キッチンカーでの開業は、低コストかつ自由な働き方を目指す人に向いています。
未経験でも、計画的に準備を進めれば開業可能ですが、必要な資格や許可があるなどの重要ポイントを見落とさないことが大切です。
本記事では、キッチンカーの開業をするメリット・デメリットのほか、開業に必要なものや、開業手順を解説します。
失敗しないためのポイントも解説するので、キッチンカーの開業を考える際の参考にしてください。
目次
- キッチンカーとは
- キッチンカーで開業するメリット
- コストを抑えやすい
- 移動して販売できる
- 客との距離が近い
- キッチンカーで開業するデメリット
- 作業スペースや積載量に限界がある
- 出店場所の確保や許可手続きに手間がかかる
- 車両の維持費や駐車場の確保が必要になる
- キッチンカーの開業に必要なもの
- 開業資金
- 資格
- 許可
- キッチンカーの開業手順
- STEP1. 事業計画を立てる
- STEP2. 許可・届出の申請をする
- STEP3. 営業開始の準備をする
- STEP4. 場所を確保する
- キッチンカーの開業で失敗しないためのポイント
- コンセプトを明確にする
- 保険に加入する
- 補助金を活用する
- 多めに開業資金を用意する
- まとめ
- よくある質問
- freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
キッチンカーとは
キッチンカーとは、調理設備を搭載した車両内で、飲食物の調理・販売をする移動式の飲食店で、「ケータリングカー」や「フードトラック」と呼ばれることもあります。
提供メニューは、クレープ・カレー・からあげ・コーヒーなど、一般的なメニューであれば飲食店営業の許可で販売が可能です。
イベント会場やオフィス街など多様な場所で販売でき、個人・法人問わず幅広い事業者が参入可能です。
ただし、車が店舗であるという特性上、実店舗とは異なるルールを守る必要があります。
キッチンカーで開業するメリット
キッチンカーのメリットは、主に以下の3つです。
強みを最大限に活かすため、キッチンカーで開業をする際はメリットを把握することが大切です。
コストを抑えやすい
キッチンカーは、実店舗をもつ飲食店と比べ、店舗にかかる費用がかからないため、初期費用とランニングコストを抑えやすいです。
また人件費も実店舗を構えるより少ない傾向があります。
一般的な飲食店の開業資金(目安)が平均900万〜1,200万円ほどかかるのに対し、キッチンカーは約300万〜800万円で開業できます。
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開業するには資金はいくらかかる? 業種別の開業資金内訳や調達方法を詳しく解説
移動して販売できる
キッチンカーは時間帯をふまえて人が集まる場所に出店できるため、売上アップのチャンスを狙いやすいです。
たとえば、平日のランチタイムはオフィス街 、夕方は住宅地やスーパーの駐車場 、週末はイベント会場など 、状況に応じて場所を選べます。
客との距離が近い
キッチンカーは、お客様と近い距離でコミュニケーションを取れるため、商品やサービスに対する声を得やすいです。
そのため直接感想が聞けたり、反応が見られたりといった情報収集ができ、売れ行きや注文の傾向を掴めます。それによって、季節やイベントの限定メニュー企画に活かせるでしょう。
また、お客様が好む味付けやトッピングの組み合わせをその場で確認できるので、一人ひとりにあわせたカスタマイズを提案しやすいです。
こうした営業スタイルによって、サービスの質やメニュー開発などの改善に活かせます。
キッチンカーで開業するデメリット
キッチンカーでの開業は手軽さなどのメリットがある一方で、店舗型とは異なる特有の難しさやデメリットも存在します。
キッチンカーで開業するデメリット
作業スペースや積載量に限界がある
キッチンカーは車内という限られたスペースで調理や接客を行うため、作業動線や機材の配置、食材の保管スペースなどが大きく制約されます。
実店舗と比べると、一度に積める食材や機材の量に限界があり、結果として1日に販売できる数量や提供できるメニューの種類が制限される可能性があります。
出店場所の確保や許可手続きに手間がかかる
キッチンカーはどこでも自由に営業できるわけではありません。
営業を行うためには、出店場所ごとに土地の所有者や管理会社、あるいはイベント主催者や地方自治体などの許可を得る必要があります。
車両の維持費や駐車場の確保が必要になる
店舗の家賃がかからない代わりに、車両に関するコストが発生します。
移動のためのガソリン代はもちろん、営業以外の時間にキッチンカーを停めておく駐車場の確保と料金が必要です。
また、車検、自動車税、保険料、メンテナンス費用といった車両維持費も継続的にかかる点に注意が必要です。
キッチンカーの開業に必要なもの
