創業融資の基礎知識

新創業融資制度とは? 公庫出身の専門家が対象や返済期間、留意点について解説

最終更新日:2019/12/20

新創業融資制度とは?公庫出身の専門家が対象や返済期間、留意点について解説

日本政策金融公庫(以降「公庫」とします)が行う創業融資や各種融資に伴う特例制度には、政府が行う政策に基づき複数の種類があります。
創業前もしくは創業まもない企業への融資支援であることは共通していますが、創業者の年齢や業種、その他諸々の条件によって、それぞれ異なる融資・特例が適用さます。
この記事では、それらの融資・特例制度のなかでも無担保・無保証のメリットによりいちばん人気がある「新創業融資制度」について解説します。  

目次

新創業融資制度とは?概要と特徴

新創業融資制度とは、公庫が行う新規開業資金、女性、若者/シニア起業家支援資金等の各種創業融資において、一定の条件に該当することで追加的に適用が可能となる特例制度のひとつです。

その特徴は、無担保・無保証で創業融資が受けられることです。新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金等の各種創業融資では原則連帯保証人か担保提供が必要ですが、新創業融資制度の適用条件に該当すれば無担保・無保証人で融資が受けられます。 (ただし公庫の行う融資において通常適用される基準利率に0.4%上乗せされた利率が適用されます)

新創業融資制度では、申込人が法人の場合でも代表者の連帯保証が不要になります。民間金融機関が自治体のあっせんを受け、信用保証協会の信用保証を受けて融資する「制度融資」では、代表者の個人保証が原則となっているので、融資を受ける側においては大きなメリットがあると言えます。

制度の対象となる人

日本政策金融公庫には、融資先の規模・種類に応じた3つの事業部があり、それぞれ制度の対象となる条件が変わります。

「国民生活事業」は個人企業や小規模企業を対象としている事業部で、いわゆるベンチャー企業やスタートアップ段階の企業が主な融資先です。融資実行額は平均約700万円です。

「中小企業事業」は中小・中堅企業を対象としている事業部で、新規事業や企業再建に取り組む、比較的規模が大きい中堅企業が主な融資先です。融資実行額は平均約1億円です。

「農林水産事業」は農業・林業・漁業を対象としている事業部で、一般の商工業者は対象としていません。

新創業融資制度は「国民生活事業」と「中小企業事業」両方の事業部で利用できます。 以降は、一般的な創業者の創業資金を対象としている「国民生活事業」での新創業融資制度について解説します。

新創業融資制度の対象となる人は次の3つの条件(創業要件、雇用創出等要件、自己資金要件)をすべて満たす必要があります。

1.創業の要件

・新たに事業を開始するか、事業開始後の税務申告を2期終えていないこと
新規開業資金の要件(事業開始後7年以内)より限定的になっています。
これは特に創業まもない創業者の資金調達を無担保・無保証で支援しやすくためです。

2.雇用創出等の要件

雇用の創出等の要件を要約すると以下になります。

  • 雇用の創出を伴うこと
  • 技術やサービス等を工夫し、多様なニーズに対応する事業を開始すること
  • 現在勤務している企業と同じ業種の事業を始めること
  • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業(後の公庫の提示条件参照)を受けて事業を始めること
  • 民間金融機関と公庫による協調融資により事業を開始すること
  • ほかの要件に該当せず事業を開始する場合でも、新たに営もうとする事業につき適正な事業計画を策定し、当該計画の遂行能力が十分あると公庫が認め、1,000万円を限度として本資金を利用する場合

政府の施策として、社員やパート、アルバイトなどの雇用を創出する創業や勤務経験を活かした創業などを無担保・無保証で支援するため上記の要件が定められています。
しかし、上記の最後で強調した包括的な要件(適正な事業計画を策定・遂行能力の認定・利用額が1,000万円以下)を満たせば、ほかの要件を満たさなくても新創業融資制度の利用は可能です。
筆者の経験からも、実際はこの要件を適用して融資を行うケースがほとんどでした。雇用創出等の要件は、公庫のホームページでは以下のように提示されています。

「雇用創出等の要件」

次のいずれかの要件に該当することが必要です。

  1. 雇用の創出を伴う事業を始める方
  2. 技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
  3. 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
  4.   (1)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
      (2)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
  5. 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
  6. 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業(注1)を受けて事業を始める方
  7. 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクール(注2)による支援を受けて事業を始める方
  8. 公庫が参加する地域の創業支援ネットワーク(注3)から支援を受けて事業を始める方
  9. 民間金融機関(注4)と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
  10. 前1~8までの要件に該当せず事業を始める方であって、新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると公庫が認めた方で、1,000万円を限度として本資金を利用する方
  11. 既に事業を始めている場合は、事業開始時に前1~9のいずれかに該当した方

(注1)市町村が作成し、国が認定した創業支援事業計画に記載された特定創業支援等事業をいいます。 詳しくは 中小企業庁ホームページ をご覧ください。

(注2)詳しくは、 創業スクールホームページ をご覧ください。

(注3)詳しくは、支店の窓口までお問い合わせください。

(注4)都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫または信用組合をいいます。

3.自己資金要件

これから事業を始める場合または事業開始後税務申告を1期終えていない場合、「創業時点で創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できること」が原則です。
しかしこの条件を満たさなくても、特定の要件に当てはまれば自己資金要件を満たすとされます。以下がその要件です。

