給与計算・労務管理の基礎知識

労働保険とは?加入対象や加入方法、計算方法まで解説

労働保険とは労災保険と雇用保険を合わせたもので、労働者の雇用や生活を守るために作られた国の制度です。労働保険に加入すると事業所ごとに番号が割り振られ、事業種類によって定められた保険料率にもとづいて保険料を納めます。労働保険とは何か、その加入対象や加入方法、計算方法や特別加入制度などについて解説します。

労働保険とは

労災保険と雇用保険を合わせて労働保険と呼んでいます。労働保険は労働者の生活と雇用を守るための国の制度です。

労災保険の目的と加入対象

労災保険の目的は、業務上のケガや病気で働けなくなった労働者の生活を守り療養費などを補償することです。労働者が死亡した際は、給付金により遺族の生活を支援します。正社員やアルバイト、パートを問わず従業員を1人でも雇っている事業所は、原則として労災保険に加入しなければなりません。労災保険の保険料はすべて事業所が負担します。

しかし、事業所が「暫定任意適用事業所」に該当する場合には、労災保険への加入は任意となります。
暫定任意適用事業所の条件については、厚生労働省のページをご参照ください。

労災保険の特別加入制度

労災保険の加入対象者は従業員となりますが、事業主も労災保険に加入できる特別加入制度というものがあります。たとえば中小企業の事業主は、特別加入制度によって労災保険に加入することが可能です。中小事業主にあたるのは、労働者数が50人以下の金融業や保険業、不動産業、小売業、労働者数が100人以下の卸売業とサービス業、労働者数が300人以下のそれ以外の業種の事業主です。

なお労働者数のカウントの際には、通年雇用をしていない場合でも、年間100日以上雇用する労働者がいる場合は労働者数に加算します。

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引用元:厚生労働省

雇用保険の目的

一方、雇用保険は、失業した場合や育児、介護などで働けなくなった場合に、再就職支援や収入の減少などに対する支援を行います。労働者への支援だけでなく、加入する事業所にも雇用を継続するための支援金などが支払われます。雇用保険料は、労働者と事業主が負担します。

雇用保険の加入対象

雇用保険に加入するのは、正社員など正規雇用者のほか、所定労働時間が週20時間以上で一定の条件を満たすパートやアルバイト、派遣社員などの非正規雇用の労働者です。日雇労働者や条件を満たす季節労働者なども対象になります。
平成29年1月1日以降、65歳以上の労働者も雇用保険が適用されるようになりました。また、平成32年度からは、64歳以上の労働者からも雇用保険料が徴収されることになります。

労働保険の加入対象にならない者

労働保険の加入対象にならないのは、会社の代表者や取締役、自営業の個人事業主とその家族などです。会社と委任関係にある外交員なども加入することはできません。会社の取締役の場合、労働者として報酬を得ていることが明らかであれば労働保険に加入することもできます。

労働保険の加入方法

労災保険加入に必要な書類と手続き

労災保険は管轄の労働基準監督署へ、以下の書類を提出します。

  • 労働保険保険関係設立届
  • 労働保険概算保険料申告書
  • 履歴事項全部証明書(写)1通
提出期限は、保険関係が設立した日の翌日から10日以内です。労働保険概算保険料申告書のみ、提出期限が50日以内になっていますが、通常はほかの書類と同時に提出し、50日以内に納付を行います。

雇用保険加入に必要な書類と手続き

雇用保険は所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に必要書類を提出します。

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 労働保険保険関係設立届(控)
  • 労働保険概算保険料申告書(控)
  • 履歴事項全部証明書 原本1通
  • 労働者名簿
雇用保険適用事業所設置届を提出して労働保険の加入手続きを行うと、事業所ごとに決められた事業所番号が交付されます。
雇用保険被保険者資格取得届は、労働者1人につき1枚ずつ提出します。提出期限は、労災保険の書類と同様に、従業員を雇用した日の翌日より10日以内です。

年度の途中で雇用が生じた場合

年度の途中で新たに人を雇い入れた場合は、その日から数えて50日以内に、保険関係が成立した日から年度末までの見込み賃金総額をもとにして概算保険料を算出し、申告します。
反対に、年度の途中で保険関係を解消した場合は、その日から50日以内に確定申告を行います。確定保険料よりも概算保険料が多い場合は差額が還付されます。

労働保険料集計表・労働保険料申告書の様式の詳細については厚生労働省のページをご参照ください。

労働保険の計算方法

労働保険料は、毎年4月1日~3月31日までの見込み賃金額をもとに計算します。計算には、業種ごとに決まっている労働保険料率を用い、6月~7月に概算保険料を算定しなければなりません。

労災保険料の計算方法

労災保険料は、従業員に支払った賃金の総額に労災保険料率を乗じて計算します。労災保険料率は事業種別ごとに細かく分けられています。

労災保険料=労災保険対象従業員の賃金総額 × 労災保険料率
詳しくは厚生労働省のページを参照してください。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料率は事業の種類によって3つに分けられ、一般の事業、農林水産及び清酒製造事業、建設事業のいずれであるかによって保険料率が異なります。
雇用保険料は、労働者負担と事業主負担に分けられます。平成29年4月1日以降、労働者負担・事業主負担ともに1000分の1ずつ引き下げられているので、間違わないように注意しましょう。

雇用保険料=雇用保険対象従業員の賃金総額 × 雇用保険料率
詳しくは厚生労働省のページを参照してください。

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引用元:厚生労働省

賃金の総額に含まれるもの

各保険料の計算式にある賃金の総額には、基本賃金などのほか、賞与や通勤手当・残業手当・扶養手当・住宅手当などの各種手当、休業手当や前払い退職金なども含まれます。
一方、賃金に含まれないのは、役員報酬や出張旅費、結婚祝金・災害見舞金などの一時金、退職金、休業補償費、傷病手当金などです。
詳しくは厚生労働省のページを参照してください。

支払われた賃金と差が生じた場合

実際に支払われた賃金と差が生じた場合は年度終了後に清算し、多すぎる場合は翌年の保険料から差し引き、少なかった場合は追加で徴収されます。賃金が予定の2倍以上など大幅に増加した場合は、増加概算保険料の申告と保険料の納付を30日以内に行うことが必要です。

保険料の申告と納付

保険料の申告手続きと納付は、毎年6月1日~7月10日に所轄の労働局または労働基準監督署で行います。

まとめ

従業員を雇っている事業所は労働保険に必ず加入しなければなりません。概算保険料に大きな変動があった場合やパート、アルバイト、派遣労働者などを新たに雇い入れたときは、手続きを忘れないようにしましょう。

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