給与計算・労務管理の基礎知識

雇用保険料(労働保険)の計算方法

雇用保険は、失業時の失業給付金だけでなく、失業の予防、雇用機会の増大や労働者の能力開発など、さまざまな目的に使われています。ここでは、雇用保険料の計算方法や雇用保険の保険料率(労働者負担・事業主負分)、1円未満の端数処理などについてご説明します。

雇用保険料について

雇用保険とは

「雇用保険」と「労災保険(労働者災害補償保険)」は合わせて「労働保険」と呼ばれ、両保険とも国が管掌する保険です。保険の給付は雇用保険と労災保険は別々に行われていますが、両保険料の納付についてはひとつのものとして取り扱われます。

労災保険料は事業主が負担するため、労働者は支払う必要はありません。一方、雇用保険料は、事業者と労働者の双方が保険料を負担します。しかし、保険料は労使折半ではなく、事業主の方が多く支払うようになっています。この点が健康保険料や厚生年金保険料とは違う点です。

雇用保険料の計算式

雇用保険の保険料は、次の計算式で算出されます。

雇用保険料=給与額または賞与額×保険料率
雇用保険料の対象となる給与額や賞与額は、税金や社会保険料などを差し引く前の総賃金額です。賃金には各種手当などが含まれます。雇用保険料の対象となる賃金・対象とならないものには、以下の支払いがあります。

<雇用保険料対象の賃金となるものの例>
  • 通勤手当(非課税分を含む)、定期券・回数券(通勤のための現物支給分)
  • 超過勤務手当・深夜手当(いわゆる残業手当など)、宿直手当・日直手当など
  • 家族手当・子供手当・扶養手当など
  • 技能手当・資格手当・特殊作業手当など
  • 住宅手当・地域手当・単身赴任手当など
  • 皆勤手当・精勤手当などの奨励手当
  • 休業手当(『労働基準法』第26条。事業主の都合で休業させた場合に支給) など
<雇用保険料対象の賃金にならないものの例>
  • 役員報酬
  • 結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、年功慰労金、勤続褒賞金、退職金など
  • 出張旅費・宿泊費など
  • 休業補償(『労働基準法』第76条。労働者が業務災害により休業した場合に支給)
  • 傷病手当金(『健康保険法』第99条。労働者が業務外の傷病により休業した場合に支給)
  • 解雇予告手当(『労働基準法』第20条。30日前の解雇予告なしに労働者を解雇する場合に支給する手当) など
詳細は厚生労働省のページ「雇用保険料の対象となる賃金」を参照してください。

したがって、残業手当の増減などで月の総賃金額が変わると雇用保険料も変わるため、雇用保険料は毎月計算しなくてはなりません。標準報酬月額をもとに計算し1年間保険料が変わらない健康保険料や厚生年金保険料とは異なるため注意が必要です。

雇用保険料率

雇用保険料率は、失業給付の受給者数や積立金の残高などに応じて、毎年見直しが行われ、保険料率に変更がある場合は4月1日から変更されます。なお、保険料率の見直しについては変更がある年と変更がない年があります。また、事業の種類によっても、労働者・事業主の保険料率は異なります。

平成28年度の一般の事業の場合、労働者が負担する雇用保険料率は4/1,000 (0.4%)、事業主が負担する雇用保険料率は7/1,000 (0.6%)です。一方、農林水産・清酒製造の事業や建設の事業の場合、労働負担分は5/1,000 (0.5%)、事業主負担分はそれぞれ8/1,000 (0.8%)と9/1,000 (0.9%)となっています。

<雇用保険の保険料率>

  • 平成28年4月1日~平成29年3月31日

引用元:厚生労働省


  • 平成29年4月1日~平成30年3月31日(予定)

引用元:厚生労働省

事業種類によって料率が異なる理由

前述のように雇用保険料には「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」と事業の種類があり、事業の種類によって保険料率が異なります。農林水産・清酒製造・建設のどれにも当てはまらない事業は、一般の事業になります。

農林水産・清酒製造の事業と建設の事業の保険料率は、一般の事業の保険料率に比べると高い設定となっています。これは、農林水産・清酒製造の事業は、季節によって事業規模が縮小し就業状態が不安定となり、失業給付を受ける可能性が高いとされているからです。また、建設業も建築物ごとの雇用契約のケースが少なくなく、失業給付を受ける可能性が高いため、保険料率が高くなっています。

ただし、農林水産の事業のなかでも、季節的な休業や事業規模の縮小がないとして厚生大臣が指定する以下の事業は、一般の事業として取り扱われます。(平成21年12月28日厚生労働省告示第535号)

  • 牛馬育成、酪農、養鶏、または養豚の事業
  • 園芸サービスの事業
  • 内水面養殖の事業
  • 船員が雇用される事業)

雇用保険料の計算方法

それでは、具体的に雇用保険料の労働者負担額を計算してみましょう。

【A社に勤務する営業職のBさんが、平成28年12月に以下の支払いを受けた場合】

税金・社会保険料など控除前の給与額:30万円
税金・社会保険料など控除前の賞与額:50万円
  • Bさんの給与にかかる雇用保険料
    雇用保険料=30万円×4/1,000(平成28年度「一般の事業」の保険料率)=1,200円
  • Bさんの賞与にかかる雇用保険料
    雇用保険料=50万円×4/1,000(平成28年度「一般の事業」の保険料率)=2,000円
よって、Bさんが平成28年12月の給与の際に支払う雇用保険料は1,200円、賞与の際に支払う雇用保険料は2,000円となります。

端数が出たときの雇用保険料

雇用保険料の端数処理

雇用保険料の労働者負担額を源泉徴収する場合、1円未満の端数が出たときの処理は、原則として「50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げ」です。ただし、「すべて切り捨て」など、労使間で慣習的な端数処理などの特約がある場合は、従来どおりの端数計算方法で取り扱うことも認められています。

雇用保険料の計算例②

では、具体的に雇用保険料の端数処理の計算例を見てみましょう。

  • 給与総額が243,088円の場合
    雇用保険料=243,088×4/1,000(平成28年度「一般の事業」の保険料率)=972.352円  → 972円(50銭以下の場合は切り捨て)
  • 給与総額が243,900円の場合
    雇用保険料=243,900×4/1,000(平成28年度「一般の事業」の保険料率)=975.6円  → 976円(50銭超える場合は切り上げ)

まとめ

以上のように、雇用保険料の計算方法は、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険の計算方法と異なる点がいくつかあります。保険料の源泉徴収額を間違うと修正に手間がかかるため、雇用保険料を計算する際には注意しましょう。



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