監修 鶏冠井 悠二

辞任届とは、代表取締役・取締役・監査役などの役員がやめるときに作成・提出する書類です。誰がいつやめたのかを明らかにする書類であり、法務局で役員の変更登記をする際に必要になります。
法定の書式はありませんが、後々トラブルにならないように、辞任届は誰が・いつ・何の役職を辞任するのか明確に記載してください。
無料のテンプレートやひな形を使う際にも、記載すべき事項が漏れなく含まれているか確認しましょう。
本記事では、辞任届の概要や退任届との違い、書き方、法務局での手続き、注意点を解説します。
目次
- 辞任届とは
- 辞任届と退任届の違い
- 辞任と解任の違い
- 辞任届は書面で作成する必要がある?
- 法的には辞任の意思表示は口頭でも有効
- 法務局の手続きで使うため辞任届の作成は必須
- 役員の辞任届のひな形・テンプレート
- 辞任届の書き方
- あて名(企業名)
- 辞任の意思・辞任する役職・辞任する日付
- 辞任届の作成年月日
- 辞任する人の氏名・住所
- 押印
- 役員が辞任するときの法務局の手続き方法
- 必要書類
- 辞任届に関する注意点
- 誰が・いつ・何の役職を辞任するのか明確に記載する
- 辞任後も権利義務取締役として責任が生じる場合がある
- 辞任届があっても変更登記ができない場合がある
- まとめ
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- よくある質問
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辞任届とは
辞任届とは、代表取締役・取締役・監査役などの役員が任期の途中でやめるときに作成して会社に提出する書類です。
辞任届は、その役職をやめる意思表示を文書に記し、客観的にその事実を示すためのもので、辞任する意思や日付などを記載します。
体調不良や業績不振の責任を取るためなど、理由を問わず役員をやめる際は辞任届を会社に提出します。
辞任届と退任届の違い
一般的に「辞任」とは自らの意思でやめることで、「退任」とは任期満了によりその職を退くことです。
辞任届と退任届の違い
- 辞任届:任期の途中でやめる場合に提出する書類
- 退任届:任期満了によりその職を退く場合に提出する書類
任期満了で役職を退く場合、退任に関する届出を作成・提出する義務は法律的にありません。
ただし、会社の内規で提出が求められている場合には、「退任届」を作成して会社に提出するのが一般的です。
辞任と解任の違い
役員が自らの意思でやめる辞任とは違い、解任とは会社がその役員の任を解いてやめさせることです。
辞任も解任も任期途中でやめる点は同じですが、解任では会社側が強制的に役員をやめさせます。株式会社で役員を解任するには原則として株主総会決議が必要です。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第三百三十九条」
辞任届は書面で作成する必要がある?
辞任届の取り扱いを巡ってトラブルにならないように、辞任届の法的な性質や書面で作成する必要性を正しく理解しておきましょう。
以下では辞任の意思表示や辞任届の法的な性質について解説します。
法的には辞任の意思表示は口頭でも有効
会社法では「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」とされています。つまり、取締役や監査役などの役員と会社は委任契約の関係です。
委任契約は民法の規定にしたがっていつでも解除できます。法的には辞任届を書面で作成せず、口頭で伝えるだけでも辞任の意思表示は有効です。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第三百三十条」
出典:e-Gov法令検索「会社法|第六百五十一条」
法務局の手続きで使うため辞任届の作成は必須
役員が辞任する場合には法務局で変更登記を行います。変更登記時の提出書類のひとつに辞任届があるので、辞任届の作成は実質的に必須です。
また、辞任届の書面を作成せず口頭でのやり取りで済ませると、役員が本当に辞任の意思表示をしたのか証拠が残りません。後々に本人と連絡が取れなくなったり辞任の意思を撤回されたりするなどトラブルになる可能性があります。
法的には口頭でも辞任の意思表示は有効ですが、トラブル防止の観点から辞任届を書面で作成・提出してもらうことが重要です。
なお、作成した辞任届は、代表権のない取締役がやめるケースでは代表取締役に提出します。
代表取締役がやめる場合は、ほかに代表取締役がいればその代表取締役に提出し、ほかに代表取締役がいなければ原則として取締役会を招集して辞任の意思表示を行います。取締役会非設置会社の場合は、取締役全員に辞任の意思表示を行います。
役員の辞任届のひな形・テンプレート
役員の辞任届は法定の書式があるわけではありません。必要事項が網羅されていれば問題なく、インターネット上でダウンロードできる無料のテンプレートを使うこともできます。
以下は、法務局のウェブサイトで公開されている辞任届のひな形です。
テンプレートを利用すれば、辞任届を一から作成する手間が軽減できます。
辞任届の書き方
役員が辞任届を作成する際に重要になるのは次の5つです。
辞任届の書き方のポイント
- あて名(企業名)
- 辞任の意思・辞任する役職・辞任する日付
- 辞任届の作成年月日
- 辞任する人の氏名・住所
- 押印
以下では、辞任届の書き方を記載項目ごとに解説します。
あて名(企業名)
どの企業の役員をやめるのかを明確にするため、辞任届にはあて名(企業名)の記載が必要です。
あて名は「(企業名)御中」と記載するのが一般的です。企業名は正式名称で記載してください。
辞任の意思・辞任する役職・辞任する日付
辞任届では役員を辞める意思を明示します。「私は、このたび一身上の都合により、令和△年△月△日をもって貴社の取締役を辞任いたしたく、お届けいたします。」などと記載するのが一般的です。
