監修 橋爪 祐典
運転資金とは、事業の経営において継続的に必要となる、原材料費・人件費・家賃などをまかなうお金です。
事業の売上だけで運転資金をまかなえない際には、金融機関からの融資によって資金を調達する方法があります。ただし、融資は誰でも必ず受けられるものではありません。
融資を得るには金融機関での審査に通過する必要があり、業績や財務状況が良好でないなど審査に落ちる可能性もあります。そのため融資してもらう際は、申し込みの手順や審査を通過するポイントなどを把握し、入念に準備することが大切です。
本記事では、融資を依頼できる機関や申請の手順、審査を通過するためのポイントなどを解説します。運転資金に困っており、融資の申し込みを検討している人はぜひご覧ください。
目次
- 運転資金の融資を受けられる機関
- 日本政策金融公庫
- 銀行
- 信用金庫
- 自治体の融資制度
- ノンバンク(クレジットカード会社・消費者金融など)
- 運転資金の融資を申請する手順
- 融資の審査に通るために抑えておくべきポイント
- 必要書類を不備なく揃える
- 事業計画書で返済力を示す
- 資金の使い道を明確に説明する
- 自己資金を準備しておく
- 財務状況を改善する
- 運転資金の融資を受ける際の注意点
- 最大限度額まで借り入れしない
- 運転資金と設備資金を混同しない
- 返済滞納によって信用情報に影響する可能性がある
- 融資以外で運転資金を調達する方法
- ファクタリング
- クラウドファンディング
- 国や地方自治体の補助金制度
- ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資
- 必要な運転資金の目安と計算方法
- まとめ
- 資金繰り・資金調達をサポート
- よくある質問
運転資金の融資を受けられる機関
運転資金の融資を依頼できる機関はいくつかあり、代表的なものは以下の5つです。
運転資金の融資を受けられる機関
それぞれの機関には特徴があり、融資までのスピードや審査基準などが異なります。各機関の特徴を把握し、自社の状況や目的に合わせて最適な機関を選択することが大切です。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、低い利率や無担保で融資を受けやすいのがメリットです。
新しく事業を始める人や開業後間もない人(税務申告を2期分終えていない)は、無担保・無保証人で各種融資制度を利用可能です。そのため担保にできる資産がなくても利用できたり、保証人を探す心理的負担を抑えられたりと、融資を受けやすくなります。
また、利率も一般的な融資より低くなるため、返済総額を抑えやすく、経営への負担が少なくなるのも魅力です。
たとえば、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援金」を利用すると、運転資金を最大で4,800万円(設備資金を含めると合計7,200万円)借りられます。運転資金の返済期間は原則10年間に設定できるため、自分のペースで返済しやすいでしょう。
ただし、融資を受けるには「資金使途の明確さ」「事業計画書の現実性」「返済計画と資金繰り表の整合性」などを示す必要があります。そのため、事業計画書や資金繰り表などを作り込んだうえでの申し込みが求められます。
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日本政策金融公庫とは?融資制度やメリット・デメリットをわかりやすく解説
銀行
銀行融資は、金利が低く返済金額を抑えやすく、借入限度額が大きいメリットがあります。
銀行の低金利な融資制度として「プロパー融資」「信用保証付き融資」があり、どちらも利率は約1〜3%です。日本政策金融公庫や、ノンバンク(クレジットカード会社・消費者金融など)の融資制度の金利と比べ、低金利で融資を受けられます。
| 機関 | 金利 |
|---|---|
| 銀行 (プロパー融資や信用保証付き融資) | 約1〜3% |
| 日本政策金融公庫 | 0.95〜4.2% (2025年度の場合) |
| ノンバンク | 約3〜18% |
そのため、利子も含めたトータルの返済金額が少なく、事業の資金繰りが容易になります。
また、銀行で利用できるプロパー融資は、原則として借入限度額の上限がありません。長期間にわたって多額の資金を借り入れられるため、事業を安定して拡大し続けられる点もメリットです。
ただし、銀行で受けられる融資は、審査が比較的厳格です。事業の売り上げや将来性などを厳しく評価されるほか、担保や保証人を求められるケースも多くなっています。
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プロパー融資とは?利用するメリット・デメリットや審査を通過するポイントなどを解説
