
個人事業主は、毎年2月16日から3月15日の間に確定申告をする必要があります。この確定申告は基本的に所得税を算出して申告・納税するものです。個人事業主には所得税のほかにも、住民税・消費税・個人事業税の納税義務があります。
所得税と住民税はすべての個人事業主に納税の義務がありますが、消費税と個人事業税は業種や売上高によって対象範囲が異なります。
本記事では、個人事業主にかかる税金の種類やそれぞれの計算方法を例題とあわせて解説します。
目次
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個人事業主が納める税金の種類と納税時期
個人事業主が納税を義務付けられている税金は基本的に以下の4つです。
個人事業主にかかる税金の種類
- 所得税および復興特別所得税
- 消費税
- 住民税
- 個人事業税
これらの税金の納付時期を1年間のタイムラインにまとめると、以下の図のようになります。また、年金等の社会保険料の支払いタイミングや各種申告手続き等もあわせてご確認ください。

この記事では、税金の種類ごとに概要や計算方法を掘り下げて解説します。確定申告の期間や手続き方法の詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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所得税および復興特別所得税
所得税とは、毎年1月1日から12月31日までの間に得た収入から経費を引いた「所得」に対して課される国税です。
所得には税法上、事業所得のほか不動産所得や譲渡所得、雑所得などがあり、全10種類に分類されています。
所得税の金額は、すべての種類の所得を足したあと、医療費など所得控除分を引いた額に、税法で定められている税率を掛け、控除額を差し引くことで求められます。

納税する「所得税」の算出方法
(1)「課税所得」を算出する
・課税所得 = 収入 - 経費 - 所得控除
(2)所得税を算出する
・所得税額 = 課税所得 × 税率- 控除額
所得税率の速算表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
個人事業主の所得税は累進課税となっており、表のように所得が増えれば増えるほど税率も高くなります。
法人に比べて必要経費として認められる幅が狭いため、高収入の場合は所得の半分近くが税金として徴収されてしまうこともあります。
また、平成2010年12月に東日本大震災からの復興対策を実施するための財源確保を目的として、「復興特別所得税」が創設されました。2013年分から2037年分の所得税には、復興特別所得税分を合わせて納付することが義務付けられています。
復興特別所得税額は、「基準所得税額」× 2.1%で算出します。
※基準所得税額とは、所得税額から配当控除やローン控除等の差し引かれる金額を差し引いた後の額のことをいいます。
例:課税所得500万円の場合の所得税と復興特別所得税
所得税:
5,000,000 × 20% - 427,500 = 572,500(円)
復興特別所得税:
572,500 × 2.1% = 12,022(円)
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所得とは? 収入との違いや種類別の計算方法を解説
消費税
消費税は商品やサービスの消費に対して課される税金です。
個人事業主は、売り上げ時に買い手から受け取った消費税分から、自分が仕入れや経費で支払った消費税分を引いた差額を、原則翌年の3月31日までに申告・納税します。
消費税額の算出方法
消費税 = 課税売上高(税抜)× 税率 - 課税仕入高(税抜)× 税率
2022年12月現時点での消費税率は以下のとおりです。
- 標準税率:7.8%(国税)2.2%(地方税)の計10%
- 軽減税率:6.24%(国税)1.76%(地方税)の計8%
消費税納税が免除になるケース
個人事業主には事業者免税点制度が設けられています。これは前々年における課税対象売上高が1,000万円以下であれば、その年の消費税納税が免除される制度です。
つまり、課税対象売上高が1,000万円以上となった事業年度から起算し、2年後に初めて納税義務が発生します。
しかし、前々年の課税対象売上高が1,000万円以下でも、その翌年(つまり、前年)の1月1日から6月30日までの特定期間に課税売上高が1,000万円を超えた場合は、課税事業者となります。
また、前々年の課税売上が1,000万円以下でも、前年の特定期間(1月1日~6月30日)の課税売上が1,000万円を超える場合は納税しなければなりません。

なお、課税期間ごとの受け取った消費税額よりも支払った消費税額のほうが多い場合には、消費税の還付を受けることができる場合もあります。
インボイス制度導入後は課税事業者になったほうがいい?
