監修 北 光太郎 きた社労士事務所

介護の仕事はやりがいがある反面、給与水準の低さが課題とされています。そこで注目されているのが、処遇改善手当です。処遇改善手当は介護職員の待遇改善を目的に支給される特別な手当で、国の制度によって財源が確保されています。
本記事では、処遇改善手当に関する2024年の改正を踏まえ、処遇改善手当の背景や仕組みや受給条件、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
- 処遇改善手当とは
- 処遇改善手当と処遇改善加算の違い
- 処遇改善手当をもらえる条件
- 対象となる職員の条件
- 勤務先の事業所が満たすべき条件
- 処遇改善手当の対象外となるケース
- 処遇改善手当を受け取る流れ
- 1.事業所による加算取得の準備と申請
- 2.加算の受領と職員への手当支給
- 3.職員による確認と事業所による実績報告
- 処遇改善手当の支給額
- 支給額が決まる主な要素
- 支給額の目安
- 処遇改善手当のメリット
- 収入アップにつながる
- モチベーション・キャリアアップ意識の向上を期待できる
- 処遇改善手当のデメリット
- 事業所によって金額差がある場合がある
- 制度内容が複雑で理解しづらい
- 処遇改善手当に関する注意点
- 支給に関するルールを事業所に確認する
- 退職時や産休・育休中の扱いは事業所の規定による
- まとめ
- 給与計算や給与明細発行をカンタンに行う方法
- よくある質問
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処遇改善手当とは
処遇改善手当とは、介護職員の賃金改善を目的に事業所に支払われる介護報酬を原資として、職員に対して支給される手当のことです。事業所に対し介護報酬加算という形で資金が支給され、その全額を職員の賃金改善に充てることが義務付けられています。
処遇改善手当が設けられた背景には、介護職員の賃金水準が他業種に比べて低く、人手不足や離職率の高さが深刻な問題となっていたことにあります。少子高齢化で介護ニーズが高まる一方、「きつい割に給料が安い」というイメージから人材が定着しにくく、業界全体の課題となっているのが現状です。
こうした背景を受け、政府は介護職員の賃金アップと職場環境の整備による定着率向上を目的に処遇改善手当の制度を創設しました。介護職員の賃金引き上げとともに職員のモチベーションを高め、離職率を改善し、人材確保につなげることが国の狙いとなっています。
処遇改善手当と処遇改善加算の違い
処遇改善手当と処遇改善加算には深い関係性がありますが、それぞれ意味が異なります。
処遇改善加算は、国(国保連)から事業所に支給される報酬です。一方、処遇改善手当は処遇改善加算によって事業所が受け取った資金を各職員に支給する手当となります。
なお、処遇改善加算は介護報酬の一部として事業所に支払われますが、受け取った加算額は全額を介護職員の処遇改善(賃金改善)に充てることが求められています。
賃金改善に使われずに残ってしまうことは違法となるため、事業所は年度末までに必ず職員に支給しきらなければなりません。
ただし、処遇改善手当の配分方法には事業所ごとに裁量の余地があります。加算を原資とした手当は全額を職員に配らなければなりませんが、職員全員に均等額を配分する必要までありません。
たとえば、経験や技能のある職員へ重点的に多く配分することも可能です。しかし、不公平な分配は職員への不満につながるため、支給基準を明確にすることが大切です。
【関連記事】
介護職員の「処遇改善加算」って何?もらえる金額と取得方法を解説
処遇改善手当をもらえる条件
処遇改善手当はどの事業所でももらえる手当ではなく、一定の条件を満たす必要があります。
ここでは、対象となる職員の条件や事業所の条件、対象外となるケースに分けて解説します。
対象となる職員の条件
処遇改善手当は、介護職員であれば正社員・パート・アルバイト・派遣社員を問わず支給対象になり得ます。雇用形態や資格の有無によって対象外になることはありません。常勤・非常勤を問わず、処遇改善手当を受け取る権利があるということになります。
ただし、実際の配分額は前述のとおり事業所の裁量で決められるため、勤務時間の少ないパート職員はフルタイム職員より手当額が少ない傾向があります。
また、経験豊富な職員に手厚く支給される傾向にある点にも留意しなければなりません。その理由としては、国の方針として「特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内での柔軟な職種間配分を認めることとする」と示されているためです。
なお、処遇改善加算は介護職以外でも対象となり得ます。ただし、あくまで「介護職員への配分を基本とする」ことが前提であり、介護職以外に配分するかどうかは各事業所の判断によります。
