資金繰り改善の基礎知識

ファクタリングのメリット・デメリットを項目別にわかりやすく解説

監修 橋爪 祐典 税理士

ファクタリングのメリット・デメリットを項目別にわかりやすく解説

ファクタリングとは、企業の売掛債権を売却することで、早期に現金化できる資金調達サービスです。

ファクタリングは、迅速に現金化できることや担保が不要であること、自社の信用情報に影響しないことなど、さまざまなメリットがあります。

ただし利用するときは、手数料が発生する点や売掛金以上の資金調達ができないなどのデメリットを事前に理解しておくことが大切です。

本記事では、ファクタリングのメリット・デメリットを項目別に詳しく解説します。ファクタリングの仕組みやファクタリング会社を選ぶポイントなどを知りたい方は、別記事「ファクタリングとは?仕組みや種類を図解でわかりやすく解説」をご覧ください。

目次

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ファクタリングのメリット

ファクタリングには、融資などほかの資金調達手段にはない、さまざまなメリットがあります。ファクタリングを利用する主なメリットは、以下のとおりです。

資金繰りに課題を抱える企業や個人事業主は、ファクタリングのメリットを理解し、効率的に資金調達しましょう。

最短即日で資金調達できる

銀行融資では審査に数週間から1ヶ月以上かかり、実際に入金されるまで一定の日数がかかります。しかしファクタリングは必要書類が揃っていれば、申し込みしたその日に現金化できる場合があります。

そのため、突発的な仕入代金の支払いや人件費の確保など、緊急の資金需要に対応できます。時間的余裕がない状況でも、ファクタリングの利用で事業継続に必要な資金を確保できます。

自社の信用情報に影響しない

ファクタリングは、融資ではなく売掛債権の売却で資金を得るため、借入金のように負債として計上する必要がなく、自社の信用情報に悪影響を与える心配がありません。

さらに、審査では利用企業の信用力よりも売掛先の支払能力が重視されるため、創業して間もない企業や信用・実績が十分でない会社でも、条件を満たせば資金調達が可能です。

また、ファクタリングの利用履歴は信用情報機関に登録されないため、将来的に銀行から融資を受ける際の審査にも影響しないメリットがあります。

自社の財務状況が悪くても利用できる

ファクタリングの審査では利用する企業の信用力よりも、売掛先(取引先)の支払能力が重視されるため、企業の財務状況が悪くても利用しやすい資金調達方法です。

銀行融資のように自社の決算内容や赤字経営、債務超過などが、融資を拒否される直接的な原因にはなりません。

ファクタリング会社は、売掛金を買い取り、最終的に売掛先から代金を回収する仕組みを採用しています。そのため、売掛先が信用力の高い企業であれば、自社の経営状態にかかわらず資金調達が可能です。業績が一時的に悪化している企業でも、スムーズに現金を確保できます。

取引先の倒産リスクを回避できる

ファクタリングを利用すれば、取引先が倒産しても売掛金の未回収リスクを避けられる可能性があります。

償還請求権がない(ノンリコース)ファクタリング契約では、売掛先が倒産してもファクタリング会社が損失を負担するため、利用企業は返金義務を負いません。そのため、売掛金が回収不能になっても経営へのダメージを最小限に抑えられます。

ただし、償還請求権がある契約では、売掛先が支払えない際にファクタリング会社から返金を求められることがあります。実質的に貸付に近い取引となるため、契約内容を事前に確認することが重要です。

リスクを確実に回避したい場合は、償還請求権がない契約を選びましょう。

貸借対照表上で負債が増えない

ファクタリングは、売掛債権を売却して現金化するため、借入とは異なり貸借対照表(バランスシート)に負債として計上されません。資金調達してもファクタリング会社への返済義務がないため、負債項目が増えない点は銀行融資との大きな違いです。

さらに、負債が増えないことで自己資本比率の改善や現金比率の上昇につながり、財務状況が健全に見える効果もあります。

貸借対照表の見栄えがよくなることで、金融機関からの評価が向上し、将来的に融資を受けやすくなる可能性もあります。

担保や保証人が不要である

ファクタリングでは、売掛債権そのものが取引の対象となるため、不動産担保や連帯保証人を用意する必要がありません。

銀行融資では担保や保証人の準備に時間がかかります。一方で、ファクタリングは売掛金さえあれば利用できるため、手続きの負担が大幅に軽減されます。

個人事業主や小規模企業にとって、担保不要で利用できる点は心理的なハードルも低くなり、気軽に利用しやすいでしょう。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングの利用はさまざまなメリットがある一方で、いくつか注意すべき点もあります。ファクタリングを利用する際の主なデメリットは、以下のとおりです。

ファクタリングの利用前にデメリットも理解しておくことで、より適切な選択ができるでしょう。

手数料が比較的高い

ファクタリングはスピーディーに資金を確保できる反面、手数料が比較的高い点に注意が必要です。

一般的に、2社間ファクタリングでは10〜20%程度、3社間ファクタリングでも3〜5%程度の手数料が発生します。

銀行融資と比べると割高であり、短期的な資金調達には適していても、長期的に利用するとコスト負担が重くなる可能性があります。



調達金額が大きい場合や繰り返し利用する場合には、手数料が経営を圧迫するリスクもあるため、ファクタリング利用時には、コスト面とのバランスを慎重に見極めることが大切です。

調達できる金額に上限がある

ファクタリングでは、現金化できる金額が売掛債権の範囲に限られるため、希望する資金額を満たせないことがあります。

そのため、手元資金を一気に増やしたいときでも、保有する売掛金を超える金額の資金調達はできません。

より多額の資金が必要なときは、銀行融資などのほかの資金調達手段を併用することや、複数の売掛金をまとめて売却することで、調達額を増やす方法もあります。利用目的や必要金額に最適な手段を選びましょう。

