資金繰り改善の基礎知識

スタートアップの資金調達方法8選!成長ステージ別の選び方と注意点を解説

スタートアップの資金調達方法8選!成長ステージ別の選び方と注意点を解説

スタートアップの資金調達は、既存事業の収益から賄える一般的な企業とは性質が異なります。事業が軌道に乗る前から先行投資が必要なため、調達活動には数か月単位の時間がかかるケースも多く、余裕のあるうちから動き始めることが求められます。

本記事では、スタートアップが使える資金調達の種類のほか、成長ステージ別のおすすめ手段や失敗しないための注意点を解説します。

資金調達の基本的な仕組みについては、別記事「資金調達とは? 企業の資金調達方法やメリット・デメリットを簡単に解説」もあわせてご確認ください。

目次

スタートアップが資金調達すべきタイミング

スタートアップが資金調達を検討すべき主なシーンは、以下のとおりです。

スタートアップが資金調達すべきタイミング

  • 研究開発・プロダクト開発を加速させたいとき
  • 急成長期に人材・設備投資が必要なとき
  • IPO・M&Aに向けて財務基盤を整えるとき

スタートアップの資金調達は、既存事業の収益から賄える一般的な企業とは性質が異なります。事業が軌道に乗る前から先行投資が必要なため、手元資金が尽きてから動き始めると、調達完了までのあいだに事業が止まるリスクがあります。事業の成長フェーズに合わせて、先手で動くことが求められます。

資金調達の活動期間は、投資家との関係構築・デューデリジェンス・契約締結まで含めると数ヶ月単位の時間がかかるケースも珍しくありません。また、手元資金がどのくらいの期間もつかを示す「ランウェイ」が短くなった状態で調達交渉に入ると、投資家との条件交渉で不利になります。

スタートアップが使える資金調達の方法8選

スタートアップが利用できる資金調達は、「エクイティファイナンス(出資を受ける)」「デットファイナンス(借り入れる)」「アセットファイナンス(資産を活用する)」の3つに大別されます。

返済義務の有無・調達スピードがそれぞれ異なるため、自社の状況に合わせて選択してください。

分類方法返済義務調達スピード
エクイティファイナンスエンジェル投資家からの出資なし数週間〜1ヶ月程度
VCからの出資なし数ヶ月
CVCからの出資なし数ヶ月
デットファイナンス融資(日本政策金融公庫など)あり1〜2ヶ月
社債あり数ヶ月
アセットファイナンスファクタリングなし即日〜数日
その他助成金・補助金なし数ヶ月〜1年
クラウドファンディングなし数週間〜数ヶ月

エクイティファイナンス

エクイティファイナンスとは、株式を発行して投資家から資金を受け取る方法です。返済義務がなく、創業直後の実績が少ない段階でも調達できる可能性があるため、スタートアップの主要な資金調達手段として広く活用されています。

主な出資元はエンジェル投資家・VC(ベンチャーキャピタル)・CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の3つです。

エンジェル投資家VCCVC
投資主体個人投資ファンド事業会社
投資額目安数百万〜数千万円数千万〜数億円数千万〜数億円
特徴意思決定が速い・人脈紹介が期待できる次のラウンドへの信用力向上につながる事業提携・販路へのアクセスが期待できる

これらの共通のデメリットは、株式を発行するため持株比率が下がり、経営の意思決定に影響が出ることです。投資契約書の内容は、弁護士に確認するのが安心です。

エンジェル投資家

創業初期のスタートアップに自己資金で出資する個人投資家です。VCのような投資委員会を経ないため、意思決定が速く、早ければ数週間〜1ヶ月程度で出資を受けられるケースもあります。投資額は数百万〜数千万円程度が一般的です。

資金提供にとどまらず、自身の起業・経営経験をもとにしたアドバイスや、人脈・ネットワークの紹介が得られるケースもあります。一方で、投資家によってサポートの内容や質に差があるため、金銭的な条件だけでなく、どのような支援が期待できるかを事前に確認しましょう。

VC(ベンチャーキャピタル)

機関投資家や企業などからファンドに資金を集め、スタートアップに出資する投資会社です。投資委員会での審査やデューデリジェンスを経るため、出資実行まで数ヶ月かかります。投資額はシードラウンドで数千万円、シリーズA以降は数億円規模になることもあります。