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A」
勤務先の事業所が満たすべき条件
2024年度の介護報酬改定で、旧3加算(旧処遇改善加算、旧特定処遇改善加算、旧ベースアップ等支援加算)は「介護職員等処遇改善加算(新加算)」として一本化されました。
この一本化に伴い、事業所が処遇改善加算を取得するには以下3つの条件を満たす必要があります。
- キャリアパス要件
- 月額賃金改善要件
- 職場環境等要件
キャリアパス要件
キャリアパス要件とは、明確な職位制度や昇給基準、研修体制などを整備することが求められる要件です。要件は以下のように5つに分類されています。
要件 | 内容 |
---|---|
キャリアパス要件I | 介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する。 |
キャリアパス要件II | 介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保する。 ・研修機会の提供又は技術指導等の実施、介護職員の能力評価 ・資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等) |
キャリアパス要件III | 介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する。 ・経験に応じて昇給する仕組み ・資格等に応じて昇給する仕組み ・一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み |
キャリアパス要件IV | ・経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上である。 ※小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用を免除 |
キャリアパス要件V | 要件Ⅰを満たし、介護福祉士等を一定割合以上配置する。 |
月額賃金改善要件
月額賃金改善要件はⅠとⅡに分かれており、いずれかを満たす必要があります。
月額賃金改善要件Ⅰは、処遇改善加算Ⅳの加算率の2分の1以上をベースアップに充てる必要があるという要件となります。
たとえば、加算Ⅳで取得した報酬が20万円の場合は、最低でも10万円は月額賃金として支給しなければなりません。
処遇改善加算はサービス内容ごとにⅠ〜Ⅴに区分され、以下のように加算率が定められています。
サービス内容 | 加算区分 | |||
---|---|---|---|---|
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | |
訪問介護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
夜間対応型訪問介護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
(介護予防)訪問入浴介護 | 10.0% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
地域密着型通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
(介護予防)通所リハビリテーション | 8.6% | 8.3% | 6.6% | 5.3% |
(介護予防)特定施設入居者生活介護 | 12.8% | 12.2% | 11.0% | 8.8% |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 12.8% | 12.2% | 11.0% | 8.8% |
(介護予防)認知症対応型通所介護 | 18.1% | 17.4% | 15.0% | 12.2% |
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
看護小規模多機能型居宅介護 | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 18.6% | 17.8% | 15.5% | 12.5% |
介護老人福祉施設 | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
地域密着型介護老人福祉施設 | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
