監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

政府の働き方改革の推進により、昨今、副業や兼業、リモートワークを認める企業が増加し、フリーランスをはじめとする多様な働き方が広がっています。
フリーランスとは、組織や団体に所属せず仕事を請け負う人や働き方を指す言葉です。似た用語として個人事業主がありますが、フリーランスに法律上の定義がないのに対して、個人事業主は「開業届を提出した個人の事業主」という定義があります。
フリーランスは時間や場所に縛られずに働けるメリットがある一方で、収入をアップしたり案件を獲得したりするには努力が必要です。
本記事では、フリーランスの仕事の種類やメリット・デメリット、活動に必要な手続きなどを解説します。
目次
- フリーランスとは
- フリーランスの契約形態(業務委託契約の種類)
- フリーランスの就業日数・就業時間
- フリーランスと個人事業主の違い
- フリーランスとフリーターの違い
- フリーランスが注目されている理由
- 代表的なフリーランスの職種10種と仕事内容
- ライター
- デザイナー
- イラストレーター
- 編集者
- システムエンジニア
- Webマーケター
- アフィリエイター
- 動画クリエイター
- カメラマン
- コンサルタント
- フリーランスとして働くメリット
- 自由な働き方ができる
- 仕事を自由に選ぶことができる
- 技術力があれば高い報酬が期待できる
- フリーランスとして働くデメリット
- 収入が不安定になる可能性がある
- 社会的信用を得にくい
- 確定申告や各種保険の手続きを自身で行う必要がある
- 2024年11月にフリーランス新法(フリーランス保護法)が施行
- フリーランスが仕事を獲得する方法
- 知人・友人からの紹介
- 企業からの直接受注
- SNSの宣伝活動
- クラウドソーシング・エージェントサービスの利用
- フリーランスとして活動するために必要な準備と手続き
- 社会保険(健康保険・年金)の切り替えと加入手続きを行う
- 確定申告を実施して税金を納める
- 開業届を提出し個人事業主となる
- まとめ
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- よくある質問
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フリーランスとは
フリーランスとは、組織や団体に所属せず、個人で仕事を受注する人や働き方を指します。厚生労働省による「フリーランスとして安心して働ける環境を 整備するためのガイドライン」では、フリーランスの定義を以下の通り定めています。
実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者
フリーランスは働き方を定義する用語であり、業種・職種は問いません。雑誌・ウェブなどの制作物に携わるクリエイティブ系、大工・税理士などの多様な職種が存在します。
ガイドラインに「雇人もいない」とある通り、フリーランスは会社員や団体職員のように組織に雇用されていません。よって、基本的に労働基準法などの労働関係法令の適用対象外です。
フリーランスの契約形態(業務委託契約の種類)
一般的に、フリーランスは取引先と「業務委託契約」と通称される契約を締結し、業務を行います。業務委託契約は、法律上は原則として以下の2種類に分類されます。
業務委託契約の種類
- 請負契約:当事者の一方が決められた仕事の完成を約束し、相手側が成果物に対して報酬を支払う契約
- 準委任契約:仕事の完成に限らず、行った業務に対して報酬を支払う契約
たとえば、ソフトウェアを開発して納品する、ロゴや広告デザインなどの成果物を納品する場合は、請負契約です。一方、準委任契約は成果物の完成義務はなく、コンサルティング業務やシステム開発のサポート業務などが該当します。
ただし、実際の取引では、複数の契約要素を含んでおり、明確に分類できない「混合契約」と呼ばれる契約も存在します。たとえば、システム開発で設計書を作成し納品する請負契約と、コーディング支援する準委任契約を締結すると、このケースは混合契約です。
出典:国税庁「請負の意義」
フリーランスの就業日数・就業時間
フリーランスは、専業として個人で請け負って働くパターンと、副業として会社員などと兼業するパターンに分かれます。専業か副業かによって、フリーランス業務に費やす時間は大きく異なります。

2020年の内閣官房の調査によると、フリーランスの1日あたりの就業時間は、2時間以上4時間未満・4時間以上6時間未満・6時間以上8時間未満がそれぞれ19%台でした。
ひと月あたりの就業日数の最多は「5日以内」(23.5%)であり、次点で「21日以上 25日以内」(17.6%)です。人によって就業時間・日数に大きな差があることが分かります。
出典:内閣官房日本経済再生総合事務局「令和2年5月フリーランス実態調査結果」