VCから出資を受けることで、次のラウンドに向けた信用力の向上につながります。また、投資先の成長を支援するためのネットワーク・採用支援・事業提携先の紹介といったバリューアドを提供するVCも多くあります。VCごとに得意とする業種・ステージ・投資方針が異なるため、自社の事業領域や成長フェーズに合ったVCを選ぶことが調達成功のカギです。

【関連記事】
ベンチャーキャピタルとは?種類や出資を受けるポイントを解説

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)

事業会社が自社の戦略目的のために設立した投資組織です。財務的リターンだけでなく、自社事業とのシナジーを目的としているため、出資元企業との事業提携・共同開発・販路へのアクセスが期待できます。投資額はVCと同程度の数千万〜数億円規模が一般的です。

CVCから出資を受ける際は、事業会社との関係性が将来的な事業展開に影響する点に注意が必要です。出資元との競業制限や情報開示の範囲など、契約条件を十分に確認した上で判断しましょう。

デットファイナンス

金融機関や投資家から資金を借り入れる方法です。返済義務がある分、株式を発行しないため持株比率が下がりません。創業初期から利用できる制度も複数あるため、エクイティファイナンスと組み合わせて活用されるケースも多くあります。

融資社債
貸し手金融機関・公的機関投資家(複数)
調達額目安数百万〜数億円数千万〜数十億円
特徴公的制度を活用すれば創業初期から利用可能。審査は自社の事業計画・財務状況をもとに行われる複数の投資家から調達できるため大規模調達に向く。財務の透明性や事業実績が一定程度求められる

融資

融資とは、資金を借り入れてから一定期間内に元本と利息を返済する資金調達方法です。創業初期から利用できる公的制度も複数あり、スタートアップが利用できる主な融資制度は以下の3つです。

スタートアップが利用できる主な融資制度

  • 日本政策金融公庫の創業融資制度
  • 制度融資
  • 信用保証協会保証付融資

なかでも創業間もないスタートアップが利用しやすいのが、日本政策金融公庫の創業融資制度です。政府が100%出資する政策金融機関であるため、民間金融機関より審査のハードルが低く、無担保・無保証で借り入れできます。また、返済実績を積むことで、その後の民間金融機関からの融資審査でも信用力の向上にもつながります。

【関連記事】
新創業融資制度とは? 公庫出身の専門家が対象や返済期間、留意点について解説

出典:日本政策金融公庫「創業融資のご案内」

社債

投資家に社債を発行して資金を調達する方法です。融資と同様に返済義務がありますが、複数の投資家から資金を集められるため、融資単体より大規模な調達が可能です。

エクイティによる持株希薄化を抑えながらまとまった資金を調達したい場合の選択肢となります。

アセットファイナンス(資産の活用)

保有する売掛金をファクタリング会社に売却して現金化する方法です。借入ではないため返済義務がなく、審査は自社の信用力ではなく売掛先の信用力をもとに行われます。最短即日〜数日で資金化できるため、まとまった調達というよりも資金繰りのつなぎとして活用される傾向があります。

売掛金の範囲内でしか調達できないため、調達規模には上限があります。この際、手数料(買取手数料)が差し引かれた金額が入金されるため、売掛金の額面全額を受け取れるわけではありません。

助成金・補助金

国や地方自治体が提供する返済不要の資金です。スタートアップが活用できる主な制度は以下の3つです。

制度名主管調達額目安概要
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)中小機構・地方自治体など地域によって異なる共同出資するファンドの収益から、地域貢献性の高い新事業を展開する企業に助成
小規模事業者持続化補助金中小企業庁・上限50万円・補助率2/3(特例活用で最大250万円
・創業型は上限200万円
販路開拓にかかわる経費の一部を補助。創業後1年以内の小規模事業者向けに「創業型」あり
キャリアアップ助成金厚生労働省1人あたり40万〜80万円(重点支援対象者かどうかで異なる)非正規労働者の正社員化・処遇改善に取り組む企業に助成

