなく、「最終的にいくら税負担が軽減されるか」を把握することがポイントです。

減税額は「控除額×税率」で算出されるため、同じ控除額でも税率によって影響は異なります。下記では、税率10%を前提に代表的な年収帯ごとの目安を整理しています。


配偶者の年収
(目安)
控除額
(最大)
減税額の目安
(税率10%)
減税額計算式
123万円超~
160万円以下
38万円10%3.8万円38万×10%
160万円超~
180万円以下
21万~36万円10%2.1万~3.6万円控除額×10%
180万円超~
201.6万円未満
3万~16万円10%0.3万円~1.6万円控除額×10%
201.6万円以上0円-0円-

上記は税率10%を前提とした簡易シミュレーションです。実際の減税額は納税者本人の所得(税率5~20%以上)によって異なるため、あくまで目安としてください。

また、配偶者特別控除は給与収入ではなく「合計所得金額」で判定される制度です。本表の年収は給与所得控除を踏まえた目安であり、正確な控除額は個別の条件によって変動します。

正確な金額を算出するには、後述の「配偶者特別控除の計算シミュレーション方法」で解説する手順に沿って計算してください。

配偶者特別控除とは|計算前に押さえる制度の概要

配偶者特別控除とは、配偶者の収入が増えて配偶者控除の対象外となった場合でも、一定の範囲内で所得控除を受けられる制度です。配偶者の収入増加によって税負担が急に増えるのを防ぎ、世帯の手取りがなだらかに変化するよう設計されています。

配偶者控除との違い

配偶者控除と配偶者特別控除は、配偶者の所得に応じて適用される制度です。対象となる所得の違いは、下記のとおりです。

適用対象となる配偶者の所得の違い

  • 配偶者控除:58万円以下(年収目安:123万円以下)
  • 配偶者特別控除:58万円超〜133万円以下(年収目安:123万円超〜201.6万円未満)

配偶者控除は、条件を満たしていれば一定額(最大38万円)の控除が受けられます。一方、配偶者特別控除は、配偶者の所得が増えるにつれて控除額が段階的に減少していくのが特徴です。

つまり、配偶者の収入が増えて配偶者控除の対象外になった場合でも、すぐに控除がなくなるわけではありません。一定の範囲内であれば配偶者特別控除が適用され、税負担の急増を抑えられる仕組みになっています。

【令和7年度改正】所得要件の変更点

令和7年度の税制改正では、基礎控除および給与所得控除の見直しが行われ、所得計算の仕組み自体が変更されています。これにより、配偶者控除や配偶者特別控除の「年収の目安」も変化しています。

具体的には、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたことで、同じ収入でも課税対象となる所得が少なくなる仕組みになりました。その結果、配偶者特別控除の対象となる年収帯や、満額控除の目安が従来よりも高く見えるようになっています。

なお、控除の判定はあくまで「合計所得金額(58万円超133万円以下)」で行われます。そのため、年収はあくまで目安に過ぎません。実務では、必ず所得ベースで判断することが重要です。

適用条件の整理

配偶者特別控除を受けるためには、納税者本人と配偶者がそれぞれ一定の要件を満たす必要があります。主な条件は、下記のとおりです。

配偶者特別控除の適用条件

  • 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であること
  • 配偶者が民法上の配偶者であり、生計を一にしていること(内縁関係は対象外)
  • 配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下であること(給与収入のみの場合は123万円超201.6万円未満)
  • 配偶者が青色・白色申告の事業専従者として給与を受け取っていないこと
  • 配偶者本人が配偶者特別控除を適用していないこと
  • 配偶者が源泉控除対象配偶者として扱われていないこと(重複適用がないこと)

なお、判定は年収ではなく「合計所得金額」で行われます。給与収入のみの場合でも、給与所得控除後の金額で判断されるため、年収ベースで判断しないよう注意が必要です。

配偶者特別控除の計算シミュレーション方法

配偶者特別控除の計算は、以下の手順で行います。

配偶者特別控除の計算手順

  1. 給与年収から所得金額を算出
  2. 配偶者の所得レンジから控除額を判定
  3. 控除額 × 税率 = 減税額を算出

配偶者特別控除の計算自体はシンプルですが、「年収ではなく所得で判定する点」と「控除額が段階的に変わる点」が間違いやすいポイントです。

1.給与年収から所得金額を算出

まずは、配偶者の給与年収から「所得金額」を算出します。配偶者特別控除は年収ではなく、所得金額をもとに判定されるためです。

所得金額は、年収から給与所得控除を差し引いて求めます。給与収入のみの場合の計算方法は、下記のとおりです。

所得金額 = 給与年収 − 給与所得控除

令和7年度以降は給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられており、同じ年収でも以前より所得は低く算出されます。副業や不動産収入がある場合は、それらを含めた「合計所得金額」で判定しましょう。給与収入だけで判断しない点に注意が必要です。