フリーランスと個人事業主の違い
フリーランスと似た意味をもつ言葉に「個人事業主」があります。個人事業主もフリーランス同様に個人で仕事を請け負って収入を得る働き方ですが、以下の点がフリーランスと異なります。
フリーランスと個人事業主の違い
- フリーランス:法律上の定義がなく、「組織や団体などの組織に属さず個人で仕事を請け負う」働き方に注目した呼称
- 個人事業主:法律上で「開業届を提出した個人の事業主」を指す呼称。働き方の点ではフリーランスと同様
どちらも特定の組織や団体に属さずに業務を請け負い、給与ではなく報酬で収入を得る点は同様です。しかし、行っている事業について税務署に開業届を提出することで、フリーランスは税務上「個人事業主」に分類されます。
【関連記事】
開業届とは?個人事業主が知っておくべき基礎知識や提出するメリット・注意点について解説
フリーランスとフリーターの違い
フリーランスとフリーターは言葉の響きが似ているものの、意味は異なります。
フリーターは、一般的にアルバイトやパートタイムで就業している労働者を指す言葉です。アルバイトやパートに限らず、非正規労働者全般を指す場合もあります。
フリーランスは組織に所属せず個人で仕事を受注する働き方なので、雇用契約を締結するフリーターとは異なります。フリーターは就業先と雇用関係があるため、労働基準法などが適用されます。
出典:厚生労働省「フリーターについて」
フリーランスが注目されている理由
働き方が多様化する中、フリーランスの働き方が注目される背景には、以下の理由が考えられます。
フリーランスが増えている理由
- 独立・副業の敷居が下がった
- 多様な働き方が認められるようになった
- 「人生100年時代」でセカンドキャリアが注目されるようになった
- 企業が外部の優秀な人材を探すようになった
政府が副業や兼業、リモートワークを推進することで、多様な働き方を認める企業が増加し、働き方の選択肢が広がっています。
たとえば、働き方改革実行以前、20〜30代の女性は出産や育児を理由に雇用主との契約を解除し、キャリアを中断しなければならないケースが少なくありませんでした。しかし、働く場所や業務量を調整できるフリーランスであれば、仕事と家庭の両立を実現しやすくなります。
また、平均寿命が伸び、長い人生をより豊かに過ごすための選択肢としても、フリーランスの働き方が注目されています。定年制度のないフリーランスは、働く意欲のある高齢者が年齢に制限されずに生き生きと過ごすための手段のひとつです。
そして、フリーランスという働き方が広まることは、個人だけでなく企業にもメリットがあります。雇用の型にとらわれない採用は、企業にとって外部の優秀な人材を確保するチャンスとなるでしょう。
出典:厚生労働省「生涯における出来事と職業キャリア」
出典:フリーランス協会「フリーランスの実態と課題」
出典:厚生労働省「副業・兼業」
代表的なフリーランスの職種10種と仕事内容
フリーランスは「個人で仕事を請け負う働き方」を指す言葉であり、業種や職種を選びません。以下では、個人のスキルや知識を活かして仕事を得やすい職種10種を紹介します。
フリーランスの代表的な職種
- ライター
- デザイナー
- イラストレーター
- 編集者
- プログラマー(SE)
- Webマーケター
- アフィリエイター
- 動画クリエイター
- カメラマン
- コンサルタント
ライター
ライターは、出版社や新聞社、Webメディアなどのメディアから依頼を受け、記事を執筆するのが主な仕事です。基本的な業務は執筆ですが、コンテンツの企画立案から、必要に応じて取材先へのアポ取りや取材も一貫してこなすライターもいます。
Web上に掲載される文章を執筆する「Webライター」であれば、SEO対策に適したライティングスキルなど、紙媒体でのライティングとは異なる知識やスキルが必要です。
そのほか、人物や企業に対して取材・インタビューをして記事を執筆する「取材ライター」商品やサービスの魅力を伝える「コピーライター」などがあります。
特定の分野に関して専門知識があり、かつ一定の文章力があればライターで活躍できる可能性があります。出版社や新聞社で記者として実績を積んでいれば、フリーランスのライターとして独立しやすいでしょう。
デザイナー
デザイナーは、あらゆる課題を「デザイン」を用いて解決する仕事です。デザイナーの仕事やジャンルは多岐に渡り、たとえば、「Webデザイナー」は、Webサイトのデザインを手がける仕事です。Webサイトのユーザビリティやユーザーへの体験価値を向上させるためのデザインを考えるのは「UI/UXデザイナー」です。そのほか、出版物や広告などのデザインを考え・制作する「DTPデザイナー」、商業施設や店舗、個人宅などのあらゆる空間をデザインする「空間デザイナー」などもあります。
フリーランスのデザイナーになるには、美術系の大学や専門学校を卒業し、広告会社やデザイン事務所などで経験を積んだ後に独立するのが一般的です。ただし、最近ではWeb講座などを用いて独学で習得し、クラウドソーシング経由で受注・実績を積んでいく方法も主流となっています。