(介護予防)短期入所生活介護 | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
介護老人保健施設 | 7.5% | 7.1% | 5.4% | 4.4% |
(介護予防)短期入所療養介護(老健) | 7.5% | 7.1% | 5.4% | 4.4% |
(介護予防)短期入所療養介護(入院等(老健以外)) | 5.1% | 4.7% | 3.6% | 2.9% |
介護医療院 | 5.1% | 4.7% | 3.6% | 2.9% |
(介護予防)短期入所療養介護(医療院) | 5.1% | 4.7% | 3.6% | 2.9% |
一方、月額賃金改善要件Ⅱは新加算算定以前にベア加算を算定していなかった事業所に適用される要件です。前年度と比較して、現行のベア加算に相当する額が新たに増加する場合には、その増加分の3分の2以上について基本給や毎月支給される手当の引き上げを新たに実施することを要件としています。
職場環境等要件
職員の働きやすい職場づくりのため、複数の職場環境改善策を講じていることも要件のひとつです。
職場環境等要件は、以下2つに分かれています。
要件 | 内容 |
---|---|
介護職員等処遇改善加算 Ⅰ・Ⅱ | 以下6つの区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。また、情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する。 |
介護職員等処遇改善加算 Ⅲ・Ⅳ | 以下6つの区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。 |
区分
- 入職促進に向けた取組
- 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
- 両立支援・多様な働き方の推進
- 腰痛を含む心身の健康管理
- 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組
- やりがい・働きがいの醸成
たとえば「勤続年数に応じた有給休暇付与ルールの導入」や「腰痛予防のための介護リフト等機器の導入」、「子育て中のスタッフのための短時間勤務制度」など、厚生労働省が提示する具体例のなかから実施する必要があります。
具体的な内容については、厚生労働省が示す「職場環境等要件に係る事例集」を参考にしてください。
処遇改善手当の対象外となるケース
職員のなかには処遇改善手当を受け取れない、あるいは処遇改善手当そのものが支給されないケースがあります。
事業所が加算を取得していない
勤務先が処遇改善加算を算定していなければ、職員に処遇改善手当は支給されません。
処遇改善加算を算定していない事業所は、必要な要件を満たしていないために手続きを行っていない場合などが考えられます。
ただし、現在では約9割以上の介護事業所が何らかの処遇改善加算を取得しているとされており、未取得の事業所は少数です。
出典:厚生労働省「第17回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会議事録」
介護保険の加算対象外のサービス種別で働いている
処遇改善加算はすべての介護サービスで算定できるわけではなく、以下のようなサービスには加算されません。
- (介護予防)訪問看護
- (介護予防)訪問リハビリテーション
- (介護予防)福祉用具貸与
- 特定(介護予防)福祉用具販売
- (介護予防)居宅療養管理指導
- 居宅介護支援
- 介護予防支援
事業所内で対象外とされている
処遇改善手当は幅広い職種・雇用形態に支給可能ですが、事業所の規定で一部の職員に配分しない場合もあり得ます。
たとえば「試用期間中の職員には支給しない」や「一定の勤務実績(在籍期間や労働時間数)に満たない非常勤職員には支給しない」といったケースなど、事業所ごとのルールが設けられている場合があるからです。
ただし、処遇改善加算の趣旨に照らせば、できる限りすべての介護職員に行き渡るよう配分することが望ましいでしょう。
処遇改善手当を受け取る流れ
処遇改善手当を職員が受け取るまでの流れを解説します。
1.事業所による加算取得の準備と申請
まずは、事業所が処遇改善手当の原資となる処遇改善加算を国(都道府県や市区町村)から受け取るための手続きを行う必要があります。
処遇改善計画書の作成・提出
処遇改善手当の要件を満たす取り組みを整備し、当年度の賃金改善計画をまとめた処遇改善計画書を作成します。また、処遇改善加算の区分や職員配置などの体制状況を記載した「体制届」(加算届)の提出も必要です。
