人事労務の基礎知識

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出の要件や必要な情報とは?注意点も紹介

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出の要件や必要な情報とは?注意点も紹介

「従たる給与についての扶養控除等申告書」とは、副業やダブルワークを行う人が提出する書類です。提出先は従たる給与を得る勤務先で、その年最初の給与を得るまでに提出が必要です。

本記事では、2ヶ所以上から給与を得ている人を対象に、従たる給与についての扶養控除等申告書の提出が必要な要件や求められる情報、事前に把握すべき内容などを紹介します。

目次

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従たる給与についての扶養控除等申告書とは

従たる給与についての扶養控除等申告書とは、本業以外に、別の勤務先から給与を得ている人が活用する申告書です。

副業やアルバイト先に扶養控除等申告書を提出すれば、配偶者や扶養家族の存在が考慮されて源泉徴収額が算出されるため、月々の源泉徴収額が軽減される可能性があります。

通常、源泉所得税を決定する際は「給与所得の源泉徴収税額表」を使用します。扶養家族の有無や雇用形態などに応じて、以下の甲欄・乙欄・丙欄の3つから適用する欄を選び、源泉徴収額が決定されます。


種類概要
甲欄・給与所得者の扶養控除等申告書を提出した人に適用される
乙欄・給与所得者の扶養控除等申告書を提出がない場合や、2ヶ所以上で働く人に適用される
・甲欄に比べて源泉徴収額が高くなる
丙欄・日雇いや短期間雇用で働く人に適用される

従たる給与(本業以外からの給与)を受けている会社には、「給与所得者の扶養控除等申告書」が提出できないため、乙欄で源泉徴収額を計算します。ただし、通常乙欄では扶養親族が考慮されないため、甲欄に比べて源泉徴収額が高くなります。

年末調整で扶養控除や配偶者控除などの各種控除が適用される場合、通常は給与総額よりも控除金額が高くなることはありません。しかし、適用控除が多いなどの理由から、まれに主たる給与の合計額よりも控除額の合計が多くなることがあります。

控除額が主たる給与を上回る場合には、従たる給与についての扶養控除等申告書を提出することで、源泉徴収額を軽減できます。


出典:国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」

主たる給与との違い

従たる給与が本業以外からの給与を指すのに対し、主たる給与は本業の勤務先からもらっている給与を指します。

たとえば、本業は会社員として働き、休日や勤務終わりに副業で飲食店のアルバイトをしていたとしましょう。会社員としての勤務先から支払われる給与が「主たる給与」で、飲食店で稼いだアルバイト代が「従たる給与」とみなされます。

副業やダブルワークをしていない人は勤務先がひとつのため、従たる給与は発生しません。

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出するための要件

従たる給与についての扶養控除等申告書を提出するための要件は、主たる給与の支払者から支給される年間給与額(給与所得控除後の給与等の金額)が以下1 + 2の合計額より少ないことです。

  1. 主たる給与の支払者から支給される給与につき控除される社会保険料等の額
  2. 各種控除の合計額

また、各種控除の合計額には以下が該当します。

  • 配偶者(特別)控除額
  • 扶養控除額
  • 障害者控除額
  • 寡婦控除額
  • ひとり親控除額
  • 勤労学生控除額
  • 基礎控除額
  • 特定親族特別控除額

上記要件を満たした人が、従たる給与についての扶養控除等申告書を提出した場合、扶養人数1人につき1,610円が控除されます。


出典:国税庁「A2-5 従たる給与についての扶養控除等の(異動)申告」

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出が必要なケース

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出は、法的に義務づけられたものではなく、仮に要件を満たしている人が当該申告書を提出しなくてもペナルティは発生しません。

ただし、要件を満たしている人が提出しない場合、配偶者や扶養家族の存在が考慮されず、源泉徴収額が高くなります。

そのため扶養家族を抱えながら、副業やダブルワークをこなし「月々の納税負担を減らしたい」「手取り額を増やして生活を楽にしたい」と考えている人にとっては提出するメリットがあると言えるでしょう。

ただし、必ずしも月々の源泉徴収額を減らせると限らない点は要注意です。適用される控除の額が少なければ、従たる給与についての扶養控除等申告書を提出しても、ほとんど源泉徴収額を軽減できないケースもあります。

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出時期

従たる給与についての扶養控除等申告書は、その年で最初の給与を受け取る前日までに、従たる給与の勤務先へ提出します。

たとえば、前年より引き続き雇用され給与の支払方法が「月末締め 翌月末払い」である場合、2026年1月の給与は2月27日(金)までに振り込まれるため、2月上旬〜中旬までの提出が必要です。

