人事労務の基礎知識

有期雇用とは?無期雇用との違いや契約期間、手続きのポイントを解説

監修 北 光太郎 きた社労士事務所

有期雇用とは?無期雇用との違いや契約期間、手続きのポイントを解説

有期雇用とは、あらかじめ労働契約の期間が定められている雇用形態のことを指します。繁忙期の人員調整や専門人材の確保など、企業にとって柔軟な人材活用を可能にする雇用形態です。

しかし、有期雇用契約では無期転換ルールや雇止め法理、2024年4月から施行された労働条件明示のルール変更など、人事労務担当者が押さえておくべきポイントが数多く存在します。

本記事では、有期雇用の基本的な定義から無期雇用との違い、有期雇用契約を締結する際の手続き、法改正による変更点など押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。

目次

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有期雇用とは

有期雇用とは、あらかじめ労働契約の期間が定められている雇用形態のことを指します。正社員のような期間の定めのない「無期雇用」とは異なり、契約の更新がなければ、契約期間が満了した時点で労働契約が終了します。

企業にとっては、繁忙期や特定のプロジェクト期間のみ人員を確保したい場合など、柔軟に労働力を調整できるメリットがあります。一方で、労働者にとっては契約更新の有無が不透明であるため、雇用の安定性に欠けるという側面があります。

そのため、有期雇用契約は労働契約法などの法律によって、不合理な労働条件の禁止や、雇い止めに対する一定の制限が設けられています。

有期雇用の対象となる雇用形態

有期雇用契約は、主に以下のような雇用形態で結ばれることが一般的です。

有期雇用の対象となる雇用形態

  • 契約社員
  • 嘱託社員
  • パートタイマー
  • アルバイト

有期雇用契約の対象かどうかは、従業員の「呼称」ではなく「契約期間の定めがあるかどうか」が焦点になります。「パートタイマー」や「アルバイト」であっても契約期間の定めがなければ「無期雇用」となり、「契約社員」という名称でも契約期間が定められていれば法律上は「有期雇用契約」として扱われるのです。

たとえば、契約社員はフルタイムで働く場合が多いものの、1年や半年といった期間で区切られているため有期雇用に含まれます。また、定年退職後の再雇用として注目されている「嘱託社員」も、一般的には1年ごとの更新制で契約するため、有期雇用として扱われます。

つまり、社内での呼び名や勤務時間の長さではなく、雇用契約において契約期間が定められていれば、法律上は有期雇用契約となるということです。

有期雇用の契約期間の上限

有期雇用契約の契約期間には、労働基準法第14条により原則として3年の上限が設けられています。これは、あまりに長い期間の契約を締結することによって労働者が長期間拘束され、事実上の強制労働になったり、退職の自由が奪われてしまったりする事態を防ぐための措置です。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、例外として最大5年の契約期間が認められています。

最大5年の契約期間が認めらるケース

  • 高度な専門的知識、技術または経験(博士号の学位を持つ者、公認会計士、医師、弁護士など)を持つ労働者
  • 満60歳以上の労働者

なお「契約期間」とは、1回の契約で設けられる年数のことです。契約更新を繰り返すことで通算の雇用期間が3年や5年を超えること自体は禁止されていません。

無期雇用とは

無期雇用契約とは、企業と労働者の間で契約期間の定めを設けずに締結される労働契約のことです。

労働者にとっては、契約期間が決まっている有期雇用のように「次の契約更新があるか」という不安を抱く必要がなく、雇用の安定性が高いというメリットがあります。

従来は正社員のみが無期雇用契約となるケースが大半でしたが、労働契約法の改正により、有期雇用契約が通算5年を超えた場合に労働者の申し込みによって無期雇用へ転換できる「無期転換ルール」が導入されました。

これにより、パートタイムや契約社員であっても契約期間の定めのない「無期雇用労働者」として働くケースが増加しており、労働者の雇用形態にかかわらず、長期的なキャリア形成や生活設計が立てやすい働き方を実現できます。

無期雇用と有期雇用の違い

有期雇用と無期雇用のもっとも大きな違いは、「労働契約期間の定めの有無」です。

有期雇用は、3ヶ月や1年といった契約期間が満了すれば、更新されない限りその時点で自動的に契約が終了します。

一方で、無期雇用は定年などに該当する場合を除き、契約終了の時期が決まっていません。一般的に労働者が自ら退職を申し出るか、定年退職の年齢に達する、あるいは解雇事由に該当して解雇されない限り雇用関係は継続します。

