年末調整と確定申告は、いずれも納めるべき所得税の金額を確定するための手続きのことです。それぞれ手続きの対象や方法に違いがあり、人によっては両方必要になる場合があります。
本記事では、年末調整と確定申告の違いや両方必要となるケースについて解説します。
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目次
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確定申告で領収書の提出は不要
領収書とは、商品やサービスの売買取引があった際に、その代金を受領したことを証明する書類です。
確定申告で経費計上をする際、領収書の提出は不要ですが、証拠書類として7年間の適切な保存が義務付けられています。
また、2022年1月の電子帳簿保存法の改正で領収書の保存方法に変更がありました。詳しくは後述します。
確定申告で領収書と認められるための6つの記載項目
確定申告で経費計上をするための領収書は、以下の6項目の記載がないと証拠書類として認められません。
領収書に必要な記載事項
- 取引年月日(支払い年月日)
- 支払い金額
- 支出目的・用途
- 領収書の発行元
- 宛名
- 収入印紙の有無(電子領収書では不要)
宛名以外の記載が漏れていた場合、領収書として機能せず経費計上ができません。領収書を受け取る際には、記載漏れがないか確認を怠らないようにしましょう。
領収書の宛名は空欄でもいい?
確定申告で経費計上する場合、領収書の宛名に記載がなくても違法にはなりません。
しかし、領収書の宛名が空欄や「上」だと、受取人が誰であったか事実確認ができないため、税務調査が入った場合に証拠書類として認められない可能性があります。
確実に経費計上するために、宛名は屋号または個人名、もしくは両方を略さず正しく記入するように依頼しましょう。なお、課税事業者が仕入税額控除を受ける場合は、宛名入りの領収書が必要となります。
出典:国税庁「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項」
収入印紙は必要?
収入印紙とは国に税金や手数料を払うための切手のような証票を指します。紙の領収書は印紙税法による課税文書とみなされるため、記載金額によって収入印紙の貼付が必要です。
ただし、紙の領収書でも記載金額が5万円未満の場合は非課税のため、収入印紙は不要です。記載金額に応じた収入印紙の税額は以下のとおりです。
記載金額 | 税額 |
50,000円未満 | 非課税 |
50,000円以上~1,000,000円以下 | 200円 |
1,000,000円超~2,000,000円以下 | 400円 |
2,000,000円超~3,000,000円以下 | 600円 |
3,000,000円超~5,000,000円以下 | 1,000円 |
5,000,000円超~10,000,000円以下 | 2,000円 |
なお、電子取引による電子領収書の場合、印紙税法の「課税文書」に該当せず、受取金額が5万円以上でも収入印紙は不要です。
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レシートも領収書と同等とみなされる
コンビニや量販店などで品物を購入した際に渡されるレシートも領収書と同様に経費計上ができます。この場合、個人の宛名がなくても問題はありません。
また、1枚のレシートにプライベートと事業用の買い物が混在している場合でも、事業用の商品項目がわかるようにマーキングをして判別できる状態であれば経費計上が可能です。
ただし、感熱紙のレシートは経年劣化で印字が消えることがあるため注意が必要です。印字が消えると証拠書類にならないため、普通紙にコピーをとったり、スキャンして電子データで保存したりするなどの対応をしましょう。
インボイス制度導入で領収書の扱いも一部変更される
インボイス制度が導入される2023年10月1日以降、領収書やレシートは適格簡易請求書に該当し、前述した領収書の必要事項の6項目に加え、「登録番号」「消費税区分」の記載が必要となります。
インボイス制度導入後、領収書を受け取る際は記載項目に漏れがないか注意してください。
また、従来どおり領収書やレシートは一定期間保存が必要です。
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領収書の保存期間
確定申告の際、領収書を提出する必要はありません。ただし、青色申告であれば原則7年間、白色申告であれば5年間の保存が必要です。また、青色申告の場合は例外として、前々年度分の所得が300万円以下の場合の保存期間は5年となります。
経費の重要な証拠資料ですので、領収書を受け取った際は適切に保存しましょう。
出典:国税庁「記帳や帳簿などの保存・青色申告」
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税務調査の際に提出を求められる場合がある
場合によっては、確定申告後に税務調査が入ることがあります。その際に、帳簿や決算書類とあわせて領収書を適切に提出できないと、証拠不十分として加算税や延滞税などのペナルティが科せられる可能性があります。
青色申告の場合、承認が取り消されると青色申告特別控除が受けられなくなったり、赤字の繰り越しができなくなったりなど、税金の優遇措置を受けられなくなります。
領収書は年や月ごとにまとめ、税務職員からの説明や提出が求められた際に、スムーズに対応できるよう適切に保存しましょう。
経費計上に必要な領収書がない場合はどうする?
