現在、歯科医院の数はコンビニよりも多く、競争が激化しています。歯科医院を開業するためには、必要となる資金や手続きをしっかりと把握し、準備を進めていくことが大切です。
本記事では、歯科医院を開業する方法や必要資金の目安、開業までの流れなど、歯科医院の開業に必要な情報をわかりやすく解説します。
目次
- 歯科医院を開業するには?
- 歯科医院を開業するにはいくらかかる?
- 保険診療を中心に開業する場合(一般歯科・小児歯科・歯科口腔外科など)
- 自由診療を中心に開業する場合(矯正歯科・審美歯科など)
- 歯科医院の開業までの流れ
- STEP1. 診療方針の策定と診療圏調査の実施
- STEP2. 事業計画書の作成
- STEP3. 資金調達と開業物件の契約
- STEP4. 内装工事と医療機器導入
- STEP5. 人材採用〜教育・集患戦略
- STEP6. 歯科診療所開設届の提出
- 歯科医院の開業におけるよくある失敗と回避法
- 失敗例1. コンセプトが曖昧で競合に埋もれてしまう
- 失敗例2. 高額な自由診療機器を導入するもニーズが少ない
- 失敗例3. 歯科衛生士の採用に失敗し医院が回らない
- 歯科医院の開業に使える補助金と融資
- よくある質問
- まとめ
- freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
無料で開業届を一括作成。税務署にそのまま提出できる!
freee開業は開業届を最短5分で作成できる!
書類はオンライン提出が可能!
税務署にいかずそのまま提出でき、忙しい方にもおすすめです。
費用もかからないから安心。
歯科医院を開業するには?
歯科医院を開業する方法は、大きく分けて以下の「新規開業」と「承継開業」の2つがあります。
- 新規開業:物件の選定からスタッフの採用まで、すべてをゼロから作り上げる開業方法
- 承継開業:既存の歯科医院の資産を引き継ぐ形での開業方法
新規開業は、自身の理念や診療方針を100%反映できる自由度の高さが大きな魅力です。
一方で、多額の初期投資が必要となり、集患にも時間を要するため、開業後しばらくは経営が不安定になるリスクを理解する必要があります。
承継開業は、前院長が築き上げてきた経営基盤を引き継ぐことができます。初期投資を大幅に抑えられるうえに、安定した経営をスタートできる可能性が高くなります。
ただし、前院長との診療方針の違いや既存スタッフとの関係構築など、引き継ぎ特有の課題も存在するため、慎重な検討が必要です。
歯科医院を開業するにはいくらかかる?
歯科医院の開業に必要な資金は、保険診療と自由診療のどちらを中心とするかによって異なります。自身の診療方針にあわせた資金計画を立てることが重要です。
保険診療を中心に開業する場合(一般歯科・小児歯科・歯科口腔外科など)
保険診療を中心とした一般歯科・小児歯科・歯科口腔外科などで開業する場合、開業資金の相場は5,000万円以上といわれています。
費用の内訳は以下のとおりです。
- 歯科ユニット費
- 必須医療機器(デジタルレントゲン・滅菌機器など)
- 物件取得費
- 内装工事費
保険診療には診療報酬が定められているため、比較的安定した経営を見込めますが、収益を上げるには患者数の確保が不可欠となります。
自由診療を中心に開業する場合(矯正歯科・審美歯科など)
自由診療を中心とした矯正歯科・審美歯科などで開業する場合、開業資金は、保険診療中心のケースよりも高額になる傾向があります。
高額になる主な理由は以下のとおりです。
- 歯科用CTやマイクロスコープといった、高スペックな医療機器の導入費用が必要になる
- 地域を絞らずに集患する必要があるため、Web広告など広域へのマーケティング費用が必要になる
- 美容目的の患者もターゲットとなるため、内装・デザインにかかる費用が高額になりやすい
ただし、自由診療は保険診療に比べて診療単価が高いため、集患が成功すれば投資を早期に回収できる可能性もあります。
歯科医院の開業までの流れ
歯科医院の開業を成功させるには計画的な準備が不可欠です。
歯科医院を開業するまでの主なステップは以下のとおりです。
STEP1. 診療方針の策定と診療圏調査の実施
まずは自身の専門性や理念に基づき、「予防歯科中心」「ファミリー層向け小児歯科」「審美・インプラント特化」といった歯科医院の軸となる診療方針を明確にしましょう。
そのうえで、開業候補地の人口動態・年齢構成・競合医院の数や特色などをデータに基づいて分析する診療圏調査を行います。
この調査によって、自身の診療方針が周辺地域で成功する可能性を客観的に評価できます。診療圏調査の具体的な方法は以下のとおりです。
- e-Stat(政府統計の総合窓口):国勢調査などから人口・年齢構成・世帯数を確認
- Googleマップ:立地・外観・口コミをチェック
- 現地調査:街の雰囲気や人の流れ、生活動線を把握
診療圏調査の結果を参考にしながら、このタイミングで物件探しを行いましょう。物件選定の際は、立地条件だけでなく、医療法で定められた構造設備基準を満たしているかの確認も必要です。
細かな基準が定められているため、契約前に必ず保健所に事前相談を行い、開設許可が得られる物件かどうかを確認しましょう。
