監修 鶏冠井 悠二
監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

高校生でも必要な準備や手続きをすれば、起業が可能です。会社を設立したり、個人事業主として開業したりして事業を始めることができます。
起業にあたっては、事業アイデアを検討するだけでなく、定款作成・登記の手続きまたは開業届の提出といった対応も必要です。また、起業を成功させるために、セミナー・プログラム・ビジネスコンテストへ参加し、情報収集や人脈づくりをして事業に活かしている高校生もいます。
本記事では、高校生が起業するための準備・手続き、成功している高校生起業家の特徴などを紹介します。
目次
- 高校生は起業できる?
- 高校生が起業するための準備
- 親権者から同意を得る
- どのような事業に取り組むかを考える
- 高校生が起業するために必要な手続き
- 株式会社と合同会社の設立手続きの違い
- 個人事業主として開業するなら開業届の提出を行う
- 起業で成功している高校生に共通する特徴
- 起業に関するセミナーなどに参加している
- ビジネスコンテストに参加している
- 早いタイミングで行動を起こしている
- スモールビジネスからスタートしている
- 高校生が起業するときの注意点
- 学業との両立が難しい
- 経験不足で苦労する場合がある
- 資金の準備が難しい
- まとめ
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- よくある質問
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高校生は起業できる?
起業に年齢制限はないため、高校生でも起業できます。
昨今はインターネットを活用した事業形態の普及により、初期費用を抑えて開業しやすい環境が整いつつあります。日本政策金融公庫の調査によると、2024年度の新規開業における開業資金の中央値は580万円です。しかし、開業資金が250万円未満である割合は20.1%と、少ない資金でも開業ができることが分かります。
実際に、Web制作・受託開発・アプリ開発・VTuber関連事業など、さまざまなジャンルでの高校生による起業例がメディアなどでも取り上げられています。
出典:日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」
高校生が起業するための準備
高校生が起業する際は、親権者の同意を得る必要があります。そのほかにも、スムーズな起業のために、どのような事業を行うかを事前に検討しておきましょう。
親権者から同意を得る
たとえば、株式会社を設立するのであれば、企業の根本原則が記載された「定款」と呼ばれる書類の認証を受ける手続きがあります。定款認証では、未成年者が発起人(=会社の設立手続きを行う人)である場合は、親権者(法定代理人)の同意書の提出が必要です。
起業する会社形態については、後述の「株式会社と合同会社の設立手続きの違い」で詳しく解説しています。
また、高校生が起業するにあたっては、保護者の協力や理解が支えになることがあります。特に経済的な援助や事業運営のサポートを受けるなら、事業内容を丁寧に説明して、保護者に協力してもらえる環境を整えましょう。
どのような事業に取り組むかを考える
どのような事業に取り組むのかを準備の段階で考えておけば、必要な知識やスキル、資金の準備など、実現に向けたステップが見えやすくなります。
事業のアイデアを考えるときには、以下のような点を意識してみましょう。
事業のアイデアを考えるときのポイント
- 身近な課題や不便に感じていることからアイデアを探す
- 自身の強みやスキルを社会でどう活かせるかを考える
- 同年代のニーズや流行に注目する
- 競合や市場の調査をしてみる
たとえば、SNSやニュース、セミナー、書籍などで積極的に情報収集をすると、事業アイデアのヒントが見つかることがあります。高校生らしい気付きや趣味・特技を活かすことも考えながら、事業アイデアを検討しましょう。
高校生が起業するために必要な手続き
会社を設立するなら登記手続き、個人事業主として開業するなら開業届の提出がそれぞれ必要です。起業するために必要な手続きを以下で解説します。
株式会社と合同会社の設立手続きの違い
高校生が会社を設立する場合、株式会社と合同会社が主な候補です。
株式会社は、株式を発行して出資を募る会社で、役員と出資者が分かれているのが特徴です。他者からの出資を得られているという観点から、社会的な信用を得られやすい会社形態といえます。
一方、合同会社は、出資者=経営者である場合が多く、設立費用が安く、運営も柔軟なため、高校生の起業にも向いています。
株式会社と合同会社の違いについて詳しく知りたい方は、別記事「株式会社と合同会社の違いとは?メリット・デメリットや会社設立時の決め方を解説」をご覧ください。
