青色申告の基礎知識

法人が青色申告するメリットは?青色申告承認申請書の書き方などを解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

法人が青色申告するメリットは?青色申告承認申請書の書き方などを解説

個人の所得税だけではなく、法人も確定申告で青色申告を選択できます。

青色申告は、所定の帳簿を複式簿記で記録して申告する方法で、損失の繰越控除や各種控除などの税務上のメリットを受けられる制度です。

青色申告を利用するには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出し、承認を受ける必要があります。白色申告と比べて手間はかかりますが、節税を重視する法人には有効な選択肢です。

本記事では、法人税の青色申告の概要・メリット・青色申告承認申請書の書き方などを解説します。

目次

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法人税の青色申告とは

個人の所得税と同様に、法人が行う確定申告にも、白色申告と青色申告の2種類があります。

青色申告は、一定のルールに従って帳簿を作成・保存する代わりに、税制上の特典を受けられる申告方法です。

青色申告では、複式簿記で取引を記録します。複式簿記とは、1つの取引を「原因(借方)」と「結果(貸方)」の両面から記録する方法です。これにより、会社のお金の流れを正確に把握できます。

記録には以下のような帳簿や書類が必要です。

複式簿記で必要な帳簿・書類の例

  • 帳簿:仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳・売上帳・仕入帳など
  • 書類:棚卸表・貸借対照表・損益計算書・注文書・契約書・領収書など

また、法人は以下のような内容を帳簿に記載する必要があります。

区分記入する内容
① 現金の出納に関する事項取引年月日・事由・出納先・金額・日々の残高を記入する
② 当座預金の預け入れおよび引き出しに関する事項口座別に、取引年月日・事由・支払先・金額を記入する
③ 手形(融通手形を除く)の債権・債務に関する事項受取手形・支払手形別に、取引年月日・事由・相手方・金額を記入する
④ 売掛金に関する事項相手方別に、取引年月日・品名・給付内容・数量・単価・金額を記入する
⑤ 買掛金に関する事項相手方別に、取引年月日・品名・給付内容・数量・単価・金額を記入する
⑥ ②から⑤までに掲げるもの以外の債権債務に関する事項貸付金・借入金・預け金・預かり金・仮払金・仮受金・未収入金・未払金など、適当な名称を付して区分し、取引年月日・事由・相手方・金額を記入する
⑦ 有価証券に関する事項取引年月日・事由・相手方・銘柄・数量・単価・金額を記入する
⑧ 減価償却資産に関する事項耐用年数などで区分し、取引年月日・事由・相手方・数量・金額を記入する
⑨ 繰延資産に関する事項種類ごとに区分し、取引年月日・事由・金額を記入する
⑩ ①から④まで、および、⑥から⑨までに掲げるもの以外の資産(棚卸しによって整理するものを除く)に関する事項取引年月日・事由・相手方・数量・金額を記入する
⑪ 売上に関する事項取引年月日・売上先・品名・給付内容・数量・単価・金額・日々の売上額を記入する
⑫ ⑪に掲げるもの以外の収入に関する事項受取利息・雑収入など、適当な名称を付して区分し、取引年月日・事由・相手方・金額を記入する
⑬ 仕入に関する事項取引年月日・仕入先・相手方・品名・給付内容・数量・単価・金額・日々の仕入額を記入する
⑭ ⑬に掲げるもの以外の経費に関する事項消耗品費・地代家賃・旅費交通費・通信費・水道光熱費・広告宣伝費など、適当な名称を付して区分し、取引年月日・支払先・事由・金額を記入する
出典:e-Gov法令検索「法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号)別表二十二」

作成・受領した帳簿や書類は、原則として申告書提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。欠損金が生じた事業年度に関しては、10年間の保存が必要です。

青色申告するためには、事前に「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出し、承認を受ける必要があります。承認を受けていない場合、複式簿記で適正に帳簿を作成していても、青色申告の特典は受けられません。

出典:国税庁「法人税のあらましと申告の手引」
出典:国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」


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法人税の青色申告と白色申告の違い

白色申告は、青色申告の条件を満たさない場合に利用される制度です。白色申告では単式簿記などの簡易な帳簿でも認められますが、税務上の特典は受けられません。

そのため、節税を重視する法人のほとんどは青色申告を選んでいます。

実際、青色申告を採用する法人の割合は、1980年には90%、2007年には89%と高水準で推移し、2021年には99.2%まで拡大しています。

出典:国税庁「青色申告制度の意義と今後の在り方」
出典:財務省「説明資料〔経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備〕」