処遇改善計画書と体制届(加算届)など届出書類が整ったら、都道府県や市区町村の担当窓口に提出します。新たに加算を取得する場合は、「算定を受けようとする月の前々月末日」までに計画書を提出する必要があるため注意が必要です。また、処遇改善計画書の内容は全職員に周知しておきます。
なお、処遇改善計画書と体制届(加算届)で提出先が異なる場合があるため、提出前に提出先の確認は必須です。
自治体による審査と承認
提出された計画書の内容について、各種加算の算定要件を満たしているかどうかが審査されます。要件を満たしていれば処遇改善加算が承認されます。
2.加算の受領と職員への手当支給
自治体から承認を得た事業所は、介護サービスを提供した対価である通常の介護報酬に加えて、処遇改善加算として上乗せ分を受け取ることができます。
受領した報酬は、職員へ手当として支給しなければなりません。
事業所による介護報酬(加算分)の受領
処遇改善加算の届出後、介護報酬に加算が付いた形で事業所に入金されます。受領するタイミングは、介護サービス提供月の2ヶ月後の月末です。
事業所は受け取った加算額を原資として、職員に処遇改善手当を支給します。
職員への処遇改善手当の支給
事業所は事前に作成し職員へ周知した処遇改善計画書に基づき、定められた配分ルールに従って、対象となる職員へ処遇改善手当を支給します。
多くの事業所では、毎月の給与に「処遇改善手当」の項目を設けて支給しています。しかし、数ヶ月分をまとめて数回に分けて支給するケースや、賞与時にまとめて加算分を還元するケースも少なくありません。支給方法については就業規則や賃金規程、あるいは個別の労働契約で確認しましょう。
また、受け取った加算額以上の賃金改善を実施することが必須となり、受け取った資金は余すことなく職員に支給しなければなりません。
3.職員による確認と事業所による実績報告
処遇改善手当が支給されたら、職員は実際に支給されているかを確認しましょう。また、事業所は自治体に対して実績報告を提出する必要があります。
職員による給与明細での確認
事業所から職員への処遇改善手当が支給されたら、職員側でも自分の給与明細等で手当が適切に支給されているか確認するとよいでしょう。多くの事業所では給与明細の項目に「処遇改善手当〇〇円」と明記されます。
一部では、基本給に組み込まれて「処遇改善手当」の項目を立てない場合もありますが、その場合も前年より基本給などが明確に上がっているかチェックすることをおすすめします。
事業所による実績報告書の提出
事業所は年度終了後に「実績報告書」を作成し、当年度に受け取った加算額と実際に実施した手当支給額を行政へ報告します。
この報告によって、「受け取った加算額以上に職員の給与を改善しました」ということを証明します。もし事業所が処遇改善加算の取得要件を満たせなくなった場合や計画書の提出を怠った場合は、事業所に対して返還などの措置が取られることがあるため、注意が必要です。
処遇改善手当の支給額
処遇改善手当として職員に支給される金額は一律に定められているわけではなく、事業所ごとに異なります。
ここでは、具体的にどのような要素で金額が決まるのか、2024年の改正を踏まえて解説します。
支給額が決まる主な要素
事業所が取得する加算の区分(Ⅰ~Ⅳ)によって、加算率(手当原資)が異なります。最高ランクの加算Ⅰを取得できれば加算率が高く、より多くの手当原資を得られます。
たとえば、訪問介護サービスでは、処遇改善加算Ⅰ~Ⅳの加算率が14.5~24.5%と設定されており、Ⅰがもっとも高率(24.5%)でⅣがもっとも低率(14.5%)です。
また、事業所方針によっては資格保有者や役職者に上乗せ支給するケースもあります。この点も含め、処遇改善手当は各事業所の配分ルールで金額が変動することを念頭に置く必要があります。
支給額の目安
政府の目標としては、2025年度に2%のベースアップ(賃金底上げ)を図るとされています。
平均的な介護職員の給与が月収20万円前後だとすると、月額4,000円程度の上昇が全体の2%に相当します。
ただし、利用者が多く加算を十分得ている事業所では介護職の月収が数万円単位で増える一方、小規模事業所では月数千円程度に留まることもあります。賃金のばらつき自体が処遇改善手当制度の課題でもありますが、制度全体としては着実に介護職員の処遇改善に寄与しているといえるでしょう。
出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
処遇改善手当のメリット
介護職員にとっての処遇改善手当のメリットを解説します。
収入アップにつながる
処遇改善手当の最大のメリットは、賃金の直接的な改善を通じて手取り額が増えることです。月々の収入が増加すれば生活の安定につながり、経済的な不安を軽減する効果が期待できます。
また、「仕事の大変さに見合った報酬が得られている」と実感できることで、介護職員のやりがいや職場へのエンゲージメントも高まります。
