監修 好川寛 プロゴ税理士事務所
中小企業や個人事業主にとって、資金繰りは事業継続を左右する重要なテーマです。いざというときに備えて、利用できる資金調達の選択肢を把握しておくことは欠かせません。
多岐にわたる資金調達手段のなかでも、商工会議所などの推薦によって利用できる融資(マル経融資)は低金利かつ無担保・無保証人で資金を借りられる、小規模事業者にとって魅力的な公的融資制度です。
本記事では、マル経融資の概要や商工会議所による推薦の仕組みから、金利や返済期間、申し込みの流れ、必要書類までを詳しく解説します。
目次
- 商工会議所とは
- 商工会議所に相談できること
- 商工会議所と商工会の違い
- 商工会議所が案内する融資制度「マル経融資」
- 商工会議所がマル経融資の推薦を行う仕組み
- 商工会議所の推薦による融資(マル経融資)のメリット
- 無担保・無保証人で借りられる
- 民間金融機関より低い金利水準で借りられる
- 経営指導と融資がセットになっている
- 商工会議所の推薦による融資(マル経融資)の注意点
- 融資実行までに時間がかかる
- 推薦には審査があり、必ず受けられるとは限らない
- 商工会議所の推薦による融資(マル経融資)の対象
- 商工会議所の推薦による融資(マル経融資)利用の流れ
- マル経融資を受ける場合の必要書類
- まとめ
- 資金繰り・資金調達をサポート
- よくある質問
商工会議所とは
商工会議所は、地域の事業者が会員となり、商工業の発展や社会一般の福祉増進のために活動する民間組織です。経済産業省(経済産業政策局)が管轄する団体で、全国の市区を中心に設置されています。
商工会議所は中小企業支援法に基づく「中小企業支援事業」の実施機関のひとつとして、会員企業はもちろん会員以外の事業者に対しても経営相談や融資推薦などのサポートを行っているのが特徴です。
商工会議所に相談できること
商工会議所では、小規模事業者(個人事業主を含む)・中小企業を対象に下記をはじめとする幅広い相談を受け付けています。
商工会議所に相談できること
- 経営相談
:経営課題を抱える事業者向けに、経営指導員・中小企業診断士が無料でアドバイスを実施。必要に応じて法律・税務の専門家への橋渡しも可能。 - 税務・記帳相談
:確定申告や帳簿の付け方、決算実務などに関する相談に対応。確定申告期には税理士による無料相談会を実施する商工会議所も多数。 - 金融相談
:融資に関する相談・推薦、事業計画の作成などをサポート。 - 労務・社会保険相談
:社会保険の手続きや賃金制度、雇用関係の助成金などに関する相談に社会保険労務士が対応。 - 経営改善
:経営・業務の改善や商品力・販売力の強化などについて中小企業診断士がアドバイスを実施。
出典:東京商工会議所「経営相談一覧<成長・拡大期>」
商工会議所と商工会の違い
商工会議所と似た組織に「商工会」があります。
両者は別の根拠法に基づく団体で、対象地区や事業の重点に違いがあります。
| 商工会議所 | 商工会 | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 商工会議所法 | 商工会法 |
| 管轄官庁 | 経済産業省 経済産業政策局 | 経済産業省 中小企業庁 |
| 地区 | 原則として市の区域 | 主として町村の区域 |
| 事業内容 | 中小企業支援のほか、まちづくり・観光振興・国際的活動など幅広い事業を実施。 経営改善普及事業にかかる費用は全体の2割ほど | 小規模事業施策・中小企業施策を幅広く実施。 事業の中心は経営改善普及事業 |
なお、両者ともマル経融資制度を取り扱っています。市区にお住まいの方は商工会議所、町村にお住まいの方は商工会が窓口になると考えればわかりやすいでしょう。
商工会議所が案内する融資制度「マル経融資」
商工会議所が小規模事業者向けに案内する代表的な融資が、マル経融資(正式名称:小規模事業者経営改善資金融資制度)です。「一定期間以上にわたり経営指導を受けて経営改善に取り組んでいる」など一定の要件を満たす小規模事業者に対し、その指導を行う組織の推薦に基づいて日本政策金融公庫が融資を行う仕組みになっています。
マル経融資に関して、経営指導・推薦を行える機関には商工会議所・商工会・都道府県商工会連合会があります。基本的には、市区の事業者は商工会議所に、町村の事業者は商工会にマル経融資について相談できます。
