監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

貸借対照表は、個人事業主でも青色申告で一定額の特別控除を受ける際に提出が必要です。本記事では貸借対照表の見方や作成方法などを解説します。
青色申告をする個人事業主にとって、貸借対照表は重要な書類のひとつです。また、確定申告以外にも事業の健全性の評価にも使用される書類であり、作成方法だけでなく見方や事業運営への活用法の理解も欠かせません。
最後に債務超過だとどうなるかも紹介するため、より理解を深められるでしょう。
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目次
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貸借対照表は個人事業主の特別控除に必要な書類
貸借対照表は、個人事業主が青色申告特別控除を受けるために必要な書類のひとつです。貸借対照表は、事業の資産や負債を一目で確認できるため、個人事業主の財務状況を正確に把握する手段となります。
また、55万円以上の青色申告特別控除を受ける場合、正確な帳簿を基にした貸借対照表の作成と、確定申告書への添付が必要です。
以下では、貸借対照表の基本と青色申告特別控除を解説します。
貸借対照表
貸借対照表は、企業や個人事業主が特定の時点での財務状況を示す財務諸表のひとつです。「Balance Sheet」(略してB/S)とも呼ばれ、資産、負債、そして純資産の3つの要素で構成されています。
貸借対照表は、資産と負債、純資産のバランスを示し、事業の健全性を評価するための指標として機能し、経営判断に役立てることが可能です。
青色申告特別控除
青色申告特別控除は、青色申告を行う個人事業主や不動産所得者が、一定の要件を満たした場合に適用される所得控除制度です。
青色申告特別控除は、事業所得や不動産所得、山林所得のある個人事業主などを対象としており、最大で65万円を所得から控除できます。
なお、ほかにも控除額として55万円や10万円が設定されており、要件によって適用額が異なるため、適用条件の把握が必要です。
特に65万円の控除を受けるためには、複式簿記による正確な帳簿を作成し、期限内に青色申告を行う必要があります。
適用条件 | 青色申告特別控除額 | ||
---|---|---|---|
65万円 | 55万円 | 10万円 | |
複式簿記 | ◯ | ◯ | × (簡易な記帳) |
貸借対照表と損益計算書の提出 | ◯ | ◯ | △ (損益計算書のみ) |
期限内の申告 | ◯ | ◯ | - |
e-Taxでの申告 または電子帳簿保存 | ◯ | - | - |
青色申告特別控除を利用すれば、所得税の負担を軽減し、事業の資金繰りに余裕を持たせることができます。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
貸借対照表の3要素
貸借対照表は、資産、負債、純資産の3要素で構成されており、これらのバランスの確認によって企業や個人事業主の財務状況を評価します。

資産
資産は、経済的価値を持つ現金、預金、在庫、設備、土地、建物などを指し、企業が活動を続けるために必要なリソースのことです。
資産は通常、流動資産と固定資産に分類され、短期間で現金化できるものが流動資産、長期的に使用するものが固定資産に該当します。事業活動を円滑に進めるためには、資産の適切な管理が必要です。
負債
負債は、企業が返済や支払いを義務付けられている債務などを指し、借入金や未払金、買掛金などが該当します。
負債が多い企業は、借金や未払いのコストが多く、将来的なキャッシュフローに影響を与える可能性があります。負債は、長期負債と短期負債に分けられ、短期負債は1年以内に返済する必要がある債務、長期負債は1年を超える期間にわたるものです。
純資産
純資産は、資産から負債を差し引いた残りの部分で、企業の財務的な健全性を表す重要な指標です。
純資産には資本金や利益剰余金(個人事業主の場合、これらを全て合わせて「元入金」という勘定科目を使います)が含まれ、株主や事業主の持ち分を反映しており、純資産が増加している企業は事業が順調であり、財務的に安定していると判断されます。
貸借対照表の作成方法
貸借対照表は、期末時点における資産、負債、純資産それぞれの勘定項目の残高をすべて抜き出して、1枚の表にまとめたものです。
各勘定科目の合計金額がマイナスとなっているようであれば、借方と貸方を逆にしてしまうなど、仕訳時の誤りの可能性が考えられます。間違いの原因だと考えられる勘定科目が関連する仕訳について、その内容をさかのぼって検証する必要があります。
作成方法で不明な点があれば、国税庁の「青色申告決算書(一般用)の書き方」などを参考にしてください。
日々の取引を複式簿記で記す帳
前述したとおり、期末に貸借対照表を作るには、大前提として、正規の簿記の方式「複式簿記」で日々の取引を記録しておく必要があります。
複式簿記は、取引を「借方」と「貸方」という2つの面からとらえ、左右に分けて並列表記していく方法です。
たとえば、「3,000円のプリンターインクを購入した」なら、「消耗品費が3,000円増えた(費用が増加した)」「現金が3,000円減った(資産が減少した)」と考えて、ルールに則って次のように表します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
5月10日 | 消耗品費 3,000円 | 現金 3,000円 | プリンターインク |
この際に仕訳に使われる「消耗品費」や「現金」などを「勘定項目」といいます。勘定項目の数は何十種類にも及びますが、大きく「資産、負債、純資産」に分類されます。
貸借対照表の作成には、まず、すべての取引を適切な勘定項目を使って仕訳して、しっかり記録しておくことが必要です。
資産、負債、資本にあたる勘定項目は、それぞれ次のようなものがあります。
資産、負債、資本にあたる勘定項目
- 資産:現金、当座預金、建物、商品など
- 負債:買掛金、借入金、支払手形など
- 純資産:資本金、利益剰余金など(個人事業主の場合は「元入金」)
提出様式への転記
当期末時点における貸借対照表が完成したら、確定申告時に提出する様式(「青色申告決算書」4ページ目の貸借対照表)の期末欄に、各勘定科目の金額を転記していきます。
また、同様に前期末時点の貸借対照表を参照しながら、期首欄の金額についても記入すれば、確定申告の際に提出する貸借対照表は作成完了です。

