開業の基礎知識

個人事業主の開業時のやることリストを紹介!成功へのポイントも解説

監修 安田亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士

個人事業主の開業時のやることリストを紹介!成功へのポイントも解説

個人事業主として開業するにあたっては、開業届の提出などいくつかの手続きや事業の準備が必要です。

個人事業主は、事業計画から事業運営、帳簿付けといったバックオフィス業務まで自身で行わなければなりません。事業を始める際はあらかじめ事前に対応すべき項目をリストアップしておくことで、漏れを防ぐことができます。

本記事では、個人事業主の開業時のやることリストのほか、個人事業主の事業を成功させるポイントを解説します。

目次

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個人事業主が開業するときのやることリスト

個人事業主として開業するにあたっては、税務署への届出といった手続きをはじめとしたさまざまな準備が必要です。以下は、副業もしくは独立を含む、個人事業主として開業するまでのやることリストです。

個人事業主が開業時にやることリスト

  • 勤務先の就業規則を確認する(副業の場合)
  • 事業計画を立てる
  • 資金計画を立てる
  • 退職の手続きをする(独立する場合)
  • 国民健康保険や国民年金に加入する
  • 開業届を提出する
  • 必要な許認可を申請する
  • 事業用の口座を開設する
  • 帳簿をつける
  • インボイス制度に対応する
  • 補助金や助成金を活用する

勤務先の就業規則を確認する(副業の場合)

副業で個人事業を始めるのであれば、事前に勤務先の就業規則を確認しましょう。

近年、従業員の副業を認める企業が増えていますが、すべての企業が副業を認めているわけではありません。事前に就業規則や自身の労働契約を確認し、副業を始めるために勤務先内で行うべき必要な手続きをしましょう。

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副業で個人事業主になる目安やメリットは?注意点や手続きもあわせて解説

事業計画を立てる

個人事業主として事業を成功させるためには、事業計画を立てましょう。事業計画を立てると、ビジョンが明確になり、どのように事業運営していくかが見えやすくなります。事業の内容や構想を整理し、ブラッシュアップして明確化しましょう。

事業計画に必要な内容は、運営する事業によって異なります。たとえば、商品を販売するならば、メインターゲットや提供する商品、価格設定や店舗の立地、プロモーションの内容などを具体的に考えます。

事業計画を取りまとめた「事業計画書」を作成することで、金融機関からの融資や補助金の申請時などの提出書類として使用できます。

【関連記事】
個人事業主に事業計画書の作成は必要?作成のメリットや注意事項について解説

資金計画を立てる

事業を進めるにあたっては、商品の仕入れや店舗の賃貸などで資金が必要になることがあります。資金難に陥らないよう、開業する前に資金計画を立てましょう。

たとえば、店舗を構えて営業するときは、店舗を借りる賃料や設備費、人件費や水道光熱費などの資金が必要です。

事業に必要な資金をリストアップし、資金がいくら必要になるかを計算します。自己資金で不足する場合は、金融機関からの融資などを検討しましょう。

たとえば、日本政策金融公庫では、開業者向けの融資制度(新規開業資金)を設けています。新規開業資金は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の人が対象であり、適正な事業計画の策定などの条件があります。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。詳細は日本政策金融公庫の公式サイトをご確認ください。

出典:日本政策金融公庫「新規開業資金」

退職の手続きをする(独立する場合)

独立して個人事業を開業するときは、退職の手続きを行います。事前に勤務先の上司または人事担当部署に退職の意思を伝え、退職届を提出します。

退職手続きは、会社により必要な手続きが規定されています。「退職予定日の1ヶ月前までに申し出る」のような規定が定められている会社もあるため、事前に必要な手続きを確認しましょう。あわせて、業務の引き継ぎや社内外への挨拶を行います。

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独立するには?起業準備の5つのステップや失敗を避けるための注意点を紹介

国民健康保険や国民年金に加入する

個人事業主は、通常、国民健康保険や国民年金に加入します。国民健康保険・国民年金への加入は、病気やけが、老後の生活を支える大切な手続きです。

退職すると、勤務先で加入していた健康保険や厚生年金の被保険者資格を喪失します。退職後4日以内に、お住まいの自治体の窓口や年金事務所で国民健康保険や国民年金への加入手続きを行いましょう。

マイナンバーカードを持っている人は、マイナポータルからスマートフォンでの電子申請ができます。

出典:神奈川県「会社を退職した時に、国民健康保険に加入するためにどのような手続が必要ですか。」
出典:日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
出典:日本年金機構「電子申請(マイナポータル)」