信用金庫
信用金庫とは、地域の人々が利用者・会員となり、地域繁栄のための相互扶助を目的とした金融機関です。
信用金庫は地域の繁栄につながる中小企業のサポートを重視しているため、審査においては数字だけでなく、事業の実態や将来性を丁寧に見てくれる傾向にあります。そのため事業の売上が高くなくても、審査を通過する可能性があります。
ただし、大手の銀行と比べると、融資限度額が低かったり、金利が高くなったりする傾向にある点に注意が必要です。
高金利になると将来的な返済が大変になるので、綿密な返済計画を立てたうえで利用しましょう。
自治体の融資制度
各地の自治体では、企業の運転資金をまかなうために、金融機関・信用保証協会と連携して、独自の融資制度を設けている場合があります。
たとえば東京都では、東京都産業労働局が設けている創業融資の制度を利用できます。創業から5年未満の会社が利用でき、原則として2.1〜2.6%の金利で借り入れが可能です。
ただし、2025年度は「創業支援特例」に該当すると金利が0.4%優遇され、1.7〜2.2%で融資を受けられます。創業支援特例とは、認定特定創業支援等事業(創業支援セミナーや個別相談を実施する事業)により支援され、市区町村や商工会などから証明を受けた場合を指します。
このように自治体の融資制度は、金利が低く最低限の利子で済むため、トータルの返済額を抑えられるのが魅力です。
また、融資制度によっては長期の借り入れも可能です。たとえば東京都では、創業日から5年未満で利用できる「スタートアップ支援」では、融資期間15年以内で資金を借り入れられます。
融資期間が長いと、毎月の返済額が少なくなるため、創業間もなくの売上が少ない時期でも返済しやすくなっています。
ただし自治体の融資制度は、自治体・金融機関・信用保証協会の3者が連携して行うため、審査に時間がかかりやすい点は注意が必要です。すぐに資金が必要な際には、不向きだといえます。
出典:東京都産業労働局「【10月1日改定版】令和7年度制度融資要項」
ノンバンク(クレジットカード会社・消費者金融など)
ノンバンクとは、預金業務を行わない貸金業者のことで、クレジットカード会社や消費者金融、信販会社などが挙げられます。
ノンバンクは銀行と異なり、自社の資金で融資を行うため、お金を貸した人が返済不能になっても預金者に影響が及びません。そのため融資審査の基準が緩く借りやすいことに加え、審査がスピーディーに完了します。
場合によっては即日入金も可能なため「故障した大型機械をすぐに修理したい」「繁忙期に向けて大量の原材料を仕入れたい」など、今すぐ運転資金が必要な際に適しています。
ただし、ノンバンクの融資は比較的金利が高い傾向にあります。金利が高いと、利子を含めたトータルの返済金額が多くなるため、返済により経営が圧迫されやすくなる点に注意しましょう。
運転資金の融資を申請する手順
融資の申請には、書類の作成や審査などに時間がかかりやすいため、あらかじめ手順を把握しておきましょう。
運転資金の融資を受ける手順は、大きく以下5つのステップに分けられます。
- 融資を受けたい機関を選ぶ
- 必要書類を準備し、融資を申し込む
- 機関が審査を行う
- 契約に必要な書類を準備する
- 契約・融資実行(入金)
融資の審査にかかる日数は、機関によって大きく異なります。即日入金が可能なノンバンク以外は2〜4週間ほどかかるケースが一般的です。
自治体の融資制度は、自治体が中小企業診断士と事前面談を行うケースもあるため、審査に時間がかかることが多いです。最大で2ヶ月ほどかかる可能性もあります。
また、審査が完了した後も契約書の準備や契約締結の手続きがあるため、実際に入金されるまではさらに1週間程度かかると想定しておきましょう。
融資を利用する際は、申し込みから入金までにかかる期間を考慮し、申し込み中に運転資金が不足しないよう早めに準備しましょう。
融資の審査に通るために抑えておくべきポイント
運転資金を確保するためには、融資の審査を通過する可能性を少しでも高める必要があります。融資の審査を通過するために抑えておくべき以下のポイントを解説します。
融資の審査に通るために抑えておくべきポイント
早めに準備を整え、確実に融資の審査を通過できるよう対策しておくことが大切です。
必要書類を不備なく揃える
必要書類に不備があると、申し込み自体できません。書類を再提出する時間がかかる分、融資の審査も後ろ倒しになる可能性もあります。
書類の不備は融資担当者の心象も悪くするため、事前に必要な書類を確認し、確実に用意しましょう。融資審査の主な必要書類としては、以下が挙げられます。
- 事業計画書
- 資金繰り表
- 確定申告書
- 納税証明書
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 事業用口座の通帳のコピー
