開業の基礎知識
開業届とは? 個人事業主のための開業届の基礎知識
最終更新日:2021/03/19
公開日:2017/09/25

開業届とは、個人事業を開業したことを税務署に届け出ることです。開業届は事業を開始してから1ヶ月以内に提出することが推奨されていますが、提出しないことによる罰則等はありません。
ただし、青色申告で確定申告をする場合は提出しなければなりません。銀行口座開設時、クレジットカードの契約時、オフィスの賃貸借契約時、融資の審査時などに開業届の控えの提示を求められることがあります。
この記事では、個人事業主が知っておきたい開業届の基礎知識について詳しく解説していきます。
目次
開業届とは
開業届とは、個人事業を開業したことを税務署に申告するための書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
個人事業主は、1年間(1月1日〜12月31日)の所得を計算し、所得税を納税する必要があります。事業規模が大きい場合には、個人事業税や消費税の納税も必要となります。
所得税と消費税は国税として税務署に、個人事業税は地方税として各都道府県税事務所に納めます。開業届を提出することで、各税務当局に開業と税の開始を報告することになります。
個人事業に関わる2種類の開業届
個人事業の「開業届」は2種類あります。税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」と、都道府県の税務署に提出する「個人事業税の事業開始等申告書」の2種類があります。
1. 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
税務署への届出は「個人事業の開業・廃業等届出書」というものです。これが、一般的な開業届です。開業してから1ヶ月以内に管轄の税務署宛に提出することが推奨されています。
この届出書を提出しなくても罰則などはありませんが、青色申告で確定申告をする場合は「 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」と「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
開業届は国税庁のホームページからダウンロードしていただくか、最寄りの税務署で入手してください。ご自宅の最寄りの税務署(管轄する税務署)は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」から検索できます。
名称 | 個人事業の開廃業届出書(開業届) |
概要 | 新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転した時に提出する。なお、事業を廃止したときは廃業届の提出が必要。 |
対象者 | 新たに事業所得、不動産所得または山林所得を得る事業を開始した方 |
提出期限 | 事業の開始などの事実があった日から1ヶ月以内 |
提出方法 | 最寄りの税務署に持参もしくは郵送。e-Taxを利用して電子申請も可能 |
参考:国税庁『個人事業の開業届出・廃業届出等手続』
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2.都道府県税事務所に提出する「個人事業税の事業開始等申告書」
「個人事業税の事業開始等申告書」は、個人の事業を開始したことをしんこくするために、都道府県税事務所に提出する書類です。東京都では事業開始の日から15日以内、神奈川県では1ヶ月以内と、都道府県ごとに提出先や提出期限が異なります。
事前に「事業開始等申告書+都道府県名」などで検索すると、提出先や期限、申告書の入手方法などがわかります。届出をしなくても罰則はありません。そのため、開業届は税務署に提出しても、「事業開始等申告書」は提出しない人が多いようです。
画像の出典:個人事業税の事業開始等申告書(東京都主税局より)
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個人事業主が開業届を提出するメリットとは
個人事業主が開業届を提出する最大のメリットは、節税効果の高い青色申告を利用して確定申告ができることです。また、オフィスの賃貸契約や創業融資の審査の時に開業届の控えの提出を求められることがあります。
ここでは、個人事業主が開業届を提出するメリットや必要な場面をご紹介します。
青色申告には開業届の提出が必須
青色申告をするためには、「青色申告承認申請書」と「開業届」をの提出する必要があります。この2つの書類は、後述する開業freeeを利用することで、無料で簡単かつ正確に作成することができます。
銀行口座の開設手続き
個人事業を始める際に、屋号を名義とした銀行口座を開設することができます。個人用の口座を事業用の口座として使用しても問題はありませんが、事業用とプライベート用の口座を分けた方が経理作業がしやすくなります。
銀行口座の開設のために必要な書類は銀行によって異なりますが、「開業届の控え」が必要な場合もあります。
クレジットカードの審査
個人事業主や、フリーランスの方は、クレジットカードの審査に通りにくいと言われています。事業用のクレジットカードを作るにしても、個人用のクレジットカードを作るにしても、できるだけ審査が通りやすくなるように工夫するべきでしょう。
日頃から支払い遅延をしないこと、固定電話を持っていることなどに加えて、税務署に開業届をきちんと提出しているかどうかも、信用対策のひとつです。
多くの会社が事業用のクレジットカードを発行していますが、おすすめするのはfreeeカードです。カード会社と会計ソフトのfreeeが、個人事業主やフリーランスなどの小規模事業者のために作ったクレジットカードで、独立直後の方でも申し込みができます。
オフィス契約や融資の審査
個人事業の業種によっては、店舗を構えたり、事務所を契約をしたりする必要があります。また、事業の規模によっては、創業融資の申し込みを検討することもあるいるでしょう。いずれの場合も、申し込み時や審査時には、開業届の控えの提出を求められる場合があります。
職業を証明するのにも使える
他には、様々な手続きの際に職業を記入し、証明する必要がある場合があります。会社員の場合は、会社から社員証や在職証明書などを発行してもらうことが可能ですが、個人事業主やフリーランスの場合はそのような証明書はありませんので、開業届の控えの提出を求められることがあります。
開業届を出して個人事業主になる上での注意点
失業手当を受給している方や、配偶者や親の扶養に入っている方、副業をしている方などは、開業届を提出する際に注意しなければならないことがあります。
