自宅兼美容室は店舗の家賃がかからず、初期費用も抑えることができます。また、出勤時間がなく、いつでも自宅に戻ることができるため、ライフワークバランスの実現にもつながります。

このような利点を最大限に活かすには、自宅兼美容室の全体像を理解し、正しい手順で開業準備を進めていく必要があります。

本記事では、自宅兼美容室を開業するメリット・デメリットや、開業にかかる費用、注意点などを解説します。

• 自宅兼美容室のメリット
• 家賃などのランニングコストを抑えられる
• ライフスタイルに柔軟に対応できる
• 自分の好みに合わせて内装をデザインできる
• 大手サロンや従業員が複数在籍しているサロンと差別化を図れる
• 自宅兼美容室のデメリット
• 仕事と私生活が混同しやすい
• 立地によっては集客に影響が出る
• 自宅住所の公開による防犯リスクがある
• 自宅兼美容室を開業するためにかかる費用
• 内装・外装工事費
• 美容設備・備品費
• 広告宣伝費
• 水道光熱費
• 自宅兼美容室を開業するまでの流れ
• 自宅兼美容室の注意点
• 住宅ローンと事業ローンを一緒にしない
• 保健所の基準を満たすサロンを設計する
• 事業ローン1年分などある程度の運転資金を用意しておく
• よくある質問
• まとめ
• freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成

自宅兼美容室の主なメリットは以下のとおりです。

美容室の店舗を開業するとなると、事業所用の物件を借りなければなりません。初期費用や毎月の家賃が発生し、固定費の負担が大きくなります。路面店や駅チカなど、立地が良ければ家賃が高い傾向にあり、条件に合う物件を探すのにも手間と時間がかかります。

自宅兼美容院として自宅の一部を美容院として開業すれば、新たに家賃が発生することがないため、ランニングコストを抑えることができます。

家賃や光熱費の負担を最小限にできる分、店舗の設備や使用する薬剤などに費用をかけることができ、顧客側の満足度向上にもつながります。

自宅兼美容室であれば通勤時間がかかりません。仕事とプライベートの時間を調整しやすくなり、子育てや介護、家事など、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。

また、美容師の仕事は長時間労働になりがちですが、自宅が職場であれば、予約の合間に家事をしたり、子供の帰宅を迎えたりと、すきま時間を有効活用できます。

自宅兼美容室は、ライフワークバランスを重視した人に向いている開業方法といえます。

賃貸物件の場合、壁紙の変更や大規模な改装が制限されることがほとんどです。また、自分好みの内装にできたとしても、貸主から「スケルトン状態に戻してほしい」といわれてしまえば、膨大な原状回復のコストがかかります。

しかし自宅兼美容室であれば、新築やリフォームの段階から、間取り・壁材・証明・外観など、すべて自由に設計できます。たとえば、木の温かみを感じられるウッディな内装にしたり、子どもが好むような遊び心を感じられるデザインにしたり、アイデアに制限がありません。

そのような内装デザインが、「また来たい」「継続して利用したい」と感じてもらえるようなきっかけとなることもあります。安定した経営にもつながるため、自由に内装できるのは大きな利点でしょう。

「1日3名様限定」のように、大手のサロンや複数の従業員が在籍しているサロンと大きな差別化も図れます。そのようなサロンにはない特別な顧客体験を提供し、熱心なファンを獲得できるのは、美容室の経営において大きなメリットです。

たとえば、一般的な完全店舗型サロンの場合は、物件や立地、会社のルールなどの制約もあり自由にブランドやメニューを設計できません。家賃などのコストもあるため、特定の条件下のメニューやコンセプトを打ち出すのも難しい傾向です。

一方、自宅兼美容室であればそういった制約がありません。

都会から20分離れた場所にある「自分だけの隠れ家サロン」や、「1日5名限定のマンツーマンスタイリング」「常連客が気軽に立ち寄れるカフェのようなサロン」など、自宅兼美容室ならではの強みをそのままコンセプトに落とし込むことができます。

また予約が確定したお客様にのみ住所を伝えるクローズドな運営方法で、お客様の安心感と特別感を高める手法もあります。落ち着いた環境で施術を受けたい、ほかの客と顔を合わせたくない、というニーズをもつお客様にとって、あなたのサロンは唯一無二の存在となるでしょう。

自宅兼美容室を開業する際のデメリットや注意点は以下のとおりです。

職場と自宅の物理的な距離がないため、オンとオフの切り替えが難しく、仕事とプライベートの境界線が曖昧になりやすいデメリットがあります。

通勤があれば、プライベートモードから仕事モードに気分を切り替えてくれます。その過程がない自宅兼美容室では、休日でもお客様からの急な予約依頼に対応しなければいけません。