イラストレーター
主に企業を対象とするイラストレーターは、クライアントの趣旨に合うイラストを企画・制作する仕事です。書籍・雑誌・Web媒体などで用いられる挿絵や図解の作成などを手掛けます。
そのほか、ゲームに用いるためのキャラクターデザインの考案など、さまざまな業務があります。
また、独自で展示会を開催したり作品集を発表したりすることで、自身のイラストの認知拡大や、ファンの獲得につながるでしょう。主体的に自身の作品を公開していくことは、新たな取引先が見つかるなど営業活動の一環としても効果的です。
フリーランスのイラストレーターになるには、広告・出版・印刷・ゲーム制作会社などに就職し、経験を積んだ後に独立するのが一般的です。ただし、デザイナーと同様に、独学で技術を身に付けてフリーランスとなるケースもあります。
編集者
編集者は、記事やコンテンツを「ユーザーにとって価値あるもの」に仕上げるために、企画の立案から構成づくり、ライターとのやりとり、進行管理、仕上げまでを担う仕事です。単に文章を直すだけでなく、ユーザー目線での情報の取捨選択・整理など、多面的な役割を果たしています。
雑誌編集者であれば、読者のニーズを踏まえて企画を考え、執筆者・カメラマン・デザイナー・イラストレーターを手配します。原稿ができたら、ページのレイアウトや原稿のリライトなど、全体を整える作業を行います。
Web編集者は、Webサイト・メディアの記事構成を考え、Webライターに原稿を依頼する仕事です。主にスケジュールを管理し、原稿ができたらチェックをします。
編集者と似た職業に、「Webディレクター」が挙げられます。Webディレクターは、Webサイトの構築に関する企画・設計・制作進行・運用まで、すべてを指揮する現場監督の仕事です。
フリーランスの編集者になるには、出版社などメディアをもつ企業で経験を積んでから独立するケースが多いといえます。
システムエンジニア
システムエンジニア(SE)は、システムやアプリケーションの設計・開発・保守を行う役割です。
システム全体の構造を設計するほか、具体的な機能を実装し、システムやアプリケーションのテストを通じてバグや問題を解消します。納品後も、運用中のシステムの監視や、必要に応じた修正・改善を行うケースもあります。
また、プロジェクトの進行管理やチームメンバーとの協力も重要な業務の一部です。
フリーランスのシステムエンジニアになるために学歴や資格は必要ありませんが、まずIT企業などに就職し、一定期間の教育を受けることが一般的です。
Webマーケター
Webマーケターは、Webサイトを中心としたオンライン集客や広告運用、サイト改善などを専門とするマーケターです。幅広いデジタルコンテンツやデジタルデバイスを使用するデジタルマーケターのなかでも、WebマーケターはWebサイトに特化したマーケティング活動を行います。
Webマーケターにはさまざまな種類があり、Google検索の上位表示を目的とした「SEOマーケター」、リスティング広告やSNS広告を運用する「広告プランナー」などがあります。
Webマーケターに求められるスキルは、主に情報解析スキル・コミュニケーションスキル・最新情報を常にキャッチしアップデートできるスキルです。また、ターゲットを見極める力や、ターゲット層のカスタマージャーニーをもとにしたプランニング力なども求められます。
フリーランスのWebマーケターになるには、広告代理店やWebマーケティング会社などに就職し、経験を積んだ後に独立するのが一般的です。
アフィリエイター
アフィリエイターは、自身が運営するWebサイト・ブログ・メルマガなどに広告を載せることで報酬を得る仕事です。サイト訪問者が商品を購入したりサービスに申し込んだりすることで報酬を得ます。
自身のWebサイト・ブログなどへのアクセスを増やすために、検索上位表示させるためのSEO対策の知識などが必要です。また、文章で商品の魅力を伝える「セールスライティング」の技術も求められます。
フリーランスのアフィリエイターになるために特別な資格や学歴は不要ですが、収益化するにはWebマーケティングやSEOの知識を身につける必要があります。
動画クリエイター
動画クリエイターは、映像や音声を使って魅力的なコンテンツを制作する仕事です。クライアントの依頼内容に基づいて撮影や編集を担い、写真やイラストを組みあわせて動画を制作します。
フリーランスの動画クリエイターになるには、映像系の学校を卒業して映像制作会社などで経験を積んでから独立するほか、独学で知識や技術を身に付ける方法もあります。
カメラマン
カメラマンは、クライアントの依頼に基づいた写真を撮影する仕事です。広告・出版カメラマンであれば、商品や食材などの被写体を撮影し、報道カメラマンであれば報道現場で取材や撮影を行います。
フリーランスのカメラマンになるには、まず広告制作会社やカメラマンの個人事務所に就職し、経験を積んだ後に独立するのが一般的です。