キッチンカーを開業するためには、開業資金・資格・許可が必要です。手続きの漏れやトラブルを防ぐため、どのような準備をすればよいのかを把握することが大切です。
開業資金
キッチンカーの開業資金は、300万〜800万円程度が目安です。主な内訳はキッチンカー(車両)の購入や厨房設備の導入費です。
DIYで車両を用意する場合、軽トラックなどの中古車両購入費(約50万〜100万円)と改造費用(約100万〜200万円)をあわせて、初期費用約150万〜300万円程度で開業できます。
キッチンカーをレンタルするなら、数十万円程度での開業も可能です。ただし、レンタルの場合は月額費用がかかる点に注意が必要です。
資格
キッチンカーの営業には、「食品衛生責任者の資格を証明する書類」が必要です。
- 食品衛生責任者手帳
- 食品衛生責任者養成講習会の修了証
- 調理師免許・栄養士免許など
上記の書類をもっていない場合、各都道府県で開催される食品衛生責任者養成講習会への参加が義務付けられています。
6時間ほどの講習を受けると、受講当日に資格証が交付されます。受講料は地域や開催形式によって異なりますが、約1万円程度です。
許可
キッチンカーの営業には、出店場所を管轄する都道府県の保健所の「飲食店営業許可」が必要です。飲食店営業許可は提供するメニューや設備が保健所の基準を満たすことで取得できます。
なお、営業許可は都道府県ごとに必要です。たとえば、東京都と千葉県で出店したい場合は、両方の保健所へ申請しなければいけません。地域によっては、別途手続きが必要なケースもあるため、事前に出典したい自治体に確認するようにしましょう。
ほかにも、出店する場所によっても別途許可や届出が必要なケースがあるので注意が必要です。たとえば、公園・商業施設・イベント会場などでは、施設管理者への許可申請や道路使用許可が求められる場合があります。
さらに、貯水槽使用水や井戸水を使用する場合、水質検査結果書や施設の構造・設備を示す図面が必要になるケースがある点も理解しておきましょう。
キッチンカーの開業手順
キッチンカーの開業手順は、以下のとおりです。
開業までにやるべきことを把握し、「いつまでに何をすべきか」を明確にすることが大切です。
STEP1. 事業計画を立てる
開業後に安定した経営を実現するためには、コンセプトや販売戦略などの事業計画を立てることが重要です。
コンセプト設計では「どのような顧客に」「どのような価値を提供するか」を明確にすることで、メニュー開発や車両デザイン、出店場所、価格設定などの経営判断に一貫性をもたせられます。
事業計画を立てる際は、以下の内容を数字や根拠を交えながら計画を練ると、想定外の問題が発生するリスクを抑えられます。
| 計画内容 | 詳細 |
|---|---|
| 販売戦略 | ・ターゲット ・提供メニュー ・価格帯 ・出店場所 ・客単価 |
| 収支計画 | ・月間売上予測 ・経費予測 ・資金調達方法 |
| 材料確保 | ・仕入先 ・原価率 |
事業計画書は経営の道筋を明確にし、開業後の方向性を定めるためにも作成しておきましょう。
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事業計画書とは?作成する目的や作り方について解説
STEP2. 許可・届出の申請をする
事業計画が固まった後は、営業許可の申請と各種届出をしましょう。
個人で開業する場合、事業開始から1ヶ月以内に所轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
販売場所や提供するメニューによって、必要な許可や届出が異なる点に要注意です。
たとえば、火気を使用する場合、消防署への届出が必要なケースもあります。
手続きに不安がある人は、画面の案内にそって手続きができる「freee許認可」がおすすめです。
STEP3. 営業開始の準備をする
営業開始の準備では、看板・のぼり・メニューボード・チラシなどの販促ツールをそろえ、店舗の存在や魅力をアピールすることが重要です。
また、会計時の利便性を高めるため、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済の導入も検討しておくとよいでしょう
さらに、仕入先の確保や初回発注の段取りを済ませておけば、円滑に営業をスタートできるでしょう。
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キャッシュレス決済を導入するメリットとは?導入方法や発生する費用を解説
STEP4. 場所を確保する
キッチンカーの売上は出店場所に左右されるため、出店候補地の人通りや競合状況などを調べ、ターゲットが集まる場所を選びましょう。
営業場所が決まったら、イベント主催者や施設管理者と交渉し、契約内容や出店料を確認したうえで必要な手続きをします。
キッチンカーの営業許可は、営業する地域を管轄する保健所ごとに発行されます。