期限内に提出できない場合は、源泉徴収額の控除は行われません。従たる給与についての扶養控除等申告書の提出を検討している場合は早めに準備を進めましょう。


出典:国税庁 A2-5 従たる給与についての扶養控除等の(異動)申告

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出に必要な情報

従たる給与についての扶養控除等申告書には、給与支払者や従業員自身の個人情報に加え、給与の見積額等の記載も求められるため、給与明細を手元に用意しておきましょう。

要件を満たす人は、源泉控除対象配偶者や扶養親族に関する情報も記載が必要です。ここでは、従たる給与についての扶養控除等申告書の提出に、必要な情報を解説します。

給与支払者の名称や個人情報

従たる給与についての扶養控除等申告書の上部に位置する項目で、以下の内容を記載します。

給与支払者・申告者についての記載項目

  • 給与支払者の名称(氏名)
  • 給与支払者の法人(個人)番号
  • 給与支払者の所在地(住所)
  • 氏名
  • マイナンバー
  • 生年月日
  • 世帯主の氏名
  • 世帯主との続柄(世帯主との関係性)
  • 居住地の住所

給与支払者の法人番号は、「国税庁の法人番号公表サイト」で企業名や所在地などを入力すると表示されます。サイトを検索しても法人番号がわからない場合は、経理担当者や労務担当者に相談しましょう。

「あなたの個人番号」という欄にはマイナンバーを記入します。

主たる給与の見積額等

従たる給与についての扶養控除等申告書のフォーマットは、以下3項目で構成されています。

従たる給与についての扶養控除等申告書の構成

A.主たる給与の見積額等
B.この申告書の提出先の給与から控除を受ける
C.他の給与から控除を受ける

主たる給与の見積額等の欄には、以下の内容を記載します。

「主たる給与の見積額等」欄の記載項目

  1. 主たる給与の支払者から受ける給与の年間見積額
  2. 1に対する給与所得控除後の金額
  3. 1の給与から控除される社会保険料等の金額
  4. 配偶者控除や扶養控除等の適用される控除の合計額

1は本業で得た年間給与額の概算を記載します。本業が会社員の場合、毎月の給与明細と賞与明細に記載されている総支給額を記載しましょう。源泉徴収票には各種手当や残業代を含めた給与、賞与の支払い額が記載されているため、給与の年間見積額を素早く確認できます。

2の給与所得控除とは、給与所得者の年収額に応じて自動的に適用される引かれる控除額のことです。給与所得控除額は、年末調整後に主たる給与先から配布される源泉徴収票に記載されています。源泉徴収票には、社会保険料や配偶者控除や扶養控除の控除額なども記載されているため、あわせて確認しましょう。

ただし、3 + 4の金額が2よりも少ない場合は、従たる給与についての扶養控除等申告書を提出できません。

なお、「この申告書の提出先の給与から控除を受ける」の項目に関しては、対象となる源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族を記入します。「他の給与から控除を受ける」に関しては、主たる給与と従たる給与以外で控除を受ける場合に記載します。

該当者は源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族に関する情報も必要

源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族の要件を満たす場合には、その配偶者や親族の記載も必要です。

源泉控除対象配偶者の要件は、以下のとおりです。

源泉控除対象配偶者の要件

  • 給与所得者の合計所得金額が900万円以下
  • 配偶者の所得見積額が95万円以下
  • 給与所得者と配偶者が生計を一にしている状態

「生計を一にしている」とは、互いの収入から生活費を工面し、日常生活を営んでいる状態です。同じ家に住んでいても、共通の資金で生活していない場合は生計を一にしているとは認められません。

また、配偶者と内縁関係や事実婚の場合は、源泉控除対象配偶者とは認められません。上記要件を満たした場合に以下の内容を記入します。

源泉控除対象配偶者についての記載事項

  • 配偶者の氏名および生年月日
  • マイナンバー
  • 給与所得控除後の見積額
  • 非居住者の有無
  • 配偶者の住所または居所
  • 異動月日および事由

控除対象扶養親族とは、当年12月31日時点で16歳以上の扶養親族です。扶養親族は、配偶者を除いた6親等内の血族および姻族であって、以下の要件を満たす人です。

控除対象扶養親族の要件

  • 納税者と生計を一にしている人
  • 年間の合計所得金額が58万円以下の人
  • 青色申告者の事業専従者として給与を一度も受け取っていない人
  • 白色申告者の事業専従者ではない人

出典:国税庁 No.1180 扶養控除

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出前に把握すべき内容

労務担当者や経理担当者が扶養控除等申告書の提出に関して把握しておくべき4つのポイントを紹介します。

  • 確定申告が不要となるわけではない
  • 主たる給与と従たる給与の関係が変わる場合がある
  • 従たる給与の支払者である会社を退職した時点で効力が失われる
  • 扶養控除等申告書を提出しても年間の所得税総額は変わらない