※以降のマル経融資の解説について、商工会地区の事業者の場合は「商工会議所」を「商工会」に読み替えてご確認ください。
マル経融資の主な条件は、以下のとおりです。
| 融資限度額 | 2,000万円 |
|---|---|
| 返済期間 | 運転資金・設備資金とも10年以内 (うち据置期間2年以内) |
| 利率 | 2.50%(特別利率F) ※2026年5月現在 ※一定の要件を満たす場合、上記の利率から0.5%引き下げ(当初2年間) |
| 担保・保証人 | 不要(信用保証協会の保証も不要) |
| 資金使途 | ・運転資金(仕入れ・人件費・諸経費など) ・設備資金(店舗改装・車両購入・機械購入など) |
なお上記の融資限度額や返済期間の取り扱いは、2027年3月31日の日本政策金融公庫受付分までです。その後は、変更の可能性があります。また、利率は金融情勢に応じて変わり得ます。
詳細は、最寄りの商工会議所にご確認ください。
商工会議所がマル経融資の推薦を行う仕組み
マル経融資は、商工会議所が経営指導を行ったうえで、改善に取り組む意欲のある事業者を日本政策金融公庫に推薦する形をとります。
具体的には、申し込み前に商工会議所で原則6ヶ月以上の経営・金融指導を受けたうえで、商工会議所内の審査会や会頭による認証を経て推薦が行われ、その後に日本政策金融公庫が改めて融資審査を行う流れです。商工会議所が事業者の状況を把握したうえで推薦するからこそ、無担保・無保証人での融資が実現しているといえます。
なお東京23区など一部の地域では、利用者に対し、支払利息の一部について一定の条件で区から補助が行われる場合もあります。
商工会議所の推薦による融資(マル経融資)のメリット
マル経融資には、以下のような利点があります。
マル経融資のメリット
- 無担保・無保証人で借りられる
- 民間金融機関より低い金利水準で借りられる
- 経営指導と融資がセットになっている
無担保・無保証人で借りられる
金融機関の融資では通常、貸し倒れなどのリスクに備えて担保や保証人を求められることが一般的です。
対して、マル経融資は商工会議所の推薦が信用補完の役割を担うため、担保・保証人ともに不要で利用できます。信用保証協会による保証も不要のため、保証料の負担もありません。
民間金融機関より低い金利水準で借りられる
マル経融資は、公的融資(無担保)のなかでもとくに利率が低めに設定されている融資制度です。金融機関のビジネスローンなどと比較して有利な条件で資金調達ができ、返済時の負担を抑えられる点がメリットのひとつだと言えます。
経営指導と融資がセットになっている
申し込み前に商工会議所の経営指導員から経営・金融にまつわるアドバイスを受けるプロセスが組み込まれているため、融資を受けるだけでなく、事業計画や財務状況を見直して経営改善を行うきっかけにもなり得ます。資金調達と経営改善を同時に進められる点が、マル経融資ならではの特徴です。
商工会議所の推薦による融資(マル経融資)の注意点
マル経融資はメリットの大きい制度ですが、利用にあたっては以下の点に留意が必要です。
マル経融資の注意点
- 融資実行までに時間がかかる
- 推薦には審査があり、必ず受けられるとは限らない
融資実行までに時間がかかる
原則として商工会議所の経営・金融指導を6ヶ月以上受けていることが、マル経融資の対象となるための条件のひとつです。これから初めて商工会議所と関わる場合は、すぐに申し込み(推薦依頼)を行うことはできません。
また経営指導に加えて「商工会議所での推薦審査」「日本政策金融公庫での融資審査」と複数のステップを経るため、申し込みから融資実行までにも一定の期間を見込む必要があります。
急ぎの資金調達には不向きな側面があるため、計画的に活用しましょう。
推薦には審査があり、必ず受けられるとは限らない
マル経融資についての相談を商工会議所に行って経営指導を受けた後、商工会議所内の審査会や会頭の認証を経て、初めて日本政策金融公庫への推薦が行われます。経営状態によっては推薦が見送られるケースもあるため、推薦を得るためには日頃から経営状況を整理し、改善の取り組みを示す準備が必要です。
商工会議所の推薦による融資(マル経融資)の対象
