請求書の基礎知識

請求書の期限とは?支払期日の決め方・時効・遅延損害金まで解説

請求書の期限とは?支払期日の決め方・時効・遅延損害金まで解説

請求書の期限とは、買い手が代金を支払うべき期日(支払期日)と、債権が消滅する時効までの期間という2つの意味で使われる言葉です。

支払期日には法律上の固定ルールがなく当事者間の合意で自由に設定できますが、取適法(旧下請法)やフリーランス新法が適用される取引では「60日以内」という上限が定められています。また、支払期日の翌日から起算した5年が、原則として売掛債権の消滅時効です(民法166条)。

支払期日を曖昧に設定すると、入金遅延・遅延損害金の請求漏れ・時効消滅といった実害につながりかねません。

本記事では、支払期日の決め方、月末締めの商慣習、未払い時の対処法、遅延損害金、消滅時効までを順に解説します。

目次

請求書に支払期日を記載する意味

支払期日は法律上の必須記載事項ではないものの、入金トラブルを防ぐため、実務上はほぼ全ての請求書に記載されています。以下では、なぜ必要かを整理しておきましょう。

支払期日とは買い手が代金を入金すべき日

支払期日とは、請求書を受け取った買い手が、記載金額を売り手の指定口座に入金すべき期限の日付です。「支払期限」「お支払期日」と呼ばれる場合もありますが、いずれも同じ意味の言葉と考えてよいでしょう。

運用上は、支払いサイト(締め日から入金日までの期間)と組み合わせるのが一般的です。たとえば「月末締め・翌月末払い」と取り決めた場合は、4月30日までに発生した取引分を5月31日に入金してもらう、というかたちで期日が決まります。

記載がもたらす3つの効果

請求書に支払期日を明記すると、次の3つの効果が期待できるでしょう。

支払期日を記載する3つの効果

  • 入金日が一義的に定まり、買い手が支払いを忘れにくくなる
  • 期日を過ぎた場合に遅延損害金や法的措置の根拠を主張しやすくなる
  • 経理・与信管理上、入金予定日が確定し資金繰り計画を立てやすくなる

逆に、支払期日が記載されていない請求書では、入金タイミングを巡って買い手と認識のずれが生じやすく、結果として未払いの原因にもなりかねません。記載は法的義務ではないものの、取引の安全のためにも明記が望まれます。

支払期日はどのように決める?

請求書の支払期日は、一般的には「月末締めの翌月末支払い」または「月末締めの翌々月末支払い」が多いとされています。ただし、支払期日を末日に設定しなければならないという法的な決まりはありません。定期的に請求書を送付する取引先との関係では、支払期日をなるべく一定の間隔で設定しておくと、支払う側の負担軽減にもつながるでしょう。

決め方の自由度が高い分、当事者間で合意した内容は契約書または請求書面に明示しておきたいところです。以下では、支払いサイトの考え方・書き方の注意点・営業日の取扱いという3つの観点から決め方を整理します。

支払いサイトの考え方(30日サイト・60日サイト)

支払いサイトとは、締め日から入金日までの期間を指す実務用語のこと。「月末締め・翌月末払い」なら約30日のサイト、「月末締め・翌々月末払い」なら約60日のサイトに相当します。

短いサイトほど売り手の資金回収が早まる一方、買い手は支払い準備期間が短くなる点には注意したいところです。逆に長いサイトは買い手にとって有利な反面、売り手の資金繰りを圧迫しかねません。

業界慣行や取引先との力関係を踏まえつつ、双方の納得感が得られる期間を取り決めることが望ましいでしょう。

書き方は具体的な日付で記載する

支払期日は「2026年5月31日」のように年月日を特定して記載します。一方、「発行から30日以内」「翌月末」のような相対表記は、起算日や月の解釈を巡って認識のずれが生じやすいため、できるだけ避けたい書き方といえるでしょう。

