開業の基礎知識

個人事業主は複数事業を営める?開業届の書き方や確定申告のやり方について解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

個人事業主は複数事業を営める?開業届の書き方や確定申告のやり方について解説

個人事業主は、飲食店と不動産賃貸業など、異なる業態や業種であっても、複数同時に営むことが可能で、屋号も事業ごとに別々の名称を登録できます。

複数事業を営む場合でも、開業届はひとつの事業を営む場合と同様の書式で提出します。異なる業態であっても、事業ごとにわけて提出する必要はありません。

また、確定申告も、複数事業の事業所得を合算してひとつの確定申告書に記載します。

本記事では、個人事業主が複数の事業を営む際の開業届の書き方や、確定申告の注意点などを解説します。

目次

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個人事業主は複数の事業ができる?

個人事業主は、複数の事業運営が可能です。

事業を複数営む場合の具体例として、以下のケースが挙げられます。

個人事業主が複数の事業を営む場合の具体例

  • デザイナーとして活動しつつ、カフェを経営している
  • 美容サロンを経営しつつ、不動産賃貸の収入を得ている

個人事業で得た所得は基本的に事業所得ですが、事業の種類によっては事業所得以外に該当する場合もあります。たとえば、美容サロン経営による所得は事業所得、不動産賃貸による所得は不動産所得です。

異なる種類の所得がある場合、確定申告書には各所得の金額を個別に記載し、決算書は所得別に作成する必要があります。また、所得の種類によっては、開業届の提出要否や記載内容が異なることもあるため、事前に整理しておくとスムーズです。

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複数事業を営むメリットとデメリット

個人事業主が複数の事業を同時に営むことには、いくつかのメリットがありますが、中でも代表的なメリットはリスク分散と収入の安定です。たとえば、一方の事業の売り上げが市場の変化や季節要因によって落ち込んだとしても、まったく異なる業種の事業でカバーできる可能性があります。

また、それぞれの事業で得た知見や人脈を相互に活かせる点もメリットです。たとえばライターと美容師を兼業していれば、美容知識やヘアサロン運営に基づいた専門性の高い情報発信ができます。

一方、複数事業を運営することにはデメリットもあり、ひとつめに資金管理が煩雑になる点が挙げられます。

たとえば、事業用の口座やクレジットカードをひとつにまとめている場合、複数の事業の入出金が混在し、帳簿付けが煩雑になってしまうでしょう。事業ごとに口座を分けても管理の手間が増えるため、どちらにしても単一事業より負担が大きくなります。

また、時間や労力を分散せざるを得ないため、ひとつの事業に集中しづらい点もデメリットです。その結果、事業成長のスピードが鈍化したり、顧客対応が行き届かなくなったりする恐れがあります。

複数事業を営む際の開業届の書き方

開業届は、複数事業を営む場合でもひとつの事業を営む場合と同じ書式で提出します。飲食店と小売業など異なる業態の事業を営む場合も、事業ごとに提出する必要はありません。

以下で、複数事業を営む場合における開業届の職業欄と屋号の書き方を解説します。

職業欄はメインを書く

職業欄には主な収入を得る事業の職業を記入します。複数の事業でいずれも同じ程度の収入を得ている場合は、収入の多い順に複数記入してもよいです。

屋号は複数記入できる

個人事業主が屋号を提出するかどうかは自由です。メインの事業の屋号だけを登録し、後から必要になった際に提出することも可能です。

開業届には屋号を複数記入できます。屋号の欄に、事業ごとの屋号とフリガナを全て記入しましょう。記載する順番に決まったルールはありません。

また、すでに開業届を提出済みで、新たに別の屋号で事業を開始する場合は、追加する屋号のみを屋号の欄に記入してください。そのうえで、「その他参考事項」の欄に「屋号の追加登録」などと記入して提出します。

別の屋号を登録しない場合は、開業届を追加で提出する必要はありません。

個人事業主の所得には事業所得以外もある

個人事業主の所得は全てが事業所得に分類されるわけではありません。事業所得以外によくある所得は以下の通りです。

個人事業主の事業所得以外によくある所得の種類

  • 給与所得
  • 不動産所得
  • 雑所得

アルバイトによる給与所得・不動産収入による不動産所得・そのほか収入の雑所得など、所得の種類によって、確定申告の際に記載する欄も異なります。以下のケースは事業所得ではないため、それぞれ該当する所得の欄に記載しましょう。