マル経融資を利用するためには、以下の条件をすべて満たして商工会議所の長の推薦を受け、日本政策金融公庫による審査に通過する必要があります。
マル経融資の利用要件
- 常時使用する従業員が20人以下の法人もしくは個人事業主であること
※商業またはサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は5人以下 - 最近1年以上、商工会議所地区内で事業を行っていること
- 商工会議所の経営・金融にまつわる指導を原則6ヶ月以上受け、事業改善に取り組んでいること
- 税金(所得税・法人税・事業税・都道府県民税など)を完納していること
- 日本政策金融公庫の非対象業種(※)などに属さない業種の事業であること
※公序良俗に反する業種・投機的な業種・金融業や保険業の一部など
出典:日本政策金融公庫「融資対象」
商工会議所の推薦による融資(マル経融資)利用の流れ
商工会議所への相談からマル経融資の実行までは、おおむね次のステップで進みます。
マル経融資の利用の流れ
- 商工会議所に相談する
- 原則6ヶ月以上の経営・金融指導を受ける
- 必要書類の準備・提出(推薦依頼)を行う
- 商工会議所による審査・調査を経て推薦を受ける
- 日本政策金融公庫による審査を経て決定が通知される
- 契約手続きを行う
- 融資を受ける
商工会議所への経営や資金繰りの相談は、会員でなくても可能です。
経営指導の段階から数えると、融資実行まで数ヶ月単位の期間を要することもあるとされます。資金が必要になる時期から逆算してスケジュールを組むことが大切です。
マル経融資を受ける場合の必要書類
申込に必要な主な書類は、法人と個人事業主で異なります。一般的には以下のような書類が求められます。
マル経融資の必要書類
【法人の場合】
- 前期・前々期の決算書および確定申告書
- 決算後6ヶ月以上経過している場合は直近の残高試算表
- 法人税・事業税・法人住民税の領収書または納税証明書
- 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 見積書・カタログなど(設備資金の申し込みの場合)
【個人事業主の場合】
- 前年・前々年の決算書(または収支内訳書)および確定申告書
- 所得税・事業税・住民税の領収書または納税証明書
- 見積書・カタログなど(設備資金の申し込みの場合)
出典:東京商工会議所「マル経融資」
このほか、不動産を所有している場合は不動産登記簿謄本(全部事項証明書)の提出が必要であり、また必要に応じて追加で書類の提出を求められることもあります。
まとめ
商工会議所の推薦によって利用できる融資(マル経融資)は、無担保・無保証人かつ民間金融機関より低い金利で資金調達できる、小規模事業者にとって心強い制度です。経営指導が制度利用の前提条件となることで、資金調達と経営改善を同時に進められる点も大きな魅力といえます。
ただし、経営指導期間や推薦・融資契約のそれぞれにかかる審査など、利用までに一定のプロセスを要する点には注意が必要です。急ぎの資金需要には、ほかの手段との併用や使い分けも検討しましょう。
なお、マル経融資以外の中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)向けの融資については、別記事「つなぎ融資を受けるには?日本政策金融公庫や銀行から資金調達する方法を解説」で解説しています。
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よくある質問
マル経融資 いくら借りられる?
マル経融資では、無担保・無保証人で最大2,000万円まで事業資金(運転資金・設備資金)を借りられます。
マル経融資の条件について詳しくは、記事内「商工会議所が案内する融資制度『マル経融資』」で解説しています。
商工会議所への会費は経費に含められる?
商工会議所の会費は事業に必要な支出と認められ、「諸会費」または「租税公課」として全額を経費計上できます。
参考文献
監修 好川寛(よしかわひろし)
元国税調査官。国税局では税務相談室・不服審判所等で審理事務を中心に担当。その後、大手YouTuber事務所のトップクリエイターの税務支援、IT企業で税務ソフトウェアの開発に携わる異色の税理士です。

