開業の基礎知識

開業届の提出にはデメリットもある!提出が必要な人と必要でない人の違いを解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

開業届の提出にはデメリットもある! 提出が必要な人と必要でない人の違いを解説

開業届は、個人事業を開業したことを税務署に申告するための書類で、開業から1ヶ月以内の提出が義務付けられています。

ただし、提出しなくても罰則規定はなく、中には開業届を出さずに事業を営む人もいます。開業届を提出すると、社会保険の扶養から外れることがある、勤務先に副業を知られることがあるなどデメリットが生じる可能性があるためです。

本記事では、開業届を提出することで生じるデメリットや、提出が必要な人と必要でない人の違い、などを解説します。

開業届の詳しい内容は、下記で解説しているのであわせてご覧ください。

【関連記事】
開業届とは?個人事業主が知っておくべき基礎知識や提出するメリット・注意点について解説

目次

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開業届とは? なぜ提出が義務なのか

開業届とは、個人が新しく事業を開始したことを税務署に知らせるための書類です。

所得税法第229条により、事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき事業を開業した個人は、開業から1ヶ月以内に所轄の税務署に開業届を提出することが義務付けられています。

提出しなくても罰則規定はないものの、提出義務のある人が開業届を出さないことは、法令に反する行為です。また、開業届を提出しないと、公的な支援制度への申請ができなかったり、開業届の控えがないために初年度から小規模企業共済に加入できなかったりするおそれがあります。

ほかにも開業届を出せば、個人事業主として職業を証明できるほか、社会的信用を得られるなど、多くのメリットが受けられます。

詳しくは記事後半の「開業届を出すメリット」をご覧ください。


出典:e-Gov法令検索「所得税法(昭和四十年法律第三十三号)」

開業届を出すデメリット

開業届の提出は法律上の義務ですが、条件によっては、開業届を提出するとデメリットを被ることもあります。どのようなデメリットがあるのか解説します。

健康保険上の扶養から外れることがある

扶養には「所得税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ適用条件が異なります。一般的に、配偶者の扶養に入っていれば、健康保険料を支払う必要はありません。

開業届を提出すると、健康保険上は「事業を営んでいる」と判断され、扶養認定に影響が出る可能性があります。

また、企業の健康保険組合によっては、収入の有無に関わらず個人事業主は扶養から外れると定めていることもあります。

健康保険上の扶養から外れてしまうと、国民健康保険料と国民年金保険料を自分で支払わないといけません。

【関連記事】
個人事業主は扶養に入れる?扶養に入るメリットと要件を解説

会社員は勤務先に副業が知られる可能性がある

開業届を出しただけでは、企業は従業員が副業していることを把握できません。

ただし、確定申告または住民税申告をする際に、住民税の納付方法として特別徴収を選択すると副業がバレる可能性があります。

特別徴収とは、自分で納付する普通徴収とは異なり、給与から天引きで住民税を支払う方法です。勤務先が従業員の住民税を把握していれば、所得金額が増えたことによる住民税の増加から、副業をしていると気付かれるかもしれません。

最近では副業に前向きな企業も増えていますが、開業届を出す前に就業規則を確認しましょう。

【関連記事】
副業がバレるのはどんなとき? バレるケースとバレないようにする対策方法を解説

失業保険の給付が受けられなくなる

開業届を提出すると「失業状態ではない」と判断され、原則、失業等給付制度の対象外となります。会社員から個人事業主への転身を検討している人は、開業届を出す時期を慎重に判断しましょう。

たとえば、求職者支援制度の給付金は、「雇用保険の受給が終了した人」「自営業を廃業した人」などが対象です。開業届を出した場合、対象外とみなされるため、給付を受けられません。

また、教育訓練給付制度では「自営業を営むことに専念している人」は「就職している」とみなされるため、開業届を税務署に提出した人は給付を受けられない可能性があります。

開業届を出すメリット

公的な支援制度への申請・小規模企業共済への加入・屋号付き口座の開設などでは、開業届の控えが必要になることがあります。法律上の義務であることに加えて、開業届を提出するメリットをそれぞれ確認していきましょう。

公的な支援制度(補助金・助成金など)への申請ができる

事業を始めた段階で開業届を提出しておくと、補助金・助成金が利用しやすくなることがあります。

補助金・助成金など公的な支援制度への申請の際に、申請書類として開業届の控えの提出が求められることがあります。

たとえば、自治体の創業促進補助金では、補助金の種類や状況によって、開業届の控えの提出が必要です。

小規模企業共済に加入できる

小規模企業共済は、廃業時などに給付金が支給される制度です。個人事業主は、会社員と異なり退職金がないため、退職金代わりとして多くの個人事業主が加入しています。

掛金は小規模企業共済等掛金控除として全額控除されます。受け取り方法によって所得の扱いが異なり、一括で受け取るなら退職所得扱い、分割で受け取るなら公的年金等の雑所得扱いです。