STEP2. 事業計画書の作成
診療圏調査の結果を踏まえ、具体的かつ将来性のある事業計画書を作成します。
以下のような観点から、経営に関わるすべての要素を数値化して落とし込んでいきます。
- 必要な設備投資額
- スタッフの人員計画
- 診療報酬の算定戦略
金融機関への融資を受けるためには、この事業計画書が審査の重要な判断材料となるため、説得力のある内容に仕上げることが重要です。
なお、保険診療を行うのであれば、医師会資料を参考に保険診療の実務ルールを事前に把握しておきましょう。
【関連記事】
事業計画書の書き方と記入例を項目別に解説! テンプレートや作成時のポイントも紹介
STEP3. 資金調達と開業物件の契約
資金調達の主な方法は以下のとおりです。
- 金融機関に融資を依頼する
- 日本政策金融公庫を利用する
- 信用保証協会の創業関連保証制度を利用する
- 補助金や助成金を利用する
- ノンバンク融資を利用する
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、民間金融機関と比較して金利が低く、開業実績がなくても融資を受けやすい特徴があります。はじめての資金調達も比較的スムーズに進めやすいでしょう。
STEP4. 内装工事と医療機器導入
物件が決まったらコンセプトにあった内装プランを固め、詳細な見積もりを取得したうえで工事の契約を締結しましょう。
配管や動線設計、電気容量の確保などには歯科特有の専門的な知識が必要となるため、クリニックや病院の内装工事の経験が豊富な業者に依頼したほうがスムーズに進めることができるでしょう。
医療機器の選定・発注は、内装工事のスケジュールにあわせて進める必要があります。
開業に必要な機器(歯科ユニット・レントゲン・CT・レセコンなど)をリストアップし、予算内で導入できるよう検討します。
医療機器の搬入時期は内装工事の進捗と調整が必要なため、業者間での連携を密にとることが重要です。
STEP5. 人材採用〜教育・集患戦略
開業前には歯科衛生士や受付などの必要な人材を確保し、十分な教育期間を設けることが大切です。特に歯科衛生士は人手不足であるため、早めに採用活動をはじめましょう。
採用と並行して、以下のような方法で、開業を地域住民に周知する集患戦略を行います。
- 地域情報誌への広告掲載
- HPの作成
- 内覧会の企画
自由診療をメインとする際は、SNSアカウントの開設・運用も効果的です。Instagramで歯科医師自身についてや歯科医院のコンセプトを紹介するなど、デジタルマーケティングを積極的に活用し、広い範囲に認知を広げましょう。
STEP6. 歯科診療所開設届の提出
開業の準備が整ったら、該当機関に以下の書類を提出しましょう。
- 保健所に提出するもの:歯科診療所開設届
- 厚生局に提出するもの:保険医療機関指定申請 ※保険診療を行う場合
保険医療機関指定申請は毎月締切日が設定されており、指定日も決まっているため、開業スケジュールにあわせて計画的に申請する必要があります。
なお、個人事業主として歯科医院を開業する場合には、管轄の税務署に開業届の提出が必要です。開業届は、原則として開業してから1ヶ月以内の提出が推奨されています。
【関連記事】
開業届とは?書き方や提出に必要なもの、提出のメリット・注意点を解説
歯科医院の開業におけるよくある失敗と回避法
歯科医院の開業では、準備不足や判断ミスによって経営困難に陥るケースが少なくありません。リスクを抑えるために、よくある失敗と適切な回避法を把握しておきましょう。
失敗例1. コンセプトが曖昧で競合に埋もれてしまう
1つ目は「コンビニより多い」といわれる歯科業界において、強みや専門性が不明確なまま開業することで、競合に埋もれてしまうケースです。
たとえば、同じ地域に「小児歯科専門」「インプラント専門」などの明確なコンセプトをもつ歯科医院があれば、患者はより専門性の高い歯科医院を選ぶことが想定されます。
このような失敗を回避するには、診療圏にあわせて自院の強みとなるコンセプトを明確に設定し、ターゲットに響くサービスや情報発信を徹底することが重要です。
失敗例2. 高額な自由診療機器を導入するもニーズが少ない
2つ目は、最新の歯科用CTやマイクロスコープのような高額の機器を導入したものの、地域の患者ニーズと合わず、「宝の持ち腐れ」状態に陥ってしまうケースです。
たとえば、高齢者が多い地域で口腔内スキャナーやホワイトニング用の照射器のような審美歯科機器を導入しても、需要は限定的となる可能性が高いでしょう。
こういった失敗を防ぐには、自院周辺の年齢層や所得層を分析し、その機器を用いた治療の需要が見込まれるかを慎重に判断することが大切です。
特に開業当初は、必須の設備に絞って導入し、経営が安定してから段階的に設備を充実させていくアプローチが賢明です。
失敗例3. 歯科衛生士の採用に失敗し医院が回らない
最後は、歯科衛生士の採用・定着に関する失敗です。歯科衛生士は人材不足の状況にあり、採用自体が困難な傾向があります。
このような問題を回避するには、求人サイトを徹底的に活用したり、他院との明確な違いをアピールしたりすることが重要です。
適正な給与水準に設定することはもちろん、以下のようにスタッフが働きがいを感じられる環境も整えておきましょう。