そのため、有期雇用は雇用の安定性が低く、契約期間満了に伴う雇用の終了(雇止め)のリスクがあります。

下表では、無期雇用と有期雇用のそれぞれの違いをまとめています。


項目有期雇用無期雇用
契約期間原則上限3年、例外5年定めがない
契約の終了契約期間の満了により終了
(更新の可能性あり)
定年・解雇・自己都合退職などにより終了
雇用の安定性低い(雇止めのリスクがある)高い

無期雇用と正社員の違い

無期雇用と正社員は似た概念として混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。

正社員は「無期雇用」であることに加え、一般的にフルタイム勤務を前提に賞与や退職金などの待遇が整備され、転勤や職務変更の可能性を含む雇用形態です。

一方、無期雇用はあくまでも契約期間に定めがないことを示す法律用語で、待遇や働き方を直接意味するものではありません。そのため、無期転換ルールを利用して有期雇用から無期雇用へ切り変わった労働者の場合、契約期間は無期であっても勤務時間や給与、福利厚生などの労働条件はパート・アルバイト時代のままというケースが存在します。

つまり、正社員は無期雇用の一形態であり、無期雇用であっても必ずしも正社員と同じ待遇や責任範囲が与えられるわけではない点が両者の違いとなります。

改正労働契約法による有期雇用契約の変更点

2013年4月1日に施行された「改正労働契約法」により、有期雇用契約に関するルールが大きく変更されました。

人事労務担当者が押さえておくべきポイントは以下の3つです。

1. 無期雇用への転換ルール

無期雇用への転換ルールとは、有期雇用契約で働く労働者を保護するため、有期雇用から無期雇用へ転換できる制度です。

具体的には、労働者と同一企業の間で有期雇用契約が繰り返し更新され、通算の契約期間が5年を超えた場合に、労働者が申込みを行うことで期間の定めのない「無期労働契約」に転換できるというものです。申込みがあった場合は、企業は原則として無期労働契約への転換を拒否できません。

なお、無期転換の申込権は、通算契約期間が5年を超える契約期間の初日から末日までの間に発生します。

たとえば、契約期間が1年の場合は、5回目の更新後の1年間(通算6年目)に申込権が発生します。また、契約期間が3年の場合は、1回目の更新後の3年間(通算4年目~6年目)に申込権が発生することになります。

2. 雇止め法理(労働契約法第19条)の法定化

雇止め法理の法定化とは、過去の最高裁判例によって確立されていた「雇止め(契約更新の拒否)」に関するルールが、労働契約法第19条として条文に明記されたことをいいます。

有期雇用は原則として期間満了によって終了しますが、実態として契約更新が繰り返され、無期雇用と同じとみなされる状態や、労働者が「次も更新されるだろう」と期待することに合理的な理由がある場合には、使用者が一方的に契約を終了させることが難しくなります。

反復して契約が更新されたり、契約の更新を期待した労働者が契約更新を申し込んだりした場合、企業側が更新を拒絶するには解雇と同様に「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。

このように、これまで裁判で争われなければならなかった基準が法律として明確化されたことで、ルールの予見可能性が高まり、不当な雇止めから労働者を守るための法的根拠がより強固なものとなりました。

3. 不合理な労働条件の禁止

労働契約法第20条では、有期雇用労働者と無期雇用労働者との間に「有期雇用であること」を理由として、不合理な労働条件の相違を設けることが禁止されています。

不合理な労働条件の禁止は、いわゆる「同一労働同一賃金」の考え方の基本となる規定です。

主に基本給や賞与、各種手当、福利厚生などについて、以下の要素を基準に考慮し、不合理な差を設けてはならないとされています。

  • 職務の内容(業務内容や責任の程度)
  • 配置の変更の範囲(転勤や部署異動の有無・範囲)
  • その他の事情

有期雇用労働者と無期雇用労働者との間に、これらの違いがないにもかかわらず、通勤手当や福利厚生、賞与においても差をつけることは不合理と判断される可能性があります。

有期雇用による企業側のメリット

有期雇用は、業務量の変動に応じた柔軟な配置ができるほか、専門スキルを一時的に確保したい場面でも活用しやすい雇用契約です。企業が人員を確保・運用するうえで、以下のようなメリットがあります。

正社員より人件費を抑えやすい

多くの企業では、正社員に対して昇給や賞与、退職金といった長期的な福利厚生を手厚く設定していますが、有期雇用契約では職務内容や責任の範囲を限定することで基本給や諸手当を役割に見合った水準に設定することが可能です。

法律によって不合理な待遇差は禁止されていますが、転勤の有無や将来的な幹部候補としての役割の違いなどを明確に区別することで、全体的な人件費を調整しやすい側面があります。