領収書がもらえなかったり、紛失したりした場合でも、適切に対処すれば経費計上は可能です。
領収書を紛失した場合の対処法
領収書を紛失しても、取引の明細書など支払いが証明できる証憑(しょうひょう)書類であれば経費計上ができます。
具体的な例として以下のようなものが該当します。
領収書が紛失した場合に代わりにできる証憑書類の例
- クレジットカードの明細書
- 銀行の振込明細書
- ECサイトで購入した場合の確認メール(※以下の項目がある場合のみ)
・宛名
・日付
・金額
・但し書き
・発行元
近年、クレジットカードなども電子明細が増えています。紙の領収書を紛失し、電子明細を証憑とする場合は電子保存でなければなりません。PDFで電子明細を保存後、年月日・金額・取引先を検索できるように電子書類に記録を残してください。
会計ソフトであらかじめクレジットカードなどを同期させれば、自動入力されるので煩雑な作業を減らせます。はじめから紙の領収書を受け取る手間がなくなりますので、紛失するリスクも回避できます。
領収書が発行されない場合
鉄道などの公共交通機関などの場合、状況によっては領収書の発行が難しいこともあるでしょう。その場合でも領収書やレシートの代わりになるものがあれば、経費計上が認められるケースがあります。
証拠書類として認められる具体例を紹介します。
冠婚葬祭に関する支出
ビジネスで関わりのある相手の結婚式や葬式に参列した場合、祝儀や香典を経費計上できます。
しかし、お祝いやご不幸の席で領収書の発行を依頼するのは道徳上難しく、非常識と思われる可能性もあります。このように社会通念上、領収書が発行できない場合、費用処理を行います。
たとえば結婚式に参列した場合、結婚式の案内状を添付して出金伝票を作成します。但し書きに相手の名前や金額、日付も忘れずに記載しましょう。
鉄道やバスなど公共交通機関に関する支出
交通費は出金伝票を作成することで、領収書がなくても経費計上が可能です。その際、出張など移動の目的や行き先、移動ルートなどを出金伝票に記載すれば十分な証拠資料になります。
ICカードをチャージした場合は、発行された領収書を保存しましょう。自動券売機に通して利用履歴を印字することも可能です。
ただし、保存できる履歴件数がICカードによって異なりますので、事前に確認しておくと安心です。プライベート時にも同じICカードを利用している場合、業務に関わる記録のみを別保存にしてください。
電子帳簿保存法の改正で領収書の紙での保存が不要に
2022年1月の電子帳簿保存法の改正により、領収書原本を紙で保存する必要がなくなり、電子上での保存が可能となりました。
必要に応じて会計ソフトなどシステム導入コストが生じますが、領収書の電子データでの一元管理が可能となり、データの確認がスムーズに行えるといったメリットがあります。
取引方法によっては、紙での保存が認められない場合もあります。取引別の領収書の保存方法は以下のとおりです。
領収書を紙で受領した場合
紙で発行された領収書などの書類については電子データ、紙保存どちらでも可能です。画像データで保存する場合はスキャナで取り込む必要があります。
領収書を電子取引で受領した場合
ECサイトやメール添付など、電子取引により発行された領収書などの書類に関しては、紙での保存が認められず、原則電子保存が必須です。
電子上で保存する場合、領収書として認められるためには下記の2つの工程が必要となります。
- タイムスタンプなど削除や改変ができないようにする、もしくは削除訂正の記録を残す
- 上記の内容を(年月日・金額・取引先)で検索できるようにする
タイムスタンプに関しては以下の記事で詳しく説明しています。
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電子帳簿保存法とは?対象となる書類や保存要件・方法について解説
領収書の電子データ保存は2年間の猶予期間がある
電子帳簿保存法改正により、領収書の電子データの保存は義務となりましたが、「令和4年税制改正大綱」で電子帳簿保存法の宥恕(ゆうじょ)措置が取られることになりました。
2022年1月1日から2023年12月31日の2年間はやむを得ない事情があり、かつ以下の2点を満たせば、紙での保存が認められます。
- 税務調査などで提示できるように管理する
- 電子保存ができない理由を述べられる
上記が守られていれば、紙保存でも青色申告の取り消しにはなりません。ただし、2022年1月からすでに義務化は始まっているので、猶予期間を過ぎる前に電子データ保存の体制を整備しましょう。
出典:財務省「令和4年度税制改正の大綱」
出典:国税庁「電子帳簿保存法の一問一答」
会計ソフトを使えば領収書を適切に保存可能
領収書は受け取る機会も多く、保存義務期間も長いため紛失などのリスクがつきまといます。また、電子帳簿保存法の改正で今まで以上に領収書の取り扱いは複雑化しています。
会計ソフトを使えば領収書の紛失リスクもなく、適切な保存ができるのでおすすめです。
まとめ
領収書は確定申告の経費計上をする際の重要な証拠資料です。所得税額を減らし、節税効果を得るためにも適切な保存が重要になります。突然の税務調査時に、適切に管理がされておらず説明もできなけば青色申告の承認取り消しになるリスクもあります。
電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入によって、領収書など書類の保存は複雑化しています。適切な保存と管理が可能な会計ソフトの利用がおすすめです。
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確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
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