2.配偶者の所得レンジから控除額を判定

次に、算出した配偶者の所得金額をもとに控除額を判定します。

配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が58万円を超え133万円以下の場合に適用されます。この範囲内で所得が増えるほど、控除額は段階的に減少します。

給与収入のみの場合、年収ベースでは123万円超201.6万円未満が目安です。さらに、納税者本人の所得によっても控除額が変わるため、配偶者だけでなく本人の所得区分もあわせて確認しましょう。

3.控除額×税率=減税額を算出

最後に、確定した控除額に税率を掛けて減税額を算出します。所得控除は課税所得を減らす仕組みのため、控除額そのものが減税額になるわけではありません。

たとえば、控除額が38万円で税率が10%の場合は、減税額は「38万円 × 10% = 3.8万円」となります。所得税率は5~45%の範囲で変動するため、同じ控除額でも減税額は人によって異なります。

実際には復興特別所得税が加算されますが、本記事では分かりやすさを優先し、概算で解説しています。

【年収別】配偶者特別控除の計算シミュレーション例

配偶者特別控除は、配偶者の年収に応じて控除額が変わります。どの年収帯でどの程度減税されるかを具体的に把握しておくことで、手取りの変化をイメージしやすくなります。

配偶者年収130万円の場合

配偶者の年収が130万円の場合、給与所得は下記のとおりです。

130万円 − 65万円(給与所得控除)= 65万円(所得)

この所得は配偶者特別控除の対象範囲(58万円超133万円以下)に該当し、かつ95万円以下の区分に該当するため、控除額は最大38万円となります。

税率10%で計算すると、減税額は下記のようになります。

38万円 × 10% = 3.8万円

130万円前後は満額控除が適用されるため、減税効果が大きい年収帯です。

配偶者年収160万円の場合

配偶者の年収が160万円の場合、給与所得は下記のとおりです。

160万円 − 65万円(給与所得控除) = 95万円(所得)

この水準は満額控除の上限にあたるため、納税者本人の所得が条件内であれば、引き続き38万円の控除が適用されます。

税率10%の場合、減税額は3.8万円です。このラインを超えると控除額が減少するため、満額控除の境界となる年収帯といえます。

配偶者年収180万円の場合

配偶者の年収が180万円の場合、給与所得は下記のとおりです。

180万円 − 65万円(給与所得控除) = 115万円(所得)

この水準では控除額は段階的に減少し、納税者本人の所得が900万円以下の場合、控除額は21万円程度となります。

税率10%であれば、減税額は2.1万円が目安です。収入増加に対して控除額が減るため、手取りの伸びが鈍化しやすい点に注意が必要です。

配偶者年収201.6万円以上の場合

配偶者の年収が201.6万円以上になると、給与所得控除後の所得が133万円を上回り、配偶者特別控除の対象外となります。控除額は0円となり、減税効果はありません。その分、納税者の課税所得が増え、税負担も増加する仕組みです。

いわゆる「201万円の壁」にあたるラインであり、この水準を超えるかどうかで世帯の手取りに影響が出ます。

年末調整・確定申告での実務対応

配偶者特別控除は、企業の年末調整で適用するのが基本です。実務では、従業員の申告内容を正しく確認し、控除の適用可否や金額を適切に判断できるかがポイントになります。

年末調整での控除申告手続き

企業では、従業員から提出される「給与所得者の配偶者控除等申告書」をもとに、配偶者特別控除の適用可否と控除額を判定します。

このとき注意したいのが、年収ではなく「合計所得金額」で判断する点です。給与収入のみの場合でも、給与所得控除後の金額で確認する必要があります。

また、納税者本人の所得区分(900万円以下など)によって控除額が変わるため、あわせて確認が必要です。令和7年度以降は給与所得控除の見直しもあるため、従来の年収感覚で判断せず、所得ベースでの確認を徹底しましょう。