- 成長機会の提供:キャリアアップ支援や研究制度など
- 働きやすさの追求:有給休暇の取得促進、産休・育休制度の整備など
スタッフが働きたいと思える環境づくりに投資することが、結果的に医院の安定経営につながります。
歯科医院の開業に使える補助金と融資
歯科医院の開業には多額の資金が必要となりますが、補助金や融資を活用することで、資金調達の負担を軽減できます。
創業期に利用できる代表的な融資制度には、無担保・無保証人での借入が可能な日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。
補助金は、自治体ごとに公募の有無や要件が異なるため、開業予定地の制度を事前に確認することが重要です。
地域によっては、電子カルテシステムの導入支援や、開業時の市場調査・分析費用の補助など、創業に向けた支援制度を設けている場合もあります。
これらの制度を有効活用することで、初期投資の負担を抑えながら余裕をもって歯科開業の準備ができるでしょう。
よくある質問
歯科医院はコンビニより多い?
現在、歯科医院はコンビニよりも多いです。
令和7年3月時点でコンビニ店舗数が約5.7万店舗(大手7社の合計)であるのに対し、全国の歯科診療所数は約6.6万施設と、1万施設近く上回っています。
経済産業省が平成24年に行った「よく見かける事業所調査」でも、コンビニは25位であるのに対し、歯科診療所は8位と、10年以上前からコンビニよりも歯科医院のほうが身近にあると感じていた人は多かったことがわかります。
歯科医院の開業医は儲かりますか?
「儲かる」の定義を年収1,000万円以上とするならば、多くの開業歯科医はその水準に達している可能性が高いといえます。
厚生労働省が運営するjob tagによると、歯科医師の平均年収は1135.5万円です。
このデータには勤務歯科医も含まれているものの、歯科医師でもっとも多いのは歯科医院の開設者であるため、開業歯科医の多くは年収1,000万円以上を得ている可能性があります。
成功すれば平均以上も可能ですが、経営スキルによっては勤務医の収入を下回ることもあると理解しておきましょう。
歯科開業の手順に関しては「歯科医院の開業までの流れ」をチェックしてください。
歯科開業の継承とは?
歯科開業の継承とは、既存の歯科医院の資産(土地建物・医療機器・スタッフ・患者など)をそのまま後継者が引き継ぐことです。
「継承」は業務や財産といった具体的なものを受け継ぐ際に使われる傾向があります。
一般的に、事業を引き継ぐ際は、先代の事業に対する想いや信念を含めて引き継ぐという意味で「承継」という言葉が用いられます。
詳しくは記事内「歯科医院を開業するには?」をご覧ください。
歯科医院の開業医の平均年収は?
厚生労働省が運営するjob tagのデータによると、歯科医師全体の平均年収は1135.5万円です。これは、開業歯科医だけでなく勤務歯科医も含まれる年収の平均値です。
ただ、就業形態でもっとも多いのが自営業であるため、多くの歯科開業医は、平均値である年収1,000万円以上の収入を得ている可能性が高いと考えられるでしょう。
ただし、これはあくまで統計データ上の推測であり、実際の年収は地域や経営状況によって大きく異なります。
歯科開業のロードマップは「歯科医院の開業までの流れ」をチェックしてください。
まとめ
歯科医院の開業を成功させるには、診療方針の策定から資金調達・物件選定・スタッフ採用・行政手続きまで、多岐にわたる準備が必要です。
開業準備の中でも、各種届出書類の作成は複雑で時間がかかる作業のひとつです。
書類作成をミスなく、かつ効率的に行いたいなら「freee開業」の活用も検討してください。
freee開業を使うと、質問に答えていくだけで、必要な届出書類をWeb上で簡単に作成でき、手続きの漏れを防げます。
歯科医院の開業時はfreee開業を活用して書類作成を効率化し、診療準備や集患戦略に専念して理想のスタートを切りましょう。
freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。
freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。
Step1:準備編
準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。
事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。
申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。
給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。
さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。
入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。
届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