繁忙期などに合わせて人員調整がしやすい

有期雇用であれば、季節的な需要の増加が見込まれる繁忙期や一時的な受注増に対応する場合、必要な期間だけ人員を増やすことができます。また、正社員が育児休業や長期療養に入る際の代替要員として確保する場合にも有効です。

たとえば、正社員のみで組織を構成すると、閑散期に過剰な人員を抱えるリスクがありますが、契約期間が決まっている有期雇用を活用すれば、契約満了時に更新を行わないという判断も可能なため、その時々の業務量に応じた最適な人員配置を実現しやすくなります。

専門性のある人材を確保しやすい

新規事業の立ち上げや特定のプロジェクトにおいて即戦力となる高度な専門スキルが必要な場合、有期雇用は有効な採用手段となります。

高い専門性を持つ人材を正社員として長期雇用するには高額なコストがかかりますが、「プロジェクト完了まで」といった期間を限定することで、高い報酬を提示してスペシャリストを雇用することが容易になります。

また、定年退職したシニア層を再雇用する場合にも、フルタイムではなく週数日の勤務など柔軟な働き方を提示しやすく、企業が必要とする熟練の技術やノウハウを必要な期間だけ効率的に活用することができます。

有期雇用による企業側のデメリット

業務運用の柔軟性というメリットがある一方で、有期雇用には法的なリスクも伴うため、以下の事項に留意しながら慎重な運用が求められます。

教育・研修のコストがかかる

人材の入れ替わりが頻繁に発生しやすい有期雇用では、採用活動や教育研修にかかるコストと労力が継続的な負担となります。

契約期間が終了して人が入れ替わるたびに求人広告を出して選考を行い、入社後には業務の基本ルールやマニュアルを一から教え直さなければなりません。

新人が業務に習熟して生産性が上がるまでには一定の時間が必要ですが、有期雇用の場合は戦力として十分に貢献してもらう前に契約終了の時期を迎えてしまうこともあります。

その結果、現場の教育担当者の負担が増加し、組織全体の生産性低下やノウハウの蓄積が阻害される要因となりえます。

優秀な人材が定着しにくい

有期雇用契約は「いつ契約が終わるかわからない」という性質上、労働者の企業への帰属意識や忠誠心(ロイヤリティ)が育ちにくい傾向にあります。どれほど優秀で現場に不可欠な人材であっても、労働者は常に雇用の安定を求めているため、正社員雇用のオファーやより良い条件の仕事が見つかれば、契約更新のタイミングで他社へ転職してしまうリスクが高くなります。

企業としては、有期雇用労働者に長期的なキャリアパスを提示しづらく、将来のリーダー層を育成することが困難です。また、退職に伴って、業務を通じて築かれた顧客との関係性や社内独自のスキルが流出し、組織力が低下する恐れもあります。

法改正やトラブル対応のリスクがある

有期雇用に関する法規制は年々強化されており、適切な労務管理を怠るとトラブルに発展するリスクがあります。

とくに、契約更新を繰り返した後の「雇い止め」は、客観的で合理的な理由がなければ無効とされる場合があり、慎重な判断が求められます。

また、通算5年を超えた場合の無期転換ルールへの対応漏れや、正社員との間の不合理な待遇差(同一労働同一賃金)に関する説明責任など、管理すべきコンプライアンス項目は多岐にわたります。

対応を誤ると損害賠償請求や企業イメージの低下を招くため、人事管理において細心の注意が必要です。

有期雇用契約を締結する際の手続き

有期雇用労働者と労働契約を締結する際は、法令に基づき「労働条件通知書」を交付する義務があります。また、合意の証拠として「雇用契約書」も取り交わすのが一般的です。

なお、実務上は、雇用契約書に労働条件通知書の必要記載事項を網羅し、企業と労働者が署名または記名押印をした「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を取り交わします。


書類名概要
雇用契約書企業と労働者が、労働条件について合意したことを証明する書類。法律上の作成義務はなく、労働条件通知書と併せることも可能
労働条件通知書企業が労働者に対し、労働条件を通知するための書類。法律上の作成義務がある。「絶対的明示記載事項」と、必要に応じて記載する「相対的明示記載事項」がある

