監修 中村 桂太

在職証明書は、従業員や公務員が特定の企業や組織に在籍していることを証明する書類です。
本記事では、在職証明書の提出が必要になるケース、在職証明書のフォーマット・項目、作成する際の注意点について解説します。
目次
在職証明書とは
在職証明書とは、従業員が現在、特定の企業や組織に在籍し就労していることを証明する書類です。「就労証明書」「雇用証明書」「勤務証明書」などと呼ばれることもあります。
在職証明書は、従業員本人ではなく、その従業員を雇用している企業や組織が発行します。
企業等に在籍し働いていることを示す必要があるさまざまな場面の証明書類として用いられます。
在職証明書のほか、企業と個人の関係を証明する書類に「退職証明書」があります。これは、その企業をすでに退職したことを証明する書類です。在職証明書は「現在働いていること」を、退職証明書は「過去に働いており現在は退職していること」を証明します。
在職証明書が必要になるケース
在職証明書は公的・私的にかかわらず、さまざまな手続きで提出を求められることがあります。主に、個人の信用や状況を証明するときに提出を求められます。
具体的にどんな場面で在職証明書が必要になるかを説明します。
保育園・学童保育の入園・入所申請時
子の保育園・学童保育の入園・入所申請時に、保護者の在職証明書が求められるケースがあります。
2026年度から、子ども・子育て支援法に基づく新たな制度として、保護者が就労していない場合でも預け入れできる「こども誰でも通園制度」の導入が予定されています。しかし、この制度を除けば、保護者が就労していることは保育園や学童保育を利用するための基本条件となるのが一般的です。
入園・入所を希望する際には、保護者が現在働いていることを証明するために、在職証明書の提出が求められます。在職証明書は、自治体によっては「就労証明書」などの名称で扱っています。在職証明書で証明される勤務時間や日数が、入園の可否や保育時間の決定に関わる重要な情報となります。
転職活動時
転職活動に際し、転職先の企業から現在の勤務状況や職務経歴を確認するために、在職証明書の提出を求められることがあります。とくに、内定後や入社手続きの際に要求されることが多いといえます。
まれに、応募段階で在職していることの証明として求められるケースもあります。
住宅ローンや賃貸契約の審査時
住宅ローンや賃貸契約の審査時に、在職証明書の提出が求められることがあります。
金融機関で住宅ローンを組む際や、アパート・マンションの賃貸契約を結ぶ際は、申込者に安定した収入があるかどうかが重要な審査ポイントになります。申告した収入の裏付けとして、在職証明書や収入証明書の提出を求められることがあります。
公営住宅の入居申込時
公営住宅への入居を申し込む際に在職証明書が必要になることがあります。
この場合、収入基準など入居資格を満たしているかどうか確認するために、世帯全員の収入や就労状況を証明する書類の一部として提出が求められます。
配偶者の扶養に入る手続き時
配偶者の扶養に入る手続きの際、企業で働いている場合は在職証明書が必要になるケースがあります。これは、健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者の認定時に収入が基準内であることを証明するためです。
ただし、上記の確認は収入証明書や他の書類で代用できる場合も多いため、必ずしも在職証明書が必要なわけではありません。
外国人労働者等の在留資格(ビザ)申請・更新時
外国人の方が、就労に関する在留期間更新許可(就労ビザ更新)や配偶者ビザ(日本人の配偶者等)の申請を行う際に、出入国在留管理局から雇用されていることの証明として在職証明書の提出を求められます。
在職証明書にフォーマットはある?
在職証明書には、法律で定められた統一のフォーマットは存在しません。そのため、企業によって発行する在職証明書の様式が異なる場合があります。
しかし、在職証明書の提出先によっては、記載項目やフォーマットを指定していることもあります。保育園の入園申請で使用する場合は自治体の指定の様式を用いることが多く、金融機関や不動産会社なども、独自のフォーマットを持っていることがあります。
基本的に、提出先指定のフォーマットがある場合はそれを使用して在職証明書を作成します。従業員が提出先からフォーマットを受け取り、企業側に渡して作成を依頼するのが一般的です。提出先から特に指定がない場合は、会社独自のフォーマットを使用して問題ありません。
「在籍証明書の無料Wordテンプレート」から在籍証明書のテンプレートをダウンロードできるので、フォーマットを定めていない場合にはご活用ください。
在職証明書に書くべき項目
在職証明書が、証明書として有効性を保ち、提出先の要求を満たすためには、一般的に以下の項目を記載する必要があります。
在籍証明書に書くべき項目
- 証明書の発行年月日
- 証明を受ける従業員の氏名
- 従業員の生年月日
- 従業員の現住所
- 従業員の入社年月日
- 従業員の所属部署・役職
- 従業員の雇用形態
- 証明する会社(発行者)の情報
- 会社の社印または代表者印
ただし、これはあくまで主な例であり、提出先によって求められる項目は異なるため、必ず事前に確認しましょう。
在職証明書を作成する際の注意点
企業が従業員から在職証明書の作成を求められた場合の注意点を解説します。
使用目的を確認する
従業員から在職証明書の作成を依頼されたら、作成前に使用目的を確認しましょう。
前述のとおり、在職証明書は提出先によって求められる記載項目が異なります。従業員から発行依頼を受けたら、必ず「何に使うのか」「どこに提出するのか」「指定のフォーマットや記載必須項目はあるか」を確認してください。
確認せずに作成すると、情報が不足していて再発行の手間が発生する可能性があります。
正確な情報を記載する
在職証明書に記載する内容は、必ず、事実に即した正確な情報でなければなりません。
従業員の氏名、入社年月日、所属、役職、雇用形態などの基本情報はもちろん、勤務時間や業務内容などを記載する場合も、実際の状況と相違ないように注意深く確認する必要があります。
万が一、虚偽の内容を記載してしまうとトラブルに発展する可能性があり、会社としての信頼を損なうことになりかねません。
個人情報の取り扱いに気を付ける
在職証明書は、従業員の氏名、住所、生年月日、場合によっては給与額など、多くの個人情報を含む書類です。そのため取り扱いには十分注意しましょう。
作成、保管、受け渡しなどの各工程において、個人情報保護の観点から情報の漏洩や紛失がないよう、細心の注意を払って取り扱う必要があります。
まとめ
在職証明書とは、従業員が現在、特定の企業や組織に在籍し就労していることを証明する書類です。企業側は、従業員から依頼され在職証明書を作成する際は、正確に情報を記載しましょう。
また、情報漏えいが起きないように、取り扱いは慎重にしてください。
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よくある質問
在職証明書とは?
在職証明書とは、従業員が現在、特定の企業に在籍していることを証明するための書類です。
詳しくは記事内「在職証明書とは」をご覧ください。
在職証明書の書き方は?
在職証明書には法律で定められた統一のフォーマットがないため、提出先がフォーマット等を定めている場合はそれに沿って作成、提出先から指定がない場合は作成者である各企業の判断で作成します。
詳しくは記事内「在職証明書にフォーマットはある?」をご覧ください。
監修 中村 桂太
建設会社に長期在籍し法務、人事、労務を総括。特定社会保険労務士の資格を所持し、労務関連のコンサルタントを得意分野とする。 ISO9001及び内部統制等の企業内体制の構築に携わり、 仲介、任意売却、大規模開発等の不動産関連業務にも従事。1級土木施工管理技士として、土木建築全般のコンサルタント業務も行う。