青色申告の基礎知識

青色申告特別控除とは?65万円控除を受ける要件や節税効果をわかりやすく解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

青色申告特別控除とは?65万円控除を受ける要件や節税効果をわかりやすく解説

青色申告特別控除とは、確定申告を青色申告で行った場合にのみ受けられる控除です。

控除額は要件によって異なり、65万円・55万円・10万円のいずれかの控除が受けられます。申告の手間はかかるものの、所得税や住民税の税負担を軽減することが可能です。

最大65万円の控除を受けるためには、複式簿記での記帳・決算書の提出・電子申告など複数の要件を満たす必要があります。

本記事では、青色申告特別控除を受けるための要件や得られる節税効果を控除額別に詳しく解説します。

目次

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青色申告特別控除とは

青色申告特別控除とは、青色申告で所得税の確定申告をする際に、所得金額から一定額を控除できる制度です。

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得と、それに対する所得税を計算し、精算する手続きを指します。青色申告で確定申告を行う場合は、青色申告特別控除により所得金額から一定額が控除されるため、税負担の軽減が可能です。


出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

確定申告には、青色申告のほかに白色申告と呼ばれる申告方法があり、それぞれ要件・受けられる控除・手続きが異なります。

青色申告を行うには、事前に税務署へ「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。これらの手続きを行わない場合は、青色申告が適用されず、白色申告となります。

青色申告には、上記の手続きに加え、複式簿記による帳簿の作成・青色申告決算書の作成・関連書類の最長7年保存などが求められます。青色申告は作成・保存しなければならない帳簿類が多い一方で、さまざまな節税メリットがあります。

青色申告のやり方やメリット・デメリットについて知りたい人はこちらの記事からチェック!


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青色申告特別控除額は3種類ある

青色申告特別控除の控除額は、65万円・55万円・10万円の3種類です。

どの控除額が適用されるかは、後述する要件を満たしているかどうかによって異なります。


出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

青色申告特別控除を受けるための事前手続き

青色申告特別控除を適用するには、対象となる所得の種類を押さえ、必要な手続きを行わなければなりません。以下では、控除を受けるための事前手続きを解説します。

青色申告特別控除を受けるには、事業で得る所得の種類が「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかである必要があります。各所得の概要は、以下のとおりです。


所得の種類概要
事業所得農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業で得た所得
不動産所得土地・建物・船舶・航空機・借地権などの貸付によって得た所得
山林所得所有期間が5年を超える山林を伐採、または立木のまま譲渡して得た所得
出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
出典:国税庁「山林所得とは」

開業届と青色申告承認申請書の提出

事業で得る所得が「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかに該当する人は、必要な書類を税務署に提出することで、青色申告での確定申告が可能です。

提出が必要な書類は、「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」と「所得税の青色申告承認申請書」の2点です。これらは、所定の期日までに管轄の税務署へ提出します。

「開業届」は原則として開業日から1ヶ月以内に、「青色申告承認申請書」は原則として開業日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。すでに開業している場合は、控除を受けたい年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出しましょう。

期日までに提出できなかった場合、その年の確定申告は白色申告として扱われます。


開業届・青色申告承認申請書の提出期限

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青色申告特別控除で65万円の控除を受けるための要件

青色申告特別控除で65万円の控除を受けるためには「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」の提出のほかに、以下の要件を満たす必要があります。

①事業所得または不動産所得を得る事業を行っていること

青色申告できるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のみですが、65万円の控除を受けられるのは、事業所得または不動産所得の場合に限られます。

山林所得の場合は、10万円の控除のみが適用されます。

②複式簿記で記帳していること

記帳方法には「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があり、青色申告の65万円控除を受けたい場合は、複式簿記で記帳しなければいけません。

複式簿記は、ひとつの取引に対して「借方」と「貸方」という2つの側面から記帳する方法であるため、誤りが起こりにくいという特性があります。

<例:3月25日に電気代を4,000円、現金で支払った場合>

○単式簿記

日付勘定科目金額摘要
令和3年3月25日水道光熱費4,000円電気代

○複式簿記

日付借方貸方摘要
令和3年3月25日水道光熱費4,000円現金4,000円電気代

たとえば、4,000円の電気代を現金で支払った場合、単式簿記では支出の欄に4,000円と書くだけで記帳が完了しますが、複式簿記の場合は総勘定元帳の現金と水道光熱費という2つのページに記載しなくてはなりません。

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③確定申告時に青色申告決算書(貸借対照表と損益計算書)を添付すること

65万円の青色申告特別控除を受けるためには、確定申告書に加えて「貸借対照表」と「損益計算書」を添付する必要があります。

貸借対照表とは、企業のプラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)の残高(バランス)をまとめたもので、主に財務状況を示す財務諸表のひとつです。なお、損益計算書とは、事業の損失と利益を計算するための書類を指します。