コンサルタント
コンサルタントは、クライアントがもつ課題・問題解決をサポートする仕事で、IT・人事・経営など、さまざまな分野で必要とされる職業です。
たとえば、人事コンサルタントはクライアントである企業の人事制度や人材開発に関してのサポートを担います。人事のニーズ・問題点を把握し、人事制度の設計・運用のアドバイスや、人材育成のための研修をフォローしたりします。
フリーランスのコンサルタントになるには、まずコンサルティング会社に就職し、経験を積んだ後に独立するのが一般的です。
フリーランスとして働くメリット
フリーランスは、自分の特技やスキルを活かして働くことができます。フリーランスの主なメリットは以下です。
フリーランスのメリット
- 自由な働き方ができる
- 仕事を自由に選ぶことができる
- 技術力があれば高い報酬が期待できる
自由な働き方ができる
フリーランスは組織に所属しないため、働く時間・場所・休日を自分でコントロールしやすい点がメリットです。また、オフィスの場所に縛られることなく、居住地を自由に選択できます。
特にパソコンさえあれば完結する業務であれば、旅先やカフェでもできるので、自由度がさらに増します。ただし、クライアントによってはセキュリティやコミュニケーションの取りやすさなどの観点から、働く時間と場所を指定されることもあります。
仕事を自由に選ぶことができる
フリーランスは、依頼された案件を受けるかどうかは自分の判断で決められます。苦手な仕事を断ったり、条件を交渉したりすることも可能です。
また、自分のスキルアップにつながる仕事や、チャレンジしてみたい分野の仕事を選ぶこともできます。組織の目的や目標に沿って指示された仕事をこなさなければいけない会社員とは、異なる働き方です。
技術力があれば高い報酬が期待できる
フリーランスは、報酬そのものもコントロールしやすい働き方といえます。
技術力の高さによって他者との差別化ができ、その分、より多くの報酬を得られる可能性があります。ただし、高い報酬を得るためには他者よりも高いスキルやスピードなどが必要です。自身のスキルや興味を活かせる職種を選び、それを磨き上げていくことが大切です。
フリーランスとして働くデメリット
柔軟で自由な働き方が魅力のフリーランスですが、以下のデメリットもあります。
フリーランスのデメリット
- 収入が不安定になる可能性がある
- 社会的信用を得にくい
- 確定申告や各種保険の手続きを自身で行う必要がある
収入が不安定になる可能性がある
フリーランスは、会社員や公務員に比べると収入が不安定になりやすいです。固定給や最低賃金などの規定はなく、請け負った仕事による報酬で生計を立てなければなりません。
また、取引先との契約が長期間続く保証はなく、取引先の方針や都合により契約を打ち切られたり、報酬の引き下げを交渉されたりする可能性もあります。
社会的信用を得にくい
フリーランスは企業や組織に所属しないため、第三者に身分を証明しにくい傾向があります。また、収入が安定しづらいという点でも、会社員と比べて社会的信用が低くなりやすいといえます。実績が少ない場合は、金融機関からの融資も受けにくいです。
会社員に比べると、クレジットカードを作ること、住宅ローンを組むことなどのハードルが上がります。
確定申告や各種保険の手続きを自身で行う必要がある
企業や組織で働いている場合、税金や公的保険などに関する手続きは勤務先が処理してくれます。しかし、フリーランスは税金関係や保険に関する手続きを、すべて自分で行わなければなりません。
所得税の算出・納税のためには、確定申告が原則必須です。税制上の優遇措置を受けたいのであれば、青色申告を選びましょう。ただし、青色申告を行うには条件を満たす必要があるため、初めて申告する際は、事前の下調べと準備が必要です。
【関連記事】
青色申告の期限はいつまで?青色申告承認申請書の提出期限も解説
フリーランスは確定申告が原則必須!青色申告のメリットや申告方法・必要書類について解説
フリーランスでも源泉徴収されるケースがある
フリーランスは、原則自分で確定申告や納税を行い、社会保険に関する手続きをしなければなりません。ただし、報酬の種類によっては、所得税が源泉徴収されるケースがあります。
源泉徴収される報酬の例
- 原稿料
- 講演料
- 弁護士報酬
- 税理士報酬 など
源泉徴収とは、報酬を支払う事業者が所得税を事前に差し引いた金額を支払う制度です。差し引かれた所得税は、フリーランスで働く人の代わりに事業者が納付してくれます。
しかし、徴収は概算で行われるので、本来納めるべき金額よりも多く源泉徴収されることがあります。この場合、フリーランスは確定申告することで源泉徴収税額の還付を受けることが可能です。
昨今では、取引先側の経理業務効率化の観点から、上記に当てはまらない業務内容であっても「個人事業主(フリーランス)との取引は一律で源泉徴収対象」とする企業もあります。このようなケースであっても、フリーランスが適切に確定申告を行うことで、対象外だった・払いすぎた源泉徴収税が還付されます。