開業届を提出する

事業をはじめたら、事業開始1ヶ月以内に、事業所の所轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)の提出が必要です。

開業届は国税庁サイトでダウンロードできます。自身で用紙をダウンロードして記入・提出するほか、「freee開業」をはじめとしたWeb上で無料で開業届を作成できるサービスを利用して提出することもできます。

個人事業主の開業に関する手続きは、開業届を含めて次のものが挙げられます。


名称対象提出先提出期限
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)開業時納税地の所轄の税務署開業の日から1ヶ月以内
所得税の棚卸資産の評価方法の届出書最初の確定申告書の提出期限まで
所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
所得税の青色申告承認申請書青色申告をする人開業の日が1月1日から1月15日までの場合は3月15日まで、開業の日が1月16日以降の場合は、開業の日から2ヶ月以内
青色事業専従者給与に関する届出書青色事業専従者給与を支払う人
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書給与を支払う人給与支払事務所等の所在地の所轄税務署給与支払事務所等を設けてから1ヶ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書源泉所得税の納期の特例を受ける人随時
適格請求書発行事業者の登録申請書適格請求書発行事業者の登録を受けたい人納税地の所轄税務署開業した年の12月31日まで
出典:国税庁「個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき」

自身の事業内容にあわせて、必要な手続きを行いましょう。

必要な許認可を申請する

事業のなかには、開業にあたって許認可が必要なものがあります。許認可の種類には、許可・認定・登録・届出の4つが挙げられます。

許可は、原則として禁止されている事業を、例外的に行政庁から許可を得て運営することです。認定は、法令で定められた要件を満たしていることを行政が認める行為です。登録は、届出を行ったうえで行政庁の名簿に登録される必要があり、届出は、行政庁に必要事項を記入して届け出ると手続きが完了します。

たとえば、理容・美容業は、管轄の保健所への届出が必要です。食品関連の営業であれば、管轄の保健所で許可を得なければなりません。

許可や認定の詳細は、保健所や各自治体の窓口、行政書士事務所などで相談しましょう。

【関連記事】
許認可とは?取得しない場合のペナルティや申請方法について解説

事業用の口座を開設する

事業で使用する口座は、既存の個人口座でも問題ありません。しかし、口座内に私的に使っているお金と事業で使っているお金が混在すると、仕訳などの経理作業に負担がかかることがあります。

事業用口座の開設をすることで、事業に関連するお金を一元管理でき、確定申告などがスムーズに行えるようになります。さらに、事業用口座をクラウド会計ソフトと連携すれば、帳簿付けの自動化が可能になり、経費の管理に役立ちます。

帳簿をつける

個人事業主は、事業で生じたお金の流れの帳簿への記録と、一定期間の保存が義務付けられています。

確定申告には白色申告と青色申告の2つの種類があり、青色申告では複式簿記での記帳が必須です。白色申告では単式簿記での記帳も認められています。

作成した帳簿と領収書や請求書などの書類は、白色申告・青色申告問わず、適切に保存しなければなりません。青色申告と白色申告の違いについては、別記事「青色申告と白色申告の7つの違いを解説!それぞれのメリットとデメリットも紹介」をご覧ください。

なお、2024年1月1日以降は、電子帳簿保存法により、電子データでやり取りした場合は電子データの保存が義務化されています。

【関連記事】
電子帳簿保存法とは?対象書類や保存要件・改正内容についてわかりやすく解説

インボイス制度への対応を検討する

インボイス制度は、2023年10月から始まった消費税の仕入税額控除方式であり、個人事業主を含むすべての事業者が対象です。インボイス制度開始に伴い、買い手が消費税の仕入税額控除を受けるためには、売り手から発行されたインボイス(適格請求書)が必須となりました。

しかし、インボイスを発行できるのは適格請求書発行事業者のみであり、適格請求書発行事業者への登録は、課税事業者しか行えません。

そのため、開業したばかりの免税事業者である個人事業主がインボイスを発行するには、適格請求書発行事業者の登録を行うと同時に、課税事業者になる必要があります。ただし、課税事業者になると、消費税の納税が求められます。

したがって、個人事業主として開業する際は、取引先の状況に応じて免税事業者のままで事業を進めるか、課税事業者を選択して適格請求書発行事業者に登録し、インボイスを発行できる条件を整えるかを検討する必要があります。

【関連記事】
2023年10月から始まったインボイス制度とは?図解でわかりやすく解説!