必要書類は融資先によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
事業計画書で返済力を示す
事業計画書は、今後の事業の見通しや売上の推移を記載する資料です。
融資を受ける際の審査では、利息を含む借入金を確実に返済できるかどうかが重視されます。事業計画書で具体的な事業戦略や収益の予測を盛り込むことで、返済能力に対する懸念の解消につながります。
事業計画書を作成するときのポイントは以下のとおりです。
- わかりやすく簡潔にまとめる
- 内容は具体的に書く
- 競合企業も調査する
- 事実に基づき正確に記載する
- 数値は根拠をもって算出する
金融機関によっては、事業計画書を必要書類に含めていない可能性もありますが、返済力をアピールするために作成しておきましょう。
【関連記事】
事業計画書の書き方と記入例を項目別に解説! テンプレートや作成時のポイントも紹介
資金の使い道を明確に説明する
資金の使い道が曖昧であったり、説明が二転三転していたりすると、金融機関の信頼に関わるため、事業にどう活かすのかを明確に説明できるようにしましょう。
事業計画書や資金繰り表で、人件費・家賃・外注費など、項目別に内訳を示すとより分かりやすいでしょう。
自己資金を準備しておく
自己資金が全くないと、もし事業が赤字になった際に受けた融資を返済できません。そのため融資を行う金融機関にとって、借入希望者の自己資金の少なさは、審査上のマイナス要因のひとつになりえます。
日頃から収入の一部を貯金する癖をつけておき、融資の際に自己資金がある旨をアピールできるようにしましょう。
財務状況を改善する
財務状況を改善すると、毎月十分な資金が残るようになり、返済能力がある証明になります。
そもそも財務状況の改善とは、単純に売上を伸ばすだけでなく、経費の削減や売掛金回収の迅速化なども含む取り組みです。
融資審査では、売上の「額」そのものよりも「売上から経費を差し引いた利益が、手元に残っているか」という財務の「質」が厳しく見られます。
売上が高くても、利益が手元に残らないのであれば、以下の点から財務体質を改善しましょう。
- 水道光熱費や外注費などを見直し、無駄な経費を削減する
- 原価率を抑えるために、仕入先の変更を検討する
- 取引先に交渉し、売掛金を早めに支払ってもらい、手元に資金を確保する
- 長く放置している在庫を廃棄し、在庫管理の人件費を削減する
運転資金の融資を受ける際の注意点
運転資金の融資を受けるときは以下の点に注意しましょう。
運転資金の融資を受ける際の注意点
融資に伴うトラブルを避けるには、あらかじめ注意点を把握して、慎重に申し込みを進めることが大切です。
最大限度額まで借り入れしない
最大限度額まで借り入れると返済金額が多くなり、将来的に返せなくなる危険があります。
融資は、借り入れた金額だけでなく、利息も返済が必要です。融資額が多くなるほど利息も増えるため、返済の難易度が大きく上昇します。
特に金利が高い融資を利用すると、一層返済が苦しいものになるでしょう。
また、順調に売上を伸ばしていても、受注増加による長時間の稼働や従業員へのボーナス支給などで、必要な運転資金が想像以上に多くなるかもしれません。
借り入れ額が多いと、想定以上の運転資金が必要になった際に、返済が経営を圧迫しがちです。
融資を受ける際は、最大限度額まで借り入れるのではなく、あくまで事業に必要な金額だけに絞って、余計な返済額を増やさないよう心がけましょう。
運転資金と設備資金を混同しない
運転資金と設備資金を混同すると、規定に違反するリスクがあります。
運転資金と設備資金は、下記のような点で異なります。
- 運転資金:原材料費や人件費など、継続的に必要なお金
- 設備資金:車・パソコン・店舗の改装費など、事業に必要な設備や施設に使うお金
両者は似通った部分もありますが、多くの金融機関では、運転資金と設備資金それぞれに異なる借入限度額・返済期限を設定しています。そのため運転資金として融資を受けたお金は、必ず運転資金の範囲内で使用しましょう。
もし運転資金と設備資金を混同して使用すると、規定違反に該当し、再融資が受けられなくなるかもしれません。
返済滞納によって信用情報に影響する可能性がある
借り入れた運転資金の返済を滞納してしまうと、自身の信用情報に悪影響を及ぼし、次回以降の融資を受けられなくなるかもしれません。
融資を受けた額の返済状況や滞納した事実などは、信用情報機関で記録されます。融資審査の際には信用情報もチェックされるので、過去に返済滞納があると、返済能力がないと判断され審査に通りにくくなります。
また、信用情報はクレジットカードの作成や住宅ローンの申し込みにも利用されるものです。信用情報が悪くなると、事業用カードの作成や新店舗の設立が難しくなり、事業展開に悪影響を及ぼします。