出典:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
2024年11月にフリーランス新法(フリーランス保護法)が施行
これからフリーランスで活動しようと考えている人や、すでに活動を開始している人は、フリーランスを保護するための法令を理解しておきましょう。
2024年11月に、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」が施行されました。「フリーランス・事業者間取引適正化等法」「フリーランス新法」「フリーランス保護法」などと略されています。
フリーランス新法では、フリーランスに業務委託する事業者に対し、成果物を受領した日から原則60日以内での報酬支払いが義務付けられています。また、フリーランス新法は支払いに関する制度を敷くだけでなく、ハラスメント対策のための体制整備などの義務を課す法律でもあります。

法律の施行により、フリーランスが安定した環境で働けることや、契約上のトラブルが減少することなどが期待されています。
フリーランス新法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
【2024年11月1日施行】フリーランス新法とは?制定される背景や企業に求められる対応を解説!
出典:厚生労働省「「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」
出典:厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の概要 (新規)」
フリーランスが仕事を獲得する方法
フリーランスで生計を立てていくためには継続的に仕事を獲得しなくてはなりません。仕事を得る方法は、以下が挙げられます。
フリーランスが仕事を獲得する方法
- 知人・友人からの紹介
- 過去・現在の取引先からの受注
- SNSの宣伝活動
- クラウドソーシング・エージェントサービスの利用
知人・友人からの紹介
フリーランス協会が行った2023年の調査によると、フリーランスがもっとも多く案件受注する方法は「知人や友人からの紹介」でした。コロナ禍の前と比べると減少傾向にありますが、人脈で仕事を得ているフリーランスは多くいます。
また、フリーランスに関するセミナーや交流会で人脈が広がる場合もあります。興味のあるコミュニティなどには積極的に参加し、人とのつながりを大切にしましょう。
出典:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2025」
企業からの直接受注
フリーランスで独立する前に所属していた会社の取引先から、仕事を依頼されるケースも少なくありません。
また、求人サイトで「業務委託契約」を希望する求人情報が掲載されている場合もあります。定期的にチェックし、自分のスキルや実績に適した募集があれば、積極的に検討しましょう。
SNSの宣伝活動
自分の得意なことや興味のある分野をSNSで発信することで、企業から声がかかるケースもあります。
そのほかポートフォリオを掲載したウェブサイトなどを制作し、自身の実績やスキルの露出を図りましょう。インターネット上で広く情報を開示することで、自身を知ってもらい、仕事を得るきっかけづくりができます。
クラウドソーシング・エージェントサービスの利用
クラウドソーシングやエージェントサービスを活用し、案件に応募して仕事を獲得する方法もあります。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が公開した「フリーランス白書2025」によると、仕事探しで「クラウドソーシング」を利用している人の割合は23.3%、「エージェントサービス」を利用している人の割合は25.3%でした。
このことから、現在ではフリーランスの4〜5人に1人はクラウドソーシングやエージェントサービスを利用していることがわかります。
特にエージェントサービスは、以前はあまり一般的な手段ではありませんでした。外出できないコロナ渦に利用が広まり、現在ではフリーランスの代表的な仕事獲得の手段のひとつとなっています。
また、クラウドソーシングやエージェントサービスは、プラットフォーム手数料が報酬から差し引かれますが、報酬の未払いなどのトラブルを防止できるため、フリーランス初心者も使いやすいです。
出典:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2025」
フリーランスとして活動するために必要な準備と手続き
フリーランスは会社員とは異なり、役所への届出や経理業務などのバックオフィス業務をすべて自身で行わなければなりません。フリーランスで働くために必要な準備と手続きは、以下の3つです。
社会保険(健康保険・年金)の切り替えと加入手続きを行う
