
国民年金保険料控除証明書は、年金保険料を納めた人に毎年送られる重要な書類です。この証明書があれば、納付した保険料の全額を所得から控除でき、税負担の軽減につながります。しかし「いつ届く?」「申告時に提出しないとどうなる?」「紛失したときの対処法は?」など、疑問を抱いている人も少なくないでしょう。
本記事では、国民年金保険料控除証明書の基本から年末調整・確定申告での使い方、届かない場合や紛失時の対応まで、納税者が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。適切な税控除を受けるため、ぜひ参考にしてください。
目次
- 国民年金保険料控除証明書とは
- 社会保険料控除を受ける際に必要
- 控除証明書の用途
- 国民年金保険料控除証明書を使うタイミングと申告方法
- 年末調整
- 確定申告
- 国民年金保険料控除証明書を出さないとどうなる?
- 控除を受けられない場合のデメリット
- 年末調整で控除証明書を提出し忘れてしまったら
- 国民年金保険料控除証明書は誰に、いつ、どのように届く?
- 誰に届くのか
- いつ届くのか
- どのように届くのか
- 国民年金保険料控除証明書を紛失した場合の対処法
- 「ねんきんネット」から申請する
- 電話(ねんきん加入者ダイヤル)から依頼する
- 年金事務所や年金相談センターの窓口から申請する
- 国民年金保険料控除証明書が届かない場合の対処法
- 住所変更手続きを行う
- 発送時期の対象か確認する
- まとめ
- 社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
- よくある質問
国民年金保険料控除証明書とは
国民年金保険料控除証明書とは、その年の1月1日から12月31日までに納付した国民年金保険料の金額を証明するための公的な書類です。日本年金機構から発行されるこの控除証明書は、一般的に「社会保険料控除証明書」とも呼ばれています。
社会保険料控除を受ける際に必要
控除証明書は、所得税や住民税の計算において社会保険料控除を受ける際に必要となります。社会保険料控除とは、納税者本人または生計を一にする親族が負担すべき社会保険料を納付した場合に、その全額を所得金額から差し引ける制度です。
社会保険料には、国民年金保険料や国民健康保険料、厚生年金保険料、健康保険料などがあります。
【関連記事】
社会保険料控除とは?年末調整での書き方や計算方法、控除対象をわかりやすく解説【2024年(令和6年)版】
控除証明書の用途
控除証明書の主な用途は、納付した国民年金保険料が社会保険料控除の対象であると証明することです。年末調整や確定申告の手続きをとおして控除証明書を提出することで、所得税および住民税の控除を受けられます。
これらの控除を受けると課税対象となる所得金額が少なくなるため、結果として納める税金の負担が軽減されます。また、すでに納めすぎていたケースでは、払いすぎた分が還付されることもあります。
国民年金保険料控除証明書を使うタイミングと申告方法
国民年金保険料控除証明書を提出するタイミングには、主に「年末調整」と「確定申告」の2パターンがあります。それぞれの状況に応じた控除証明書の使用タイミングと申告方法について、確認しておきましょう。
年末調整
年末調整は、主に会社員や公務員が対象となる手続きです。毎年11月~12月頃に勤務先から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」に、その年に自身が納付した国民年金保険料と、生計をともにする親族が納付した分の合計額を記入します。記入済みの書類に控除証明書を添付して会社に提出すれば、納付済みの国民年金保険料から控除を受けられるという仕組みです。
年末調整での申告方法
年末調整における申告方法は難しくありません。給与所得者の保険料控除申告書に、国民年金保険料の合計額を記入し、控除証明書を添付して提出するだけです。その後は提出された書類にもとづき、会社が所得税の過不足を計算し、還付や追徴といった方法で調整します。
なお、年末調整で適切に手続きを完了できる場合、確定申告をする必要はありません。
確定申告
確定申告は、主に以下のような人が行う申告です。
- 個人事業主やフリーランス
- 年間の給与収入が2,000万円を超える会社員
- 医療費控除など年末調整ではできない控除を受ける人
- 年末調整で国民年金保険料の控除申告を忘れた会社員
確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。確定申告書の「社会保険料控除」の欄に、1年間に納付した国民年金保険料の合計額などを記入し、控除証明書を添付または提示する必要があります。
確定申告での申告方法
確定申告には、e-Taxによる電子申告や郵送、税務署への持参などさまざまな方法があります。
なお、電子申告を利用する場合は、控除証明書の記載内容を入力・送信することで添付を省略できることもありますが、控除証明書自体は5年間にわたって保管しておかなければなりません。郵送や税務署で提出する際は、控除証明書を忘れずに添付しましょう。
国民年金保険料控除証明書を出さないとどうなる?