モチベーション・キャリアアップ意識の向上を期待できる
処遇改善手当は、職員一人ひとりの専門性や日々の貢献が適切に評価される仕組みです。処遇改善手当を支給することで職員の仕事への意欲が高まり、安心して長く働き続けるためのモチベーションにつながります。
さらに、資格取得やスキルアップなどの努力が処遇に反映されることで、自発的なキャリア形成を後押しする効果も期待されます。
処遇改善手当のデメリット
介護職員にとっての処遇改善手当のデメリットについて、解説します。
事業所によって金額差がある場合がある
処遇改善手当の支給額は各事業所の判断に委ねられているため、事業所ごとに金額差がある場合があります。
そのため、必ずしも期待どおりの金額が支給されるとは限らず、職員が不公平感を抱く要因になることもあります。
制度内容が複雑で理解しづらい
処遇改善手当には複数の加算区分があり、制度全体の仕組みが複雑です。
介護職員自身が内容を正しく理解するのが難しく、「なぜこの金額なのか」が分かりづらいと感じることもあるかもしれません。情報の不透明さは、制度への不信感につながる可能性もあります。
そのため、事業所側は丁寧な説明と根拠を示すことが大切です。
処遇改善手当に関する注意点
処遇改善手当を支給する際の注意点について解説します。
支給に関するルールを事業所に確認する
処遇改善手当は、勤務先の事業所がどのように制度を運用しているかによって支給対象や支給額、配分方法が異なります。
そのため、自身が支給対象になっているかを確認することが大切です。非常勤職員や派遣スタッフの場合でも対象となる可能性があるため、雇用形態に関わらず確認しましょう。
処遇改善手当が給与にどのように含まれているか、名目が記載されているかも毎月の給与明細で確認しておくと安心です。
退職時や産休・育休中の扱いは事業所の規定による
処遇改善手当の、退職や産休・育休期間中の取り扱いは、事業所の規定によるため一様ではありません。
たとえば、退職月の支給が日割りとなるか満額支給されるか、あるいは不支給となるかは就業規則や賃金規定等に基づいて処理されます。
また、産休や育休中は原則として支給対象外とされる傾向にありますが、復帰後に一時金として支給されたりなど、事業所によっては支給が継続されるケースもあります。
ただし、支給のタイミングと在籍期間の関係によっては、手当が支給されないこともあるため、自身の状況と事業所の方針を事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
処遇改善手当は、介護職員の賃金引き上げと職場環境の向上を目的に設けられた制度です。国から事業所に支給される処遇改善加算を原資として、職員に分配される手当であり、加算を取得するには事業所が要件を満たす必要があります。
正社員・パート・アルバイト・派遣など雇用形態を問わず支給される可能性がありますが、実際の支給額や配分方法は各事業所によって異なります。
事業所が加算を取得していない場合や非対象のサービスで勤務している場合など、手当が支給されないケースもあります。制度の仕組みを理解し、自身の勤務先がどのように対応しているのかを把握しておくとよいでしょう。
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よくある質問
処遇改善手当は、どの事業所でも必ずもらえる?
処遇改善手当は、すべての事業所で支給されるものではありません。事業所側がキャリアパスや月額賃金改善要件、職場環境整備など複数の要件を満たし、「処遇改善計画書」を自治体に提出し承認を得る必要があります。
詳しくは、記事内の「勤務先の事業所が満たすべき条件」をご参照ください。
パートやアルバイト、派遣社員でも処遇改善手当はもらえる?
処遇改善手当の支給対象には、正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員も含まれます。
ただし、実際の支給額や配分は事業所ごとに決められるため、勤務時間や役職、資格、貢献度などにより金額に差が出ることがあります。
記事内の「対象となる職員の条件」で、詳しく解説しています。
処遇改善手当の金額は、どうすれば知ることができる?
処遇改善手当の金額は一律に定めらているわけではなく、事業所が受け取る加算額や職員への配分方針などによって異なります。
自身の金額を把握するには、給与明細を確認するほか、勤務先の人事担当者に確認すれば知ることができます。
詳しくは、記事内の「3. 職員による確認と事業所による実績報告」をご覧ください。
監修 北 光太郎
きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。