「ただちに」「速やかに」といった曖昧な期限指定も、買い手側で具体日が確定できず請求の根拠として弱くなりがちです。請求書面では、振込先や金額と並ぶ目立つ位置に、特定日として明記してください。

期日が休業日に当たる場合の取扱い

設定した支払期日が金融機関の休業日(土日祝・年末年始)と重なる場合、原則として前営業日または翌営業日に入金してもらう運用が一般的です。

トラブル防止のため、契約書または請求書の備考欄に「期日が休業日の場合は前営業日とする」「期日が休業日の場合は翌営業日とする」のいずれかを事前に明記しておきましょう。記載がないと、買い手が独自判断で営業日をずらし、遅延扱いを巡って行き違いが生じることもあるでしょう。

取適法・フリーランス新法による支払期日の上限ルール

支払期日は当事者間の合意で自由に決められるのが原則ですが、取引の種類によっては法律で上限が定められている場合もあります。

その代表例が、2026年1月1日施行で旧「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」から名称・規制が改められた中小受託取引適正化法(取適法)と、2024年11月1日に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(通称:フリーランス新法)です。

取適法(旧下請法)は受領後60日以内が上限

取適法とは、2026年1月1日施行の改正で従来の下請法から名称が変わった法律のこと。委託事業者(旧・親事業者)が中小受託事業者(旧・下請事業者)に製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などを行う場合に適用されます。

取適法が適用される取引では、委託事業者は物品やサービスを受領した日から起算して60日以内、かつできる限り短い期間内で支払期日を定めなければなりません。起算点となるのは、検査の有無を問わず受領日である点が要点です。

「月末締め翌々月末払い」のように60日を超える期日設定をした場合、取適法違反となり、公正取引委員会から指導や勧告を受けることもあり得ます。改正では運送の委託が対象に追加されるなど規制対象も拡大されているため、過去に下請法の前提で作成した契約書は一度見直しておくとよいでしょう。

法律で上限が定められているのは、立場の弱い中小受託事業者の資金繰りを守るためです。委託事業者の判断で長期サイトを押し付けることは認められていません。

出典:政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」

フリーランス新法は給付受領日から60日以内

フリーランス新法は、業務委託の発注者(業務委託事業者)が特定受託事業者(個人で業務を請け負うフリーランス等)に業務を委託する取引に適用されます。

業務委託事業者は、特定受託事業者からの給付(成果物やサービス)を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、報酬の支払期日を定めなければなりません。取適法と同じ60日ルールがフリーランス取引にも拡張されたもの、と理解すると分かりやすいでしょう。

違反した場合は、公正取引委員会または中小企業庁から指導・勧告・命令の対象となるため、フリーランスへの発注を行う事業者は支払期日の運用を見直しておく必要があります。

適用対象でない場合の妥当な期限

取適法・フリーランス新法のいずれも適用されない一般の事業者間取引では、支払期日に法定上限はありません。実務上は「翌月末払い」「翌々月末払い」のように1〜2か月以内が標準とされ、これを大きく超えると取引先との交渉に応じてもらえないケースも見られます。

逆に、設定された支払期日が1週間〜10日程度と極端に短い場合は、買い手側の経理処理や資金繰り上、対応が困難となるおそれがあります。期日が短すぎると感じたときは、合意前に取引先と相談し、現実的な期日に調整しておくとよいでしょう。

支払期日が過ぎたのに支払いがない場合の対処法

支払期日を過ぎても支払いが行われない場合は、段階的な対応が推奨されています。多くの遅延は単なる忘れが原因のため、まずはメールなどで支払い遅延を通知し、次に直接訪問または電話で話し合い、最終的に内容証明送付または法的手段へ移行する、という流れが基本です。

順を追って対応すれば、取引関係を維持しつつ債権回収につなげやすくなるでしょう。以下では、各段階で押さえておきたいポイントを補足します。

初期対応はメール・電話による事実確認

支払期日を1〜2営業日過ぎても入金が確認できない場合、まず取引先の経理担当者にメールや電話で連絡を入れるのが基本です。多くのケースは振込忘れ・経理処理の遅れ・銀行手続きのトラブルなど単純な事務ミスが原因で、確認連絡だけで解決することも少なくありません。

