監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

開業届は、個人事業主が開業したことを税務署に申告する書類です。ただし、開業時以外のタイミングで開業届を提出しなければならないケースもあります。
具体的には、事務所などの住所変更によって納税地が変更になったときは開業届の提出が必要です。一方で、屋号や事業内容など納税地以外の記載事項が変わったときは、原則として開業届の提出は必要ありません。
本記事では、開業届の変更が必要・不要なケースや開業届の変更方法、さらに提出が必要なそのほかの書類などを解説します。
目次
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開業届の変更が必要なケース
開業届の変更手続きが必要なのは、主に納税地が変更になるときです。
事務所や自宅兼事務所の引越しによって納税地が変更になった場合は、変更から1ヶ月以内に開業届を再提出する必要があります。
提出先は、変更前の納税地を管轄する税務署です。
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開業届の変更が原則不要なケース
屋号・事業内容・苗字など納税地以外の記載事項に変更があった際には、開業届の再提出は原則不要です。確定申告の際には、変更後の情報で申告します。
開業届の変更が原則不要なケース
- 屋号の変更
- 事業内容の変更
- 苗字の変更
それぞれのケースを詳しく解説します。
屋号の変更
屋号を変更する場合、開業届の再提出は必要ありません。
確定申告の際に、確定申告書や決算書に変更後の屋号を記載することで手続きが完了します。確定申告書の第一表・第二表、および青色申告決算書・収支内訳書には、それぞれ屋号を記載する欄があります。
屋号の変更を正式に記録として残したい場合や、申告書などへの記載だけでは不安な場合には、開業届の再提出も可能です。開業届の「その他参考事項」欄に屋号を変更した旨を記載し、税務署へ提出します。
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事業内容の変更
事業内容の変更や追加をする場合、そのつど開業届を提出し直す必要はありません。確定申告の際に、新しい事業内容を正確に申告します。
確定申告書の第一表には職業を記載する「職業欄」があり、青色申告決算書・収支内訳書には、業種を記載する「業種名」の欄があります。それぞれの欄に変更後の事業内容を記載して、確定申告をしましょう。
苗字の変更
結婚などで苗字が変わった場合も、開業届の変更は原則として不要です。確定申告の際に、新しい苗字で申告します。
また、結婚に伴う引越しで、事務所として使用していない自宅の住所が変わったときも、開業届の再提出は不要です。
個人事業主が住所変更するときの開業届の変更方法
個人事業主が事務所などの引越しをして納税地が変更となった場合は、開業届の所定の欄に新しい事務所の住所を記載し、変更前の住所を管轄する税務署へ提出します。
以下で住所変更時の開業届の書き方や提出方法を解説します。
住所変更時の開業届の書き方
記載項目 | 記載方法 |
---|---|
税務署名 (「____税務署長」欄) | 住所変更前の管轄税務署名を記載する |
納税地 | 住所変更前の納税地を記載する |
届出の区分 | 「開業」と「移転」にチェックを入れる |
新増設、移転後の所在地 (「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」欄) | 変更後の住所と電話番号を記載する |
移転・廃止前の所在地 (「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」欄) | 変更前の住所を記載する |
「納税地」欄と「移転・廃止前の所在地」に変更前の住所、「新増設、移転後の所在地」に新しい住所を記載します。
変更内容だけでなく、そのほかの項目にも開業時と同様の内容を記載し提出しましょう。
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開業届を郵送で提出するときのやり方は? 必要書類や控えの取得方法も解説
開業届の提出方法(持ち込み・郵送・e-Tax)
開業届の提出には、以下の3つの方法があります。
開業届の提出方法
- 税務署窓口への持ち込み
- 税務署への郵送
- e-Tax
税務署窓口へ持ち込む場合は、開庁時間(8時30分から17時まで)内に以下のものを持参し、提出しましょう。
窓口への持ち込みで開業届を提出するときに持参するもの
- 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
- マイナンバーがわかるもの(マイナンバーカード、通知カードなど)
郵送で提出する際は、以下のものを同封します。
郵送で開業届を提出するときに同封するもの
- 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
- 本人確認書類のコピー
- マイナンバーがわかるもののコピー
なお、開業届を含む申告書等の控えへの押印は2025年1月から廃止されています。従来も控えの提出は義務ではありませんでしたが、現在は提出不要とされています。
e-Taxで開業届を提出する場合は、e-Taxを起動後に申請・申告等一覧から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選択して手続きを行います。電子証明書と利用者識別番号が必要となるため、未取得の人は事前に取得を済ませておきましょう。
出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
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住所変更のときにほかに提出する書類はある?
住所(納税地)を変更した際、多くの場合は開業届の提出のみで問題ありません。
以前は納税地の変更に際して「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」の提出が求められましたが、2023年1月1日以降は、原則として提出が不要となりました。変更内容は、次回の確定申告書に新住所を記載することで税務署に伝わります。
ただし、年の途中で住所変更を税務署に届け出ておきたい場合は、任意で「所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する届出書」を提出することができます。
また、従業員を雇って給与を支払っている場合、納税地の変更に伴い「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出が必要となりますが、開業届を提出していればこの提出も不要です。
なお、従業員が労働保険や社会保険に加入している場合は、住所変更時に「健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を日本年金機構に提出する必要があります。
出典:国税庁「No.2091 個人事業者の納税地等に異動があった場合の届出関係」
出典:国税庁「納税地の特例等に関する手続の変更について」
出典:国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
出典:e-Gov法令検索「所得税法(昭和四十年法律第三十三号)」
まとめ
開業届の変更手続きが必要なのは、主に納税地が変更となった場合です。屋号・事業内容・苗字の変更では、開業届の再提出は原則不要です。
住所変更に伴い開業届を提出するときは、「新増設、移転後の所在地」欄に新住所を記載し、そのほかの必要項目も記載のうえ提出します。開業届の提出は、税務署窓口への持ち込み・郵送・e-Taxのいずれでも可能です。
開業届の変更が必要なケースを理解し、必要なときに忘れず手続きを行えるように備えておきましょう。
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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
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freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

Step1:準備編

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
住所変更したときは開業届の提出が
納税地が変更になる場合は、住所変更から1ヶ月以内に開業届を再提出します。提出先は、変更前の住所を管轄する税務署です。
詳しくは、記事内「開業届の変更が必要なケース」をご覧ください。
住所変更のときの開業届の書き方は?
住所変更のときは、開業届の「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」欄の「新増設、移転後の所在地」に新住所を記載し、そのほかの欄も記載して提出します。「納税地」の欄には、住所変更前の納税地の記載が必要です。
詳しくは、記事内「住所変更時の開業届の書き方」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