出典:国税庁「インボイス制度について」

補助金や助成金を活用する

補助金や助成金は、国や地方自治体が一定の要件のもとで実施している支援制度であり、なかには、個人事業主が受けられるものもあります。

具体的には、次の補助金や助成金が挙げられます(2024年10月時点)。


制度の名称実施機関対象
IT導入補助金経済産業省ITツールを導入する中小企業・小規模事業者等
雇用調整助成金厚生労働省雇用の維持を図る事業者
地域雇用開発助成金厚生労働省同意雇用開発促進地域などで従業員を雇用した事業者
創業促進補助金各地方自治体起業した個人事業主など

各補助金や助成金では、個別に対象者や事業の要件を定めています。自身が活用できる制度がないか、それぞれの募集要項または公式サイトをチェックするとよいでしょう。

出典:経済産業省「IT導入補助金とは」
出典:厚生労働省「雇用調整助成金」
出典:厚生労働省「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」
出典:東京都「令和6年度第2回 創業助成事業募集のお知らせ」

個人事業主として事業を成功させるためのポイント

個人事業主として開業すると、事業の運営から経理・納税などのバックオフィス業務まですべて自身で行う必要があります。

以下では、開業後、事業を成功させるためのポイントを紹介します。

定期的に事業計画を見直す

当初想定していた事業計画も、経営を進めていくなかで状況は変化します。定期的に事業計画を見直して、改善を行うプロセスが大切です。

事業を見直す方法にはいくつかありますが、たとえば、ワークシートなどに事業内容や課題を書き出して「見える化」することで、状況整理や課題把握、その対応策がわかりやすくなります。

解決すべき課題に優先順位をつけ、解決へ向けた仮説を立て、自身で対応できる部分と外部と協働できる部分を明確にすると、解決への道筋を把握しやすくなります。

健康に気をつける

会社員は、労働関連法令で法定労働時間や休憩、メンタルヘルスケア対策などが雇用者に義務付けられています。一方、個人事業主は健康管理も自身でしなければなりません。

個人事業主が体調不良で仕事ができなくなることは、収入の減少に直結します。個人事業主本人は雇用保険や労災保険に加入できないため、仕事を失った時の保障がないことを理解しておきましょう。

40歳から74歳の人へ向けた特定健康診断(1年度に1回限り無料)、自治体により実施されている人間ドックの助成なども活用して、健康管理を行いましょう。

出典:厚生労働省「労働時間・休日」
出典:厚生労働省「特定健診・特定保健指導について」

バックオフィス業務の負担を減らすシステムを利用する

個人事業主になると、経理や納税、保険料の支払いといったバックオフィス業務を自身で行わなければなりません。特に経理業務は、記帳の知識が必要であったり、税金の計算や納税手続きを正確に行わなければならなかったりと、煩雑で手間のかかる業務です。

近年、会計業務や確定申告を簡便に行える会計ソフトが提供されています。経理業務の知識がない個人事業主であっても、会計ソフトを活用することで正確かつ漏れのない経理業務が行えるほか、業務を効率化でき、事業の根幹業務により多くのリソースを割くことができます。

まとめ

個人事業主が開業する際には、開業準備のほかに、開業届の提出や国民健康保険・国民年金への加入、業種によっては許可や認定の申請が必要です。自身に必要なことを整理して、ひとつひとつ順番に進めましょう。

事業を始めたあとは、事業計画の定期的な見直しが必要です。近年は、バックオフィス業務の負担軽減につながるシステムも提供されています。便利なシステムを活用しながら、事業を効率的に運営しましょう。

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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。

そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。

freee開業で作成可能な5つの届出

1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。

2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。

3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。

4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。

5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。

freee開業の使い方を徹底解説

freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

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Step1:準備編

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準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。


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事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。

Step2:作成編

次に、作成編です。


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申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。


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給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。


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さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。

今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。

Step3:提出編

最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。


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入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。


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届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。

郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。

いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。

しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。

また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業freee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。

よくある質問

個人事業主になったらやるべきこととは?

個人事業主として開業するときは、事業計画や資金計画の策定、開業届の提出、社会保険の手続きを始めさまざまな準備が必要です。場合によっては必要な許認可の申請が求められます。

開業時にやるべきことの漏れを防ぐためには、対応すべき項目をリストアップして整理しましょう。

詳しくは、「個人事業主が開業するときのやることリスト」をご覧ください。

個人事業主が事業を進めるときに押さえておきたい点は?

個人事業主として開業したら、事業の運営から経理・納税などのバックオフィス業務まですべて自身で行わなければなりません。事業を成功させるためには、定期的に事業計画を見直し修正を行うほか、バックオフィス業務をスムーズに行うために会計ソフトの導入を検討するといいでしょう。

詳しくは、「個人事業主として事業を成功させるためのポイント」をご覧ください。

監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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