法定休日とは労働基準法で定められた最低限必要な休日のことであり、所定休日とは会社が独自に就業規則などで定めた休日のことです。
人事・労務担当者や経営者にとって、これら2つの休日の違いを正しく理解することは、適切な給与計算やコンプライアンス遵守のために欠かせません。もし区別を曖昧にしたまま運用してしまうと、割増賃金の未払いが発生したり、36協定違反に問われたりするリスクがあります。
本記事では、法定休日と所定休日の定義から、割増賃金の計算方法、土日の扱い、さらには振替休日や代休との関係、変形労働時間制における運用まで、実務に役立つ知識を網羅して解説します。
目次
- 法定休日・所定休日とは
- 法定休日
- 所定休日(法定外休日)
- 法定休日と所定休日の違い
- 法定休日・所定休日に出勤した場合の割増賃金の計算方法
- 法定休日に出勤した場合
- 所定休日に出勤した場合
- 休日労働に深夜労働が重なった場合
- 土日休みの場合の法定休日の考え方
- 法律上、曜日の指定義務はなく企業の裁量に委ねられている
- 就業規則で具体的に休日を規定することが推奨される
- 法定休日を特定しない場合はさまざまなリスクがある
- 振替休日と代休で変わる休日労働のコストと運用ルール
- 振替休日
- 代休
- 法定休日・所定休日における振替休日・代休の賃金比較
- 法定休日の労働には36協定が必要となる
- 法定休日労働をさせるための前提条件
- 36協定における労働時間の上限規制と法定休日労働の関係
- 特別条項を適用する際の合計時間制限
- 36協定を締結していても拒否できない安全配慮義務
- 就業規則に法定休日・所定休日を記載するポイント
- 法定休日を特定する
- 所定休日およびそのほかの休日を定義する
- 振替休日と代休の手続きに関する詳細を規定する
- まとめ
- 入退社管理や給与計算などをカンタンに行う方法
- よくある質問
法定休日・所定休日とは
法定休日とは労働基準法で定められた最低限必要な休日のことであり、所定休日とは会社が独自に就業規則などで定めた休日のことです。そもそも休日とは、労働契約において労働者が労働義務を負わない日のことを指します。
ここでは、法定休日と所定休日それぞれの法律上の位置づけを整理します。
法定休日
法定休日とは、労働基準法第35条によって会社が従業員に必ず与えなければならないと定められた休日です。
法律では、原則として少なくとも毎週1回の休日を与えなければならないとされています。ただし、例外として4週間を通じて4日以上の休日を与えることも認められています。この最低限のラインを下回ることは許されず、違反した場合には罰則の対象となる極めて重要な休日です。
なお、法律では週1回という回数の指定はありますが、具体的な曜日の指定まではされていません。そのため、日曜日を法定休日にするのか、あるいはシフト制で平日のいずれかを法定休日にするのかは、各企業が自由に決めて就業規則に記載することになります。
所定休日(法定外休日)
所定休日(法定外休日)とは、法律で定められた法定休日以外に、会社が福利厚生や労働時間の調整などの目的で任意に設ける休日のことです。
日本の労働基準法第32条では1日8時間・週40時間という法定労働時間が定められています。たとえば、1日8時間勤務の職場において週1日の法定休日しかない場合、週の労働時間は48時間となり法定時間を超えてしまいます。そのため、多くの企業では週休2日制を採用し、1日を法定休日、もう1日を所定休日として設定しているのが一般的です。
法定休日と所定休日の違い
法定休日と所定休日は、その根拠となるルールや出勤させた際の扱いが大きく異なります。
下表に、主な違いをまとめました。
| 項目 | 法定休日 | 所定休日(法定外休日) |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働基準法(法律) | 就業規則・労働契約 |
| 付与義務 | 週1回または4週4日 | 法律上の義務はない(週40時間守るために必要) |
| 割増賃金率 | 35%以上 | 原則25%以上(週40時間を超える場合) |
| 36協定の要否 | 休日労働の項目が必要 | 時間外労働の項目が必要 |
法定休日と所定休日について、実務上でもっとも注意すべきは、法定休日に働かせることと所定休日に働かせることの性質の違いです。
法定休日の出勤は休日労働として扱われ、その日の全ての労働時間に対して35%以上の割増賃金が発生します。一方、所定休日の出勤は時間外労働の枠組みで考えます。そのため、その週の労働時間がすでに40時間に達している場合に限り、25%以上の割増賃金が発生するという仕組みです。