国民年金保険料控除証明書を年末調整や確定申告の際に提出しないと、その年に納付した国民年金保険料について社会保険料控除を受けられなくなります。結果として税負担が増えてしまうので、注意が必要です。
社会保険料控除は納付した保険料の全額が所得控除されます。そのため、控除が適用されるかどうかで税負担に大きな違いが生じる可能性があります。
控除を受けられない場合のデメリット
具体的には、「課税対象となる所得金額が減らず、所得税や住民税の納税額が多くなる」「源泉徴収などで納めすぎていた所得税があっても、還付される金額が少なくなる(または還付自体を受けられない)」といったデメリットが生じます。
つまり、本来なら軽減されるはずの税負担が軽減されず、手取り収入が実質的に減ってしまうことになるのです。
年末調整で控除証明書を提出し忘れてしまったら
年末調整で控除証明書の提出を忘れてしまったとしても、諦める必要はありません。翌年に自身で確定申告を行えば、社会保険料の控除が適用されます。確定申告できちんと申告すれば、払いすぎた税金が還付されます。
なお、還付申告は5年以内であれば遡って申告できます。申告の漏れや間違いに気づいた時点で数年経過していても還付が受けられる可能性があるため、諦めずに確認することをおすすめします。
国民年金保険料控除証明書は誰に、いつ、どのように届く?
国民年金保険料控除証明書は、日本年金機構から定期的に送付されます。以下では、控除証明書がいつ、どのように届くのかを詳しく説明します。
誰に届くのか
控除証明書は、原則として国民年金保険料を納付した被保険者(国民年金の加入者)本人宛に送付されます。自身の保険料だけでなく、生計を一にする親族の国民年金保険料も納付している場合、その納付した保険料額は「実際に納付した人」の社会保険料控除の対象です。
ただし控除証明書自体は、あくまで保険料の納付対象である家族(被保険者)宛に送られます。自分が家族分まで控除を受けるためには、家族宛に届いた控除証明書を忘れずにもらっておきましょう。
いつ届くのか
控除証明書の送付時期は、納付時期によって異なります。
対象 | 控除証明書の送付時期 |
---|---|
その年の1月1日から9月30日までの間に国民年金保険料を納付した人 | 毎年10月下旬から11月上旬頃にかけて |
その年の10月1日から12月31日までの間に、その年初めて国民年金保険料を納付した人 | 翌年の2月上旬頃 |
9月までに国民年金保険料を納付した人には、10月下旬から11月上旬にかけて控除証明書が発送されます。これは、多くの会社員が年末調整の手続きを滞りなく行えるようにするためです。
10月以降に国民年金保険料をその年初めて納付した人には、翌年2月上旬に発送されます。この場合は、3月15日までに確定申告を行えば正しく控除が受けられます。
どのように届くのか
控除証明書は、日本年金機構から圧着されたはがき形式で登録住所宛に郵送されます。また、マイナポータルと「ねんきんネット」を連携しておけば、控除証明書を電子データ(XML形式)で受け取ることも可能です。電子データを利用すればe-Taxでの確定申告がスムーズになり、書類を管理する手間や負担を軽減できます。
国民年金保険料控除証明書を紛失した場合の対処法
国民年金保険料控除証明書を受け取ったものの紛失してしまった場合は、日本年金機構に再発行を依頼できます。
再発行の依頼方法
- 「ねんきんネット」から申請する
- 電話(ねんきん加入者ダイヤル)から依頼する
- 年金事務所や年金相談センターの窓口から申請する
いずれも手軽に依頼できる方法なので、万が一紛失してしまっても焦らずに対処しましょう。
「ねんきんネット」から申請する
「ねんきんネット」のIDを持っている人は、インターネット上で24時間いつでも再発行申請ができます。ねんきんネットでの申請は窓口に行く手間もなく、自宅から簡単に手続きができる便利な方法のひとつです。
再発行した控除証明書は、郵送での受け取りのほか、電子データ(XML形式)として受け取ることも可能です。なお、電子送付の場合は3〜5営業日で、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にて取り込むことができます。郵送なら約1週間で日本年金機構に登録されている住所に届きます。
出典:日本年金機構「ねんきんネット」による通知書再交付申請」
電話(ねんきん加入者ダイヤル)から依頼する
年金の加入に関する一般的な問い合わせは「ねんきん加入者ダイヤル」でも受け付けています。なお、電話での依頼の際は、基礎年金番号やマイナンバーが必要です。