連絡時は責める口調を避け、「請求書○○号の入金確認ができていないため、状況を教えていただけますか」といった事実確認のかたちを取るとよいでしょう。あわせて請求書番号・金額・支払期日を明示しておくと、相手側の確認がスムーズです。

内容証明郵便による催告

事実確認後も支払いがない場合は、内容証明郵便で催告を行います。内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に対し・どのような内容の書面を送ったかを郵便局が証明する制度のこと。後日の訴訟では証拠としても活用できます。

内容証明には民法上の効果もあり、催告から6か月間は時効の完成が猶予されます(民法150条)。そのため、時効消滅が間近に迫っている債権では、まず内容証明で時間を確保しておくとよいでしょう。

支払督促・少額訴訟の選択肢

内容証明でも応答がない場合は、簡易裁判所への支払督促や少額訴訟の申立てへと進む段階です。

支払督促と少額訴訟の違い

  • 支払督促:書類審査のみで裁判所から相手方に支払命令を出してもらう手続き。相手の異議がなければ強制執行に移行できる
  • 少額訴訟:60万円以下の金銭請求に限り、原則1回の期日で判決まで進む簡易な訴訟手続き

いずれも弁護士に依頼せず申立て可能ですが、相手方が異議を述べた場合は通常訴訟に移行します。金額や難易度を踏まえ、専門家に相談することも選択肢に入れておくとよいでしょう。

支払期日を過ぎた場合に発生する遅延損害金

支払期日を過ぎても入金がない場合、未払いの代金本体に加えて遅延損害金を請求できます。遅延損害金とは、本来の入金日に資金を受け取れなかったことへの補償として法律上認められた金銭のこと。

遅延損害金の発生時期と計算式

遅延損害金は、支払期日の翌日から実際に支払われた日までの期間について、未払い元本に年率を乗じて算出する金額です。計算式は以下のとおり。

<遅延損害金の計算式>

未払い元本 × 年率 ÷ 365日 × 遅延日数

たとえば100万円の請求書が支払期日から30日遅れて入金された場合、年率3%で計算すると「100万円 × 0.03 ÷ 365 × 30 ≒ 2,465円」が遅延損害金となります。

法定利率と約定利率

適用される利率には、法定利率と約定利率の2種類があります。両者の違いは次のとおり。

法定利率と約定利率の違い

  • 法定利率:民法404条で定められた利率。2020年4月の民法改正で年3%に変更され、その後3年ごとに見直される。2023年4月および2026年5月時点も基準割合の変動が1%未満のため年3%で据え置かれている
  • 約定利率:契約書等で当事者が個別に定めた利率。法定利率に優先して適用される

契約書に「支払いが遅れた場合、年率〇%の遅延損害金を支払う」と明記されている場合は、その約定利率が優先して適用されます。約定利率の定めがない場合に、法定利率が補充的に適用されると理解しておくとよいでしょう。

出典:法務省「令和5年4月1日以降の法定利率について」

請求するかどうかは交渉判断

遅延損害金は法律上請求できる権利ですが、実際に請求するかどうかは取引関係を踏まえた経営判断になります。少額の遅延や継続的な取引先には請求せず、悪質・長期化したケースのみ書面で請求する、といった使い分けが現実的でしょう。

>請求する場合は、内容証明郵便などで「請求金額○○円+遅延損害金○○円を支払うこと」と明示します。請求の根拠を残しておけば、後日の交渉や訴訟で有利に働くでしょう。

請求書の有効期限と時効

請求書を根拠とする売掛債権には消滅時効があり、一定期間が経過すると相手に支払いを請求する法的根拠が失われます。2020年4月の民法改正で時効ルールが大きく変わったため、施行日前後の取引は要注意です。