開業初年度から小規模企業共済に加入する場合、確定申告書の代わりに開業届の控えの提出が必要です。

屋号付きの事業用銀行口座を開設できる

個人事業主は、事業用の銀行口座を開設する際に口座名に屋号を付けられることがあります。

屋号付きの事業用銀行口座を開設すると、事業用と個人用の収支が管理しやすいため経理作業を効率化できたり、取引先・顧客に安心感を与えられたりします。

銀行によっては、口座開設の際に開業届の控えが必要な場合があるため、屋号付きの銀行口座を開設する際は、事前に開業届を出しておきましょう。

個人事業主であることの証明になる

開業届は個人事業主であることの証明になるため、店舗・オフィスを借りる際や、金融機関に融資を申し込む際などに提出を求められることがあります。

また、開業届は「就労証明」としても利用できます。たとえば保育園や学童の申込時に求められることがあり、その場合は開業届の控えを提出しましょう。

開業届の提出が必要な人・必要でない人

開業届のメリットを享受したい人は開業届を提出しておくべき一方で、一部の人は開業届の提出自体が必要ないこともあります。開業届の提出が必要な人、必要でない人の特徴を見ていきましょう。

開業届の提出が必要な人

開業届の提出が必要な人には、以下が挙げられます。

開業届を出したほうがよい人

  • 事業を開始した人
  • 公的な支援制度を利用したい人
  • 小規模企業共済に加入したい人

開業届を提出しないことによる罰則規定はありませんが、開業から1ヶ月以内に所轄の税務署に開業届を提出することが義務付けられています。事業を開始した人は、開業届の提出が必要です。

そのうえで公的な支援制度の申請では、開業届の控えの提出を求められることがあるため、利用を検討している人は特に忘れずに開業届を提出しましょう。

また、開業初年度から小規模企業共済に加入する場合、確定申告書の代わりに開業届の提出が求められます。屋号付きの事業用銀行口座を開設する際も、開業届の控えの提出が必要になることがあるので、提出を済ませておきましょう。

なお、開業届を提出しないと、創業融資や銀行融資の審査に影響する可能性があります。融資を検討しているなら、開業届を提出しておくほうが望ましいです。

開業届の提出が必要でない人

開業届の提出が必要でない人には、以下が挙げられます。

開業届の提出が必要でない人

  • 収入が一時的または副収入程度の雑所得に該当する人
  • アフィリエイトやポイントサイトなど、収入の営利性・継続性が乏しい人

副業で得たお小遣い程度の報酬、たとえばフリマアプリで不用品を販売して得た利益などは雑所得に該当します。事業所得・不動産所得・山林所得を生じる事業を開始した人が開業届を提出する対象です。雑所得のみであれば、開業届の提出は必要ありません。

また、単発的な収益は事業所得に該当しないため、開業届の提出は不要です。一般的に、継続して収入を得ようとしている場合に事業としてみなされるためです。

ほかにもアフィリエイトやポイントサイトの運用においても、継続的に安定した収益が発生しない場合は事業とみなされず、開業届を提出する必要がありません。

自分の所得区分が曖昧な場合は、税理士や税務署に相談しましょう。

【関連記事】
事業所得とは?申告方法や雑所得との違いや判断基準を解説
副業で個人事業主になるメリットは? 手続き方法や注意点を徹底解説

開業届を提出しないとどうなる?

所得税法第229条により、開業した人は1ヶ月以内に開業届を税務署に提出する義務があります。

提出しなくても罰則規定はありませんが、開業届を提出しないと以下のような影響があります。

開業届を提出しない場合の影響

  • 青色申告による税制上のメリットを受けられない
  • 補助金・助成金などの公的な支援を受けられない場合がある
  • 初年度は、小規模企業共済に加入できない
  • 銀行口座に屋号を使用できない
  • 職業を証明できない(賃貸契約などができないことがある)

提出によって得られるメリットを考慮すると、提出しない選択肢は現実的ではありません。事業を開始して開業届の提出義務が生じた時点で、すみやかに開業届の提出を済ませましょう。

【関連記事】
個人事業主が開業届を出してないとどうなる? 提出のメリット・注意点や基礎知識を解説


出典:e-Gov法令検索「所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百二十九条」

開業届を提出したら確定申告が必要になる?