将来的にビジネスを拡大できる可能性が狭まってしまうため、融資を受ける際は、借りたお金は滞納せずに返済できるよう綿密な計画を立てましょう。
融資以外で運転資金を調達する方法
融資の審査に通らないのであれば、他の方法で運転資金を調達する方法もあります。融資以外で運転資金を調達する方法として、以下が挙げられます。
融資以外で運転資金を調達する方法
審査を通過できない可能性を考慮し、融資以外の運転資金の調達方法も知っておくと、より安心です。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権(商品の代金を後日受け取る権利)を専門業者に売却することで、早めに現金を調達できるサービスです。業者によっては最短即日で利用できる可能性があるため、迅速に運転資金が欲しい場合に向いています。
また、事業が赤字決算であっても、ファクタリングであれば運転資金を調達できる可能性があるのも魅力です。財務状況に関係なく、資金繰りを改善できます。
ただし、ファクタリングで調達できる資金は、基本的に売掛金の範囲内に限ります。大規模な設備投資や店舗の増設には向かないため、一時的なつなぎ資金として利用しましょう。
ファクタリングについては、下記の記事でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
【関連記事】
ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットを解説【図解あり】
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、オンラインで一般の支援者から事業の運転資金を集める取り組みです。新しい事業の理念や新商品の魅力などをインターネット上で発信し、共感を得たユーザーから資金を集めます。
そのため事業実績の有無を問わず、うまく魅力を発信できれば運転資金を集められる点が、融資にはないメリットです。
また、新しい事業やサービスの魅力をユーザーに伝えられると、ファンを獲得できたり認知度が高まったりと、長期的に売上を安定させられる可能性もあります。
ただし、資金を出してくれた人へのお礼である「リターン」を用意しなければ、なかなか資金が集まりません。
クラウドファンディングを行う際は、新商品のプレゼントや施設の利用券など、魅力的なリターンを考える必要があります。
【関連記事】
クラウドファクタリングとは?メリット・デメリット、利用の流れを解説
国や地方自治体の補助金制度
国や地方自治体の補助金制度は、申請に準備を要するものの、返済不要の運転資金を多く調達できる可能性があります。
国や地方自治体は、運転資金の不足に悩む中小企業・個人事業主を支援するため、多数の補助金制度を設けています。たとえば、以下の補助金制度を利用可能です。
| 制度名 | 概要 | 金額の目安(※) |
|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 中小企業の新しい製品やサービスの開発を支援 | 100万円~2,500万円 |
| IT導入補助金 | 現場のデジタル化やDX等を推進する、ITツールの導入を支援 | 5万円~3,000万円 |
| 事業承継・M&A補助金 (事業承継促進枠) | 事業承継をきっかけとした新しい取り組みを支援するため、設備投資等にかかる経費を補助 | 100万円~1,150万円 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 中小企業の販路開拓等を支援 | 50万円~5,000万円 |
※金額の上限・下限は年によって変化する可能性があります。
※補助金額は、企業規模や申請枠などによって変動します。
補助金制度は、融資と異なり返済不要のため、経営を圧迫しません。将来的な返済の不安を抱える心配がなくなります。
また、補助金を受けられると「国や地方自治体に認められた事業」として、社会的な信頼性を高められる点もメリットです。顧客からも注目されやすくなり、売上の増加を期待できます。
ただし、制度ごとに定められた要件を満たしたうえで、必要書類を提出して審査に通過する必要があります。審査に通過できるかわからないことに加え、補助金には予算の上限があるため、応募者多数で締め切られたり抽選に外れたりして、そもそも応募できないかもしれません。
加えて、補助金は後払いのため、実際に資金を得られるのは、審査の通過から数ヶ月後になる可能性があります。補助金を受け取るまでに運転資金がなくならないよう、資金繰りに注意しましょう。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資も、返済義務のない運転資金を調達できる方法です。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、どちらも創業初期の企業に対して、将来的な成長を見込んで出資する存在です。ベンチャーキャピタルは企業、エンジェル投資家は個人の投資家を指します。