会社を退職し、専業のフリーランスになるのであれば、以下の手続きが必要です。
退職にあたっての必要な手続き
- 勤務先の健康保険から国民健康保険への切り替え
- 厚生年金から国民年金への切り替え
国民健康保険の加入は、原則として退職日の翌日から14日以内に手続きを行う必要があります。以下を持参のうえ、お住まいの地域の役所で手続きをしましょう。
国民健康保険の加入の際に持参するもの
- 離職票
- 身分証明書
- マイナンバー
- 印鑑
また、健康保険の加入手続きとあわせて、国民年金への加入も済ませておくとよいでしょう。社会保険に関しては、勤務先の健康保険を任意継続する方法もあります。
特定の職種では、業界専用の健康保険が用意されており、団体に所属することで加入できるものもあります。健康保険について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
フリーランスが加入する社会保険の種類は?保険料の計算方法や加入手続きを解説
出典:厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」
確定申告を実施して税金を納める
フリーランスとして所得を得ると、確定申告を行わなければなりません。確定申告とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間の所得と、その所得に対する所得税を計算し、税務署に申告・納税する手続きのことです。
確定申告を行わなければ脱税とみなされ、厳しい罰則が科される可能性があるため、忘れずに申告しましょう。ただし、フリーランスの仕事による所得が年間で48万円以下の場合は確定申告する必要はありません。
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類あります。青色申告であれば、手続きや必要な書類がやや複雑ですが、白色申告よりも高い節税効果が得られます。
簿記の原則にしたがって会計処理を行うなどの条件があるため手間はかかりますが、最大で65万円の特別控除が受けられます。青色申告について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
フリーランスの確定申告のやり方は?青色申告のメリットや申告方法・必要書類について解説
出典:国税庁「所得税のしくみ」
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
開業届を提出し個人事業主となる
一定の企業から継続して仕事を獲得できるなら、「事業を運営している状態」とみなされます。その際には、開業届を提出し個人事業主となることを検討しましょう。開業届を提出することで、以下のメリットが得られます。
開業届を提出するメリット
- 節税効果の高い青色申告を利用できる
- 屋号付きの事業用銀行口座を作れる
- 小規模企業共済に加入できる
- 開業届の控えが証明書の役割を果たしてくれる
なお、開業届は原則、事業を開始した日から1ヶ月以内に提出する必要があります。
開業届の提出方法や提出するメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
開業届とは? 個人事業主が知っておくべき基礎知識や提出するメリット・注意点について解説
まとめ
組織や団体に所属せず個人で仕事を受注するフリーランスの働き方は、近年認知度が高まっています。また、ライターやデザイナー、イラストレーター、システムエンジニアなど、さまざまな業種で自由な働き方ができるフリーランスを志す人も増えています。
フリーランスは仕事を選ぶことができ、技術力によって高い報酬が期待できる点がメリットです。ただし、収入が不安定になったり社会的信用を得にくくなったりするリスクもあります。
フリーランスになりたいと考えている人は、メリット・デメリットを考慮して転身するかどうか決めましょう。フリーランスになると決めたら、仕事を獲得する方法を確認し必要な手続きを行い、行動を始めてみてください。
freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。
freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
フリーランスとは?
自分の知識やスキルを活かして、事業を行う人を指します。政府のガイドラインでは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義されています。
詳しくは記事内「フリーランスとは」をご覧ください。
フリーランスが注目されている理由は?
政府によって副業や兼業が推奨され、多様な働き方が認められるようになったことが挙げられます。
詳しくは記事内「フリーランスが注目されている理由」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