確定申告が必要になるかどうかは、開業届を提出したかどうかではなく、所得の金額によって決まります。

個人事業主は48万円の基礎控除があり、年間所得がこの金額を超えると所得税が徴収されます。したがって、個人事業主は年間所得が48万円を超えると確定申告が必要です。

一方、会社員が副業する場合、年間所得が20万円を超えたら、確定申告が必要です。

年間所得が20万円以内であれば、勤務先が年末調整をして所得税の納付まで行うため、基本的に確定申告は不要です。ただし、2ヶ所以上から給与を受けているなど一部の要件に該当するときは、年間所得が20万円以内であっても確定申告を行わなければいけません。

【関連記事】
確定申告はいくらからが義務?事業所得者や給与所得者の所得税などを詳しく解説
副業で確定申告が必要な所得はいくらから?未申告のペナルティややり方も解説


出典:国税庁「No.1199 基礎控除」

開業届の入手方法・書き方・提出方法

開業届は、国税庁のウェブサイトの「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」からダウンロードできます。

最寄りの税務署で直接開業届を受け取りたい場合は、国税庁ウェブサイトの「税務署の所在地などを知りたい方」のページから税務署の所在地を検索しましょう。

開業届は、所轄の税務署の窓口で提出しますが、税務署に直接出向くのが難しい場合は郵送やe-Tax(国税電子申告・納税システム)による提出もできます。控えが必要な人は、2部作成して1部を控えとして保管しておきましょう。

無料の開業書類作成ツールを使いたい場合は、freee開業がおすすめです。項目を埋めていくだけで、自宅で開業書類が作成できます。作成した書類は、スマホからオンラインで提出が可能です。

開業届の書き方に関しては、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】
開業届のダウンロード〜提出までを解説!税務署に行かなくても大丈夫

開業届の提出期限

開業届は、所得税法第229条により、事業を開始した日から1ヶ月以内に提出することが義務付けられています。

【関連記事】
開業届を提出するタイミングは? 期限や提出するメリットも解説


出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

開業届を作成・提出する際の注意点

開業届の作成は、それほど難しくはありませんが、「職業欄」の記入に注意が必要です。職業欄は個人事業税の税率に関係するため、「自由業」「フリーランス」といった漠然とした表現ではなく、以下のように具体的な職業名を記入しなくてはいけません。

職業欄に記入する職業名

  • 飲食業
  • 水産業
  • スポーツインストラクター
  • 柔道整復師
  • モデル
  • 司会業
  • 予備校講師
  • イラストレーター
  • 文筆業

また、青色申告特別控除を受けるためには、開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出しましょう。

【関連記事】
青色申告承認申請書とは?【書き方・記入例有り】


出典:東京都主税局「個人事業税」
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」

まとめ

個人事業を開業したら、開業届を提出する義務が生じます。

しかし、提出することで健康保険上の扶養から外れたり、失業等給付制度の対象外になったり、いくつかデメリットが生じることがあります。

開業届の提出は事業を始めるうえで大切な手順ですが、これらのデメリットを理解し、当てはまるかどうか把握しておきましょう。

開業届は、税務署の窓口・郵送・e-Taxなどで提出できます。提出期限は開業から1ヶ月以内と義務付けられているので、事業を始めたタイミングですみやかに提出しましょう。

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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。

そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。

freee開業で作成可能な5つの届出

1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。

2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。

3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。

4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。

5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。

freee開業の使い方を徹底解説

freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

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Step1:準備編

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準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。


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事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。

Step2:作成編

次に、作成編です。


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申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。


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給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。


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さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。

今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。

Step3:提出編

最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。


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入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。


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届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。

郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。

いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。

しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。

また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業freee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。

よくある質問

被扶養者や失業中の人が開業届を提出するデメリットとは?

被扶養者は、開業届を提出すると健康保険上の扶養から外れる可能性があります。また、失業中の人は、失業等給付制度の対象外とされる場合があります。

開業届を提出するデメリットを詳しく知りたい場合は、記事内「開業届を出すデメリット」をご確認ください。

開業届を提出するメリットとは?

開業届を提出するとデメリットが生じる可能性があるものの、以下に示すメリットもあります。

開業届を提出するメリット

  • 公的な支援制度(補助金・助成金など)への申請ができる
  • 小規模企業共済に加入できる
  • 屋号付きの銀行口座を作れる
  • 個人事業主であることを証明できる
  • 個人事業主としての自覚・責任が生まれる

開業届を提出するメリットを詳しく知りたい場合は、記事内「開業届を出すメリット」をご確認ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高

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