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④決められた期日内に確定申告を行うこと

通常、確定申告の提出期間は、所得があった年の翌年2月16日から3月15日までです(期日が土日祝日の場合は翌平日が期限となります)。

この期間に申告しないと、65万円の控除が受けられないだけでなく、場合によっては追徴課税・重加算税が科される可能性があります。

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⑤「発生主義」で記帳すること

会計処理の方法には、「発生主義」と「現金主義」があります。

発生主義とは、取引が発生した時点で会計処理を行う方法です。発生主義では、金銭の受け渡しがまだ行われていなくても、取引が発生した時点で会計処理を行います。

一方、現金主義とは、実際に金銭のやり取りが発生した時点で会計処理を行う方法です。

65万円の控除を受けるには、会計処理方法のうち「発生主義」で記帳しなければなりません。

⑥e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行っていること

65万円の控除を受けるためには、上記の①〜⑤に加え、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行っている必要があります。

e-Tax(イータックス)の正式名称は「国税電子申告・納税システム」といい、インターネット環境が整っていれば、自宅やオフィスで確定申告・納税・行政手続きなどを行うことが可能です。

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青色申告特別控除で55万円の控除を受けるための要件

青色申告特別控除で55万円の控除を受ける要件は、65万円控除の要件のうち、⑥以外を全て満たす場合です。

つまり、⑥の「e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行っていること」を満たしていない場合は、55万円の控除が適用されます。

青色申告特別控除で10万円の控除を受けるための要件

55万円・65万円の青色申告特別控除を受けられる要件を満たしていない場合、控除額は10万円となります。

具体的には、複式簿記ではなく単式簿記で記帳している場合や、確定申告時に貸借対照表を添付していない場合などです。

青色申告特別控除の金額(65万円・55万円・10万円)は、確定申告の際に自身で申告する必要があります。どの要件を満たしているかを事前に確認しておきましょう。

青色申告特別控除と給与所得控除は併用可能

給与所得控除とは、会社員やアルバイト・パートなどの給与所得者が、給与収入から一定額を控除できる制度です。

給与所得控除は青色申告特別控除と併用でき、税負担をより軽減することが可能です。

たとえば、会社員として勤務しながら個人事業主としての収入がある場合、両制度を併用することで、節税効果をより高めることができます。

青色申告特別控除の節税効果

個人事業主の場合、収入から必要経費や各種控除を差し引いた「所得」に、税法で定められた税率を適用し、さらに一定の控除額を差し引くことで「所得税」額が算出されます。



個人事業主の所得税は累進課税となっており、所得が増えるほど税率も高くなる仕組みです。青色申告特別控除の額を所得から差し引くことで所得が減少するため、節税につながります。

所得税率の速算表

以下は、所得税額を計算する際に用いる速算表です。自身の課税所得がどの区分に該当するかを確認することで、適用される税率と控除額がわかります。

所得税率の速算表

課税対象の所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

所得税以外の節税効果

所得税のほかにも、所得金額をもとに納税額が算出される住民税・国民健康保険料を軽減できるというメリットもあります。

住民税は前年の所得の10%で計算されるため、青色申告特別控除を利用すれば節税につながります。

国民健康保険料は、所得割と均等割の2つの計算方法で算出されますが、このうち所得割は住民税と同様に所得金額をもとに計算されるため、青色申告特別控除を適用することで節税が可能です。

国民健康保険料に適用できる控除は多くないため、青色申告特別控除は、国民健康保険料を節税するための貴重な手段となります。

青色申告特別控除による節税額の具体例

以下は、総収入が750万円であった場合、青色申告(青色申告特別控除)と白色申告でどれほどの節税効果の差が生じるか計算したものです。


青色申告と白色申告の税額計算例

上記のように、65万円の青色申告特別控除を利用した場合と白色申告をした場合とでは、納税額に13万円の差が生じます。

住民税の金額も課税所得額をもとに計算されることを踏まえると、1年間でより大きな納税額の差が生じる可能性があります。

このように、青色申告は白色申告に比べて申告方法や記帳の手間がやや煩雑であるものの、節税効果が期待できます。

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まとめ

青色申告特別控除は、青色申告者のみが受けられる所得控除で、要件に応じて65万円・55万円・10万円のいずれかが適用されます。

複式簿記での記帳・決算書の提出・期限内申告・発生主義での処理などが必要で、さらに電子申告を行えば最大65万円の控除が適用可能です。

控除により所得税・住民税・国民健康保険料が軽減され、白色申告より大きな節税効果が期待できます。すでに開業しているという人であっても、3月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば、翌年から青色申告が可能となります。

青色申告の要件とメリットを把握し、青色申告特別控除を受けることを検討しましょう。

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よくある質問

青色申告控除とは?

青色申告特別控除とは、青色申告で確定申告を行った場合に受けられる控除のことです。

詳しくは、記事内「青色申告特別控除とは」をご覧ください。

確定申告で最大65万円の控除を受けるための条件は?

確定申告で65万円の青色申告特別控除を受けるためには、以下6つの条件を満たす必要があります。

詳しくは記事内「青色申告特別控除で65万円の控除を受けるための要件」をご覧ください。

青色申告特別控除で65万円の控除を受けるための確定申告のやり方は?

65万円の控除を受けるためには、要件を満たしたうえで、青色申告で確定申告を行う必要があります。

青色申告の必要書類や確定申告のやり方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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個人事業主でも青色申告特別控除は適用される?

要件を満たしていれば、個人事業主でも最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。

詳しくは記事内「青色申告特別控除の節税効果」をご覧ください。

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監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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