雇用契約書(労働条件通知書)における明示事項

労働者(有期雇用契約含む)と労働契約を締結する際は、以下のような労働条件を書面または電子メールなど(労働者が希望した場合)で明示する必要があります。

以下の労働条件は「絶対的明示記載事項」として原則書面にて明示が求められます。

労働条件の絶対的明示記載事項

  • 労働契約の期間
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  • 就業する場所
  • 業務の内容
  • 始業・終業時刻
  • 時間外労働の有無
  • 休憩時間
  • 休日・休暇
  • 賃金の決定・計算・支払い方法
  • 退職に関する規定(解雇の事由含む)

その他、以下の事項を設けている場合は、「相対的明示記載事項」として明示が義務付けられています。「相対的明示記載事項」は書面での明示は義務付けられていませんが、トラブル防止のためにもできるだけ書面で明示した方がよいでしょう。

企業に定めがある場合の相対的明示記載事項

  • 退職手当のに関する事項
  • 賞与に関する事項・最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

また、有期労働契約を締結する場合は、上記の労働条件の明示に加え、以下の項目については書面(または労働者が希望した場合は電子メールなど)で明示する必要があります。

契約更新の有無

労働条件通知書(雇用契約書)には、契約を「更新する場合がある」または「更新しない」「自動的に契約を更新する」など、契約更新の有無を記載します。

契約更新の判断基準

「契約を更新する場合がある」とした場合は、その判断基準を明示しなければなりません。たとえば、「労働者の能力により判断する」「会社の経営状況により判断する」などの内容が該当します。

更新上限の明示

有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。たとえば、「契約期間は通算4年を上限とする」「契約の更新回数は3回まで」などです。

無期転換申込機会の明示

契約期間が5年を超える有期雇用労働者の場合、「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要になります。

無期転換後の労働条件の明示

契約期間が5年を超える有期雇用労働者には、「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

昇給の有無

昇給の有無を書面で明示する必要があります。「ある」場合は、時期なども併せて示すことが望ましいでしょう。

賞与の有無

賞与(ボーナス)を支給する制度の有無を書面で明示する必要があります。「ある」場合は、支給の基準や時期なども併せて記載します。

退職金の有無

退職金を支払う制度の有無を書面で明示します。「ある」場合は、勤続年数などの支給要件も示すことが望ましいです。

相談窓口

働き方や待遇について、相談できる社内の窓口(担当部署や担当者、連絡先など)を具体的に書面で明示する必要があります。

契約満了後の更新

有期雇用契約は、原則として契約期間の満了をもって自動的に終了しますが、契約を更新する場合には改めて合意の手続きが必要です。自動更新の条項がない限り、企業と労働者の双方が合意したうえで、新たな契約期間や労働条件を記した契約書を再度取り交わすことが望ましいとされています。

とくに注意が必要なのは、契約を更新しない「雇止め」を行うケースです。契約が3回以上更新されている場合、または通算期間が1年を超えている労働者に対して雇止めを行う場合、使用者は少なくとも契約期間満了の30日前までに予告を行う義務があります。

また、実態として反復更新が続き、労働者に契約継続への合理的な期待が生じている場合には、客観的で正当な理由がない限り雇止めが無効となる可能性がある点にも留意が必要です。

契約期間途中の解雇・解除

有期雇用において、契約期間の途中で企業側から一方的に契約を解除(解雇)することは、無期雇用の解雇よりも法的に極めて厳しく制限されています。労働契約法第17条により、「やむを得ない事由」がある場合でなければ、期間途中の解雇はできないと定められているためです。

「やむを得ない事由」のハードルは非常に高く、単なる能力不足や軽微なミス程度では認められません。天災による事業の継続不能や労働者の重大な背任行為など、どうしても雇用を維持できない特段の事情が必要です。

もし、正当な理由なく期間途中で解雇を行った場合は、解雇無効となるだけでなく、残りの契約期間分の賃金相当額を損害賠償として請求されるリスクがあるため、企業には原則として期間満了までは雇用を継続する責任が伴います。

有期雇用契約を締結する際の注意点

有期雇用労働者を雇用する際は、労働条件の明示義務に加え、以下の点に注意して労務管理を行う必要があります。

就業規則を整備する

有期雇用は正社員と労働時間や手当などが異なるため、正社員だけでなく契約社員やパートタイマーといった有期雇用労働者を対象とした就業規則も整備することが重要です。就業規則を作成した場合は、労働基準監督署に届け出て、労働者に周知する必要があります。

有期契約社員の就業規則を整備する際は、正社員との相違点を明確に記載しなければなりません。同一労働同一賃金の観点から、基本給や賞与、退職金など待遇に不合理な差を設けることがないように十分注意しましょう。