法定休日・所定休日に出勤した場合の割増賃金の計算方法
休日出勤が発生した際、どちらの休日に該当するかで人件費の計算が変わります。
ここでは、法定休日と所定休日に出勤した場合の具体的な計算方法について、それぞれ解説します。
法定休日に出勤した場合
法定休日に労働させた場合、会社は通常の賃金の35%以上を上乗せして支払わなければなりません。
たとえば時給2,000円の従業員が、法定休日に8時間働いた場合は以下の計算式で割増賃金を算出します。
割増賃金 = 2,000円 × 1.35 × 8時間 = 21,600円(総額)
基本給(2,000円 × 8時間 =16,000円)に割増賃金の総額21,600円を加えた金額が、法定休日に出勤した場合の賃金となります。
この際、法定休日労働では、1日8時間を超えても1日8時間超過による時間外労働(25%)の割増は発生しません。深夜時間帯を除き、労働時間にかかわらず、一律35%以上の休日割増のみが適用されます。ただし、週40時間超過分との関係で別途時間外割増が発生する場合は、そちらを優先して計算する場合があります。
所定休日に出勤した場合
所定休日の労働は、その労働によって週40時間を超えた部分に対して、25%以上の割増賃金を支払います。もし、平日に欠勤があり週の合計労働時間が40時間に満たない状態であれば、所定休日に働いても割増なしの支払いで済むケースもあります。
ただし、就業規則で「所定休日の労働には一律で25%の割増を支払う」などと独自に定めている場合は、優先されるのは会社のルールです。
休日労働に深夜労働が重なった場合
休日労働が深夜(22時〜翌5時)に及んだ場合は、さらに以下のように深夜割増(25%以上)が加算されます。
法定休日の場合
割増賃金 = 法定休日の割増分 × 深夜労働の割増分 = 35% + 25% = 60%以上の割増
所定休日の場合
割増賃金 = 所定休日の割増分 × 深夜労働の割増分 = 25% + 25% = 50%以上の割増(週40時間を超えている場合)
このように、重なる時間帯は非常に高い賃金率になるため、管理には細心の注意が必要です。
土日休みの場合の法定休日の考え方
土日をどちらも休日とする完全週休2日制を採用している企業であっても、どちらが法定休日でどちらが所定休日かを明確に特定していないケースは少なくありません。しかし、この区別を曖昧にすることは、給与計算上のリスクに直結します。
ここでは、完全週休2日制を採用する企業における法定休日の考え方を解説します。
法律上、曜日の指定義務はなく企業の裁量に委ねられている
労働基準法では、週1回の休日を付与することは義務付けていますが、特定の曜日を指定することまでは求めていません。したがって、日曜日を法定休日とするか、あるいは土曜日を法定休日とするかは、企業の裁量で自由に決めることができます。
就業規則で具体的に休日を規定することが推奨される
実務上のトラブルを避けるためには、就業規則に「日曜日を法定休日とし、土曜日を所定休日とする」といった具体的な記載例のように明記することが強く推奨されます。
このように特定されていれば、土曜日に出勤した場合は時間外労働(割増率25%〜)として、日曜日に出勤した場合は休日労働(割増率35%〜)として、迷わず計算できます。
法定休日を特定しない場合はさまざまなリスクがある
もし就業規則に法定休日の規定がない状態で土日両方に出勤させた場合、行政解釈では暦週(日〜土)の後順にある休日を法定休日と見なすことになっています。この場合、一般的には週の最後にあたる土曜日が法定休日として扱われます。
なお、法定休日の特定がされていないと、本来25%の割増で済むはずの労働に35%を支払ってしまったり、逆に不足して未払い賃金が発生したりというミスが起こりやすくなります。これは労働基準監督署からの是正勧告や、従業員とのトラブルに発展する恐れがあるため、コンプライアンスの観点から就業規則への明記は必須といえます。
振替休日と代休で変わる休日労働のコストと運用ルール
休日出勤への対応として、別の日に休ませる運用は一般的ですが、これには振替休日と代休という性質の異なる2つの仕組みが存在します。これらは言葉こそ似ていますが、賃金の計算方法が大きく変わります。
ここでは、振替休日と代休についてそれぞれ詳しく解説します。
振替休日
事前に休日を入れ替える「振替休日」の定義とメリット
振替休日とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日に変更し、その代わりに本来は労働日であった他の日を休日に設定することを指します。この最大の特徴は、事前に休日と労働日を入れ替えるという点にあります。