事業内容や将来性をアピールし、成長の可能性を見込まれると、運転資金を出資してもらえます。返済義務がなく、経営を圧迫しません。
また、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家と関係を持つと、経営に関するノウハウを共有してもらえる可能性がある点も魅力です。
なお、出資した企業や投資家は経営に参加する権利を獲得します。出資してもらった企業や投資家が経営に参加することで、今後の企業の意思決定に時間がかかりやすくなったり、経営・事業の方向性の自由度が下がったりする点は注意しましょう。
ベンチャーキャピタルについては、下記の記事でも詳しく解説しているため、気になる方はぜひご覧ください。
【関連記事】
ベンチャーキャピタルとは?種類や出資を受けるポイントを解説
必要な運転資金の目安と計算方法
融資を受ける際は、必要な運転資金の目安を知っておくと、金融機関への説得力が向上するため、融資の審査で有利になります。
加えて、借り過ぎにとる不要な利息の発生を避けたり、反対に借りなさ過ぎて資金不足に陥ったりする事態を防ぐことにもつながります。
必要な運転資金の目安は、以下の式で計算可能です。
運転資金 = 売上債権(売掛金)+ 棚卸資産 ー 仕入債務
※棚卸資産:販売目的で仕入れた製品のうち、社内に在庫として残っているもの
※仕入債務:企業が購入した製品や原材料のうち、未払いになっているもの
売掛債権と棚卸資産は、将来的に収入になるものの、まだ現金化できていない金額です。また、仕入債務は将来的に支払いが発生する金額です。
売掛債権と棚卸資産を合計し、仕入債務を差し引くことで、まだ現金化できていない利益が計算されます。その額が、入金されるまでのつなぎとして必要になる運転資金です。
必要な運転資金の目安としては、一般的に上記の式で計算した額の3~6ヶ月分ほどです。毎月売掛金を回収できる予定でも、突発的なトラブルで現金化が遅れる可能性があるため、数ヶ月分の運転資金を確保すると安心です。
まとめ
運転資金は、日本政策金融公庫や銀行、信用金庫などさまざまな機関から融資できます。
融資を行う際は、返済能力の有無を判定するため、審査を受ける必要があります。必要書類に事業計画や売上の予測などをわかりやすく記載し、借り入れた金額を問題なく返済できるとアピールすることが重要です。
また、融資以外にも、ファクタリングやクラウドファンディングなどで運転資金を調達する方法もあります。融資の審査になかなか通らない際は、ほかの方法を検討するのもおすすめです。
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よくある質問
運転資金はどこで融資してもらえる?
運転資金の融資先として代表的な機関は以下のとおりです。
- 日本政策金融公庫
- 銀行
- 信用金庫
- 自治体の融資制度
- ノンバンク(クレジットカード会社・消費者金融など)
借入限度額や利率、入金までにかかる期間など、各機関で特徴が異なります。それぞれのメリット・デメリットを把握して、自分に合った機関を選びましょう。
詳しくは記事内「運転資金の融資を受けられる機関」をご覧ください。
1,000万円の融資を受けるには自己資金がいくら必要?
1,000万円の融資を受ける際は、自己資金が300万円以上あると安心です。
一般的に、自己資金は融資希望額の2〜3割ほどあると審査に通りやすいといわれています。自己資金が少ないと「経営不良に陥ると返済できない可能性が高い」と判断され、審査に通りにくくなります。
自己資金の重要性については「自己資金を準備しておく」でも解説しているため、ぜひ確認しておきましょう。
運転資金はどれくらい融資してもらえる?
運転資金をどれくらい融資してもらえるかは、利用する機関によって異なります。
たとえば、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援金」という融資制度では、最大で4,800万円の借り入れが可能です。
三菱UFJ銀行やみずほ銀行など、メガバンクを利用すると、数億円ほどの大規模な融資案件に対応してもらえる可能性もあります。
しかし、必ずしも融資限度額まで借り入れられるとは限りません。実際に融資を受けられる金額は、審査で借入希望者の返済能力を判断したうえで決定されます。
多額の運転資金を融資してもらいたいのであれば、提出書類で将来の売上を明確に示し、借り入れた分の金額はすべて返済できる旨を伝えましょう。
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

