年間で赤字になると、つい色々なことを投げ出しそうになるものですが、確定申告まで投げ出そうとしていませんか。実は青色申告者の場合、赤字の年に確定申告すれば、最長3年間赤字を繰り越すことができます。これは、将来黒字化した時の節税対策にもつながります。今回は赤字繰越ができる損失申告についてご紹介します。
2024年提出(令和5年分)の確定申告アップデート情報
所得税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年3月15日(金)
消費税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年4月1日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2024年3月15日(金)まで
<2024年(令和5年分)の確定申告のポイント>
- 「源泉徴収票・国民年金基金掛金・iDeCo・小規模企業共済掛金」が追加されるなど、マイナポータル連携をすることで自動入力できる対象が増えます。
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、消費税の申告書を作成できるようになる予定です。今回、インボイス登録によって課税事業者になり、消費税の納付が必要になった方はチェックしましょう!
詳しくは国税庁ホームページ「令和5年分 確定申告特集」をご参照ください。
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▶︎ 青色申告について、まずはこちらの記事!
■損失申告とは
以下の条件において、事業で損失(赤字)が出た場合、その金額を翌年以降、最長3年間繰り越せるというものです。「繰り越す」とは翌年以降、黒字化して所得が発生した場合に、その金額から損失分を差し引くことができるということ。つまり、赤字になった年の翌年は、黒字化しても赤字分だけ節税ができるというわけです。
▼損失申告の計算方法
例えば平成26年度の確定申告で100万円の損失が発生し、平成27年度には200万円の所得が出たとします。その場合、27年度の課税対象金額は以下となります。
200万円 – 100万円 = 100万円
平成28年11月時点で、195万円以下の課税対象金額に対する税率は5%、196万以上330万円以下の税率は10%となっています。損失を差し引いた場合と、差し引かなかった場合では、平成27年度の税額に以下のような違いが生まれます。
- 《損失を差し引いた場合》
100万円 × 5% = 50,000円 - 《損失を差し引かなかった場合》
200万円 × 10% = 200,000円
税金に15万円の開きがあるのは大きいですよね。このように、損失申告をすることによる節税効果は決して少なくないのです。
▼白色申告では一部しか繰り越せない
これは青色申告者のみ適用されるもので、白色申告では一部の赤字しか繰り越すことができません。たとえ昨年度申告分まで白色申告を行っていて、今年度から青色申告に変更する場合でも、昨年度までの損失分は繰り越すことはできないので注意しましょう。
■損失申告のための条件
「赤字を繰り越せる」といっても、すべての損失を繰り越せるわけではありません。損失申告できるのは、以下条件に当てはまるものに限られます。
- ・事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の損益通算においても控除が残った場合(純損失金額)
- ・雑損控除で控除不足額が生じた場合
つまり、事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4つにおいて発生した赤字損失については、翌年以降の所得に繰り越せるというわけです。
ただし上記の場合でも、不動産所得や譲渡所得については、一定の条件に当てはまる場合、損失申告できないため、注意が必要です。これらの所得を得ている場合は、念のため税理士に確認するのがよいでしょう。
▼損失申告できない所得
以下所得については、そもそも損失が出ないという前提があるため、損失が出ても、原則繰り越すことはできません。
- ・利子所得
- ・給与所得
- ・退職所得
- ・配当所得
- ・一時所得
- ・雑所得
▼損失は累積して計算できる
損失が2年以上続いた場合、累計して計算することができます。
例えば平成26年に30万円、平成27年に10万円の損失が出たとします。この場合、平成28年度の確定申告では、以下損失分を所得から差し引くことができます。
30万円 + 10万円 = 40万円
仮に、平成28年度に黒字化し、確定申告で60万円の所得が出たとします。その場合、実際に課税対象となるのは、以下金額となります。
60万円 − 40万円 =20万円
ただし、繰り越しは最長3年という期限があります。たとえ平成30年度まで損失続きだったとしても、確定申告時には平成26年の損失金額を繰り越すことはできませんのでご注意下さい。
▼同じ年で異なる所得で損失が発生した場合は相殺する
例えば平成27年度の確定申告で、50万円の事業所得損失があっても、山林所得で50万円の所得が出た場合は相殺されます。そのため翌年に持ち越される損失はなくなります。
黒字を差し引ける所得には、一定の順番があります。以下の順で相殺していきましょう。
■損失申告していなかった場合はどうなる?
更正の請求を行うことで、損失申告することができます。ただし、請求前に確定している納税金額に関しては、繰り越しの対象にならず、納税義務が発生するので注意が必要です。
例えば平成26年度に繰り越せる損失があったにも関わらず、損失の申告を行わず、平成28年10月にそのことに気づいたとします。10月時点で更正の請求を行うことはできますが、平成27年度の納税金額はすでに確定しているため、そこから損失を差し引くことはできなくなります。
■確定申告時の損失申告に必要なもの
確定申告の際は、青色申告の際に必要な確定申告表Bの第一表、第二表以外に、第四表を提出する必要があります。また、以下の損失を繰り越す場合は、別途損失を証明する書類が必要となります。
- ・被災者事業用資産の損失
- ・上場株式等にかかる譲渡損失
- ・特定投資株式に係る譲渡損失
- ・先物取引やFXに係る損失
▼第四表の記入方法
今回は平成27年度の資料を元にご紹介します。
1.基本情報を記入する
住所や氏名などを記入します。
2.「損失額又は所得金額」欄に、その年に出た損失金額を記入する
A:確定申告表第一表の1から7の合計を記載します。
B〜F:それぞれの項目について所得または損失があった場合に記載します。
特例適用条文:譲渡所得、山林所得及び株式等に係る譲渡所得等について、特例を受ける場合に記載します。
損失通算によって損失を相殺した場合は、赤枠のように総裁前の金額をカッコ書きし、その上に相殺後の金額を記載します。
3.「損益の通算」欄に必要情報を記載する
損失額又は所得金額」に記載した内容を、該当する数字(59から66)の書かれた欄に記入していきます。
その後、「B一時通算後」欄には、「A通算前」の金額に応じて、以下のように数字を記載します。
・「B第1次通算後」欄
・「C第2次通算後」欄
・「D第3次通算後」欄
・「E損失額又は所得金額」各欄
・損失額又は所得金額の合計額
「E損失額又は所得金額」の各欄の損失額又は所得金額の合計を記載します。
4.「翌年以後に繰り越す損失額」の該当欄に必要事項を記載
翌期以降に繰り越す損失額のうち、青色申告者の損失の金額は72の欄に記載が必要となります。72については以下の方法で記載を行います。
5.前年以前の損失および本年度中に差し引ける損失を「4繰越金額を差し引く計算」に記載して、繰り越せる金額を記載する
損失が出た場合、確定申告を行う必要はありませんが、損失を繰り越すことはできなくなります。損失申告は正当な節税対策の一つです。赤字になったからといって嘆くことなく、翌年以降のためにしっかり損失申告をしておきましょう。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。
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