いずれの会社形態であっても、会社設立にあたっては定款作成や登記などの手続きが必要です。
株式会社を設立する流れ
以下は、株式会社を設立する場合の基本的な流れです。
株式会社設立の流れ
①会社設立に必要な基礎情報を決定する
②会社用の印鑑(実印)を作成する
③定款を作成する
④公証役場で定款の認証を受ける
⑤資本金の払い込みを行う
⑥登記申請書類を用意し登記申請する
会社の基本情報(会社形態・会社名・事業目的・本店所在地・会計年度など)の決定後に、印鑑や定款の作成を進めていきます。
株式会社を設立する場合、公証役場での定款認証を受けなければいけません。定款認証の際、未成年者が発起人(会社の設立手続きを行う人)になる場合は、親権者(法定代理人)の同意書の提出が必要です。
その後、資本金の払い込みを行い、必要書類を準備して登記申請を進めます。
株式会社を設立する流れについて詳しく知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について」をご覧ください。
合同会社を設立する流れ
合同会社を設立する場合の基本的な流れは、次の通りです。
合同会社設立の流れ
①会社設立に必要な基本情報を決定する
②会社用の印鑑(実印)を作成する
③定款を作成する
④資本金の払い込みを行う
⑤登記申請書類を用意し登記申請する
合同会社では定款認証が不要である点が、株式会社との大きな違いです。登録免許税は株式会社では少なくとも15万円がかかりますが、合同会社では1件につき6万円が最低額であり、費用を抑えられます。
合同会社を設立する流れについて詳しく知りたい方は、別記事「自分一人で合同会社を設立するには?用意する書類から必要手続きまで解説」をご覧ください。
個人事業主として開業するなら開業届の提出を行う
会社を設立せずに個人事業主として開業する場合は、開業届の提出が必要です。小規模で事業を始めたいときは、個人事業主としての開業も選択肢になります。
開業届は、事業を開始した日から1ヶ月以内に納税地を管轄する税務署に提出します。開業届の様式は、国税庁のサイトからダウンロードが可能です。
また、開業届は、国税の各種手続きがオンラインで完結するオンラインシステム「e-Tax」から提出することもできます。
開業届の提出について詳しく知りたい方は、別記事「個人事業主の開業届の提出に必要なものとは? 必要書類の出し方や注意点も解説」をご覧ください。
出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
起業で成功している高校生に共通する特徴
以下は、起業で成功している高校生に共通する主な特徴です。
起業で成功している高校生に共通する特徴
- 起業に関するセミナーなどに参加している
- ビジネスコンテストに参加している
- 早いタイミングで行動を起こしている
- スモールビジネスからスタートしている
起業に関するセミナーなどに参加している
情報収集や起業に関する学びのために、全国で開催されているセミナーや起業家育成プログラムに参加する高校生もいます。こうした場では、起業に関する最新の情報を得たり、同じ志をもつ仲間と交流したりできます。
起業家や専門家から直接アドバイスを受けられることもあり、ビジネスアイデアの具体化や課題の整理を進めるうえで有用です。
ビジネスコンテストに参加している
起業で成功している高校生のなかには、ビジネスコンテストに参加している人もいます。
ビジネスコンテストは、自らのビジネスプランを発表し、起業家や専門家からアドバイスやフィードバックが得られる貴重な機会です。入賞することで、賞金や資金支援が得られる場合もあり、起業準備の後押しとなります。
ビジネスコンテストの一例として、日本政策金融公庫主催の「高校生ビジネスプラン・グランプリ」があります。
2024年度は5,000件を超える応募から10組のファイナリストが選定され、グランプリが決定されました。こうした大規模なビジネスコンテストは、高校生が起業家として成功するためのきっかけとなり得ます。
出典:日本政策金融公庫「2024年度 第12回「創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」開催結果」
早いタイミングで行動を起こしている
起業で成功するには、早期に行動を起こすことも重要です。学生のうちは比較的時間を自由に使いやすいため、やりたいことが見つかったらできるだけ早く行動を始めてみるとよいでしょう。
また、若いうちに経験を積み、試行錯誤を繰り返しながら成長もできるので、高校生のうちに形になりきらなかった場合も、将来的な成功につながると考えられます。
スモールビジネスからスタートしている
スモールビジネスから始めることも、事業として成功する要因になることがあります。
少ない初期費用で事業を始めれば、失敗しても損失は少なく抑えられます。リスクを恐れずに前向きに取り組みやすいため、初めて事業に取り組む高校生にとって大きな経験になるでしょう。