  • 現在勤務している企業と同じ業種の事業を始めること
  • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業(後の公庫の提示条件参照)を受けて事業を始めること

これは雇用創出等の要件と一致しています。つまり、この2つの要件どちらかを満たせば、雇用創出要件と自己資金要件を同時に満たすことになります。公庫では勤務歴を活かした創業、認定特定創業支援事業を受けた創業を重視しているためです。
自己資金の要件は、公庫のホームページでは以下のように提示されています。

「自己資金要件を満たすものとする要件」

  1. 前3~8に該当する方
  2. 新商品の開発・生産、新しいサービスの開発・提供等、新規性が認められる方
  3. (1)技術・ノウハウ等に新規性が見られる方(注5)
    (2)経営革新計画の承認、新連携計画、農商工等連携事業計画、地域産業資源活用事業計画、地域産業資源活用支援事業計画又は経営力向上計画の認定を受けている方
    (3)新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方
    (4)中小企業等経営強化法に基づく中小企業の新たな事業活動の促進に関する基本方針に定める新たな取り組みを行い、2年間で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる方(注5)
  4. 中小企業の会計に関する指針または基本要領の適用予定の方

(注5)一定の要件を満たす必要があります。詳しくは、支店の窓口までお問い合わせください。

融資金額と返済期間、返済方法と利率

融資限度額は3,000万円、うち運転資金の限度額は1,500万円です。とはいえ、実際の運用では無担保・無保証での融資総額は2,000万円を超えることはほぼありません。筆者の経験からも、多くて1,000万円といったところでした。

返済期間、返済条件は各種融資制度で定められた返済期間以内です。

利率は各種融資制度で適用される利率に0.4%加算されたものとなります。たとえば新規開業資金で基準金利2.16%(令和元年11月1日現在)が適用されるケースで、新創業融資制度特例を利用する場合の利率は2.56%となります。

特別利率A、特別利率B、・・・などの特別利率が適用されるケースも、それぞれの特別利率に0.4%が加算されたものが利率となります。

なお、法人申込人の場合で代表者が連帯保証人となる場合、利率が0.1%低くなります。 この代表者は登記上の代表者に限定されず、実質的な経営者や共同経営者でも可能です。

資金使途

新たに事業を開始する、または事業を開始した後に必要となる設備資金、運転資金として使うことができます。

担保や保証

無担保・無保証人で利用できます。借入人が法人の場合だとしても代表者の個人保証は不要です。この制度の最大の特徴です。

いわゆる「資本性ローン」の対象になるケース

新規創業融資制度とは別の「資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)」という特例制度も存在します。
「資本性ローン」の特徴は、新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金、再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)、中小企業経営力強化資金等の創業融資において、一定の条件に該当すれば金融検査上借入金ではなく自己資本とみなせることです。
一定の条件には下記条件などがあります。

  • 技術・ノウハウ等に新規性がみられる
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けている
  • 事業に新規性及び成長性がみられる

上記に当てはまれば資本性ローンが利用できますが、そのとき新創業融資制度は利用できません。
資本性ローンの制度目的が自己資本とみなせる資金調達による財務体質の強化にあることに対し、新創業融資制度の制度目的は無担保・無保証の実現にあるからです。
資本性ローンの返済条件は一括返済が大前提となっているのに対し、新創業融資制度の返済条件は分割返済である点も大きく違います。
「資本性ローン」と「新創業融資制度」両方の利用が可能な場合、上記の違いを理解した上で有利な制度を選択する必要があります。

まとめ

新創業融資制度は、創業期の資金調達が無担保・無保証で利用できるとてもメリットの大きい特例制度です。
3つの要件は一見複雑ですが、創業前か創業して申告を2期行う前であり、勤務歴を活かすか認定特定創業支援事業を受けて創業すれば、3つの要件をすべてクリアします。悩んだときは公庫、もしくは公庫の融資支援の経験が豊富な専門家に問い合わせるといいでしょう。
注意すべき点は、自己資金は新創業融資制度利用の条件を満たせば自動的に融資がされるわけではないということです。審査の判断基準は別のものです。
ほかの条件を満たすことで自己資金要件がクリアできるとしても、創業融資の審査における最大のポイントのひとつである自己資金は少しでも蓄積するようにしましょう。

行政書士 杉町徹 プロフィール画像

執筆 : 杉町 徹 行政書士

杉町行政書士総合経営事務所 所長
経歴:神戸大学法学部卒業後、国民金融公庫(現在の日本政策金融公庫)入庫。
公庫勤務中は融資審査、返済案内、債権管理など幅広く担当。
22年勤務の後に退職、税理士事務所勤務を経て2017年より公的融資支援を主業務とする現職に従事。
(freee認定アドバイザー、freee認定会計スペシャリスト、freee認定経理コンサルタント)

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