取引先と関係が悪化するリスクがある

3社間ファクタリングの利用時、売掛先にファクタリングの利用が通知されるため、資金繰りに困っているという誤解を招き、取引先からの信用が低下するリスクがあります。

取引条件の見直しや発注量の減少など、取引縮小につながるケースも考えられます。

取引先との関係が悪化するリスクを避けたいなら、取引先に知られずに資金調達できる2社間ファクタリングの利用もひとつの方法です。ただし、2社間ファクタリングは手数料が割高になる傾向があります。

取引先の信用度で利用できないことがある

ファクタリングでは、利用企業の信用力よりも売掛先の信用度が重視されます。そのため、売掛先の経営状態が悪化している場合や支払能力に不安がある場合は、審査に通らないことがあります。

取引先の信用状況で資金調達できないリスクを避けるためには、信用力の高い取引先の売掛金を優先して申し込むことや、複数の売掛先の債権をまとめて申請することが効果的です。

ファクタリングを利用するときの注意点

ファクタリングを利用するときはトラブルを回避するために、以下のポイントに注意しましょう。

ファクタリングの仕組みを正しく理解する

ファクタリングは融資ではなく、売掛債権の売買取引であることを正しく理解しましょう。

また、ファクタリングには2社間と3社間の2種類があり、2社間は自社とファクタリング会社で完結しますが、3社間取引は取引先にも合意を得なければいけません。

さらに、償還請求権の有無を契約前に確認する必要があります。償還請求権がない契約なら売掛先の倒産リスクを負いませんが、償還請求権がある契約では返済義務が発生します。

2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの仕組みについて詳しく知りたい方は、別記事「ファクタリングとは?仕組みや種類を図解でわかりやすく解説」をご覧ください。

契約書の内容を確認する

契約書には、手数料や債権譲渡の範囲、償還請求権の有無など、重要な条項が記載されています。契約内容を十分に理解せずに契約すると、予想外の負担を強いられることもあるでしょう。手数料の計算方法や追加費用の有無は、入念にチェックすることが必要です。

手数料が発生する

ファクタリングを利用する際、手数料が発生することを念頭に置いておきましょう。2社間ファクタリングの手数料は買取売掛金額の10〜20%程度、3社間ファクタリングは3〜5%程度の支払いが必要です。

また、手数料以外にも事務手数料や振込手数料などが発生するケースもあります。総コストをしっかり把握したうえで、利用するかどうかを判断しましょう。

【関連記事】
ファクタリング手数料の相場は?決める要因と抑えるための方法を解説

悪質な業者の被害に遭う可能性がある

ファクタリング業界には悪質な業者も存在します。法外な手数料の請求や契約内容と異なる取引の強要、ファクタリングを装った営業など、注意が必要な事例も少なくありません。

業者選びの際は、会社の実態や運営年数、口コミ評価などを入念に調査しましょう。契約を急かされたり、対面での説明を避けたりする業者には警戒が必要です。

【関連記事】
即日の資金調達も可能なファクタリング業者の選び方とは?仕組みや手数料について

ファクタリング以外の現金化の方法

以下のような状況では、ファクタリングの利用を検討してもよいでしょう。

  • 銀行や自治体に融資を申し込んだが断られてしまった
  • 融資を申し込むにあたって、担保や保証人がいない
  • 融資の審査を待つ時間がなく、早く手元に現金が欲しい
  • 融資を申し込むほどではない、小口の資金が必要

しかし、売掛債権だけではカバーできない金額が必要な場合や、手数料が想定よりも高い場合も考えられます。

ファクタリングのほかにビジネスローンやクレジットカードの利用など、資金調達の手段はありますが、すべてを自分ひとりで調べるのは大変です。

中小企業の経営者や個人事業主が、事業の状況にあわせて迅速に資金調達するうえでおすすめなサービスが、会計freeeが提供するfreee資金調達です。

まとめ

ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる資金調達方法です。

迅速に現金化できることや担保が不要であること、信用情報への影響がないことなど、多くのメリットがあります。一方で、手数料が比較的高い点や売掛金以上の調達ができない点なども理解しておきましょう。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いを理解したうえで、ほかの資金調達方法と比較検討し、自社の状況に合った方法を選ぶことが重要です。

経営の安定化に直結する資金繰りを改善するため、ファクタリングを含むさまざまな資金調達手段を考慮し、健全なキャッシュフローを目指しましょう。

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よくある質問

ファクタリングのメリットは?

ファクタリングを利用する主なメリットは以下のとおりです。

  • 最短即日で資金調達できる
  • 自社の信用情報に影響しない
  • 自社の財務状況が悪くても利用できる
  • 取引先の倒産リスクを回避できる
  • 貸借対照表上で負債が増えない
  • 担保や保証人が不要である

詳しくは記事内「ファクタリングのメリット」をご覧ください。

ファクタリングのデメリットは?

ファクタリングの主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 手数料が比較的高い
  • 調達できる金額に上限がある
  • 取引先と関係が悪化するリスクがある
  • 取引先の信用度で利用できないことがある

2社間ファクタリングでは10〜20%程度、3社間ファクタリングでも3〜5%程度の売買手数料が発生します。

また、売掛金の範囲内でしか資金調達できないため、大規模な投資には向きません。さらに、分割払いができず、売掛金の入金時に一括で支払わなければいけない点には注意が必要です。

詳しくは記事内「ファクタリングのデメリット」をご覧ください。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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