そのため、営業許可を受けた保健所の管轄区域外で営業する場合、その区域を管轄する保健所の営業許可が必要になる点にも注意が必要です。
出店する場所ごとに、営業許可や登録に必要な情報を確認し、漏れなく申請手続きをしましょう。
キッチンカーの開業で失敗しないためのポイント
キッチンカーの開業で失敗しないためには、販売戦略の質を高めることとリスク管理が重要です。事業を継続させるため、売上低迷や資金不足といった「よくある失敗」を防ぐためのポイントを意識しましょう。
キッチンカーの開業で失敗しないためのポイント
コンセプトを明確にする
キッチンカー開業を成功させるには、競合と差別化し、顧客に選ばれるための「コンセプト」を作り込むことが重要です。
たとえば「地元の有機野菜だけを使った、健康志向のサラダボウル専門店」や「仕事帰りのビジネスパーソンを癒やす、本格的なエスプレッソと自家製スイーツの移動カフェ」など、お店のコンセプトを明確にしましょう。
「なぜそのメニューにこだわるのか」「事業への思い」などのブランドストーリーも構築すると、あなたの店舗の印象を、より強く印象付けやすくなります。
保険に加入する
キッチンカー開業の際には、自動車保険やPL保険(生産物賠償責任保険)への加入を検討しましょう。
キッチンカーは公道を走行するため、移動中の事故による対人・対物賠償のリスクがあります。そのため、自動車保険への加入は必須といえるでしょう。
また、車両が破損すると営業そのものができなくなるため、一般的な自動車保険に加え、自身の車両損害を補償する保険もあわせて検討しましょう。
さらに、PL保険への加入も重要です。 提供した飲食物が原因で、お客様が食中毒などを引き起こした場合、損害賠償を請求されるリスクがあります。PL保険(生産物賠償責任保険)は、こうした営業活動に伴う賠償リスクに備えるための保険です。
補助金を活用する
キッチンカーを開業する際、所定の条件を満たせば、「小規模事業者持続化補助金」や「中小企業新事業進出促進事業」などの補助金を活用できます。
制度によって公募期間や限度額、条件が異なるため、申請先や公式ホームページなどで正しい情報を確認しましょう。
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創業補助金とは?起業時に活用できる種類と利用方法について解説
多めに開業資金を用意する
キッチンカー開業時は、予備費を含む多めの資金を確保することが成功のポイントです。
具体的には、初期費用に加え、売上が安定するまでの3〜6ヶ月分の運転資金を用意しておくとよいでしょう。
車両の修理や設備故障など、緊急時に対応できる現金余力があると、想定外のトラブルが発生した際に対応しやすくなります。
なお、融資を検討している場合、創業者向けの融資なら、事業実績がなくても資金調達をしやすいです。
手続きや審査などが不安な方には、「freee創業融資サポート」がおすすめです。
まとめ
キッチンカーの開業には、コストを抑えやすい、移動販売ができるなどのメリットがある一方、実店舗に比べて販売できる量が少ないなどのデメリットもあります。
また開業時には証明書類や許可が必要であり、販売場所が複数にわたる場合、複数の保健所への申請が必要です。
キッチンカーの開業で失敗しないため、必要な準備をしたうえで、コンセプトの明確化・保険加入などのポイントもおさえておきましょう。
よくある質問
キッチンカーの開業費用はいくらですか?
車両本体や厨房設備費などを含め、300万〜800万円程度が目安です。キッチンカーをレンタルする場合や、設備をDIYする場合は、費用を抑えられる可能性があります。
キッチンカーを開業するのに必要な許可は?
キッチンカーの開業には、「飲食店営業許可」と「食品衛生責任者の資格を証明する書類」が必要です。
食品衛生責任者の資格を証明する書類は、以下のとおりです。
- 食品衛生責任者手帳
- 食品衛生責任者養成講習会の修了証
- 調理師免許・栄養士免許など
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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
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1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
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申請者の情報を入力します。
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今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。
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