たとえば、プログラミングやWeb制作の受託、動画編集、SNS運用代行などのWeb系の事業やハンドメイド販売などのオンライン物販は、開業にかかる初期費用が比較的少なく済みます。
実際に事業をして実践的な学びを得てから、必要なタイミングで投資額を増やしていけば、無理のない範囲で着実に事業の成長を目指すことができます。
高校生が起業するときの注意点
高校生の起業の場合、学業との両立、経験の不足、資金の準備などで苦労することがあります。高校生が起業するときの注意点は以下の通りです。
学業との両立が難しい
起業すると、業務が多忙になり学業に支障をきたす可能性があります。
学業をおろそかにすると、高校生のうちに学ぶべき知識を得る機会を無駄にするだけでなく、大学進学などにも影響があり、将来の選択肢が狭まってしまうかもしれません。
高校生が起業する際は、学業との適切なバランスを取ることが重要です。
経験不足で苦労する場合がある
高校生のうちに起業する場合、ビジネス経験や社会人としてのマナーが十分でないことで苦労する場面があるかもしれません。
社会人であれば自然と身に付けていることの多いマナーやビジネスにおける慣習なども、高校生の段階では知らないことが多く、顧客や取引先との信頼関係に影響する可能性もあります。
高校生で起業を目指すなら、基本的なビジネスマナーやコミュニケーションスキルを意識的に学び、実践していくことが大切です。
資金の準備が難しい
起業の際の資金調達で、未成年が銀行などから融資を受けるのは困難です。資金調達をするなら、自己資金や親族からの支援など、金融機関以外の資金調達手段を検討する必要があります。
スモールスタートの計画を立てるなど、初期費用を抑えられるような工夫をして起業に取り組むことも重要です。
高校生が起業する際の資金調達方法
高校生が起業する際の資金調達の方法としては、たとえば以下が挙げられます。
資金調達方法
- 貯金などの自己資金
- 親族からの支援・借り入れ
- クラウドファンディング
- ビジネスコンテストの賞金
金融機関からの融資は難しいため、親族からの支援・借り入れなどで資金を準備する方法が現実的です。
また、クラウドファンディングを通じて事業に対して共感を得られれば、支援を受けられる可能性もあります。
ほかにも、ビジネスコンテストに参加して入賞すれば、賞金や資金の支援が得られる場合があります。
起業に必要な資金の目安
日本政策金融公庫が2023年4~9月に融資した会社のうち、融資時点で開業後1年以内の会社(不動産賃貸業を除く)を対象に実施した新規開業実態調査によると、開業費用は平均で985万円、中央値は580万円でした。
高校生が小規模で事業をスタートする場合はこの限りではありませんが、一般的な開業資金としては上記の金額が目安です。
同調査によると250万円未満で開業した事業者の割合は20.1%で、長期的な推移を見ると少額での開業は増加傾向にあります。
出典:日本政策金融公庫 総合研究所「2024年度新規開業実態調査~アンケート結果の概要~」
まとめ
起業に年齢制限はないため、高校生でも起業は可能です。
会社を設立する際は定款作成・登記手続き、個人として開業するなら開業届の提出がそれぞれ必要です。親権者の同意や事業アイデアの検討も含めて準備を進めていきましょう。
起業にあたって、セミナー・プログラム・ビジネスコンテストなどに参加して情報収集や人脈づくりに取り組み、それを事業に活かしている高校生もいます。こうした起業支援の場を上手に活用することは、成功のための重要な要素だといえます。
freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。
freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
高校生が起業するのに必要な準備・手続きは?
高校生が起業する際の準備としては、親権者からの同意を得ることや事業アイデアの検討などが必要です。手続きとしては、会社を設立するなら定款作成・登記手続き、個人事業主として開業するなら開業届の提出を行います。
詳しくは記事内「高校生が起業するための準備」「高校生が起業するために必要な手続き」をご覧ください。
起業で成功している高校生の特徴は?
起業で成功している高校生の特徴は、セミナー・プログラム・ビジネスコンテストに参加している、早期に行動している、スモールビジネスから始めているなどの点が挙げられます。
詳しくは「起業で成功している高校生に共通する特徴」をご覧ください。
監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)
コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。
HP:かいでFP事務所

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
