監修 西村 真衣 税理士

新規就農には「独立型」と「雇用型」の2つの選択肢があり、個人事業主として農業を始める場合はこのうちの独立型にあたります。
独立型は、自由度が高い点が魅力ですが、資金や農地の確保・開業届の提出・経営や税務の知識などが必要です。また、開業届の提出や税務申告の準備も欠かせません。
本記事では、独立型で新規就農を考えている人に向けて、事前準備・開業届の提出手続き・青色申告の活用による節税メリットなどについて詳しく説明します。さらに、農業を営むうえで「経費」として計上できる支出についても解説するので、参考にしてください。
目次
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就農のスタイル:「独立型」と「雇用型」
農業に従事する際、農家の子弟が家業を継ぐ以外では、就農のスタイルには大きく分けて「独立型」と「雇用型」の2つがあります。
独立型の就農スタイルの場合、自身で資金・農地・機械設備などの確保が必要です。しかし、個人事業主として農業に従事すれば、自身の裁量で経営を行うことができ、自由度の高い運営が可能になるという魅力があります。
一方、雇用型は農業法人などに就職するスタイルです。毎月決まった給与をもらって働きながら、栽培技術や農業経営に関する知識を身につけられます。雇用型で就農してある程度の知識を身につけた後に、自営農業者として独立することも可能です。
本記事では、自ら開業する「独立型」を中心に解説します。
独立型:個人事業主として開業/法人を設立
独立型の就農スタイルを選択する場合には、個人事業主として開業するか、農業法人を設立するかのいずれかの形式を取ります。いずれの場合にも、事業を始めるにあたって資金・農地・機械設備の確保が必要です。
事業を成功させるためには、事業計画書の作成が重要です。事業計画書は、事業内容や経営戦略、収益予測などをまとめた書類で、主な項目は「企業・事業の概要」「市場環境・競合」「実施体制・人員計画」などです。
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①資金を確保する
新規就農相談センターの調査によると、就農するにあたって用意した自己資金の平均額は281万円である一方、就農1年目の経費は平均755万円という調査結果です。売上が安定するまでの生活費のことも考え、資金を確保しておきましょう。
出典:全国新規就農相談センター「令和3年度 新規就農者の就農実態に関する調査結果」
国や自治体には、「農業次世代人材投資事業」や「無利子資金制度」など新規就農に必要な資金をサポートするさまざまな制度があります。支援事業の活用も視野に入れて資金の確保を進めましょう。
②農地を確保する
栽培する品目や就農する地域を決めて農地の確保を行いましょう。農地に関しては行政機関の就農支援窓口にも相談できます。
なお、農地を利用する際には、関連する法律に沿った手続きが必要なため、あわせて確認しておきましょう。
たとえば農地法では、一般人による農地の売買・貸し借りが制限されています。そのため、市町村の農業委員会で農家認定を受け、「農地基本台帳」への登録を行う必要があります。
③機械設備を確保する
資金・農地の確保ができたら、農作業に必要な機械設備を確保しましょう。
初期投資の金額をできる限り抑えるために、中古品の購入やレンタルの活用なども検討しましょう。
④開業届を提出する
農業を事業として営む場合、開業届の提出が義務づけられています。開業届は、開業日から1ヶ月以内に税務署への提出が必要です。
届出書には、いつ・誰が・どこで事業を開始するかなどの基本情報を記入します。
開業届は、税務署の窓口やオンラインで提出可能です。
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⑤社会保険を切り替える
個人経営の場合、国民健康保険と国民年金への加入が必要です。もし会社員をやめてフリーランスになるときは、退職後14日以内に切り替えの手続きをする必要があります。
また、従業員を1人でも雇用する場合は、労働保険への加入が必要です。労働保険とは、労災保険と雇用保険を合わせた保険制度です。この加入手続きは、事業開始から10日以内に行いましょう。
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⑥青色申告承認申請書を提出する
青色申告には、最大65万円の所得控除が受けられるメリットがあります。家族従業員の給与を経費として計上できることも特徴です。
また、事業で赤字が出た場合、3年間の繰越控除が可能です。青色申告を行うためには、「青色申告承認申請書」の提出が必要となります。