また、育児休業や介護休業など有期雇用特有の取扱いも整理し、法改正への対応方針も含めておくことで実務上のトラブル防止につながります。

社会保険・雇用保険への加入手続きを行う

有期雇用労働者であっても、以下の要件を満たす場合は社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険への加入手続きが義務付けられています。

雇用保険の加入要件

以下2つの要件を満たすと加入義務が発生します


  • 31日以上引き続き雇用される見込みがある
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である

社会保険の加入要件

以下2つのうち、いずれかの要件を満たすと加入義務が発生します


  • 正社員の4分の3以上の労働時間・日数を満たす場合
  • 従業員51人以上の企業では、週20時間以上、月収8.8万円以上などの短時間労働者要件を満たす場合

社会保険については、加入手続きを怠ると遡って保険料を徴収されるだけでなく、労働者が失業保険や傷病手当金を受け取れないという事態を招き、会社への不信感につながります。加入条件に注意しながら、確実に手続きを行いましょう。

有期雇用契約の雇い止めの注意点

有期雇用契約を更新せず、期間満了で終了させる「雇止め」は、前述の「雇止め法理」により、一定の条件下では法的な規制を受けます 。トラブル防止のためにも、以下の手続きを必ず守りましょう。

30日前の予告義務

企業は、以下のいずれかの条件を満たす有期雇用労働者を雇止めする場合は、少なくとも契約期間満了日の30日前までに予告をしなければなりません。

  1. 有期労働契約が3回以上更新されている場合
  2. 1年を超えて継続勤務している場合

30日前の予告義務は、長期勤務した労働者が突然職を失うことを防ぎ、次の就職活動を行うための期間を確保するために設けられたルールです。期間の定めのある契約であっても、「明日で契約終了」と告げることは労働者の生活を脅かすため、避けなければなりません。

有期雇用労働者に雇止めを行う際は、対象者を見落とさないよう、契約満了日の管理を厳格に行い、余裕を持った通達を行う必要があります。

雇い止め理由の明示義務

「30日前の予告義務」の対象となる労働者が雇止め予告後(または雇止め後)に「雇止めの理由」について証明書を請求した場合、企業は遅滞なくその具体的な理由を記載した文書(証明書)を交付しなければなりません。

記載する理由は、単に「契約期間の満了」といった形式的なものだけでなく、「前回の契約更新時に今回の契約期間をもって更新しないことを合意したため」や「担当していたプロジェクトが終了したため」「事業縮小のため」など、契約更新の判断基準に基づいた、客観的で具体的な妥当性が求められます。

まとめ

有期雇用契約は、企業に柔軟な人員調整をもたらす一方で、「無期転換ルール」や「雇止め法理」「同一労働同一賃金」など、企業が遵守すべき多くの法的義務を伴います。

とくに中小企業の人事労務担当者にとっては、これらの法改正への対応や個々の労働者の契約期間、更新回数の正確な管理が労務管理上の重要な課題となります。

有期雇用のメリットを活かしつつ意図せぬ労働トラブルを回避するためにも、有期雇用のルールを正しく理解し、雇用契約書の整備や就業規則の見直し、適切な手続きの運用を徹底しましょう。

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よくある質問

有期雇用とは何ですか?

企業と労働者の間で、あらかじめ契約期間を定めて締結される労働契約のことです。契約社員、嘱託社員、パート、アルバイトなどが主な対象となります。

詳しくは、記事内「有期雇用とは」を参照ください。

有期雇用と無期雇用の違いとは何ですか?

有期雇用と無期雇用のもっとも大きな違いは「契約期間の定めの有無」です。有期雇用は契約期間が定められており、期間満了による「雇止め」が可能になります。一方、無期雇用は契約期間の定めがなく、原則として定年まで継続して雇用することが可能です。

詳しくは、記事内「無期雇用と有期雇用の違い」を参照ください。

無期雇用への転換ルールとは何ですか?

同一の企業で有期雇用契約が更新され、通算の契約期間が5年を超えた場合に労働者が申し込むことで契約期間の定めのない「無期雇用契約」に転換できる制度です。

企業は原則として無期転換の申込みを拒否できません。また、無期転換の申込権が発生するタイミングで、企業は労働者に申込権の存在と転換後の労働条件を明示する義務も負っています。

詳しくは、記事内「1.無期雇用への転換ルール」を参照ください。

参考文献

▶︎e-Gov法令検索「労働契約法
▶︎厚生労働省「「雇止め法理」の法定化(第19条)
▶︎厚生労働省「不合理な労働条件の禁止(第20条)
▶︎厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要
▶︎厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルール
▶厚生労働省「無期転換ルールについて

監修 北 光太郎

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。

北 光太郎

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