国民年金に加入している人 | ・0570-003-004(ナビダイヤル) ・03-6630-2525(一般電話) |
---|---|
事業所・厚生年金に加入している人 | ・0570-007-123(ナビダイヤル) ・03-6837-2913(一般電話) |
受付時間 | 月曜~金曜 8:30~19:00 第2土曜 9:30~16:00 |
電話で再発行を依頼する場合、再度届くまでに時間がかかるケースもあります。年末調整や確定申告の期限に間に合うよう、余裕をもって依頼しましょう。
出典:日本年金機構「ねんきん加入者ダイヤル(年金の加入に関する一般的なお問い合わせ)」
年金事務所や年金相談センターの窓口から申請する
年金事務所や年金相談センターの窓口から再発行依頼することも可能です。窓口での申請の際は、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類と、年金手帳や納付書など基礎年金番号がわかるものを持参するとスムーズです。
出典:日本年金機構「控除証明書をなくしてしまったのですが再発行できますか。」
国民年金保険料控除証明書が届かない場合の対処法
さまざまな事情により、国民年金保険料控除証明書が届かないケースがあります。控除証明書の通常の発送時期は10月下旬〜11月上旬、または翌年2月上旬です。これらの時期を過ぎても届かない場合は、以下の方法で対処しましょう。
住所変更手続きを行う
引越しなどで住所が変わっている場合、住所変更手続きを行っていないと控除証明書が届かない恐れがあります。マイナンバーと基礎年金番号が紐づいているなら原則として住所変更は不要ですが、結びついていない人や海外居住者、短期在留外国人は手続きが必要です。
住所変更に関する届出先は、加入している年金の種類によって異なります。
- 健康保険・厚生年金保険に加入中の人:事業主
- 国民年金第1号被保険者:市区役所または町村役場
- 国民年金第3号被保険者:配偶者の勤務先の事業主
出典:日本年金機構「年金に加入している方が引越ししたときの手続き」
発送時期の対象か確認する
控除証明書の発送時期の対象となっているか、再度確認しましょう。その年の1月から9月までに保険料を納付していれば10月下旬から11月上旬に送付されますが、10月以降に初めて納付した場合は翌年2月上旬の発送となります。
出典:日本年金機構「令和6年分社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について」
まとめ
国民年金保険料控除証明書は、納付した保険料を税金の計算から差し引くために必要な公的書類です。年末調整や確定申告の際に忘れずに提出し、正当な所得控除を受けられるようにしましょう。
控除証明書が届かない場合、住所変更手続きや発送時期の確認をすることで対処できる可能性があります。また、紛失したとしても「ねんきんネット」や年金事務所にて再発行の手続きが可能です。控除証明書を適切に保管し、正しい社会保険料控除の申告に役立ててください。
社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
社会保険料の計算含む、給与計算事務全体を効率化

freee人事労務では、従業員情報や最新の料率にもとづいて、社会保険の計算をミスなく効率的に行えます。
また、勤怠管理をクラウド上で行うことで、勤怠データをリアルタイムに集計でき、ワンクリックで給与計算・給与明細の発行が完了します。
気になった方は是非給与計算ソフト「freee人事労務」をお試しください。
よくある質問
国民年金保険料控除証明書とは?
国民年金保険料控除証明書とは、その年の1月1日から12月31日までに納付した国民年金保険料の金額を証明するための公的な書類です。「社会保険料控除証明書」とも呼ばれています。
詳しくは記事内の「国民年金保険料控除証明書とは」をご覧ください。
控除証明書を出さないとどうなる?
国民年金保険料控除証明書を年末調整や確定申告の際に提出しない場合、その年に納付した国民年金保険料については控除を受けられなくなるかもしれません。社会保険料は全額が所得控除されるため、税負担に大きな違いが生じる可能性には注意が必要です。
詳しくは記事内の「国民年金保険料控除証明書を出さないとどうなる?」で解説しています。
国民年金保険料控除証明書を紛失した場合の対処法は?
国民年金保険料控除証明書を紛失した場合は、再発行を依頼しましょう。「ねんきんネットから申請」「ねんきん加入者ダイヤルへ電話」「年金事務所や年金相談センターの窓口で申請」などの方法で依頼できます。
詳しくは記事内の「国民年金保険料控除証明書を紛失した場合の対処法」をご覧ください。