給与計算・労務管理の基礎知識

みなし残業(固定残業代)とは?よくあるトラブルまとめ

みなし残業は固定残業代ともいわれる制度で、毎月の固定給に加えて、決まった時間分の残業代を支給します。しかし、実質労働時間がみなし残業時間を上回っても、残業代が出ないとして、トラブルになるケースが少なくないのが実情です。みなし残業とは、どういった制度なのかを解説していきます。

みなし残業(固定残業代)の概要

みなし残業とは、固定残業ともいわれるもので、あらかじめ固定給の中に残業代が含まれている労働契約です。みなし残業を導入するには、就業規則や雇用契約書などの書面に記載して、従業員に周知を図る義務があります。

みなし残業の導入で、固定残業代を基本給に上乗せして支払う場合には、従業員の不利益には当たらないため、同意は不要です。
一方、これまでの基本給に固定残業代を含む形での変更では、実質的な賃金の低下となり従業員にとって不利益となるため、基本的に従業員の同意が必要になります。

また、みなし残業では、決められた残業時間に基づいた固定残業代を支払います。「月給30万円(45時間分の固定残業代8万円を含む)」、あるいは、「基本給22万円 固定残業代(45時間分)8万円」といったように、固定残業代と残業時間がわかる形で明記することが必要です。

みなし残業時間と実際の労働時間が異なる場合

固定残業代として支払っていても、毎月の業務量には変動があるケースが多く、みなし残業時間と実際の労働時間は異なることが想定されます。みなし残業を導入していても、タイムカード等による労働時間の管理は必要です。

みなし残業時間よりも実労働時間が少ない場合

固定残業代のもとになるみなし残業時間よりも、実労働時間が少ない場合でも、支給額を減らすことはできません。固定残業代は規定の額を支払うことになります。

みなし残業時間よりも実労働時間が多い場合

みなし残業時間よりも実労働時間の方が多い場合には、みなし残業として決められた時間を超えた分の残業代の支払いが必要です。固定残業代として支払っていても、実際の残業時間に即して、残業手当を支払う義務があります。

みなし残業時間の上限は?

みなし残業時間の上限は設けられていませんが、法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合に、労使間で締結する36協定の上限は1か月45時間、1年間で360時間です。そのため、36協定に抵触しないように、みなし残業時間は45時間以内に設定している企業が多くみられます。

みなし残業(固定残業代)でのよくあるトラブル

みなし残業による残業代の取り扱いでトラブルが多いケースを紹介します。

超過分の未払い

実労働時間がみなし残業時間を超えても、固定残業代を支払っているので残業代の支払いの義務がないという誤解から、超過分の残業代が未払いというトラブルは少なくありません。みなし残業時間を明記せずに、残業代込みとして給与を支給している企業もみられます。
また、固定残業代を支払うことで、労働時間の管理は不要という誤った認識から、残業時間を把握していないケースもあります。
しかし、みなし残業でも労働時間を管理して、超過分の残業代を支払わなければ違法となります。

休日・深夜の割増賃金の未適用

みなし残業で固定残業代を計算する際には、法定労働時間を超えた時間外労働の割増賃金は上乗せしていても、休日労働や深夜労働の割増賃金を考慮していないことで起こるトラブルも多く見られます。
時間外労働の割増賃金は2割5分ですが、休日労働では3割5分になります。
また、夜10時から朝5時までの深夜労働は2割5分の割増賃金となるため、時間外労働の深夜の勤務では、本来は5割の割増賃金です。

たとえば、所定労働時間が9時から18時で1時間の休憩を除く8時間の場合、23時まで残業すると、18時から22時までの4時間は2割5分の割増賃金が適用されます。一方、22時から23時までの1時間は5割の割増賃金となります。

例: 「固定給22万円 固定残業代(45時間分)7万400円」として表示している場合
固定給が22万円の場合、22日勤務、1日8時間労働とすると、時給は1,250円です。この時給の場合、時間外労働の割増賃金は1時間当たり1,562.5円(1,250円×1.25)となります。この賃金に45時間を乗せば、残業代が算出されるのです。

1,562.5円(割増賃金の時給)×45(時間)=7万321.5円
なお、100円未満は切り上げになりますので「固定残業代(45時間分)7万400円」として表示されます。この場合は、残業は時間外労働の割増賃金で計算されていても、深夜労働や休日労働の割増は考慮していないことになります。

このケースの場合、休日労働や深夜労働が発生した際には、手当を支給するよう対応が求められます。

48_1※図番化予定

引用元:厚生労働省

最低賃金を下回る

固定給が時給換算で最低賃金を上回り、時間外労働の割増賃金はさらに2割5分上乗せした水準以上でなければ、違法です。
たとえば、平成28年度の東京都の最低賃金は932円ですので、時間外労働では時給1,165円が最低水準になります。

しかし、悪質なケースでは、固定残業代が時間外労働の割増を考慮していないばかりか、基本給も無視した残業代の設定をし、最低賃金を下回っていることからトラブルとなっています。たとえば、「固定残業代3万円(45時間分)」と提示されたケースでは、時給666円ほどにしかなりません。

時間外労働の時間でも最低賃金を下回らないよう、適切に賃金を設定することが大切です。

まとめ

みなし残業は、多くの場合残業代の抑制や、残業代を計算する事務処理の軽減を目的に導入されます。しかし、超過分や深夜労働などの割増賃金を支払わず、違法性があるケースもみられますので、導入は慎重に判断し、導入後も正しく制度を運用できるようにしましょう。

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