振替休日として有効に扱うためには、就業規則に振替ができる旨の規定があることが前提となります。その上で、本来の休日が始まる前までに、代わりに休む日を具体的に指定して従業員に通知しなければなりません。
事前に休日を入れ替えているため、もともと休日だった日に働いたとしても、法律上は労働日に働いたことになります。したがって、法定休日出勤としての35%以上の割増賃金支払いは不要です。
なお、振替休日を利用する際にもっとも注意すべきは、週をまたいで休日を移動させたケースです。その週の労働時間が合計40時間を超えてしまった場合、超過した時間に対して25%以上の時間外労働の割増賃金を支払う義務が生じます。
代休
事後に休みを付与する「代休」の法的性質と割増賃金
代休とは、休日労働が行われたあとに、その代償として別の労働日の労働義務を免除し、休みを与えることです。振替休日との決定的な違いは、事前の手続きが行われていない点にあります。
代休は、あくまで休日に働いたあとに与えられる休みです。そのため、あとからどれだけ休みを与えたとしても、休日に労働させたという事実は消えません。この点が、事前に休日を消滅させる振替休日との大きな違いです。
法定休日に出勤させた場合、代休を与えたとしても35%以上の割増賃金を支払う義務が残ります。たとえば、代休取得日を無給(1.0倍分を控除)とした場合でも、休日労働に対して発生した0.35倍の割増分だけは必ず支給しなければなりません。
代休を取った日を有給とするか無給とするかは、各会社の就業規則の定めに委ねられます。一般的には無給とするケースが多いですが、その場合でも上述のとおり割増分の支払いは必須となります。
法定休日・所定休日における振替休日・代休の賃金比較
それぞれの休日に出勤し、振替休日または代休を適用した場合の賃金の扱いを整理すると下表のとおりです。
| 出勤した休日 | 振替休日 | 代休 |
|---|---|---|
| 法定休日 | 割増なし(週40時間超なら25%) | 35%以上の割増必須 |
| 所定休日 | 割増なし(週40時間超なら25%) | 25%以上の割増(週40時間超の場合) |
振替休日は法定休日労働の35%割増を回避できるのに対し、代休は必ず割増分のコストが発生します。そのため、コスト面で比較すると、企業にとっては振替休日のほうが有利です。
業務の都合でどうしても休日出勤が必要になる場合は、可能な限り前日までに振替日を指定する振替休日の運用を徹底しましょう。この事前手続きを適切に行うことが、結果として人件費の抑制と健全な労務管理につながります。
法定休日の労働には36協定が必要となる
法定休日に従業員を働かせるためには、単に割増賃金を支払うだけでは不十分です。会社は必ず、労働基準法第36条に基づく労使協(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ていなければなりません。
法定休日労働をさせるための前提条件
36協定は、本来は禁止されている法定時間外労働や法定休日労働を、例外的に認めるための手続きです。たとえ少人数の事業場であっても、1分でも法定休日に労働させる可能性があるならば、事前に36協定を締結し、届出を済ませておく必要があります。
もしこの手続きを怠ったまま法定休日に出勤させた場合、労働基準法違反となり、経営者には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるリスクがあります。
36協定における労働時間の上限規制と法定休日労働の関係
働き方改革による法改正で、残業時間には月45時間・年360時間という原則的な上限が設けられました。
しかし、実務上非常に重要な点として、この月45時間という枠には法定休日に行った労働時間は含まれません。法定休日労働は、時間外労働とは別枠でカウントされる仕組みになっています。
特別条項を適用する際の合計時間制限
繁忙期などのために特別条項を設けている場合でも、守らなければならない絶対的なラインが存在します。時間外労働と法定休日労働を合計した時間は、単月で100時間未満に収めなければなりません。
また、2ヶ月から6ヶ月までの平均をとった際、いずれの平均も80時間以内にする必要があります。このように、法定休日労働は45時間枠には含まれないものの、過労死ラインを基準とした合計時間の制限には厳格に含まれる点に注意が必要です。
36協定を締結していても拒否できない安全配慮義務
36協定を届け出ていれば、際限なく働かせられるわけではありません。会社には従業員の健康を損なわないように配慮する安全配慮義務があります。