2023年10月1日からインボイス制度が導入されます。インボイス制度とは、事業者の間でやりとりされる「請求書の発行方式」と消費税の「仕入税額控除」に関する新たな制度です。
インボイス制度導入後に課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、原則「適格請求書の保存」が必須となります。この適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録されている課税事業者のみで、免税事業者は適格請求書を発行できません。

そのため、免税事業者との取引にかかった消費税は仕入税額控除の対象外となります。課税事業者である仕入側からすると、免税事業者に支払った消費税分、損をすることになってしまうため、免税事業者との取引を避ける恐れがあります。
インボイス制度の導入後も変わらず取引を続けたいのであれば、免税事業者は課税事業者になることを検討する必要があります。
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消費税の仕入税額控除とは?基礎知識とインボイス制度での変更点をわかりやすく解説
住民税
住民税は、毎年1月1日時点に住所事業所を置いている都道府県及び市区町村に納める税金です。毎年、確定申告後に市区町村から住民税課税決定通知書が送られてくるので、一括または年4回に分けて納税を行います。
住民税は「均等割」と「所得割」で構成されます。
均等割
均等割とは、納税者の所得に関係なく、全員に平等に課税される税金です。
2022年現在の均等割額は以下のとおりです。2014年度から2023年度の間は、復興特別税の500円が都道府県民税・市区町村民税それぞれに加算されます。
均等割額
- 都道府県民税に該当する分:一律 1,500円
- 市町村民税に該当する分:一律 3,500円
所得割
所得割とは、所得に応じて課される税金です。
前年の所得金額から所得控除分を引き、標準税率10%を乗じたあと、税額控除額を引いた金額となります。税率は、都道府県民税と市区町村民税合わせて10%が標準として定められています。
所得割の算出方法
所得割 =(事業所得金額-所得控除)× 税率-税額控除
例題として、東京都在住、所得金額500万円(所得控除50万円)の場合にかかる住民税を算出してみましょう。
- 所得割:(5,000,000-500,000)×10%=450,000(円)
- 均等割:1,500 + 3,500=5,000(円)
住民税の合計額:455,000(円)
個人事業税
個人事業税とは、法律で定められた業種の事業を行っている場合に課される税金です。事業税のかかる業種は都道府県ごとに決められており、事業や地域によって税率は異なるので、各自治体のホームページなどで確認しましょう。
東京都の場合に個人事業税がかかる業種、税率は以下のとおりです。
区分 | 税率 | 事業の種類 | |||
第1種事業 (37業種) | 5% | 物品販売業 | 運送取扱業 | 料理店業 | 遊覧所業 |
保険業 | 船舶定係場業 | 飲食店業 | 商品取引業 | ||
金銭貸付業 | 倉庫業 | 周旋業 | 不動産売買業 | ||
物品貸付業 | 駐車場業 | 代理業 | 広告業 | ||
不動産貸付業 | 請負業 | 仲立業 | 興信所業 | ||
製造業 | 印刷業 | 問屋業 | 案内業 | ||
電気供給業 | 出版業 | 両替業 | 冠婚葬祭業 | ||
土石採取業 | 写真業 | 公衆浴場業 (むし風呂等) | - | ||
電気通信事業 | 席貸業 | 演劇興行業 | - | ||
運送業 | 旅館業 | 遊技場業 | - | ||
第2種事業 (3業種) | 4% | 畜産業 | 水産業 | 薪炭製造業 | - |
第3種事業 (30業種) | 5% | 医業 | 公証人業 | 設計監督者業 | 公衆浴場業 (銭湯) |
歯科医業 | 弁理士業 | 不動産鑑定業 | 歯科衛生士業 | ||
薬剤師業 | 税理士業 | デザイン業 | 歯科技工士業 | ||
獣医業 | 公認会計士業 | 諸芸師匠業 | 測量士業 | ||