いつ辞任するのかを明確にするため、辞任する日付も記載します。なお、日付の書き方に関して、「〇月〇日をもって辞任する」と「〇月〇日付けで辞任する」では意味が異なり、違いは以下の通りです。
- 3月31日付けで辞任:3月31日の0時00分に辞任の効力が生じる
- 3月31日をもって辞任:3月31日の23時59分に辞任の効力が生じる
辞任届の作成年月日
辞任届には当届出を作成した年月日も記載します。辞任届の作成年月日は辞任する日と一致する必要はありません。
辞任届の作成年月日は実際に辞任する日付より後の日付にならないようにしてください。民法の規定により、委任の解除の効力は将来に向かってのみ生じるからです。
作成年月日よりも前に辞任していたことにして、過去にさかのぼって役員としての責任をなかったことにするような日付の書き方はできません。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第六百五十二条」
辞任する人の氏名・住所
誰が辞任するのかを明確にするため、辞任をする人自身の氏名と住所を記載します。
代表取締役がやめるケースでは、代表取締役の住所は登記がされているので、登記済の住所情報と辞任届に記載した住所情報に齟齬がないか確認してください。住所情報が異なると、辞任に伴う役員変更登記の前に代表取締役の住所変更の登記が必要です。
押印
後々のトラブルを防ぐため、辞任届には本人の押印をすることが一般的です。
代表取締役以外の取締役が辞任する場合は認印でも構いませんが、代表取締役の辞任では、印鑑登録をしている個人の実印または登記所に届け出ている会社実印で押印します。
個人の実印を使うときは、法務局で変更登記をする際に印鑑登録証明書の添付が必要です。
出典:e-Gov法令検索「商業登記規則|第六十一条八項」
役員が辞任するときの法務局の手続き方法
代表取締役や取締役などの役員が辞任した場合、2週間以内に管轄の法務局で変更登記の手続きが必要です。
株式会社の役員の変更登記では登録免許税がかかり、資本金額が1億円以下の会社では1件につき1万円、資本金額が1億円超の会社では1件につき3万円です。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第九百十一条」
必要書類
法務局で役員の変更登記をする際の主な必要書類は以下の通りです。
役員変更登記の必要書類
- 変更登記申請書
- 取締役辞任届
- 委任状(代理人申請を行う場合のみ)
変更登記申請書の用紙は法務局のウェブサイト「商業・法人登記の申請書様式」からダウンロードできます。記載例も掲載されているので、書き方がわからない場合は参考にしてください。
辞任する役員の印鑑証明書が必要になることもあるので、必要書類は事前に法務局のウェブサイトなどで確認しましょう。
辞任届に関する注意点
辞任届に関する主な注意点は次の3つです。
辞任届に関する注意点
- 誰が・いつ・何の役職を辞任するのか明確に記載する
- 辞任後も権利義務取締役として責任が生じる場合がある
- 辞任届があっても変更登記ができない場合がある
以下でそれぞれ解説します。
誰が・いつ・何の役職を辞任するのか明確に記載する
辞任届では必要事項を明確に記載することが重要です。
誰が・いつ・何の役職を辞任するのかが明確になっていないと、後々にトラブルになったり、法務局の登記手続きの際に受け付けてもらえなかったりする可能性があります。
辞任後も権利義務取締役として責任が生じる場合がある
辞任によって役員の定数を下回る場合、定数に満たない期間は、辞任する取締役が引き続き取締役としての権利を持ち義務を負うことが法律で定められています。
このような状態の取締役を「権利義務取締役」と言い、辞任届が会社に受理されても法的には取締役としての権利義務を負い続けることになります。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第三百四十六条」
辞任届があっても変更登記ができない場合がある
辞任届があっても、後任がおらず役員が定数に満たない場合は、退任に伴う変更登記をすることはできません。
変更登記をするためには新たな役員を選任する必要があります。
まとめ
代表取締役・取締役・監査役などの役員が辞任するときには、法務局で変更登記を行う必要があり、提出書類として辞任届が必要です。
辞任届には法律で指定された書式はなく、無料のひな形・テンプレートをダウンロードして使っても問題ありません。ただし、辞任の意思や日付など記載すべき事項に漏れがないか確認することが重要です。
辞任届の作成を誤ると、作り直したり法務局に再度手続きをしに行ったりする手間がかかる場合があります。法務局での手続き方法や必要書類がわからない場合は法務局のサイトで確認するか管轄の法務局に照会しましょう。
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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
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freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
辞任届とは?
辞任届とは、代表取締役・取締役・監査役などがやめる際に作成して会社に提出する書類です。
辞任届について詳しくは「辞任届とは」をご覧ください。
代表取締役や取締役の辞任届の作成で注意すべき点は?
辞任届では誰が・いつ・何の役職を辞任するのか明確に記載し、法務局の手続きで必要になる書類の種類や押印で使う印鑑の種類を間違えないようにしてください。
辞任届を作成する際の注意点について詳しくは「辞任届に関する注意点」をご覧ください。
監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)
コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。
HP:かいでFP事務所