この申請書は、開業から2ヶ月以内、または開業する年の3月15日までに提出しましょう。
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農業を個人事業主として始める際に大切なこと
個人事業主として農業を始める際は、資金や栽培技術、農業経営について学んだり、行政機関からのサポートを受けたりすることが大切です。
以下で詳しく解説します。
栽培技術や農業経営について学ぶ
資金や農地、就職先が確保できたとしても、作物の栽培技術が身についていなければ就農は難しいでしょう。また、独立型で新規就農する場合には、栽培技術だけではなく、経理や販売などの農業経営に関わる知識も必要です。
農業大学校や民間の農業教育機関などで、これらの知識や経験を補うことができます。就農を希望する地域の教育機関であれば、地域の特色を活かした実践的な教育を受けられるでしょう。
地域の行政機関からサポートを受ける
就農の前後に関わらず、行政機関のサポートを受けることでスムーズに事業を進められるでしょう。
各地域の行政機関には「農政局」などの名称で、農業に従事する人をサポートする機関や担当課が設けられていることが多いです。積極的にコンタクトを取って、地域からサポートを受けられるような体制作りを目指しましょう。
出典:全国新規就農相談センター「都道府県の就農相談窓口に相談する」
農業で開業すると落とせる経費
農業で開業すれば、農作物の販売・農作業の受託・自家消費などの支出を経費として計上できます。
経費の例としては、使用期間が1年未満または10万円未満の農具や消耗品・農業委員会の許可取得費用・農地取得に関する諸費用(固定資産を除く)などです。なお、ガソリン代や携帯電話料金など、プライベートと仕事が混在している支出は、事業使用分(例:50%)のみを経費として計上できます。
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独立型で就農する場合、もっとも手間がかかる作業のひとつに開業の手続きがあります。個人事業主として独立する場合には「開業届」の作成・提出が必要で、農業法人として起業する場合には法人登記の手続きが求められます。
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まとめ
農業に従事するスタイルには「独立型」と「雇用型」があります。
独立型では、自身で資金や農地・機械を確保します。自由度が高い反面、初期投資や資金調達が必要です。雇用型は農業法人や個人農家で就職し、給与を得ながら栽培技術や経営について学べます。
独立型で新規就農を検討している場合、資金・農地の確保や開業届の提出などが必要です。
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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
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1. 個人事業の開業・廃業等届出書
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2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
農家は個人事業主として開業できる?
農業を始める際の形態には、自身で農業を行う「独立型」と、農業法人に就職する「雇用型」の2種類があります。個人事業主に該当するのは、独立型です。
独立型で農業を始める場合、開業届を提出することで、開業日から個人事業主として認められます。
詳しくは「独立型:個人事業主として開業/法人を設立」をご確認ください。
農業で開業すると落とせる経費は?
農作物の販売や農作業の受託、自家消費など、収入を得るために支払った支出は経費として計上できます。
なお、ガソリンや携帯料金など、仕事とプライベートが混在する支出は、事業使用分(例:50%)のみを経費として計上できます。
詳しくは「農業で開業すると落とせる経費」をご確認ください。
監修 西村 真衣(にしむら まい) 税理士
父も祖父も税理士という家系に長女として生まれる。実家は60年続く税理士事務所。学生結婚し、子供を授かるも、母、妻、娘の役割以外に、自分の人生も生きていきたいと2人の子供を育てながら税理士試験に合格する。自身も経営者の立場を経験しない事には、お客様の気持ちに真に寄り添うことはできないと感じ、実家の税理士事務所とは別に2021年に西村税理士事務所を開業。現在は、女性起業支援を中心に活動している。
HP:西村税理士事務所