申告漏れ時の更正・修正手続き

年末調整で配偶者特別控除の適用漏れがあった場合は、原則として従業員本人が確定申告で対応する必要があります。確定申告の期限内であれば、再申告(訂正)で対応可能です。期限後であっても原則5年以内であれば、更正の請求によって還付を受けられます。

企業側で年末調整をやり直せるケースは限られるため、基本的には確定申告での対応になることを前提に案内しておくとスムーズです。

配偶者特別控除の計算でミスしやすいポイント

配偶者特別控除はシンプルな仕組みですが、収入と所得の違いや申告内容のズレによって誤りが生じやすい制度です。企業実務では、間違えやすいポイントを押さえておくことがミス防止につながります。

収入に含める・含めない項目

配偶者特別控除の判定でありがちなミスは、「収入」と「所得」を混同することです。配偶者特別控除は年収ではなく、給与所得控除後の「所得金額」で判定します。

たとえば年収160万円の場合は、そのまま160万円で判断するのではなく「160万円 − 65万円 = 95万円(所得)」として計算します。また、下記のように収入の扱いにも注意が必要です。

収入の扱いにまつわる注意点

  • 含めない:交通費(非課税分)
  • 含める:賞与・残業代
  • 忘れやすい:副業収入・不動産収入

年収ではなく、これらを含めた所得で判断することを押さえておきましょう。

年収見込みのズレ

年末調整では、その年の収入をもとに控除額を決めますが、実際の収入は年末時点で確定します。そのため、見込みとの差が生じることがあります。

たとえば「160万円程度の見込みだったが、年末の残業で170万円になった」といったケースでは、控除額が変わる可能性があるため注意しましょう。年収見込みのズレがあると、あとから確定申告で調整が必要になる場合があります。

年末に近づいた段階で、収入見込みに変化がないか確認しておくと安心です。

副業・複数収入の扱い

副業がある場合は、給与以外の収入も含めて判断する必要があります。

下記のようなケースは、課税対象となる場合には所得として合算します。

  • フリマアプリの売上
  • ネットビジネスの収入
  • 暗号資産の利益

これらを含めずに控除を適用すると、あとから修正が必要になる可能性があります。給与以外の収入があるかどうかを事前に確認し、申告内容に反映しましょう。

まとめ

配偶者特別控除は、配偶者の収入が増えても一定の範囲内で税負担を抑えられる制度です。ただし、控除額は年収ではなく「所得」をもとに判定され、収入に応じて段階的に減少します。

減税額は「控除額 × 税率」で決まるため、同じ控除額でも人によって影響は異なります。正確に把握するには、年収ではなく所得ベースで計算することが重要です。

企業実務では、申告内容の確認や見込みのズレ、副業収入の有無などがミスにつながりやすいため、事前にポイントを整理しておくことで対応がスムーズになります。こうした控除計算や年末調整を効率化するには、日々の会計データを正確に管理することも欠かせません。

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よくある質問

配偶者特別控除でいくら戻りますか?

配偶者特別控除は「控除額×税率」で減税額が決まるため、還付金額は人によって異なります。たとえば、控除額が38万円で税率が10%の場合、減税額は約3.8万円です。

詳しくは記事内「配偶者特別控除の計算シミュレーション方法」をご確認ください。

配偶者特別控除が160万円になるのはいつからですか?

令和7年度の税制改正により、給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられたことで、配偶者特別控除の年収目安が変化しています。ただし、控除の判定はあくまで「合計所得金額(58万円超133万円以下)」で行われるため、年収160万円という基準が新設されたわけではありません。

詳しくは、記事内「【令和7年度改正】所得要件の変更点」をご確認ください。

従業員の配偶者の年収が見込み額と異なった場合、どう対応すべきですか?

年末調整時の見込み額と実際の年収が異なった場合、控除額にズレが生じる可能性があります。その場合は、原則として従業員本人が確定申告で修正対応を行います。

期限内であれば再申告、期限後でも5年以内であれば更正の請求が可能です。

詳しくは記事内「申告漏れ時の更正・修正手続き」をご確認ください。

参考文献

監修 涌井好文(わくい よしふみ) 社会保険労務士

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。

監修者 涌井好文

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