ここでは、開業届を出して個人事業主になる上での注意点をご紹介します。
失業手当をもらっている場合
開業届を提出すると、失業手当が受けられなくなくなります。開業届は、事業主として事業を開始したことを届け出るものであるため、「求職者、仕事を探している状態」ではなくなってしますからです。収入の見込みがない場合や、再就職するか起業するか迷っている場合は注意しましょう。
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配偶者の扶養に入っている場合
個人事業を開始し、開業届を提出することで、扶養から外れることがあります。会社の健康保険組合によっては、以下の2つのケースがありますので、気になる方は確認してみてください。
- 年収が一定額を超えていなければ、個人事業主でも扶養に入れる
- 自営業として起業した時点で扶養から外れる
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副業の年間所得が20万円を超えたら、確定申告が必要
年間所得(1月1日〜12月31日)が20万円以上の場合は、副業をしていても確定申告をしなければなりません。所得とは、副業で得た売り上げから経費を差し引いた金額です。仮に売り上げが30万円、経費が2万円だった場合、所得は28万円となり、確定申告が必要となります。
確定申告で青色申告を選びたい場合は、開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。副業を禁止している会社で個人事業主として働いている場合、会社に秘密にしていても、確定申告をきっかけに会社に副業をしていることが発覚し、トラブルになることがあります。
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開業届を提出する際に選んだ職業や所得によって税率や課税対象が異なる
開業届の提出の際に注意しておきたいのが、「職業」の欄です。個人事業税の税率や家財対象はその職業の種類や所得によって異なります。
また、国税庁では非課税の職業であっても、都道府県税の区分では課税される場合があります。そのため、国税庁のホームページだけでなく、管轄の市町村での取り扱いも確認しておくとよいでしょう。
一例として、東京の場合をご紹介します。
法定業種と税率
区分 | 税率 | 事業の種類 | |||
第1種事業 (37業種) |
5% | 物品販売業 | 運送取扱業 | 料理店業 | 遊覧所業 |
保険業 | 船舶定係場業 | 飲食店業 | 商品取引業 | ||
金銭貸付業 | 倉庫業 | 周旋業 | 不動産売買業 | ||
物品貸付業 | 駐車場業 | 代理業 | 広告業 | ||
不動産貸付業 | 請負業 | 仲立業 | 興信所業 | ||
製造業 | 印刷業 | 問屋業 | 案内業 | ||
電気供給業 | 出版業 | 両替業 | 冠婚葬祭業 | ||
土石採取業 | 写真業 | 公衆浴場業 (むし風呂等) |
ー | ||
電気通信事業 | 席貸業 | 演劇興行業 | ー | ||
運送業 | 旅館業 | 遊技場業 | ー | ||
第2種事業 (3業種) |
4% | 畜産業 | 水産業 | 薪炭製造業 | ー |
第3種事業 (30業種) |
5% | 医業 | 公証人業 | 設計監督者業 | 公衆浴場業 (銭湯) |
歯科医業 | 弁理士業 | 不動産鑑定業 | 歯科衛生士業 | ||
薬剤師業 | 税理士業 | デザイン業 | 歯科技工士業 | ||
獣医業 | 公認会計士業 | 諸芸師匠業 | 測量士業 | ||
弁護士業 | 計理士業 | 理容業 | 土地家屋調査士業 | ||
司法書士業 | 社会保険労務士業 | 美容業 | 海事代理士業 | ||
行政書士業 | コンサルタント業 | クリーニング業 | 印刷製版業 | ||
3% | あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業 |
装蹄師業 |
参考・引用元:東京都主税局「個人事業税」
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以上の注意点を踏まえた上で、開業届を提出する場合は開業freeeの利用をおすすめします。開業届の書き方がわからなくても、必要な届出書類を簡単に、正確に作成することができます。
手書きする場合の開業届の書き方
手書きで開業届を記入する場合は、税務署で開業届をもらうか、国税庁のホームページからダウンロードし、一つ一つ項目を埋めていきます。
手書きする場合の開業届の書き方について詳しく知りたい方は、こちらの「開業届の書き方。正確・簡単に記入するための初心者ガイド(手書きする場合の開業届の書き方)」をご参照ください。
開業freeeなら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが「開業freee」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。
開業freeeで作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。
毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
開業freeeの使い方を徹底解説
開業freeeを使った開業届の書き方は、
準備→作成→提出
の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。
地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、開業freeeを活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成も会計freeeを使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
開業freeeと会計freeeを使って、効率良く届出を作成しましょう。
まとめ
開業届は、新たに事業を開始して税金を納めるという意思を示す重要な届出です。最大のメリットは青色申告で確定申告ができることですが、開業届の控えは個人の信用度を高めることにもつながります。提出は必須ではありませんが、できれば提出したほうが良いでしょう。
ただし、個人事業主としての開業前後は、準備や営業に追われる時期でもあります。時間と手間を省き、簡単に開業届を作成・提出するためにも、開業freeeを利用して必要な書類を準備してみてはいかがでしょうか。