また、逆に営業時間中に家族の用事や家事が気になって仕事に集中できないなど、オンオフの区別がつきにくくなります。

たとえば、施術中に2階から子どもの足音が聞こえてしまい、サロンの特別な雰囲気を損なってしまう可能性も考えられます。

このような事態を防ぐためにも、自宅を設計する時点で防音対策やプライベートと仕事を切り替えられるような住居設計をするようにしましょう。

駅前や繁華街の店舗とは異なり、住宅街にある自宅サロンは偶然通りかかった見込み顧客の認知獲得・来店が期待できません。

そのため、広告などのマーケティングに力を入れたり、既存顧客や知人から紹介してもらったりなど、集客を工夫していく必要があります。また駅から美容室まで遠い、道がわかりにくい、駐車スペースがないといった場合、それらの要素が集客上のデメリットになる可能性もあります。

他店に勝る内装や価格設計、メニューを作っても、店舗の存在を認知してもらえなければ予約にはつながりません。自宅兼美容室だけにしか出せない価値を打ち出すことはもちろん、Googleマップ上にお店を登録したり、SNSで積極的に発信したりなど、認知を獲得していく取り組みを実施しましょう。

インターネット上に自宅兼美容室の住所を公開することにより、少なからず防犯上のリスクがあります。

営業時間外に飛び込み営業の訪問や、万が一の顧客トラブルが起きた際に自宅に押しかけられるといったリスクが生じます。また、高価な美容機器や売上を狙った空き巣など、犯罪のターゲットになる可能性もゼロではありません。

そのため住所の公開範囲を管理し、防犯対策を徹底することが解決策です。ホームページやSNSには詳細な住所は記載せず、「予約が確定したお客様にのみ、住所をお知らせします」という形を取るなどです。

カメラ付きインターホンや防犯カメラ、サロンの出入り口と住居の玄関を分けるといった間取りの工夫も有効な方法といえます。

お客様と家族、双方の安心と安全を確保するための準備は、開業前にかならず実施しましょう。

自宅兼美容室でも、基本的にかかる費用は店舗美容室と変わりません。発生する費用の内訳は大きく以下の4つに分られます。

内装・外装工事費は、開業資金の内訳で大きな割合を占めます。新築かリフォームか、また設計のデザインによって費用は大きく異なりますが、一般的に数百万単位の資金が必要になると考えましょう。

たとえば、既存の自宅を美容室にする場合、一部取り壊すなどして美容室を作る必要があります。その際に解体費（一坪あたり4〜7万円）や運搬費などの費用もかかります。受付カウンターや壁紙などをこだわる場合も、100万円以上の費用がかかると考えてよいでしょう。

ほかにも、以下のような工事が必要になります。

正確に費用を把握するため、かならず複数の施工業者から相見積もりを取りましょう。また、自宅兼美容室の工事の実績が豊富な業者に相談するのも効果的です。

シャンプー台やスタイリングチェア、セットミラーといった設備は、美容室の運営に欠かせません。また、そのほかにも決済端末や冷蔵庫、洗濯機、タオルなどの細かい備品も揃える必要があります。

12坪を想定してセット、シャンプーそれぞれ2ブースずつ設置することを想定しただけでも、おおよそ350万円ほどの費用がかかります。

美容設備・備品は揃えるものが多く、計画なしに購入してしまうと予算を圧迫します。新品以外に、中古やリースを活用するなどして、無理のない設備投資をするようにしましょう。

お店を認知してもらうために必要となるのが広告宣伝費です。Webサイト制作やチラシ作成、Googleに出稿する広告などが広告宣伝費に該当します。

見込み顧客がチラシや紹介などで店舗を認知し、より詳細な情報（メニューやルート）を知ってもらうために、Googleマップに表示されるようにしたり、ホームページを作成したりなどの準備をしておくとよいでしょう。

また昨今はInstagramやTikTokといったSNSの普及により、無料で店舗の認知拡大が可能です。「店舗のデザインに大きくお金をかけたい」といったように、あまり広告宣伝費を捻出できない場合は、SNSの活用も考えてみましょう。

水道光熱費には、毎月5万円ほどかかると想定しておきましょう。

美容室を経営する以上、シャンプー施術には大量のお湯を使いますし、ドライヤーやパーマ機器、エアコンなど、消費電力の大きい設備を長時間使用するためです。

くわえて生活にかかる水道光熱費もかかることを想定すると、5万円+1〜2万円のランニングコストが必要です。

原則としてテナントを借りて美容室を経営する場合も、自宅兼美容室にする場合も、手順は一緒です。

まずは経営を失敗しないために、事業計画書を作成する必要があります。顧客単価をいくらで設定するのか、いつまでに投資回収できるのか、ローン返済の期間や利益率など、事業運営に関わる数字の面を具体的に計算して可視化します。