民法166条による5年の消滅時効

2020年4月1日以降に発生した売掛債権の消滅時効は、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年とされています(民法166条)。

通常の事業者間取引では、請求書の支払期日が到来すれば債権者は支払請求できることを認識しているため、原則として支払期日の翌日から起算した5年で時効が成立します。改正前は商品代金等の売掛金について2年などの短期消滅時効が定められていましたが、改正後はこの職業別の短期時効が廃止され5年に統一されました。

2020年3月31日以前に発生した債権には旧民法が適用されるため、依然として2年などの短期時効が残っているケースもあります。古い未回収債権を扱う場合は、発生日に応じて適用される民法を確認してください。

時効の完成猶予と更新

時効は何もしなければ進行し続けますが、催告や裁判上の請求によって完成を猶予したり、時効期間をリセットしたりできます。

時効の完成猶予・更新の主な手段

  • 催告(民法150条):内容証明郵便などで支払いを請求すると、催告の時から6か月間は時効の完成が猶予される。ただし催告だけでは時効は更新されない
  • 裁判上の請求(民法147条):訴訟提起や支払督促の申立てを行うと、確定判決等を得た時点で時効が更新され、新たに10年の時効期間が始まる
  • 承認(民法152条):相手が債務の存在を認める書面(覚書・残高確認書等)を交わすと、その時点で時効が更新される

時効消滅が近づいている債権では、まず内容証明で6か月の猶予を確保し、その間に裁判手続きで時効を更新する流れが実務的な選択肢です。

請求書の再発行では時効は延びない

時効消滅が近い債権について請求書を再発行しても、それだけでは時効期間は延長されません。再発行は当初の請求内容を改めて伝える行為に過ぎず、民法上の催告や承認に該当しないためです。

時効を意識する場面で優先したいのは、請求書の再発行ではありません。内容証明郵便による催告か、相手からの債務承認書の取り付けを検討すべきです。

まとめ

請求書の期限には「支払期日」と「消滅時効」という2つの軸があり、それぞれ運用すべきルールも別物です。前者の支払期日に法律上の固定ルールはないものの、取適法(旧下請法)・フリーランス新法が適用される取引では60日以内という上限が課される点に注意したいところ。さらに未払い時の遅延損害金や5年の消滅時効まで含めれば、請求書1枚に紐づく法的論点は多岐にわたります。

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2023年10月からインボイス制度が施行されました。インボイス制度の制度施行に伴い、インボイス制度の要件を満たした適格請求書の交付、計算方法の変更、インボイスの写しの保存義務化など請求書業務の負担が増えることが予想されています。

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具体的に、freeeの無料テンプレート集でダウンロードできる書類には以下のようなものがあります。

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<人事労務>
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freeeの無料テンプレート集では、上記のほかにも無料でダウンロードできる書類を準備中です。ぜひこちらもご活用ください。

よくある質問

支払期日の文言はどのように書けばよいですか?

請求書には「2026年5月31日」のように具体的な年月日で支払期日を記載します。「発行から30日以内」「翌月末」といった相対表記は、起算日や月の解釈を巡って買い手との認識ずれが生じやすいため避けてください。

詳しくは「書き方は具体的な日付で記載する」で解説しています。

30日支払い条件とはどういう意味ですか?

30日支払い条件とは、買い手が請求書の日付から30日以内に売り手へ代金を支払う条件を指します。日本の商慣習では「月末締め・翌月末払い」が約30日サイトに相当し、これがおおむね該当すると考えてよいでしょう。

詳しくは「支払いサイトの考え方」で解説しています。

請求書を再発行すると時効は延びますか?

請求書を再発行しても、消滅時効の期間は延長されません。時効を中断させるには、内容証明郵便による催告(民法150条、6か月の完成猶予)や、裁判上の請求・債務承認による時効の更新といった手段が要ります。

詳しくは「請求書の再発行では時効は延びない」で解説しています。

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