いずれも返済義務がない点はメリットですが、審査から採択・入金まで数ヶ月〜1年程度かかるため、急な資金ニーズへの対応には向きません。補助対象となる経費の種類や補助率にも制限があるため、研究開発費や設備投資・人件費の一部を補填する手段として位置づけるのが無難です。

各制度の募集状況や条件は変更される場合があるため、詳細は申し込み前に所管機関に確認してください。

クラウドファンディング

インターネット上で不特定多数の支援者から資金を集める方法です。購入型・寄付型・投資型など種類があり、審査なしで始められます。プロダクトへの反応を確かめながら資金を集められるため、市場検証を兼ねた手段として活用されるケースもあります。

目標金額に届かない場合は資金を受け取れない「All-or-Nothing方式」を採用しているプラットフォームもあるため、プロジェクト設計と情報発信に十分な準備が必要です。

クラウドファンディングについて詳しく知りたい方は、「クラウドファンディングのやり方は?仕組みや種類についても解説」をご覧ください。

成長ステージ別のおすすめ資金調達方法

スタートアップの資金調達は、成長ステージによって向いている手段が異なります。事業の状況やラウンドのフェーズを把握した上で、適切な手段を選びましょう。

成長ステージ別のおすすめ資金調達方法

シード期

事業のコンセプトやビジョンはあるものの、プロダクトや市場の検証がまだ進んでいない段階です。エンジェル・プレシードラウンドと、シードラウンドがこの時期に該当します。

この時期に向いている資金調達方法は、以下です。

  • エンジェル投資家からの出資
  • 日本政策金融公庫の創業融資
  • クラウドファンディング
  • 助成金・補助金(地域中小企業応援ファンド・小規模事業者持続化補助金)

シード期は事業実績がほとんどない段階のため、融資よりも出資が中心になります。

エンジェル投資家は個人の判断で動くため意思決定が速く、この時期に最も活用しやすい出資元です。日本政策金融公庫の創業融資は実績がなくても申し込めるため、出資と組み合わせて活用できます。クラウドファンディングはプロダクトへの市場反応を確かめながら資金を集められる点で、この時期に向いているでしょう。

アーリー期

プロダクトをリリースし、売上が発生し始める段階です。プレシリーズA・シリーズAがこの時期に該当します。

この時期に向いている資金調達方法は以下の3つです。

  • ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
  • コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの出資
  • ファクタリング
  • 助成金・補助金(小規模事業者持続化補助金・キャリアアップ助成金)

事業の方向性が見えてきたタイミングで、ベンチャーキャピタル・コーポレートベンチャーキャピタルからの出資が現実的な選択肢になります。売上が立ち始めていれば、ファクタリングで売掛金を早期に現金化することも可能です。採用・マーケティングへの投資が必要になるため、補助金・助成金も活用してください。

ミドル期

事業が軌道に乗り、黒字化が見え始める段階です。プレシリーズB・シリーズBがこの時期に該当します。

この時期に向いている資金調達方法は以下のとおりです。

  • ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
  • コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの出資
  • 銀行融資
  • 社債
  • ファクタリング

信用力・事業実績が高まることで、民間銀行からの融資が現実的になります。ベンチャーキャピタル・コーポレートベンチャーキャピタルからの大規模な調達と銀行融資を組み合わせて事業拡大を加速できます。この段階から社債も選択肢に入るため、エクイティによる希薄化を抑えながら調達手段を多様化できるでしょう。

レイター期

経営が安定し黒字化している段階で、IPOやM&Aを視野に入れる時期です。シリーズC・D以降〜上場がこの時期に該当します。

この時期に向いている資金調達方法は以下のとおりです。

  • ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
  • コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの出資
  • 銀行融資
  • ファクタリング

IPOやM&Aを視野に入れるこの段階では、大規模な資金が必要です。

ベンチャーキャピタル・コーポレートベンチャーキャピタルからの出資に加え、信用力が十分に高まった状態での銀行融資が主な調達手段といえるでしょう。また、手元の売掛金をファクタリングで早期に現金化し、資金繰りを安定させながら調達活動を進めることも有効です。