その後、住宅や事業ローンの相談・審査を実施し、通過したら新築で家を建てるor既存の自宅を工事するといった段階に取り掛かっていくイメージです。

自宅兼美容室が成功するかどうかは、事業計画書の段階で決まっているといっても過言ではありません。まずはローンの審査が確実に通る、この計画であれば儲かるというレベルまで事業計画の精度を上げるところからはじめましょう。

自宅兼美容室するにはいくつか注意点を理解しておく必要があります。

特に保健所に関することは法的に関わる部分です。メリットだけに目を向けず、注意点もしっかり理解してから開業準備に入りましょう。

自宅兼美容室を実現するのにローンは欠かせない要素でしょう。数千万円単位の資金が必要となるため、ローンを組まずに開業を想定している人はほとんどいないはずです。

このとき、住宅ローンと事業ローンを一緒にしないようにすることがひとつの注意点です。住宅ローンはあくまで住宅に関することのみに適用されるローンで、店舗の内装や外装には適用されません。

そのため、事業に関する部分は事業ローンで、住宅に関わる部分は住宅ローンでローンを組むことが大切です。これらをひとりで進めようとするのは大変困難なので、かならず金融機関のローンの担当者と相談して進めるようにしましょう。

美容室を開業するには、保健所に開業届を提出し立入検査を受けクリアする必要があります。これは事業者として公衆衛生を維持し、顧客の安全を確保するためのルールです。

これから美容室のオーナーとして活動していく以上、保健所が定めるルールは必ず守るようにしましょう。自宅兼美容室を立ち上げてから審査基準を満たしていなかったというトラブルを防ぐためにも、設備工事を計画する段階から保健所の基準を満たすサロンを設計することがおすすめです。

緻密な事業計画書を作成し、開業まで順調に進めても、すぐに売上が安定するとは限りません。何が起きてもいいように、内装工事費や設備費といった初期投資とは別に、最低でも6ヶ月分、理想は1年分の資金を用意するようにしましょう。

手元の現金が底をついてしまうと、事業を続けること自体が困難です。資金ショートは、廃業の大きな原因のひとつです。しかしランニングコスト1年分など安定した資金があれば、たとえ初期段階に集客が困ったとしても、いくらでも立て直せます。

この運転資金も、事業計画書に盛り込んだうえで、事業ローンの一部として借り入れを検討しましょう。開業後の資金繰りで焦らないためにも、「売上はすぐには立たない」という前提に立ち、十分な備えをすることが、精神的な余裕を生み、長期的なサロン経営の成功につながります。

自宅兼美容室に違法性はありませんが、知らず知らずのうちに法律に抵触しているケースがあります。

たとえば、設備や環境整備などが不十分な場合です。保健所関連もそのひとつといえるでしょう。

後々のトラブルにならないためにも、事前に弁護士や保健所に相談するなどして、ルールを遵守したうえで開業を進めましょう。

美容室専用の物件を契約しない分、利益率は上がり儲かりやすいといえます。また自宅を別で借りる必要もないため、手元に残るお金は増えるといえるでしょう。

ただし集客面に不利なポイントもあります。自宅兼美容室で儲けるためには、ターゲットに認知されて安定して集客できる仕組みを構築するようにしましょう。

お客様を招き入れるという性質上、不特定多数の人に自宅の場所を知られることになります。自身とご家族のプライバシーと安全を守るための防犯対策は、開業前にかならず講じる必要があります。

特に自宅が職場になると、高価な美容設備・備品を狙った空き巣などの犯罪リスクが、一般的な住宅よりも高まる可能性があります。

監視カメラをつける、ドアのロックを徹底する、不用意に住所を公開しないなどの防犯対策をするようにしましょう。

自宅兼美容室は通勤時間がなく、ライフスタイルに合わせた営業ができます。店舗の多い美容室で安定した売上を出すためには、入念な準備が必要です。

自宅の立地に合わせたコンセプトやターゲット層に沿って店舗の雰囲気作りや施術メニューを検討しましょう。

なお、個人事業主で自宅兼美容室を開業する場合には、所轄の税務署に開業届の提出が必要です。freee開業を活用すれば、開業届を無料で作成できます。オンライン上で作成から提出までを完結できます。ぜひご活用ください。

個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。

そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。

1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。

2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。

3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。

4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。

5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。

freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。

事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。

次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。

今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。

最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー（個人番号）の記載をしましょう。

郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。

いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。

しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。

また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。