給与所得

個人事業主がアルバイトで得た所得は給与所得に分類されます。たとえば、自分の営む事業の利益で生活費を賄えず、事業とは別にアルバイトをしている場合などです。

不動産所得

不動産の貸し出しをして収入を得ている場合、不動産所得を得ています。ただし、下宿としての貸し出しで食事を供する場合など、一部事業所得や雑所得に該当する場合があります。

雑所得

ブログ運営を通して得たアフィリエイト広告収入や、ハンドメイド作品をフリマアプリで売って収益を得るなどの売買利益は雑所得の分類です。

ただし、これらは少額であれば雑所得ですが、継続的に収入を得ている場合は事業所得に該当します。

上記以外の所得は、国税庁の『所得税のしくみ』をご覧ください。

個人事業を複数もっている場合の確定申告は?

複数の個人事業を営む個人事業主が確定申告する場合でも、基本的に事業がひとつの場合と同様に確定申告書を一部作成します。確定申告書の作成方法や、分離課税対象となる所得がある場合の注意点を解説します。

複数事業がある場合でも確定申告書は1部のみ

複数の事業を営む場合でも、全ての事業の所得を合算して確定申告書を作成します。事業ごとに確定申告書を作成する必要はありません。

確定申告は事業ごとの所得を申告するためのものではなく、個人の所得を申告するものです。そのため、複数の事業であっても、いずれも事業所得であれば事業所得として合算して記載します。

事業所得以外に、不動産所得や雑所得に該当する収入がある場合は、それぞれ所得ごとに記載しましょう。

分離課税対象の所得は分けて記載

所得税は原則として、対象となる所得を合計した総所得金額に対して所得税率を乗じる総合課税の対象です。しかし、一部の所得は、ほかの所得と合算せずに税額を計算する分離課税に該当します。

分離課税対象の所得がある場合は、確定申告書第三表の作成が必要です。


所得の種類課税制度
利子所得総合課税(源泉分離課税とされるもの・2016年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債などの利子などは分離課税)
配当所得総合課税(源泉分離課税とされるもの・確定申告をしないことを選択したもの・2009年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式などの配当について申告分離課税を選択したものは分離課税)
不動産所得総合課税
事業所得総合課税(株式などの譲渡による事業所得は分離課税)
給与所得総合課税
退職所得分離課税
山林所得分離課税
譲渡所得総合課税(土地建物など・株式などの譲渡による所得は分離課税)
一時所得総合課税(一定の先物取引による譲渡は分離課税)
雑所得総合課税(株式などの譲渡による雑所得・源泉分離課税とされるものは分離課税)
出典:国税庁「No.2220 総合課税制度」
出典:国税庁「No.2240 申告分離課税制度」

複数事業を営む際の節税対策

複数事業を営むと、ひとつの事業を営む場合よりも所得が高額になる可能性があります。その場合でも、青色申告で申告すれば、税負担の軽減が可能です。

青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。また、赤字が出た場合でも翌年以降に繰り越せるため、翌年度以降の納税額を抑えることが可能です。

個人事業主が赤字を繰り越せる年数は、最長3年間です。事業を始めた当初の赤字を翌年以降の黒字で相殺できるため、事業の運転資金確保に役立つでしょう。

出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」

まとめ

個人事業主は、異なる業態や業種で複数の事業を営むことができます。事業ごとに開業届を出す必要はなく、屋号を別々に付ける場合も1枚の開業届にまとめて記載すれば問題ありません。

また、確定申告の際も、全ての事業の所得をまとめて1枚の確定申告書で申告します。複数の事業を営んでいても、事業ごとではなく所得の種類ごとに合算して各所得欄に記載しましょう。

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よくある質問

個人事業主は複数の事業をもてる?

個人事業主は複数の事業をもつことができます。業態や業種が異なっていても問題ありません。

詳しくは、記事内「個人事業主は複数の事業ができる?」をご覧ください。

複数事業がある場合の確定申告のやり方は?

複数事業がある場合でも、確定申告書は1部のみ作成します。複数の事業でどちらも事業所得であれば、事業所得として合算して記載します。

なお、所得税は原則として総合課税の対象ですが、分離課税対象となる所得がある場合は、確定申告書第三表の作成が必要です。

詳しくは、記事内「複数事業がある場合でも確定申告書は1部のみ」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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