IPOが視野に入る段階では、財務の透明性・内部統制の整備が求められるため、早期に会計管理体制を整えておくことで審査をスムーズに進められます。

資金調達で失敗しないための注意点

資金調達の手段が増えるほど、判断ミスによるリスクも高まります。以下の4点を事前に把握したうえで、調達活動に臨んでください。

資金調達で失敗しないための注意点

  • 資金調達計画は事業計画と連動させる
  • 株式の希薄化(ダイリューション)を長期的に管理する
  • 返済条件と事業計画の整合性を確認する
  • 資金調達先を複数確保する

資金調達計画は事業計画と連動させる

「いつ・いくら・何のために調達するか」を事業計画と紐付けて整理しないまま調達活動を始めると、必要額の見誤りや調達後の資金の使い道の曖昧さにつながります。

とくにエクイティファイナンスでは、調達額が大きいほど株式の希薄化が進みます。次のラウンドまでの事業計画(採用・開発・マーケティングの投資計画)と、それに必要な資金額を具体的に算出した上で、調達目標額を決めてください。

株式の希薄化(ダイリューション)を長期的に管理する

エクイティファイナンスでは、出資を受けるたびに新株を発行するため、創業者の持株比率は下がっていきます。創業初期に過度な株式を放出すると、その後のラウンドで経営権を失うリスクが高まります。

各ラウンドで放出する株式比率の上限をあらかじめ設定し、複数ラウンドを見越した持株比率のシミュレーションを行ってください。投資契約書には経営権に影響する条項が含まれる場合があるため、締結前に弁護士に確認すると安心です。

返済条件と事業計画の整合性を確認する

デットファイナンス(融資・社債)では、返済期日と金額が契約時に確定します。事業計画の売上・キャッシュフロー予測と返済スケジュールを照合せずに借り入れると、返済が資金繰りを圧迫するリスクがあります。

借入額・返済期間・金利を複数のシナリオで試算し、売上が計画を下回った場合でも返済できる水準かどうかを確認した上で契約しましょう。

資金調達先を複数確保する

特定の投資家・金融機関だけに依存した調達体制は、その相手との関係が変化した際に次の調達が滞るリスクを生みます。エクイティ・デット・アセットファイナンスをバランスよく組み合わせ、複数の調達先との関係を構築しておくことで、資金調達の安定性を高められるでしょう。

まとめ

スタートアップの資金調達は、エクイティ・デット・アセットファイナンスをはじめとする複数の手段を、成長ステージに合わせて組み合わせることが基本です。シード期は出資と公的融資が中心ですが、ミドル期以降は銀行融資や社債など、調達手段の選択肢が広がります。

どの手段を選ぶにしても、資金調達計画を事業計画と連動させ、株式の希薄化や返済条件を事前に把握したうえで判断しましょう。調達先を複数確保しておくことが、資金調達の安定性につながります。

よくある質問

スタートアップの資金調達方法にはどのような種類がありますか?

エクイティファイナンス(エンジェル投資家・VC・CVCからの出資)、デットファイナンス(融資・社債)、アセットファイナンス(ファクタリング)、助成金・補助金、クラウドファンディングの5つに大別されます。

詳しくは記事内の「スタートアップが使える資金調達の方法8選」をご覧ください。

エクイティファイナンスとデットファイナンスの違いは何ですか?

エクイティファイナンスは株式を発行して投資家から出資を受ける方法で、返済義務がない代わりに持株比率が下がります。デットファイナンスは金融機関から借り入れる方法で、返済義務がある代わりに株式の希薄化が生じません。

詳しくは記事内の「スタートアップが使える資金調達の方法8選」をご覧ください。

スタートアップのシード期に向いている資金調達方法は何ですか?

シード期は事業実績がほとんどない段階のため、エンジェル投資家からの出資・日本政策金融公庫の創業融資・クラウドファンディング・助成金補助金が中心になります。

詳しくは記事内の「成長ステージ別のおすすめ資金調達方法」をご覧ください。

スタートアップの資金調達で失敗しないためのポイントは何ですか?

資金調達計画を事業計画と連動させること、株式の希薄化を長期的に管理すること、返済条件と事業計画の整合性を確認すること、調達先を複数確保することの4点が主なポイントです。

詳しくは記事内の「資金調達で失敗しないための注意点」をご覧ください。

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