個人事業主が貸借対照表で確認したいポイント
個人事業主にとって、貸借対照表は事業の財務状況を把握し、今後の経営判断に役立てる重要なツールです。
特に、自己資本比率や流動比率などの指標を確認することで、事業の安定性や資金繰りの健全性を評価できます。
自己資本比率
自己資本比率は、事業の安定性を評価するための指標です。自己資本が総資産に占める割合を示し、借入金に頼らずに事業がどれだけ自社の資金で運営できているかを判断します。
自己資本比率が高いほど、事業が自己資金で安定して運営されており、財務の健全性が高いと評価されます。
特に、借入依存度が低ければ借金返済のリスクが少なく、経営が外部の資金調達に依存しない形で進められるため、資金調達に伴うリスクの軽減が可能です。
自己資本比率を高く保つと、事業の長期的な成長と安定に繋がるため、個人事業主は自己比率を確認し、健全な財務構造の維持に努めましょう。
出典:財務省「自己資本比率」
流動比率
流動比率は、短期支払い能力を評価するための重要な指標です。流動資産が流動負債に対してどの程度の割合を占めているかを示し、個人事業主が短期的に負債を支払う能力を評価するのに役立ちます。
流動比率が高いほど、短期的な負債をカバーするための資産が多く、資金繰りの安定性が高いと判断されます。逆に、流動比率が低い場合、短期的な支払いに支障をきたし、最悪の場合、倒産リスクが高まるでしょう。
一般的に、流動比率は200%以上が望ましいとされますが、業種や事業の状況により適切な比率は異なります。個人事業主は流動比率を常に把握し、資金繰りの健全性の維持が必要です。
出典:財務省「流動比率」
債務超過だとどうなる?
債務超過とは、負債が資産を上回り、「純資産」の部分がマイナスになっている状態です。
資産をすべて売却しても負債を完済できないため、赤字が続くと資金繰りが非常に厳しくなり、日常的な支払いや運転資金の確保が困難となる恐れがあります。
債務超過であっても、青色申告特別控除などの制度を利用して、最大65万円の控除を受けることは可能です。
しかし、控除を受けても、根本的な財務状況が改善されない限り、事業の継続は困難になる可能性があります。
赤字の場合、コスト削減や資金調達の見直し、さらには資産売却の検討も避けられません。事業が黒字に転じるまでの時間がかかると、最終的には事業の廃業や倒産のリスクが高まります。
そのため、債務超過になった段階で、早急に経営戦略を再検討し、財務状況の健全化を図ることが不可欠です。
まとめ
貸借対照表は、個人事業主が青色申告特別控除(最大65万円)を受けるために必要な書類です。
また、事業の資産、負債、純資産を一目で確認でき、財務状況を把握と経営判断に役立てることができます。
貸借対照表の作成には、日々の複式簿記記帳と正確な勘定科目の整理が必要なので、確定申告に向けて余裕を持った作成を心がけましょう。
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
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よくある質問
貸借対照表は個人事業主にも必要?
個人事業主でも貸借対照表が必要で、青色申告特別控除で最大65万円の控除を受けるためには、貸借対照表の作成と提出が求められます。
貸借対照表が必要なのかを詳しく知りたい方は「貸借対照表は個人事業主の特別控除に必要な書類」をご覧ください。
貸借対照表の見方と書き方は?
貸借対照表は資産、負債、純資産の3つで構成されます。資産は左側に、負債と純資産は右側に配置します。
日々の取引を複式簿記で記帳し、資産と負債・純資産のバランスが一致するように注意しましょう。
貸借対照表の見方や書き方を詳しく知りたい方は「貸借対照表の作成方法」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