弁護士業 | 計理士業 | 理容業 | 土地家屋調査士業 | ||
司法書士業 | 社会保険労務士業 | 美容業 | 海事代理士業 | ||
行政書士業 | コンサルタント業 | クリーニング業 | 印刷製版業 | ||
3% | あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業 | 装蹄師業 |
納税額は所得に基づいて決定されます。確定申告書を税務署に提出すれば、個人事業税についても申告したことになるため、改めて申告を行う必要はありません。
確定申告終了後、住所を管轄する税務署から、納税額の通知と納付書が送られてきます。
個人事業税の算出方法
事業税額 =(収入金額-必要経費-各種控除)× 税率
※家族従業員(専従者)がいる場合は専従者給与分も差し引くことができます。
また、事業税は年間一律290万円の事業主控除があるので、年間の事業所得が290万円以下の場合は事業税を納付する必要はありません。納税した場合も、個人事業税は経費として計上することができるので、忘れずに計上しましょう。
例:第1種事業(税率5%)、所得金額500万円(青色申告特別控除65万円)の場合にかかる個人事業税
(5,000,000+650,000-2,900,000)×5%=137,500(円)
租税公課として認められる税金とは?
租税公課として認められる税金は経費として計上することができます。正しく計上することで節税につながります。
租税公課とは、国や地方自治体に納める税金である「租税」と、国や地方公共団体から課せられる交付金や会費である「公課」を合わせた勘定科目です。
租税公課として認められる税金
租税公課として認められる代表的な税金は以下のとおりです。
分類 | 料金の種類 | 税金の概要 |
租税 | 消費税および地方消費税 | 商品やサービスの消費に対して課される税金 |
租税 | 個人事業税 | 法律で定められた業種の事業を行っている場合に課される税金 |
租税 | 固定資産税 | 土地や建物などの固定資産に課せられる税金 |
租税 | 自動車関連税 | 事業用として使用している車にかかる税金 |
租税 | 印紙税 | 契約書や領収書といった課税文書に賦課される税金 |
租税 | 登録免許税 | 土地や建物などの権利に関するものや、特許や鉱業権などの登録で権利が発生するもの、船舶や自動車など業務で使用する際に登録が必要な税金 |
公課 | 商工会・協同組合などの会費、または組合費 | |
公課 | 印鑑証明書や住民票の発行にかかる手数料 | |
公課 | その他公共サービスにかかる手数料 |
上記で説明した項目以外で租税公課として計上できるものには、不動産取得税や地価税、特別土地保有税があります。
租税公課として認められない税金
租税公課として認められない税金は以下のとおりです。
- 所得税および復興特別所得税
- 住民税
- 加算税や延滞税などの賦課された税金
- 罰金や交通反則金
- 国民健康保険税などの保険料
- 相続税
2023年提出(令和4年分)の確定申告アップデート情報
2023年(令和4年分)提出の確定申告アップデート情報
確定申告期間:2023年2月16日(木)〜2023年3月15日(水)まで
※ 所得税 / 贈与税の申告・納税期間:2023年3月15日(水)まで
※ 個人事業者の消費税等の申告・納税期間:2023年3月31日(金)まで
<2023年(令和4年分)から変わること>
詳しくは国税庁ホームページ「令和4年分 確定申告特集」をご参照ください。
まとめ
個人事業主は自分で確定申告をして納税しなくてはいけません。2月から3月にかけての支払いに加え、6月から翌1月にかけては個人事業税と住民税の支払いも発生します。
税金の支払いが遅れてしまうと、場合によってはペナルティを受けることもあるため、税額の計算方法や支払い時期を正しく把握し手元に必要な分のお金を残しておきましょう。
【関連記事】
所得税や消費税など税金の支払いはどうなる?租税公課について
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