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法人税の青色申告を実施するメリット

法人が青色申告を選ぶと、赤字の活用や資産計上の優遇など、節税につながる大きなメリットがあります。ここでは主なメリットを3つ紹介します。

欠損金の繰越控除を受けられる

事業を営んでいると、年度によっては欠損金が生じることがあるかもしれまん。欠損金とは、益金(収益)よりも損金(費用)が多い場合に生じる赤字額です。

青色申告する法人は、最長10年間、欠損金を繰り越して課税所得から控除可能です。将来、黒字が発生した際に控除すれば、課税所得額が減少し、法人税の負担を軽減できます。

出典:国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」

欠損金の繰戻還付を受けられる

欠損金を将来に繰り越すだけでなく、前の事業年度に繰り戻してその年度の黒字と相殺し、支払い済の税金の還付を受けることも可能です。

今後も赤字が継続する見込みがあるのであれば、欠損金の繰越控除ではなく、繰戻還付の適用を検討する余地があります。

出典:国税庁「No.5763 欠損金の繰戻しによる還付」

30万円未満の減価償却資産を一括で経費として計上できる

青色申告する中小企業者は、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、一括で損金として計上可能です。これは、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」と呼ばれる制度であり、大企業は適用を受けられません。

利用することで、少額資産を購入した際の税務処理が簡易になり、早期に節税効果を得られるメリットがあります。

事業で利用する目的で2026年3月31日までに取得することが要件とされ、合計で年間300万円が上限です。

出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

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法人税の青色申告を実施するデメリットはある?

法人税の青色申告は帳簿作成や複式簿記による記帳が必須となるため、白色申告と比べて手間やコストがかかるというデメリットがあります。事前に「青色申告承認申請書」の提出も必要です。

ただし、法人は白色申告であっても決算書の作成が義務付けられているため、日々の取引を正確に記録することは避けられません。そのため、実務上の負担は大きな差がないといえます。

また、近年では、会計ソフトの普及によって簿記の専門知識がなくても複式簿記での記帳が可能となりました。これにより、青色申告の負担は軽減されつつあります。

出典:内閣府「事業者の記帳水準に係る概況」

青色申告する法人が青色申告承認申請書を税務署に提出する期限

青色申告を行うには、事前に所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。提出期限は、法人の状況によって以下のように異なります。

▼法人を設立した年度


  • 法人設立日から3ヶ月経過する日の前日まで
  • 法人設立日から3ヶ月以内に事業年度が終了する場合は、事業年度終了日まで

▼法人を設立した年度以外


  • 青色申告承認を受けようとする事業年度開始日の前日まで

出典:国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」

青色申告承認申請書の提出期限が過ぎた法人が対応するべきこと

青色申告承認申請書を期限内に提出しなかった場合は、自動的に白色申告となり、特典を受けられません。その場合は、翌年度から青色申告を行えるように早めに青色申告承認申請書を税務署に提出してください。

法人設立時に、各種届出に加えて青色申告承認申請書も忘れずに提出しましょう。

出典:国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」

【法人向け】青色申告承認申請書の提出方法と書き方

青色申告を始めるには、所轄の税務署へ「青色申告承認申請書」を提出します。提出方法は以下のとおりです。

青色申告承認申請書の提出方法

  • 所轄の税務署へ持参する
  • 所轄の税務署へ郵送する
  • e-Taxを利用してオンラインで提出する

持参もしくは郵送する場合は、国税庁公式Webサイトから「青色申告の承認申請書」の様式をダウンロードし、必要事項を記入してください。

以下に、青色申告承認申請書の主な記入事項をまとめました。

項目記入する内容
基本情報欄日付・税務署名・納税地・法人名・法人番号・代表者氏名・代表者住所・事業種目・資本金など
帳簿組織の状況・伝票または帳簿名:仕訳帳・総勘定元帳など
・帳簿の形態:会計ソフトなど
・記帳の時期:毎日・毎週・毎月など
特別な記帳方法の採用「伝票会計採用」(伝票で会計している場合)または「電子計算機利用」(会計ソフトを利用している場合)のどちらか
税理士が関与している程度「確定申告だけ依頼」「日々の記帳も依頼」など、税理士の関与の程度
税理士署名欄税理士に作成を依頼した場合は署名が必要
出典:国税庁「青色申告の承認申請書」
出典:国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」