確定申告が不要となるわけではない

従たる給与についての扶養控除等申告書を提出しても、確定申告が必要になるケースがあります。主たる給与を得ている勤務先の年末調整だけでは、所得税を正確に精算できない可能性があるためです。

確定申告とは1月1日から12月31日までの所得額と所得納税額を計算し、税務署に報告する手続きです。

2ヶ所以上の勤務先で働き、年末調整をされなかった分の収入が20万円を超える場合、確定申告の手続きが必要です。副業やダブルワークで従たる給与が支給されている人は、基本的に確定申告が必要になると考えておいたほうがいいでしょう。

主たる給与と従たる給与の関係が変わる場合がある

従業員の意向や勤務先の経営状況によっては、1年の途中で「主たる給与」と「従たる給与」の関係が変わるケースもあります。関係性が変わった場合は、現在主たる給与を得ている勤務先で年末調整を行い、従たる給与の支払者に変更となった勤務先へ、従たる給与についての扶養控除等申告書を提出します。

また、1年の途中で関係性が変わった場合、それぞれの勤務先から配布される源泉徴収票の内容に間違いがないか、確認が必要です。

仮に、1月から6月まで主たる給与の支払者だった企業をA社、7月から12月はA社に勤めながらもB社が主たる給与の支払者になったとしましょう。

主たる給与の支払者から従たる給与の支払者となったA社は、1月から6月の給与と7月から12月の給与のそれぞれについて、源泉徴収票を別々に作成しなければなりません。A社・B社の双方が、源泉徴収票の摘要欄に記載すべき内容は以下の表のとおりです。


A社
(主たる給与の支払者→従たる給与の支払者)
B社
(従たる給与の支払者→主たる給与の支払者)
・主たる給与の支払者でなくなった理由
・主たる給与の支払者でなくなった日付
・1~6月に主たる給与の支払者が支払った給与の総額
・1~6月に主たる給与の支払者が支払った源泉徴収額
・1~6月に主たる給与の支払者が支払った社会保険料・主たる給与の支払者の名称
・主たる給与の支払者の所在地
・主たる給与の支払者に変更となった理由
・主たる給与の支払者に変更となった日付

また、年末調整は、7月から主たる給与の支払者となった勤務先であるB社で実施します。年末調整で計算する給与額は以下のとおりです。

  • A社(主たる給与の支払者)が支払った1~6月分の給与総額
  • B社(従たる給与の支払者)が支払った1~6月分の給与総額
  • B社(主たる給与の支払者)が支払った7~12月分の給与総額

出典:国税庁 主たる給与の支払者が交代した場合の記載方法

年末調整を行う際は、主たる給与の支払者から配布された源泉徴収票に、上記の内容が書かれているか確認しましょう。

従たる給与を得ている勤務先を退職した時点で効力が失われる

従たる給与を得ている勤務先を退職した場合、新しい勤務先には従たる給与についての扶養控除等申告書に関する内容は引き継がれません。

前の勤務先に扶養控除等申告書を提出していても、この申告内容は新たな勤務先での給与計算には反映されません。

また、転職後に新たな従たる給与の支払者が生じた場合、扶養控除等申告書の提出の要否に関しては収入額に応じて判断することになります。

扶養控除等申告書を提出しても年間の所得税総額は変わらない

従たる給与についての扶養控除等申告書を提出する目的は、毎月の源泉徴収税額の負担を軽減することです。

従たる給与についての扶養控除等申告書を提出しても、年間の所得税総額が減るわけではないため注意しましょう。

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まとめ

従たる給与についての扶養控除等申告書とは、2ヶ所以上の勤務先から給与を得ている人が、毎月の源泉徴収額を減らすために提出する書類です。

扶養控除等申告書には、マイナンバーや世帯主との続柄、主たる給与の月額概算額など、さまざまな情報を入力するため、記載内容を正確に理解しておく必要があります。

また、労務担当者や経理担当者は2ヶ所以上の勤務先で働く従業員に対し、確定申告が必要になる可能性がある点を伝えておくことも重要です。

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よくある質問

従たる給与とはどういう意味ですか?

2ヶ所以上の勤務先から給与を得ている場合における、「本業以外からの給与」を指します。たとえば、本業で会社員として働いている人が副業でアルバイトをした場合、アルバイト先からの給与が「従たる給与」に該当します。

主たる給与と従たる給与の違いに関しては、記事内「主たる給与との違い」をご覧ください。

従たる給与についての扶養控除等申告書の提出が不要なケースはありますか?

従たる給与の額がわずかな場合は、扶養控除等申告書を提出してもメリットが得にくいと考えられます。仮に扶養控除等申告書を提出しても、元々の給与額が少ないため、源泉徴収税額との差額がほとんどない可能性が高いためです。

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