そのため、休日労働が頻発し従業員の心身に不調をきたすような状況は、法的リスクだけでなく企業の社会的信用を失うことにもつながります。適切な勤怠管理システムなどを活用し、リアルタイムで法定休日労働の回数や合計時間を把握できる体制を整えることが、現代の労務管理には不可欠です。
就業規則に法定休日・所定休日を記載するポイント
労使間のトラブルを未然に防ぎ、透明性の高い労務管理を行うためには、就業規則への記載内容を精査することが不可欠です。
就業規則の記載が不十分であったり曖昧だったりすると、労働基準監督署の調査が入った際、会社にとって不利な解釈を下される恐れがあります。また、従業員から過去数年分に遡って割増賃金の不足分を請求されるといった法的リスクも高まります。
企業のコンプライアンスを強化するためにも、現状の規定が実態に即しているか、また法的な要件を満たしているかを定期的に見直すことが重要です。
ここでは、就業規則に法定休日・所定休日を記載する3つのポイントを解説します。
法定休日を特定する
法定休日については、あらかじめ曜日を固定して就業規則へ記載することがもっとも明確で推奨される方法です。
たとえば「毎週日曜日を法定休日とする」といった具体的な定めがあれば、日曜日の出勤は一律で35%以上の割増賃金が発生します。この場合、土曜日に出勤したら、週40時間を超えた場合に25%以上の割増賃金が発生するという区別が現場でも容易になります。
所定休日およびそのほかの休日を定義する
土曜日や祝日、年末年始、夏季休暇など、法律の基準を超えて会社が独自に設ける休みについては、これらを所定休日として明確に定義することが推奨されます。
法定休日以外の休日を明記しておくことで年間の休日総数が明確になり、1ヶ月の平均所定労働時間の算出も正確に行えます。これは時間外労働の単価を計算する際にも、重要な根拠となります。
振替休日と代休の手続きに関する詳細を規定する
振替休日と代休については、それぞれの運用ルールを分けて記載する必要があります。振替休日であれば、いつまでに振替日を通知すべきかといった手続きの流れを定めます。
一方で代休については、付与の条件だけでなく、休日労働に対する割増賃金の支払い義務が残る点など、賃金の取り扱いについても具体的に書き添えておくことが重要です。
まとめ
法定休日と所定休日を正しく理解し区別することは、企業の適切な労務管理の根幹を成します。
法定休日は法律で義務付けられた週1日の休みであり、出勤時には35%の割増賃金が発生します。所定休日は会社が定める休日で、週40時間を超えた場合に25%の割増が必要です。これらを混同せず、就業規則で明確に特定しておくことが、未払い賃金の防止やコンプライアンスの遵守において非常に重要です。
自社の規定が現在の法律に適合しているか不安な場合や、複雑な給与計算が発生している場合は、専門家である社会保険労務士へ相談することも有効な手段となります。
入退社管理や給与計算などをカンタンに行う方法
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よくある質問
法定休日と所定休日のどちらに出勤したほうが会社の人件費は増える?
法定休日に出勤させるほうが、人件費は高くなる傾向にあります。
法定休日出勤は一律で35%以上の割増賃金が発生します。一方、所定休日出勤の場合は週の労働時間が40時間に満たなければ割増が発生しないケースがあるほか、発生しても原則25%以上の割増で済むためです。
詳しくは、記事内の「法定休日・所定休日に出勤した場合の割増賃金の計算方法」をご覧ください。
就業規則に法定休日を特定していない場合、どの日が法定休日になる?
就業規則に特定がない場合、行政解釈に基づき暦週(日曜日〜土曜日)の後順にある休日が法定休日とみなされます。たとえば土日が休みの会社なら、週の最後にある土曜日が法定休日となるのが一般的です。
ただし、解釈の争いを避けるためにも、就業規則への明記を強く推奨します。
詳しくは、記事内の「土日休みの場合の法定休日の考え方」で解説しています。
代休を取得させれば、法定休日に働いた分の割増賃金は支払わなくてよい?
代休は事後に休日を与えるものなので、法定休日に働いたという事実は消えません。そのため、休日労働に対する35%以上の割増賃金のうち、少なくとも割増分(0.35倍分)については必ず支払わなければなりません。
詳しくは、記事内の「振替休日と代休で変わる休日労働のコストと運用ルール」をご覧ください。
参考文献
▶︎ e-Gov法令検索「労働基準法第三十二条、第三十五条、第三十六条」