青色申告承認申請書の作成に関して不明な点がある場合は、自己判断せずに税務署や税理士にご相談ください。

青色申告の承認は取り消される場合がある

法人税法第127条の規定により、以下のいずれかに該当すると青色申告の承認を取り消される可能性があります。

青色申告の承認が取り消されるケース

  • 確定申告書を期限までに提出しない
  • 法令で定められたとおりに帳簿の作成・保存が実施されていない
  • 取引の全部または一部を隠蔽・仮装しており、真実性を疑うに足りる相当の理由がある
  • 税務署長の指示にしたがわない

国税庁の事務運営指針では、特に「確定申告書の未提出」を理由とする取り消しは、2事業年度連続した場合に実施されると示されています。

出典:e-Gov法令検索「法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第百二十七条」
出典:国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」

青色申告の取り消しを受けた法人が再承認に向けて対応するべきこと

青色申告承認申請を取り消されると、1年間は再申請できません。青色申告の承認の取消通知書」に記入されている内容を確認し、処分が不当と考える場合は不服申立てが可能です。

通知を受けた日の翌日から起算して3ヶ月以内であれば、税務署長に対して再調査請求を行うか、国税不服審判所長に対して審査請求を行うことが可能です。裁決を経た後の処分になお不服がある場合は、裁判所に対して処分取消しの訴えを提起できます。

ただし、不服申立てや訴訟には、ある程度の時間・費用がかかります。そのため、社内で議論するだけではなく、税理士や弁護士に相談して対応を決めることが重要です。

「処分が覆らない可能性が高い」と税理士や弁護士が判断する場合は、受け入れることもご検討ください。

出典:国税庁「不服申立て等について」

確定申告をかんたんに終わらせる方法

確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。

ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。

そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。

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ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。

1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!

確定申告を行うためには、1年間のお金にまつわる取引を正しく記帳しなければなりません。自身で1つずつ手作業で記録していくには手間がかかります。

freee会計では、銀行口座やクレジットカードの同期が可能で、利用した内容が自動で入力されていきます。

日付や金額を自動入力するだけでなく、勘定科目も予測して入力してくれるため、日々の記帳がほぼ自動化でき、工数削減につながります。

freee会計 管理画面イメージ4

2.現金取引の入力もカンタン!

会計ソフトでも現金取引の場合は自身で入力し、登録しなければなりません。

freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿付けが可能です。

自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、会計処理の経験がない人でも正確に記帳ができます。

freee会計 管理画面の例1

さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになるので、わからないことがあったらすぐに相談できます。また、オプションサービスには電話相談もあるので、直接相談できるのもメリットの1つです。

freee会計の価格・プランについてはこちらをご覧ください。

3.〇✕形式の質問に答えるだけで各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!

各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。

freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。

freee会計 管理画面の例2

4.確定申告書を自動作成!

freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。

また、freee会計はe-Tax(電子申告)にも対応しています。e-Taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。

e-Tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。

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余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。

まとめ

個人の所得税だけではなく、法人税に関しても青色申告を選択できます。

青色申告を行うことで、欠損金の繰越控除や繰戻還付が可能です。また、一定の条件を満たせば、30万円未満の減価償却資産を一括で損金として計上できます。

ただし、青色申告を行う場合は、事前に青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。また、単式簿記ではなく複式簿記で帳簿を作成する必要があります。

青色申告の特徴を踏まえたうえで、白色申告とどちらを選択するかを検討しましょう。

よくある質問

法人が青色申告した場合に享受できるメリットは?

法人が青色申告を選択すると、欠損金の繰越控除や繰戻還付を受けたり、30万円未満の減価償却資産を一括で損金として計上できたりします。

法人が青色申告した際に享受できるメリットに関して詳しく知りたい場合は、記事内「法人税の青色申告を実施するメリット」をご覧ください。

法人が青色申告承認申請書を提出する期限は?

法人を設立した年度は、原則として設立日から3ヶ月経過する日の前日までに青色申告承認申請を提出しなければいけません。3ヶ月以内に事業年度が終了する場合は、事業年度終了日までとされています。

提出期限に関して詳しく知りたい場合は、記事内「青色申告する法人が青色申告承認申請書を税務署に提出する期限」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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